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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科52巻5号

1998年04月発行

文献概要

Derm.'98

外用剤のショックはこわい

著者: 佐藤俊樹1

所属機関: 1秋田大学皮膚科

ページ範囲:P.144 - P.144

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 患者さんは62歳女性.仙骨部の慢性放射線潰瘍に対してrotation flapで被覆したが,flapの先端に壊死が生じてしまった.植皮術を予定し,壊死にて生じた潰瘍面に対して各種消毒薬および外用剤を用いて創面の清浄化を図っていた.ある日,創部およびその周囲に紅斑,丘疹が生じた.外用剤による接触皮膚炎を考え,パッチテストで陽性であった薬剤を中止,変更した.しかし,徐々に体幹,四肢にも紅色丘疹および膨疹様紅斑が出現し,何となくおかしいと感じていた.パッチテスト判定の8H後の15:00,突然上腹部痛が生じ,顔面蒼白となった.5分ほどで症状は軽快したが,16:30,全身に膨疹が多発した.強ミノC®とサクシゾン®を静注.19:30,洗面所で倒れているのを発見.脈拍78/min,血圧106/68mmHg,顔色不良で嘔気を伴い,膨疹も多数みられた.蕁麻疹にしてはおかしいと思いつつ静脈カテーテルを留置し,ソル・コーテフ®の静注を行った.21:00,突然血圧が44/30mmHgと下降した.このときようやくアナフィラキシーショックであることを理解した.循環器内科医師をcallし,エホチール®をone shot静注,イノバン®の持続静注を開始.ショックの原因を潰瘍処置に使用した薬剤と考え,創部を洗浄した.ソル・メドロール®も持続静注した.イノバン®のみでは血圧100台を維持できず,エピネフリン持続静注も併用した.翌朝,ようやく血圧が安定し,夕方にはカテコラミンを終了,翌々日にステロイドも終了した.原因は,DLSTなどにより,処置に使った皮膚潰瘍治療薬と外用抗生剤と考えた.なんとか救命しえたが本当にこわくて冷や汗をかいた.この経験から,外用剤によるショックは徐々に症状が現れることがわかった.数々のサインがありながら見落としていた恥ずかしい経験ではあるが,他山の石として注意してほしい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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