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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科53巻5号

1999年04月発行

文献概要

Derm.'99

「いじっていませんよね?」/「毎日,塗れば良くなります」

著者: 有川順子1 林伸和2

所属機関: 1東京女子医科大学皮膚科 2東京大学皮膚科

ページ範囲:P.58 - P.58

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 研修医を終えて外勤が始まり,再診を担当するようになった頃のこと.湿疹としか診断がつけられないような中年のおばさまが受診すると,とても気が重かった.診察が終わり,処方箋も書いて,お大事にと言う段になると,大抵が「私,もう長い間ここに通っているけど,なぜ治らないのかしら.内臓が悪いのかしら.」と始まるのである.薬は「ちゃんと塗ってるわよ.やるべきことはしているのにあんたはなぜ治せないの.」とおっしゃるのである.とにかく私は症状,治療を再度説明するしかなく,よっておばさまは,「まあ,あなたに言っても仕方ないわね」と勝ち誇ったようにお帰りになるのであった.
 最近,アトピー性皮膚炎(AD)の増悪因子の一つに掻破行動の異常が指摘されている.痒いからという理由以外に癖になっている行動異常である.ADの患者は掻破の認識に乏しいことが多々あるが,面白いことに手湿疹,角化症,汗疱などで来院する前述のおばさま方はあっさりと白状する.「なぜ治らない」に対して,「いじっていませんよね?」と聞くといろんな方法(手で鱗屑をむしって,紙やすりをかける人もいた),動機(新しい皮膚ができているか知りたくなる,むしるとすっきりして気持ちいい)があるものだと驚いてしまう.そして最後には皆さん恥ずかしそうにお帰りになるのだ.掻くことがすべての説明にならないまでも,掻破は治癒を遷延させている一つの要因であると思う.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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