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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科53巻10号

1999年09月発行

雑誌目次

カラーアトラス

単発性肥満細胞腫

著者: 木花いづみ

ページ範囲:P.782 - P.783

 患者 1歳2か月,女児
 初診 1997年2月24日

原著

外陰部に生じた基底細胞癌

著者: 門野さつき ,   上田周 ,   石橋睦子 ,   神田憲子 ,   石黒直子 ,   川島眞

ページ範囲:P.785 - P.787

 最近経験した外陰部基底細胞癌(BCC)の4例を報告する.1989年から1998年までの10年間に東京女子医科大学皮膚科で経験したBCC1O1例中外陰部発生は5例(4.9%)のみで,比較的稀な部位と考えられた.1988年から1998年の11年間に本邦で報告された外陰部BCC 43例と合わせて若干の検討を加えた.診断時平均年齢は72.1歳で,臨床型では結節潰瘍型が,組織型では充実型が多く認められた.

今月の症例

Mycobacterium avium皮膚感染症に合併したlichen scrofulosorum

著者: 小松弘美 ,   照沼篤 ,   田畑伸子 ,   田上八朗

ページ範囲:P.789 - P.792

 Mycobacterium avium(以下M.avium)皮膚感染症に伴ったlichen scrofulosorm(以下LS)を比較的短期間の間に3例経験した.全例とも免疫不全を伴わない小児例で,体幹部の播種性小丘疹と体幹・四肢の皮下硬結が同時期に生じた.皮下硬結は組織所見と生検組織片の培養・PCR法からM.avium感染症と診断し,多発した小丘疹はその臨床像と組織所見からLSと診断した.感染源は症例1では水槽内の小動物が,兄弟例である症例2,3では24時間風呂が疑われた.LSは血行散布型の結核疹といわれ,一般には他の皮膚結核に伴って生じる.これまで自験例のように,皮膚非定型抗酸菌症に伴って生じた報告例はない.

症例報告

アンピロキシカムによる薬疹—薬剤刺激培養患者由来単核球にケモカイン産生をみた1例

著者: 河京美 ,   平野眞也 ,   石神光雄 ,   森島陽一 ,   加藤則人 ,   安野洋一

ページ範囲:P.793 - P.796

 42歳,女性.アンピロキシカム(フルカム®)内服後に多形紅斑型薬疹を発症し,末梢血好酸球増多と,病理組織像で好酸球浸潤による血管病変がみられた.ピロキシカムによるスクラッチパッチテストで48時問後に紅斑を認め,リンパ球幼若化試験で疑陽性であった.患者末梢血単核細胞(PBMC)を用いて薬剤刺激による好酸球の走化性,活性化に関するregulated on activation,normal T cell expressed and secreted(RANTES),monocyte chemotactic peptide-1(MCP-1),macrophage inflammatory protein-1α(MIP-1α)活性を測定し,高値を示す結果が得られた.これよりこれらのサイトカインがアレルギー性薬疹の病態に関与しているということだけでなく,病態に応じたサイトカインの測定により原因薬剤の同定に役立つ可能性が示唆された.

Calciphylaxisによる皮膚潰瘍の1例

著者: 松尾葉子 ,   木花光 ,   尼ケ崎安絋

ページ範囲:P.797 - P.799

 慢性腎不全に伴う二次性副甲状腺機能亢進症の42歳,男性に生じたcalciphylaxisの1例を報告する.左上肢に激しい接触痛を有する難治性潰瘍が生じた.組織学的に潰瘍部真皮下層の小血管壁に輪状の石灰沈着を認める.肺,心,胃,筋肉等にも石灰化あり.皮膚潰瘍出現の8か月後突然死亡した.本症の本邦報告は過去に3例のみで,あまり知られていないが,本症による皮膚潰瘍が出現した患者の予後は非常に悪い.長期透析中の腎不全患者の増加に伴い,本症の増加が予想され,慢性腎不全患者の難治性潰瘍は,本症も鑑別診断の一つに入れる必要があると考えた.

酢酸リュープロレリン皮下注により生じた肉芽腫の2例

著者: 撫養宗信 ,   滝尻珍重 ,   白濱茂穂

ページ範囲:P.801 - P.803

 66歳男性と76歳男性.性ホルモン依存性の前立腺癌の治療のために,酢酸リュープロレリンの皮下注射を受けていた.酢酸リュープロレリンはluteinizing hormone releasing hormoneのagonistである.投与することにより下垂体からのluteinizing hormoneを枯渇させ,間接的にtestosteroneの分泌を抑制する.症例1は,3回目,症例2は12回目の皮下注射から,注射部直下に皮下腫瘤を自覚した.2例とも,病理組織学的には,真皮下層から皮下脂肪組織におけて類上皮細胞と巨細胞よりなる肉芽腫性変化が認められた.巨細胞内には大小の脂肪滴と思われる空胞が散見され,酢酸リュープロレリン皮下注により生じた肉芽腫と診断した.肉芽腫形成により,酢酸リュープロレリンの薬剤的有効性が阻害されている可能性があり,前立腺癌治療においてその投与に注意が必要と考えられた.

痴呆の進行とともに軽快したtrigeminal trophic syndromeの1例

著者: 河出英明子 ,   谷口芳記 ,   伊藤八峯 ,   清水正之

ページ範囲:P.805 - P.807

 Trigeminal trophic syndromeは,三叉神経の知覚枝の損傷後に,三叉神経支配領域の異常知覚に対する自傷行為が起こり,皮膚びらんないし潰瘍が形成される稀な疾患である.今回,Gasser神経節へのグリセリン注射とテント下髄膜腫の外科的摘出後に生じたtrigeminal trophic syndromeと考えられる患者の経過観察中に痴呆の発生を認め,その痴呆の進行とともに皮膚潰瘍が軽快した稀な症例を経験した.機序は不明であるが痴呆の進行とともに異常な皮膚の感覚を感じることがなくなり皮疹の軽快をみたのではないかと考える.

白斑を合併し片側性に生じた限局性強皮症の1例

著者: 石川高康 ,   井上奈津彦 ,   新村眞人

ページ範囲:P.808 - P.810

 4歳,女児.1歳時に右胸部に白斑,右顔面,右上下肢に皮膚硬化が出現し,3歳時に右上下肢の萎縮が出現した.右上肢の皮膚硬化部の組織では表皮は軽度萎縮し,真皮は全層にわたり膠原線維の膨化,均質化,走行の乱れがみられた.抗核抗体陽性.臨床像および組織像より片側性に生じた多発性のmorpheaと診断した.また右胸部の白斑は尋常性白斑と考えられた.限局性強皮症と尋常性白斑の合併例は稀であり,また自験例では身体の右側のみに病変がみられ,興味深い症例であると思われた.

C型肝炎を合併し,抗Scl−70抗体陽性を示したクリオグロブリン血症の1例

著者: 菊池康 ,   金子高英 ,   会津隆幸 ,   白石正彦 ,   野村和夫

ページ範囲:P.812 - P.814

 76歳,女性.初診の3日前より両下腿に紫斑が出現.初診時,両下肢,両前腕および腹部に浸潤を触れる紫斑が見られた.腹部症状や開節症状は見られなかった.紫斑は加温により消失したというエピソードあり.また,両手のほぼ全指の爪上皮の延長と著明な出血点が見られた.しかし,手指や前腕の皮膚硬化や指尖小潰瘍などの進行性全身性硬化症(PSS)の所見は見られなかった.病理組織学的には真皮の小血管周囲に赤血球の漏出とリンパ球を主体とした小円形細胞浸潤を認める.血中クリオグロブリンおよびHCV抗体陽性,GOT, GPT,γ-GTPの軽度上昇,抗Scl−70抗体が陽性.免疫電気泳動にてmono—clonalityは認めず,III型クリオグロブリン血症と診断した.本症例ではC型肝炎とともに潜在的なPSSの可能性も考えられ,クリオグロブリン血症を診たら,より多くの視点から本疾患を観察する必要があると思われた.

血管腫内皮細胞にIL−6を認めたPOEMS症候群

著者: 冨田幸希 ,   小泉洋子 ,   安保緑 ,   小玉和郎 ,   大河原章 ,   山下功

ページ範囲:P.815 - P.817

 65歳,男性.1989年,両手両足のしびれが出現.1990年,四肢の多毛,体幹に小豆大までの自覚症状のない紅色結節が出現.1991年,当院神経内科を初診した.多発性神経炎と診断され全身症状と皮膚症状の関連性の精査を求めて当科を初診した.1997年再診時には紅色結節の増大と全身皮膚の色素沈着,手指皮膚の硬化も認められた.体幹の紅色結節を生検した.病理組織学的に真皮上層から中層に毛細血管の増殖と拡張がみられ,血管内皮細胞にIL−6を認めた.また血清中IL−6の上昇がみられた.Polyneuropathy, orga—nomegaly(肝脾腫),endocrinopathy(境界型糖尿病),血清中のM-protein, skin changesを認めた.

高安病に生じた足底結節性紅斑の1例

著者: 佐藤友隆 ,   谷川瑛子 ,   三森経世 ,   多島新吾 ,   西川武二

ページ範囲:P.818 - P.821

 29歳女性,高安病患者の足底に生じた結節性紅斑の1例を報告した.不明熱で精査中に両足底に栂指頭大までの圧痛を伴う浸潤性紅斑が出現した.大動脈血管造影所見より高安病と確診され,プレドニゾロン30mg/日内服にて皮疹は消退した.その後も皮疹が高安病の活動性に一致して出没を繰り返していた.2回にわたる皮膚生検で,いずれも組織学的に巨細胞を混じるgranu—lomatous septal panniculitisで明らかな血管炎を伴わない.全身症状を伴う結節性紅斑を診た時,高安病が基礎疾患として存在する可能性を考慮する必要を感じた.

皮膚症状を主とした回帰性リウマチの1例

著者: 玉城毅 ,   加藤雪彦 ,   大久保ゆかり ,   大井綱郎 ,   古賀道之

ページ範囲:P.825 - P.827

 21歳,女性の回帰性リウマチの1例を報告した.症状は主に両足の圧痛を伴う浮腫性紅斑であり,関節痛は一度だけしか認めなかった.本邦報告例は84例で,そのうち皮膚科領域からの報告は自験例も含めて18例に過ぎない.本邦報告例を集計し,紅斑を生じる諸皮膚疾患との鑑別を検討した.

Alagille症候群による腎不全に伴ってみられた転移性皮膚石灰沈着症の1例

著者: 小川晃史 ,   赤坂俊英 ,   波治武美

ページ範囲:P.828 - P.830

 28歳,男性のAlagille症候群に伴った慢性腎不全患者に発症した転移性皮膚石灰沈着症の1例を報告した.血液透析治療中,全身の皮膚に乳褐色から淡紅褐色の結節が多発した.病理組織学的に,von Kossa染色で穎粒状から塊状の黒色無構造沈着物とその経表皮排出を認めた.本症候群は慢性胆汁うっ滞,特徴的顔貌,眼科的異常,椎骨異常,末梢肺動脈狭窄を主体とする先天性心疾患の5主徴を高率に有し,その他腎障害,発育障害,精神発達遅延,二次性徴の遅延などを認める.皮膚症状としては黄疸,色素沈着,瘙痒,黄色腫がみられる.本症候群と皮膚石灰沈着との関係は不明であるが,長期血液透析では皮膚石灰沈着を合併しやすい可能性は否定できず,慎重な透析管理が望まれる.

急性膵炎に伴ったsubcutaneous nodular fat necrosis

著者: 前島英樹 ,   饗場伸作 ,   矢口厚 ,   橋本明彦 ,   勝岡憲生

ページ範囲:P.832 - P.834

 75歳,男性,1995年6月より腹痛が出現し,近医で血清アミラーゼ高値を指摘され,精査目的にて入院.入院後,血清膵酵素の上昇に伴い下肢に拇指頭大の表面に軽い潮紅を伴う皮下硬結が多発した.組織学的には脂肪細胞の変性,壊死像が主体であり,ghost-like cellと言われるsub—cutaneous nodular fat necrosisに特徴的な所見を認めた.血清膵酵素の低下とともに皮下硬結も自然退縮した.

鼠径部に生じた皮膚子宮内膜症

著者: 松尾葉子 ,   木花光 ,   栗原誠一 ,   岩間潤太郎

ページ範囲:P.835 - P.837

 42歳,女性の右鼠径部に生じた皮膚子宮内膜症の1例を報告した.鼠径部子宮内膜症は極めて報告が少なく,本症の本邦報告38例中1例が皮膚科から報告されているが,その他は外科や産婦人科症例である.過去の報告例を検討したところ高率に鼠径ヘルニアの合併があり,術前に画像検査で鼠径ヘルニアの有無を確認する必要性があると考えた.

疣状腫瘤を呈した足底結合組織母斑の1例

著者: 佐藤友隆 ,   村田隆幸 ,   谷川瑛子 ,   清水宏

ページ範囲:P.838 - P.840

 42歳,男性.バングラデシュ人.左足底の疵状腫瘤を主訴に当科を受診した.臨床的にverrucous carcinoma等を疑い皮膚生検を施行した.組織学的に表皮は角質増生を伴う軽度の肥厚を認めるのみで,本態は真皮での膠原線維の著明な増生であり,結合組織母斑と診断した.Uittoの結合組織母斑の分類ではisolated collagenomaに相当するものと思われた.結合組織母斑の中での自験例の位置づけ,collagenomaの過去の報告例,プロテウス症候群との関連等につき文献的考察を加えた.

骨形成のみられた皮膚混合腫瘍の1例

著者: 高橋千歳 ,   賈青 ,   鈴木拓 ,   大西誉光 ,   渡辺晋一

ページ範囲:P.841 - P.843

 45歳,男性.初診の約10年前より右鼻翼上方に粟粒大の丘疹が出現し,徐々に増大してきた.現症は小指頭大の広基有茎性弾性硬の常色結節で,表面は平滑で毛細血管拡張を伴い,一部は黄白色に透見された.組織学的に真皮および皮下組織に基底細胞様細胞よりなる索状または不整形の胞巣と様々の問質からなる腫瘍塊を認め,その境界は比較的明瞭であった.胞巣には管腔構造と角質嚢腫を有し,間質の一部には粘液腫様変化と脂肪組織を取り込んだ骨組織が認められた.

骨病巣からの直接皮膚浸潤を認めたIgAλ型多発性骨髄腫の1例

著者: 山中直樹 ,   神谷受利

ページ範囲:P.845 - P.848

 64歳,女性.腰痛を契機にIgAλ型多発性骨髄腫と診断され,化学療法,放射線療法によりコントロールされていた.その経過中に左上腕部に皮下腫瘤が出現した.組織学的には異型性の強い形質細胞系の塊状増殖(皮膚形質細胞腫)を認め,X線像にて皮下腫瘤と骨病巣との癒着,連続性が認められた.多発性骨髄腫の皮膚転移経路として最も一般的と考えられるが,本邦皮膚科領域では稀と考えられる骨病巣からの直接浸潤を認めた1例を経験した.併せて,多発性骨髄腫に併発した皮膚形質細胞腫の本邦報告例を検討し,その臨床的特徴につき若干の統計的考察を加えて報告した.

Eccrine porocarcinomaの1例

著者: 谷垣武彦

ページ範囲:P.849 - P.851

 79歳,女性.右腹部に5×4cm暗紅色の中心が潰瘍化した局面と衛星疹がみられ,ec—crine porocarcinomaと診断し,切除した.術後3か月に患側下肢,下腹部の腫脹と同時に同皮膚に鮮紅色から暗紅色の丘疹と結節が出現し,1年後に全身状態が悪化して死の転帰をとった.Pinkus & Mehregan(1963)が報告したepider—motropic eccrine carcinomaと類似した臨床経過であった.原発巣の免疫組織学的所見は,CEA, S−100蛋白は陰性であったが,ケラチン・サイトケラチン染色では,所属リンパ節に転移している腫瘍細胞は強く陽性に染まった.リンパ節転移の有無のマーカーとなる可能性を提案した.

多発性硬化症患者に生じたMerkel細胞癌

著者: 菅谷誠 ,   川端康浩 ,   大槻マミ太郎 ,   中川秀己 ,   玉置邦彦

ページ範囲:P.853 - P.855

 71歳,女性.初診6年前より多発性硬化症にてプレドニゾロン5mg内服中であった.2か月前に左頬部に褐色腫瘤を生じ,急速に増大した.Merke1細胞癌を疑い,生検にて診断を確定した後,術中迅速病理を確認しながら一部頬骨筋を含めて切除した.Merkel細胞癌は高齢者や免疫抑制状態の患者に生じることが多いため,顔面に急速に増大する腫瘍を認めた場合,本腫瘍も念頭に入れ注意深い治療計画を立てることが重要であると思われた.

放射線治療が著効を示したMerkel細胞癌

著者: 井上多恵 ,   谷田宗男 ,   石崎康子 ,   岡田理 ,   佐藤俊樹 ,   出光俊郎 ,   平野義則 ,   提島眞人

ページ範囲:P.857 - P.859

 放射線療法が著効を示したMerkel細胞癌の1例を報告し,本症における多分割照射の有用性について考察した.患者は96歳,男性.初診の2か月前より,右頬に紅色腫瘤が出現した.近医で切除したが再発し,急速に増大,鶏卵大の腫瘤を形成した.高齢であること,家族の希望,および全身状態を考慮し,入院の上放射線照射を行った.原発腫瘤に対しX線1日1回2Gyで照射,8回目より1日2回,1.2Gyずつ照射する多分割照射を行った.総線量X線36Gy,電子線14Gy照射終了時,腫瘤はほぼ消失し,碗豆大の黄色結節を残した.黄色結節の生検組織では真皮上層から中層の以前腫瘍細胞が存在していた部位は多数の泡沫状の組織球に置き換わり,腫瘍細胞の残存は見られなかった.照射終了2か月後,右頸部リンパ節転移を生じ,X線20 Gy,電子線21.5Gy照射にてリンパ節腫大は消失した.

連載

Clinical Exercises・78—出題と解答

著者: 多田讓治

ページ範囲:P.821 - P.821

155
次の記述について誤っているものはどれか.
①敗血症性ショックの治療の第1選択薬は,副腎皮質ホルモン剤である.

Practical English for Busy Physicians・69

著者:

ページ範囲:P.865 - P.865

マグネット療法,論文提出前のチェックリスト,新しいスペシャリストの問題
 皆さんはmagnetic personalitiesというのをお聞きになったことがありますか.これはつまり遠く離れていてもお互いの磁気によって引き寄せられてしまう,つまり類を呼ぶのか運命の赤い糸といったところでしょうか.というのも最近アメリカではmagnetという単語を使った広告をよく目にするようになりました.Magnetic capsからmagnetic shoe insertsまで体全体にわたっています.このmagnetic fieldは感染症を治し,傷の治りを促進し,気持ちの落ち込みを緩和し,またlupusや関節炎を治し,湿疹や乾癬を良くすると言われています.しかしながらこれははっきりとした根拠が特に皮膚科においてはなく,今のところまだdouble blind studiesの結果を見たことがありません.しかしながらアメリカではmagnet療法がもっと盛んになっていくようです.
 ところでdouble blind studiesと言えば,Archives of Dermatology,7月号868ページに“Information for Authors and Readers”という記事が出ています.これはもちろん大変厳しい規則が情報提供の仕方や参考文献の作者紹介,またrandomized controlled trialのやり方にまでわたって記述されています.それとJournal of American Medical Association(JAMA)の7月号,84ページに独自の“Instruction for Authors”を出しています.こちらのほうには2ページにわたって“Checklist for Authors Submitting Reports of Randomized Controlled Trials to JAMA”が印刷されています.もしあなたが論文を提出したいと思うならば,ぜひとも雑誌側が要求する必要事項を守って下さい.他には自分の研究を始める前にそれぞれの雑誌社が要求する事項をリサーチして下さいね.

治療

伝染性膿痂疹,特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌分離症例における治療経験

著者: 西嶋攝子

ページ範囲:P.861 - P.864

 我々が経験したメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による膿痂疹の治療において,良好な治療効果が得られたので若干の考察を加えて報告した.経口薬としてはセフェム系抗生物質を投与し,局所はイソジン消毒とfusidic acid軟膏とgentamicin軟膏等量混合軟膏を塗布させた.治療開始後3〜4日で皮疹は乾き,この時点で経口薬を中止した症例でも7日後には治癒となった.抗生物質経口投与は最長でも7日間であったが,消毒と外用を併用し全例で良好な治療結果となった.今回の経験から黄色ブドウ球菌性膿痂疹の治療は,たとえMRSA分離症例においても,抗生物質経口投与よりむしろ有効な抗生物質外用と消毒,および有用な感染防止対策が最も重要な治療方法ではないかと推測された.

印象記

第60回米国研究皮膚科学会(SID)に参加して

著者: 秋山真志

ページ範囲:P.866 - P.867

 1999年5月5日から9日までの5日間,米国イリノイ州シカゴにて,第60回米国研究皮膚科学会(The Society for Investigative Dermatology, 60th Annual Meet—ing;SID)が開催された.本学会は,研究皮膚科学の分野では最高峰の学会の一つであり,欧州研究皮膚科学会(ESDR),日本研究皮膚科学会(JSID)とともに,三大研究皮膚科学会の一角をなしている.昨年(1998年)は,上記の3学会が,合同でドイツのケルンにて,国際研究皮膚科学会(Inter—national Investigative Dermatol—ogy;IID)を開催したため, SIDを含めてそれぞれの学会は,IIDが年次総会を兼ねるものとし,独自の年次総会を行わなかった.したがって,今回のSIDは,米国内で行われるSIDの年次総会としては2年ぶりのものとなった.SIDの開催地は,1990年代前半は,ワシントンD.C.が多かったが,最近は,米国のほぼ中央に位置するという地の利のためか,シカゴで開かれることが多く,本年もこの例にもれず,シカゴにて開催された.学会会場は,シカゴのダウンタウンの中央を横切り,ミシガン湖に注ぐシカゴ川の畔に位置する大型のホテル,Sheraton Chicago Hotel&Towersであった.年々,規模が大きくなるSIDであるが,このホテルは発表会場の広さ,客室数ともにまだまだ余裕が感じられた.5月初旬のシカゴは,日中の温度十数度Cで,概して過ごしやすかったが,学会期間中は,天気が変わりやすく,時折,通り雨にみまわれ,また,“windy city”とあだ名されるように風が強く,日陰では,少し肌寒く感じることもあった.
 本年のSIDも,例年同様,北米全土はもとより,ヨーロッパ諸国や日本,韓国などアジアの国々からも,基礎研究者,皮膚科臨床医を含めて,皮膚科学および皮膚生物学の分野の多数の研究者が集まり,総演題数は,839題に及んだ.毎年恒例の名誉ある招待講演には,William Montagna Lec—tureに,ロンドンからFiona M.Watt先生, Herrnan Beerman Lectureに,免疫学者のPhilippa Marrack先生, Naomi M.Kanof Lectureに, Brian L.Strom先生が選ばれ, Marrack先生は,T cellの機能について,基本から最先端までを分かりやすく話され,また,ペンシルバニア大学のStrom先生は,今までSIDでも比較的注目されることの少なかったDermatopharmaco—epidemiologyについて,その重要性を力説された.近年,皮膚の幹細胞は遺伝子治療,腫瘍発生のメカニズム等と関連して大きな注目を集めているが,William Montagna LectureのWatt先生は,幹細胞が今日のように注目される以前から,表皮の幹細胞の局在部位とその性質の解明,さらに,幹細胞集団の分離に取り組んでおられ,表皮の幹細胞の研究において,常に最先端を走っている研究者である.彼女の今回の講演は,これまでの研究成果を解りやすくまとめたものであり,con—focal microscopeのイメージを3次元的に再構築したものを,コンピュータのビデオプレイヤーを用いて回転させてみせるなど,いろいろと工夫されており,特に印象に残るものであった.Concur—rent Minisymposiumとしては,“Use of dendritic cells as im—munotherapeutic agents”,“Hair follicle morphogenesis/carcinogenesis”,“Apoptosis”,“Adhesion:components and mechanisms”,“Growth fac—tors/signal transduction”等が組まれたが,それぞれのテーマは,現在の皮膚科領域の研究のトレンドと捕らえ,また,将来の方向性を探るものであろう.一般演題は,Minisymposiumを含めて口演255題,ポスター584題であり,この内,最もインパクトのある演題としてGeneral Plenary Sessionに選ばれたものは,32題であった.その中には,signal transduction, dendritic cell,photodermatology, stem cell等基礎的な演題や,アトピー性皮膚炎の臨床研究など,多彩な内容の演題が含まれていたが,日本からも,大阪大学皮膚科の佐野先生,板見先生らのconditional gene targetingを用いた細胞内signa—ling molecule, Stat 3の機能の解析についての発表が,このGeneral Plenary Sessionに選ばれ,高い評価を受けていた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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