症例報告
Mycobacterium fortuitumによる皮膚非定型抗酸菌症の1例
著者:
今倉樹里子1
大類聡明1
松島弘典1
松浦千華1
所属機関:
1国保旭中央病院皮膚科
ページ範囲:P.345 - P.347
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88歳,男性.右手背から前腕に生じた紅色調で嚢腫を伴う局面を主訴に当科を受診した.病理組織では真皮内に膿瘍,多核巨細胞を混じ,中心壊死を伴わない類上皮細胞性肉芽腫を認めた.抗酸菌培養でMycobacterium fortuitumが分離された.通常量以下のセフジニル(CFDN)とレボフロキサシン(LVFX)の内服のみで治療し,急速な病変の縮小を認めたが,治療中に老衰死した.本症の発症には防御機構の破綻が関与するとされているが,本例においては高齢・外傷と,全身・局所のバリアが共に破綻しており,このため,巨大な病変となったものと考えられた.本症に対しては塩酸ミノサククリン(MINO)を中心とした抗菌剤の全身投与が行われているが,反応は良好とは言えず外科的切除が追加されることが多い.近年,非定型抗酸菌に対するニューキノロン系抗生剤の感受性が高いことが報告され,有効とする報告も増えているが,いまだに第1選択はMINOといわれている.本疾患の第1選択薬について再考の必要があると考える.