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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科53巻8号

1999年07月発行

雑誌目次

カラーアトラス

Acquired periungual fibrokeratoma

著者: 服部瑛

ページ範囲:P.590 - P.591

 患者 37歳,主婦
 初診 1995年9月18日

原著

皮膚科デジタル画像のコンピュータ入出力

著者: 田中勝

ページ範囲:P.593 - P.595

 皮膚科デジタル画像の成り立ちについて簡単に説明し,スライド作成や投稿用の写真に必要な画素数(ピクセル数)はどのくらいが適当であるか,例を挙げて説明した.130万画素のデジタルカメラで撮影した写真は学会スライド用に十分使えるレベルにあり,投稿用としても何とか使えるものと考えられた.手札サイズの投稿用写真には,最低でも1280×1000pixel以上が必要であるが,スライド用には800×600pixel程度あれば十分であろう.これをひとつの目安にすれば,コンピュータにやさしい(余分な負担をかけない)スライドづくりが可能となる.

今月の症例

生体腎移植患者にみられた重症水痘の1例

著者: 有川順子 ,   石黒直子 ,   川島眞 ,   石川暢夫

ページ範囲:P.597 - P.599

 29歳,男性にみられた生体腎移植1年後に生じた水痘を報告した.移植後免疫抑制剤を内服中で,初診時ほぼ全身に水疱,血疱,紫斑が多発しており,DICと肝不全を合併していた.水疱底の擦過細胞での螢光抗体直接法にてvaricel—la-zoster virus(VZV)抗原を確認後,抗ウイルス剤,免疫グロブリンの大量投与にて全身状態は軽快し,約1か月で皮疹は略治した.移植後の水痘の合併率は0.3〜4.7%と低率だが,VZVは他のヘルペスウイルスと比較して臓器侵襲が強いため重症化しやすい.早期診断,早期治療が救命に結びつくと考えられた.

症例報告

猫ひっかき病の1例

著者: 芳賀律子 ,   木下祐介 ,   下島博之 ,   飯田利博 ,   西山千秋 ,   稲庭義巳 ,   鈴木高祐

ページ範囲:P.601 - P.603

 21歳男性の血清学的検査により確定診断を得た猫ひっかき病の1例を報告する.初診2週間前,左膝に紅色丘疹を認め,その後左大腿内側に圧痛を伴う鳩卵大の皮下腫瘤が出現した.病理組織所見は,中心に壊死を伴う好中球性膿瘍とその周囲を組織球が取り囲むいわゆる炎症性肉芽腫像を呈し,Warthin-Starry銀染色にて膿瘍内に桿菌を証明した.血清学的にはBartonella hen—selaeに対するIgM抗体が陽性であった.以上により猫ひっかき病と確定診断した.自験例で施行した酵素抗体法による抗体価測定は今後本症の診断の確定に有用な検査法と考えられた.

腫瘤状を呈したbowenoid papulosisの1例

著者: 平田順子 ,   千葉直子 ,   石崎純子 ,   繁益弘志 ,   原田敬之

ページ範囲:P.605 - P.607

 75歳,男性.陰茎基部にカリフラワー状に隆起した腫瘤を認め,陰茎,陰嚢には多発性の黒褐色丘疹を認めた.この黒褐色丘疹は組織学的に軽度の細胞の配列の乱れと核の大小不同を認め,その臨床所見ならびに組織像よりbowenoidpapulosisと診断した.一方,隆起性の腫瘤は黒褐色丘疹が集簇し,その一部が上方に突出したような構築を示しており,組織学的に構成する腫瘍細胞はクロマチンに富み,核の大小不同,配列の不整を認めたが基底膜は保たれていた.すなわち,黒褐色丘疹と同様にBowen病類似の組織像であった.このことよりカリフラワー状の皮疹はbowenoid papulosisの皮疹が集簇し,その一部が腫瘤状に隆起したものと考えた.高齢者のbowenoid papulosisの報告は少なく,特にその自然経過を観察する機会が乏しいが,自験例は高齢者に発症し,長期間放置されていたため皮疹が徐々に成長し,特異な病像を呈した稀な例と考えられた.

インスリン依存性糖尿病に合併した色素性痒疹の1例

著者: 佐藤良博 ,   山本卓 ,   伊崎誠一 ,   北村啓次郎

ページ範囲:P.608 - P.610

 18歳女性に発症した色素性痒疹について報告した.初診約10日前より後頸部,前胸部および背部に瘙痒を伴う網目状に配列する紅色丘疹と色素沈着が出現した.皮疹出現の数日前より口渇,多飲,多尿が認められ,当院内科にて高血糖,尿中ケトン体陽性,尿中C-ペプチド低下によりインスリン依存性糖尿病と診断された.皮疹部位の病理組織像は基底層の軽度の液状変性と真皮血管周囲の小円形細胞浸潤を示した.過去に報告された糖尿病に合併した色素性痒疹11例中8例がインスリン依存性糖尿病に伴うものであり,6例がケトーシスを示していた.平均年齢は23.9歳であり,男女比は約1:1であった.インスリンを用いた治療により血糖は改善し,それと共に皮疹も改善したものが7例であった.

Episodic angioedema associated with eosinophiliaの1例

著者: 松尾葉子 ,   木花光

ページ範囲:P.611 - P.614

 28歳女性のepisodic angioedema witheosinophiliaの1例を報告した.浮腫は再発性で,組織学的に皮下織の一部に肉芽腫の形成が見られた.眼囲には鱗屑を付着する紅斑を認めたが,これは他の症状の消失とともに軽快した.本症の海外15例と本邦46例を比較検討したところ,男女比,浮腫の出現部位,ステロイドを治療するに要するか否かなど臨床像に著明な差が認められた.経過においても海外例では全例再発があるのに比し本邦例で再発したのは自験例を含め4例のみであった.また,自験例で見られた鱗屑を付着する紅斑は過去に記載されていなかった.

塩酸ヒドロキシジンによる膿疱型薬疹

著者: 生越まち子 ,   堀川達弥 ,   市橋正光

ページ範囲:P.615 - P.617

 塩酸ヒドロキシジン(アタラックス®)による膿疱型薬疹の1例を報告した.発熱を伴うびまん性の浮腫性紅斑と粟粒大までの膿疱を生じ,組織像では好中球よりなる角層下膿疱を認めた.Beylotらのいうacute generalized exanthematic pustulosis(AGEP)に合致するものと考えた.塩酸ヒドロキシジンは貼布試験で陽性を示した.

悪性リンパ腫の化学療法中に生じたacute generalized exanthematous pustulosisの1例

著者: 安川香菜 ,   小野塚貴 ,   加藤直子 ,   畑江芳郎

ページ範囲:P.618 - P.621

 20歳,男性.悪性リンパ腫の化学療法として,1996年11月にシタラビン(AraC)とエトポシド(VP16)を3日間投与したところ,2日目から高熱と全身の紅斑・膿疱が出現し,薬剤終了後は無治療にて自然治癒した.組織学的には表皮内に好中球・好酸球からなる膿疱を認めた.その後も同様の治療のたびに,発熱と左方移動を伴った白血球増加とともに全身に紅斑.膿疱力・出現しては速やかに改善している.以上の所見から1980年にBeylotらが提唱したacute general—ized exanthematous pustulosis(AGEP)と診断した.AGEPの原因はほとんどが薬剤で特に抗生剤とジルチアゼムでの報告が多い.本症例の原因はAraCとVP 16が考えられたが,現在までのところ抗腫瘍剤での報告はない.

自殺企図により生じた灯油皮膚炎の2例

著者: 平山隆士 ,   赤坂俊英

ページ範囲:P.622 - P.624

 48歳女性および58歳女性の自殺企図患者に生じた灯油皮膚炎の2例を報告した.病理組織学的には灯油による一次刺激性皮膚炎が示唆された.2例とも肛囲および智部に強い紅斑を認めたことは興味深い臨床所見であった.肛囲および臀部の皮疹は,衣服に付着した灯油によって生じただけでなく,自殺企図により飲用した灯油が消化管から便中に排泄され皮膚炎を起こしたものと考えられた.

肛門周囲膿瘍の治療中に非イオン性造影剤の使用で重篤な血小板減少を呈した1例

著者: 安川香菜 ,   加藤直子 ,   木村久美子 ,   三国主税

ページ範囲:P.625 - P.628

 53歳,女性.再生不良性貧血のためプレドニゾロン(PSL)10mg内服中であった.1998年3月から臀部・肛門周囲に熱感,発赤が出現し肛門周囲膿瘍と診断され,抗生物質の点滴治療を目的として入院した.検査にてCRP値の異常高値を認め,腹腔内膿瘍の存在も疑われたため,造影CTを施行した.翌日から肝機能異常が出現し,翌々日には点状紫斑,口腔内出血が認められた.血小板数は9000/μlに減少した.原因として非イオン性造影剤のイオヘキソールが疑われた.4日後には白血球と赤血球も減少し始めた.骨髄では赤血球を貧食するマクロファージが認められた.PSLを20mgに増量し,肝庇護剤の投与と血小板輸血を行い,10日後には肝機能,末梢血に改善が認められた.イオヘキソールについてリンパ球芽球化試験を行ったが陰性であった.

グリセオフルビンが著効した環状肥大性扁平苔癬の1例

著者: 井口牧子 ,   工藤和浩 ,   堀内令久 ,   青山浩明 ,   照井正 ,   田上八朗

ページ範囲:P.630 - P.632

 45歳,女性.左足外側に生じ,一見環状肉芽腫を思わせる形態をとりながら,厚い痂皮状鱗屑が固着した肥大性扁平苔癬の症例で,グリセオフルビン内服が著効した.初発疹の臨床像が特異なため診断に苦慮した点,およびグリセオフルビンが奏効した点で興味深い症例であり,ここに報告した.

Pseudocyst of the auricleの2例

著者: 大塚俊 ,   山崎雙次

ページ範囲:P.634 - P.636

 症例1は57歳,男性.2週間前より誘因なく左対耳輪脚部が腫脹.穿刺にて黄褐色の漿液性内容液が得られ,生化学的にアルブミンに富み,LDHが高値であった.生検にて嚢腫壁最内側に変性軟骨を認めた.症例2は51歳,男性.2週間前,左対耳輪脚部上部の自覚症状のない結節に気づいた.穿刺にて赤褐色の粘液性内容液が得られた.2例ともpseudocyst of the auricleと診断し,ステロイドの嚢腫内注入をしたところ,良好な結果が得られた.ステロイド注入は比較的患者の負担も少なく,ぜひ試みてよい治療と思われる.

外傷後に生じたaneurysmal fibrous histiocytoma

著者: 福田英嗣 ,   川上民裕 ,   斉藤隆三

ページ範囲:P.637 - P.639

 22歳男性の外傷後に生じたaneurysmalfibrous histiocytomaの1例を報告した.約1年前,転倒により左大腿を打撲し,出血した.以後,同部位に結節が出現し,徐々に増大した.左大腿屈側にドーム状に隆起した拇指頭大,弾性硬の暗紫色結節があり,圧痛を伴う.組織学的には,真皮から皮下脂肪織に被膜のない稠密な組織球様細胞を主体とした腫瘍塊を認める.中央やや外側に大きな空隙,その周囲に大小様々な裂隙があり周囲にヘモジデリン沈着をみる.空隙辺縁には血管内皮細胞を認めない.本症の本邦報告例を統計的に考察するとともに,その発生機序,鑑別疾患についても言及した.

外傷性顔面動脈瘤の1例

著者: 佐藤典子 ,   安藤英樹

ページ範囲:P.641 - P.643

 50歳,男性.2か月前,道路脇に転倒し左下顎部にガラス片を刺した.自分で圧迫止血し放置していたところ,数日後から同部が腫れてピンポン玉大になり,そのまま持続しているため来院した.触診で拍動があり,顎下部の外頸動脈の圧迫で止まるのに気づいた.CT,血管造影で顔面動脈に生じた動脈瘤と確診し,動脈瘤の入り口で動脈結紮術施行.組織学的に瘤壁に正常動脈壁構造を認めず,仮性動脈瘤であった.下顎部,頸部には多彩な病因による腫瘤を認めるが,本症も鑑別すべき疾患の一つに入れ,安易な穿刺,生検は避け,画像診断など生検の前に行うべき検査を行い,慎重に対処する必要があると考える.

インターフェロンγが奏効した肺病変を伴った皮膚T細胞リンパ腫

著者: 三好研 ,   中島英貴 ,   小玉肇

ページ範囲:P.646 - P.648

 74歳,女性.体幹,四肢に母指頭大までの紅斑が散在しており,右下顎部には中央部に潰瘍を有するメガネレンズ大の台地状に隆起する腫瘤を認め,周辺には浸潤を触れる紅斑を伴っていた.紅斑部にはPautrier微小膿瘍がみられ,腫瘤にはCD3およびCD4陽性の異型リンパ球が稠密に浸潤していた.インターフェロンγ(IFN-γ)投与により皮疹および両肺野への浸潤と考えた結節も消退した.腫瘤を形成したり他臓器浸潤のみられる皮膚T細胞リンパ腫に対してもIFN-γが有効である場合があると考えた.IFN-γによる治療効果には用量依存性があり,実際の治療には工夫を要する.

頭部に生じたeccrine hidrocystoma(Smith型)

著者: 伊津野緑 ,   川上民裕 ,   斉藤隆三

ページ範囲:P.649 - P.651

 68歳,女性.初診3か月前に後頭部の小結節に気づいた.臨床的には直径5mm,弾性やや軟,下床との可動性のある皮下結節で被覆表皮に著変なく圧痛等の自覚症状はない.組織学的には,皮下脂肪織内に,数層の壁細胞よりなる嚢腫を認め,周囲にエクリン汗器官が散見される.壁細胞は好酸性胞体と楕円形の核を有しS−100蛋白染色にて陽性を呈する.以上の所見より,ec—crine hidrocystoma(Smith型)と診断した.自験例を含む本邦報告112例を集計し,統計的考察を加えるとともに,本症の組織発生,単発型(Smith型)および多発型(Robinson型)の相違についても言及した.

上腹部に生じたsebaceous folliculomaの1例

著者: 松崎康司 ,   秋田尚見 ,   野村和夫

ページ範囲:P.652 - P.654

 19歳,女性.初診5か月前上腹部に皮下結節が出現した.病理組織学的に真皮内の角質嚢腫様の腫瘍とその周囲の線維性組織の増生を認めた.嚢腫壁からいくつもの細胞索が放射状に枝分かれして,その末端には脂腺や一部未熟な毛包様構造もみられた.以上より,sebaceous follic—ulomaと診断した.

被髪頭部発生の表在型基底細胞上皮腫の1例

著者: 高濱英人 ,   森田誠 ,   伊東優 ,   碇優子

ページ範囲:P.655 - P.657

 基底細胞上皮腫は皮膚上皮性腫瘍で最も多く遭遇する腫瘍であるが,表在型基底細胞上皮腫は比較的稀である.我々は63歳女性の被髪頭部に発生した表在型基底細胞上皮腫の1例を経験した.調べえた限り本邦で皮膚科領域において過去に報告された被髪頭部発生の表在型基底細胞上皮腫は自験例が第6例目であり,稀であった.腫瘍の大きさは過去の報告中最小径の症例であった.当科で過去22年間に経験した表在型基底細胞上皮腫の集計を含め若干の文献的検討を行った.

肛囲に発生した基底細胞上皮腫の1例

著者: 濱田尚宏 ,   名嘉眞武國 ,   橋本隆

ページ範囲:P.659 - P.661

 74歳,女性.約5年前に肛囲に黒色丘疹が出現し,放置したが徐々に増大した.初診時肛囲尾骨部方向に黒色濃淡を示し,一部潰瘍を形成する境界明瞭な扁平隆起性腫瘤を認め,病理組織学的に充実型の基底細胞上皮腫と診断した.我々が調べ得た限り肛囲に生じた基底細胞上皮腫の本邦報告は1例のみで非常に稀と思われた.当科においても過去21年間で経験した基底細胞上皮腫412例のうち肛囲に発生したものは自験例を含め2例のみで,臨床像は結節潰瘍型,組織像は充実型を示した.

下顎部有棘細胞癌に伴ったBazex症候群の1例

著者: 板井恒二 ,   鳴海博美 ,   村井孝弥 ,   馬場貴子 ,   野村和夫 ,   橋本功 ,   木村博人

ページ範囲:P.662 - P.664

 37歳,男性.約2年前より左外眼角部に皮疹が出現し,徐々に手足,前胸部に拡大した.初診時,顔面,頸部には鱗屑を伴う紫紅色斑を,手指,足趾には乾癬様の角化性紅斑をみた.既往歴として下口唇有棘細胞癌(SCC)の手術歴があったため,Bazex症候群を疑い精査した.頸部皮疹の組織学的検索で過角化,表皮肥厚と基底層の液状変性,真皮上層の帯状細胞浸潤を認めた.頭頸部のCT,MRIにて右下顎骨の破壊像とその外側に腫瘤が認められ,同部の生検にて高分化型のSCCと判明した.当院歯科口腔外科にて腫瘍摘出後,比較的速やかに皮疹の軽快をみた.Bazex症候群は,上部の気道,消化管系原発SCCに併発する角化性皮疹として報告された.本邦ではこれまでに12例の報告があるが,併発した悪性腫瘍の種類と部位がBazexの原著に合致するものは少なく,自験例はほぼ定型的と思われた.

結節性硬化症の1例

著者: 盛田克子 ,   星野佳子 ,   青木信彦

ページ範囲:P.666 - P.667

 49歳,男性.ホームレス.家族歴,既往歴,詳細不明.足趾結節の疼痛を主訴に来院.母指頭大の足趾結節を切除し,組織学的に血管線維腫と確認した.古典的な3徴である顔面の顕著な脂腺腫,知能発育障害,痙攣発作の既往あり,結節性硬化症と診断した.全身検索で,脳室周囲の石灰化および巨大な腎腫瘍を認めた.眼,肺,心症状の合併症は確認されていない.

連載

Clinical Exercises・76—出題と解答

著者: 熊切正信

ページ範囲:P.661 - P.661

151
表皮の偽癌性増殖をみたとき考える疾患は,次のうちどれか.
①黒色分芽菌症

Practical English for Busy Physicians・67

著者:

ページ範囲:P.665 - P.665

MD. とDr. の違い,PCwordsについて,新専門医誕生
 ここアメリカでは誰でも簡単に特別の専門教育なしでもドクターになれます.少々びっくりされていることでしょう.実は車の修理家は自分のことを“Foreign Car Doctor”と,また自然食品店でビタミンを売っている人は“Doctor of Naturopathy/自然療法主義のドクター”とも広告に出せるわけです.しかしながら“M. D. ”という表現は,“Medical Doctor”のことであり,医者に対してだけ使用できます.そこで次回から医者に手紙を出されるとき,宛名ではDr. James JonesよりもJames Jones M. D. とされてはいかがでしょうか.また学会等で名札などを作るときも同じくJames Jones M. D. とされるようお願い致します.
 更にもう少しPC(political correct)についてお話ししましょう.あなたが雑誌の編集者やどこかの会社の人事課宛に手紙を出すとしましょう.そのとき相手がはっきり男性なのか女性なのか知らない場合は“Dear Sir or Madam”または“Dear Sir/Madam”と標記して下さい.アメリカではこういったPC問題がやかましくなっており,私は既に“Dear Gentleperson”というのを見たことがあります.“gentleladies, gentlewomen”というのもありますが,これらを目にするのはまだ大変珍しいです.ここで付け加えておきますが“Gentleperson”は正式に英語と認められたわけではありませんので使用されるときには十分に注意して下さい.ただしこういったPC問題に留意していただきたいと思います.

治療

骨露出部を双茎皮弁で被覆した指背のIII度熱傷

著者: 高橋和宏 ,   芳賀貴裕 ,   照井正

ページ範囲:P.670 - P.671

 65歳,女性.山火事の消火中に右手にIII度熱傷を受傷した.外用療法,分層植皮術による治療後に残存した右II〜V指背のDIP〜PIP関節にかかる骨露出部に対し双茎皮弁を用い被覆した.双茎皮弁は自験例のような骨露出部の被覆に際し,整容的にもすぐれる比較的容易な皮弁である.

印象記

「第98回日本皮膚科学会総会」印象記—総会で学んだ「これ以上皮膚科から境界領域疾患を出さないために,今皮膚科医が何をなすべきか」について

著者: 相場節也

ページ範囲:P.672 - P.675

 第98回日本皮膚科学会総会は,桜の花が満開に咲く東京で,4月9日から11日までの3日間を会期に行われた.会頭は東京慈恵会医科大学新村眞人教授,事務局長は上出良一助教授,会場は東京国際フォーラムであった.学会は,総会の後,恒例の会頭講演で始まった.今回の講演内容は,レックリングハウゼン病に関するもので,新村教授の多年にわたる臨床経験の中から貴重な症例の呈示とそれから得られたいくつかの臨床的新所見が示された.私は,その講演で,レックリングハウゼン病という現時点では不治の病といわざるを得ない病気を持った多数(1,500症例以上)の患者,その家族と接してこられた新村先生の苦悩の一部をかいま見た思いがした.特に,先生が,不安におののくレックリングハウゼン病の患者の家族に「何も起こらん,何も起こらん」といって何とか慰めているとのお話には,臨床の原点をみる思いがして感銘を受けた.
 今年の皆見賞は,京都府立医大の松木正人先生のProceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 95(3):1044-9に掲載されたDefective stratum conneum and early neonatal death in mice lacking the gene for trans—glutaminase 1(keratinocyte transglutalninase)の論文であった.ノックアウトマウスという最先端の手法を用いて皮膚のtrans—glutaminase 1の欠損したマウスを作成したところ,lamellar ichthyosisに近い臨床像が形成されたという報告であった.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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