原著
指趾に生じた食道癌の皮膚転移
著者:
寺嶋里実1
檜垣祐子1
川島眞1
所属機関:
1東京女子医科大学皮膚科学教室
ページ範囲:P.399 - P.404
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指趾に生じた食道癌の皮膚転移2例を報告するとともに,本邦で過去10年間に報告された転移性皮膚癌について原発腫瘍と転移部位の関係を検討した.症例1:53歳,男性.下部食道癌に対し食道全摘出術,胸骨前胃再建術および腹部リンパ節郭清術を受けた.8か月後,右母趾腹に圧痛を伴う紅色結節が出現し,さらに左中指尖,右環指尖,左足底にも同様の結節が新生した.症例2:62歳,男性.下部食道癌に対し術前化学療法中,左示指尖に圧痛を伴う皮下結節が出現した.これらは組織学的に扁平上皮癌で,食道癌の皮膚転移と診断した.転移性皮膚癌の出現部位は原発腫瘍により異なる傾向がある.指趾の転移性皮膚癌は稀であり,自験例を含めこれまで本邦では12例の報告がある.食道癌の皮膚転移についての本邦報告例14例の部位は,11例が頭部・顔面であったほか,3例で指趾に生じており,指趾へ皮膚転移をきたす原発腫瘍として考慮されるべき悪性腫瘍であると考えた.