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Derm.'99
「せんせい,おとこ?おんな?」
著者: 山本明美1
所属機関: 1旭川医科大学皮膚科
ページ範囲:P.69 - P.69
文献購入ページに移動 診察室に入ってきたその少年は椅子に腰掛けることもなくじっと私の顔を見つめていた.私はカルテとお母さんの顔を交互にみながら主訴と現病歴をとっていた.「じゃあ,ボク,かゆいところ,見せてくれるかな?」と服をぬがせにかかった私に,その少年はたまりかねたように言った「ねえ,せんせい,おとこ?おんな?」.何のことだろう,と考える私.うろたえているお母さん.次の瞬間その質問の意味がわかり,私はカルテの上につっぷしてしまった.そうか,この好奇心旺盛な少年は今自分を診ている先生が男であるのか女であるのか判然としないので,こんなこと聞いてもいいのかな,と迷いつつもやっぱりどうしても知りたくなってしまったのだ.私は「ボク,そんなこといいから,ちょっと皮膚みせてよ.あ,これね.湿疹ですね,お母さん.軟膏をだしておきますから….」と手早く診察を終え,恐縮しているお母さんを解放してあげた.その後も2回同様の経験をした.いずれも相手は少年.そしてつい最近は総回診のとき,中年男性の入院患者に声をかけたところ(この2週くらい前に初診で彼を診察したのは私),「いやぁ〜,そんなに優しい声をかけられると,女の先生かと思ってしまうよ.」と言われた.彼は合併症の躁病が悪化しており,翌日精神科の閉鎖病棟に転科となった.念のために言うと私は女性である.静かにわいてくる疑問は,もしかすると私が性別不詳の先生だな,と思った患者さんは他にも沢山いて,ただその疑問を口にしなかっただけなのではないかということ.こんなことがおこるのは化粧をせず,装身具もつけず,髪も短いためだと思うが,同じようにしている女性医師数人に聞いてもこのような経験はないという.患者さんとのより良いコミュニケイションのために医師は性別もはっきり分かるようにしておくべきだろうか.
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