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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科53巻5号

1999年04月発行

特集 最近のトピックス Clinical Dermatology 1999

2 皮膚疾患の病態

バイオフィルム(biofilm)

著者: 秋山尚範1 多田讓治1 荒田次郎1

所属機関: 1岡山大学医学部皮膚科学教室

ページ範囲:P.59 - P.63

文献概要

 バイオフィルムは自然界に普遍的に存在する微生物の生息圏で,抗菌薬療法による除菌に抵抗性であることが最大の特徴である.バイオフィルムから放出される浮遊菌(floating bacteria)による急性感染症状には通常の抗菌薬が有効である.しかし,バイオフィルム内の細菌(sessile bac—teria)は除菌できないため,抗菌薬がなくなると感染症は再燃性となる.皮膚科領域のバイオフィルム感染症として,皮膚挿入異物感染症,慢性膿皮症,staphylococcal botryomycosis,褥瘡感染症などがある.アトピー性皮膚炎など黄色ブドウ球菌が慢性的に存在する場合にもバイオフィルムが形成されている可能性が考えられる.黄色ブドウ球菌が厚いバイオフィルムを作るには血漿の存在が必須で,菌が産生するコアグラーゼによりフィブリンが形成される必要がある.皮膚科領域でバイオフィルムに有用な薬剤は酸化亜鉛,Sucrose,銀,酢酸などである.酸化亜鉛,sucroseは黄色ブドウ球菌によるフィブリン形成を抑制することにより,併用抗菌薬の抗菌力を増す.銀は浮遊菌よりむしろバイオフィルム内の細菌に殺菌的に作用する.酢酸は黄色ブドウ球菌によるフィブリン形成を抑制すると同時にバイオフィルムの破壊作用を有する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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