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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科54巻1号

2000年01月発行

雑誌目次

カラーアトラス

Aneurysmal fibrous histiocytoma of the skin

著者: 木花光

ページ範囲:P.6 - P.7

 患者 35歳,男性
 初診 1996年4月25日

原著

タコ咬傷の2例および日本におけるヒョウモンダコ属による咬症の検討

著者: 伊東秀記 ,   吉葉繁雄 ,   本田まりこ ,   新村眞人

ページ範囲:P.9 - P.13

 海洋レジャー中にサメハダテナガダコと推定されるタコに咬まれ,後に難治性潰瘍を生じた2例の患者を経験した.マリンスポーツの盛んな現代,自験例のような海洋レジャー中の海洋生物による偶発的バイオハザード事故は増加している.このような場合,患者は海で何かに咬刺されたと訴えて皮膚科を受診することが多く,我々皮膚科医にもある程度の海洋咬刺毒生物に対する知識や再発防止のための正しい指導が必要である.

今月の症例

有棘顎口虫によるcreeping diseaseの1例

著者: 西川武二 ,   稲田めぐみ ,   高理佳 ,   赤尾信明

ページ範囲:P.14 - P.17

 46歳,女性.初診の2週間前から躯幹に軽度の痒みと違和感を伴う爬行性線状皮疹が出現した.好酸球数,IgE値は正常.8種類の寄生虫抗原(宮崎肺吸虫,ウエステルマン肺吸虫,アニサキス1型幼虫,ブタ蛔虫,イヌ糸状虫,イヌ蛔虫,ネコ蛔虫,マンソン裂頭条虫プレロセルコイド)を用いたELISAはいずれも陰性,ドロレス顎口虫抗原を用いたELISA,寒天ゲル内二重免疫拡散法も陰性であった.線状皮疹の終点とその遠方を含めて外科的に切除後,皮疹と自覚症状は消失した.脂肪組織内に虫体断片があり,腸管断面の形態より有棘顎口虫の幼虫と同定した.摂食歴とあわせ,自験例はウナギの肝吸いから感染した可能性が高いと考えられた.今後creeping-diseaseの感染源としてウナギの生食あるいは肝吸いも念頭におく必要があると思われる.

症例報告

ホタルイカ生食後に生じた旋尾線虫幼虫によるcreeping eruptionの1例

著者: 高橋毅法 ,   日野治子 ,   安藤勝彦

ページ範囲:P.18 - P.20

 71歳,男性.初診の1週間前,臍の直上に瘙痒を伴う線状の紅斑に気づき,前日より右腹部に新たな線状紅斑が生じた.生検による組織検査で虫体が検出され,その形態から顎口虫以外の旋尾線虫と診断された.感染はホタルイカの生食によると考えられる.生検後,皮疹は消失し再発を認めない.感染源となり得るホタルイカの処理条件など,最近の研究を含めた文献的考察を加えて報告した.

抗Dsg 1 IgA抗体を有し,膿疱形成を認めた尋常性/落葉状天疱瘡の1例

著者: 布袋祐子 ,   石井健 ,   畑康樹 ,   大畑恵之 ,   天谷雅行 ,   清水宏 ,   西川武二

ページ範囲:P.21 - P.24

 落葉状天疱瘡から尋常性天疱瘡に移行した患者において抗Dsg 1 IgA抗体を有し,膿疱形成を伴った症例を経験したのでここに報告する.症例は35歳,男性.臨床的に躯幹および四肢に水疱,びらん,環状紅斑に加え膿疱形成を認め,天疱瘡としては非典型的な臨床像を呈した.病理組織学的に角層下および基底層直上に好中球を多数含む膿疱形成を認め,直接・間接蛍光抗体法にて表皮細胞間にIgGおよびIgAの反応性も認めた.本症例の血中抗Dsg 1 IgA抗体はELISA法にて初診時より陽性であることが確認された.また間接蛍光抗体法におけるIgAの反応性は組換えDsg 1と前処理することにより完全に吸収除去され,Dsg 1以外の表皮細胞表面分子に対するIgA抗体は存在しないことが確認された.本症例のごとく臨床上膿疱形成を認め,非典型的な臨床を呈する際にはIgGのみならずIgA自己抗体の存在も検討することが必要と考えられた.

難治性皮膚潰瘍と肺線維症を伴った悪性関節リウマチ

著者: 石澤俊幸 ,   阿部優子 ,   大山正俊 ,   小関伸 ,   三橋善比古 ,   近藤慈夫 ,   佐藤潤 ,   片桐美之

ページ範囲:P.25 - P.27

 61歳女性に生じた難治性皮膚潰瘍と肺線維症を伴った悪性関節リウマチを報告した.患者は18年前より慢性関節リウマチにて加療中で,肺線維症で入院加療を受けたこともあった.初診の約1年前に両下肢に潰瘍が生じたが自然治癒した.しかし初診の約3か月前より再び,両下肢に潰瘍が生じ増大した.入院時検査にてリウマトイド因子高値,肺線維症がみられ,組織学的に閉塞性血管炎がみられたことより悪性関節リウマチと診断した.入院74日目,突然呼吸困難を生じ,肺線維症の急性増悪にて内科で加療を受けたが永眠された.本症例では呼吸困難が生じる直前に,CRP,血沈,LDHの上昇をみており,慢性に経過している肺線維症の活動性の評価判定に有用と思われた.

アスピリンが奏効したnecrobiosis lipoidicaの1例

著者: 小松弘美 ,   照井正 ,   田上八朗

ページ範囲:P.30 - P.32

 55歳,女性.約15年前から両下腿に紅色皮疹が出現し,数が増え,また大きさも拡大してきた.臨床像,組織所見からnecrobiosis lipoid—icaと診断した.糖負荷試験で境界型糖尿病を,甲状腺の精査で慢性甲状腺炎を確認しえた.本疾患の発症にmicroangiopathyが関与しているとの理解に立って,抗血小板療法が有効との報告がある.自験例でもアスピリン投与で皮疹が著明に軽快した.

多毛,斑状強皮症,Sjögren症候群を合併した原発性胆汁性肝硬変の1例

著者: 斎藤昌孝 ,   木村佳史 ,   木花いづみ ,   荻原通 ,   栗原誠一

ページ範囲:P.34 - P.36

 症例は47歳,女性.約5年前より顔面,躯幹を中心に多毛が見られ,頸部には両側性に斑状強皮症を認めた.多毛の原因検索中に胆道系酵素の上昇,抗ミトコンドリア抗体陽性,肝脾厘を認めたため,原発性胆汁性肝硬変と診断した.また,シルマー試験,ローズベンガル試験,唾液腺シンチグラフィーの結果からSjögren症候群の合併も判明した.多毛の原因は不明であるが,ウルソデスオキシコール酸の内服で軽快傾向にあり,原発性胆汁性肝硬変との関連が示唆された.

有機溶媒との関連が疑われたgeneralized morpheaの1例

著者: 増田陽子 ,   伊藤まゆみ

ページ範囲:P.38 - P.40

 62歳,男性.約1年前から体幹部に皮膚硬化が出現し,上肢,下肢へと拡大した.組織学的に,汗腺下方の脂肪織まで膠原線維の密な増生を確認し,generalized morpheaと診断した.自験例は約40年間有機溶媒との接触歴があり,何らかの関連性が示唆される.有機溶媒との関連については,generalized morphea-like PSSという,PSSの一型があり,両疾患を文献的に考察した.

ステロイド投与と自己血清点眼が奏効したStevens-Johnson症候群の1例

著者: 大山学 ,   村木良一 ,   山田恵子 ,   坪内由里

ページ範囲:P.41 - P.43

 Stevens-Johnson症候群の25歳女性例を報告した.感冒様症状のために総合感冒薬内服後,発熱,咽頭痛とともに,顔面,胸部に紅斑,口腔内びらんが生じた.臨床像,組織所見よりStevens-Johnson症候群と診断した.ステロイドの全身投与,中心静脈栄養による輸液管理により皮疹および全身状態は軽快したが,眼症状が残存した.角膜穿孔の可能性が生じたため自己血清点眼を施行し回復をみた.発症原因としては総合感冒薬が疑われたが,成分パッチテスト,DLSTともに陰性であった.本症の治療につき若干の考察を加え報告する.

C型肝炎を合併しグリチルリチン製剤で改善をみた扁平苔癬の1例

著者: 高木祐子 ,   澤田俊一 ,   新村眞人 ,   高木一郎

ページ範囲:P.45 - P.48

 50歳,女性.十二指腸潰瘍による頻回の輸血歴があり,一時的な肝障害を併発したがその後治療は受けていない.初診の1か月前より前腕に瘙痒を伴う直径5mm大の淡紅色丘疹が出現し徐々に体幹,四肢に拡大した.頭部,顔面を除く広範囲に丘疹が多発しているが,口腔粘膜,爪甲に変化はなかった.病組織検査で典型的な扁平苔癬の像を示した.臨床検査では貧血,軽度の肝機能障害および抗C型肝炎ウイルス抗体陽性所見があり,慢性C型肝炎と診断した.ステロイドの内服および外用療法を行ったが,皮疹の明らかな改善は認められず,グリチルリチン120mg,週6日の投与を開始した.7週後の33回目投与産時に,皮疹および病理組織像に改善が認められ,同時にAST, ALT値の低下もみられた.慢性C型肝炎と口腔扁平苔癬の合併は多数の報告例により知られているが,皮膚のみの扁平苔癬の発症原因の一つとしても慢性C型肝炎が関与していると考えられた.

C型肝炎ウイルス陽性患者に伴ったクリオグロブリン血症性紫斑

著者: 根岸泉 ,   岡田克之 ,   秋元幸子 ,   大西一徳 ,   石川治 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.50 - P.52

 C型肝炎ウイルス陽性患者に認められたクリオグロブリン血症性紫斑を報告した.症例は67歳男性で,両側下腿から足背にかけて樹枝状褐色色素沈着と点状の紫斑を認めた.Type IIクリオグロブリン陽性であり,混合性クリオグロブリン血症を背景にして生じた紫斑と考えた.

1年の経過で消失をみた先天性血管拡張性大理石様皮斑の1例

著者: 川田寿里 ,   石川明道 ,   山田裕道

ページ範囲:P.54 - P.56

 生下時より1年間にわたり経過観察を行った先天性血管拡張性大理石様皮斑の男児例を報告した.皮斑はほぼ全身にみられたが生後3か月より色調の消退が始まり,6か月で痕跡的にまで減弱し,1年で完全に消失するに至った.合併奇形としては右側脳室の拡大を認めたが脳神経学的検査で異常なく,満1歳の現在まで年齢相応の成長,発育がみられている.

高齢者の左手中指に生じた爪下外骨腫例

著者: 寺井典子 ,   小池美佳 ,   岩原邦夫

ページ範囲:P.58 - P.60

 64歳,男性.左手中指尖尺側に生じた爪下外骨腫の1例を経験した.本症例が高齢者の左手中指に生じることは稀で,かつ外骨髄の典型的な臨床症状である,骨様の硬さや爪の変形を伴わなかったため,他の良性腫瘍との鑑別が必要で,X線撮影が診断上有用であった.

Apocrine cystadenomaの3例

著者: 津田毅彦 ,   梅林芳弘

ページ範囲:P.61 - P.63

 症例1は56歳,男性で,右下眼瞼外側の結節.症例2は54歳,女性で,右下眼瞼外側の結節.症例3は53歳,男性で,左後頭部の結節.病理組織学的には3例とも真皮内に嚢腫があり,壁を構成する高円柱状の細胞に断頭分泌像を認めた.抗ケラチンモノクローナル抗体の染色結果から,症例1の上部は汗管に,下部は汗管と分泌部の移行部に,症例2は移行部に,症例3は主に分泌部に分化していると考えられた.Apocrine cystadenomaのアポクリン汗腺各部への分化の割合は症例によって異なることが示された.

上口唇に生じたhidradenoma papilliferumの1例

著者: 菊池麻紀 ,   島貫洋子 ,   繁益弘志 ,   原田敬之

ページ範囲:P.65 - P.68

 71歳,女性.約10年前より,右上口唇に硬結が出現し,漸次,ドーム状に隆起してきた.初診時径14×14mmの皮下結節で,表面は平滑で灰青色調を呈し,弾性やや硬に触れた.自覚症状はない.表皮嚢腫の疑いで単純切除した.病理組織学的に腫瘍細胞は内腔を形成する円柱状細胞とその外側の立方形細胞とからなる.円柱状細胞では断頭分泌像が認められた.免疫組織化学的に,S−100蛋白が一部の立方形細胞,CEAは一部の内腔面,GCDFP−15は大部分の円柱状細胞と腺腔内にそれぞれ陽性を示した.以上の所見より,上口唇に生じたhidradenoma papilliferumと診断した.現在までの本邦皮膚科領域における報告例は28例で,そのほとんどが外陰部の発生例である.顔面に生じた例は自験例を含め4例であった.国内外の既報告例をもとに本腫瘍の免疫組織化学的所見をまとめ,若干の考察を加えた.

頭部の脂腺母斑に生じたdesmoplastic trichilemmomaの1例

著者: 島貫洋子 ,   伊集院明子 ,   栗村理恵 ,   石崎純子 ,   繁益弘志 ,   原田敬之

ページ範囲:P.70 - P.72

 Desmoplastic trichilemmomaは1990年にtrichilemmomaの特異型としてHuntらが提唱した病名であるが,国内外で自験例を含めて60例の報告があった.今回われわれは,42歳男性の頭部の脂腺母斑の一部に生じた症例を経験した.臨床所見は淡紅色の結節で径11×10mm,広基有茎性,表面粗槌,一部乳頭腫状で,自覚症状は認めない.病理組織学的には腫瘍細胞索が腫瘍内の増生した結合織内に入り込む像を呈し,desmoplastic trichilemmomaと診断した.当科で経験した外毛根鞘性腫瘍31個につき,間質の反応について検討した.

近距離被爆者に認めた成人T細胞白血病/リンパ腫の1例

著者: 宮本朋子 ,   羽白誠 ,   園田早苗 ,   足立準 ,   奥村睦子

ページ範囲:P.74 - P.76

 82歳,女性.鹿児島県出身.既往歴として1945年8月6日,広島市で爆心地から380mという近距離での被爆があった.1995年4月頃より右手背および項部に自覚症状を伴わない結節を認めていた.右手背の病理組織学的所見では真皮に異型性を伴う腫瘍細胞の密な浸潤を認めた.血液検査で抗HTLV−1抗体陽性であった.サザンプロット法にて腫瘍組織から抽出したDNAにHTLV−1 provirusの腫瘍細胞DNAへのモノクローナルな組み込み増殖を認めた.被爆と成人T細胞白血病/リンパ腫発症の関連性について若干の文献的考察を加えて報告する.

腎細胞癌の皮膚転移の1例

著者: 柴﨑嘉子 ,   中川俊文 ,   高岩堯

ページ範囲:P.78 - P.80

 症例は63歳の男性.1987年に,左腎癌根治術を受けた.8年後,左腋窩に皮膚転移が出現した.続いて,肺,腎,脳に転移し,それぞれを切除した.インターフェロン-αなどを投与されたが,皮膚転移出現14か月後に呼吸不全のため死亡した.腎細胞癌の皮膚転移は比較的稀であるが,腎癌根治術後5年以上の長期間を経てみられることも少なくないので注意が必要である.また,転移出現後の経過も種々であるので,皮膚転移巣も可能な限り治療するのが望ましい.

指尖部への転移を来した腎細胞癌の1例

著者: 武藤美香 ,   福澤正男 ,   塩原順子 ,   新倉冬子 ,   小口真司 ,   斎田俊明

ページ範囲:P.81 - P.83

 49歳,男性.4年前に腎細胞癌にて右腎を摘出した.2年後に,肺,骨,脳転移が出現し,放射線療法などの治療を受けていた.当科初診時左第4指爪甲下から指尖部にかけて5.5×3.5×3.0mmの易出血性紅褐色結節を認めた.組織学的には胞体が淡明な細胞と胞体が好酸性で微細顆粒状を呈する2種類の異型細胞が認められた.いずれも免疫組織化学的に腎細胞癌の腫瘍マーカーであるNCL-RCC抗体にて陽性で,腎細胞癌の指尖部皮膚転移と診断した.腎細胞癌の転移を含む転移性皮膚腫瘍について文献的考察を加えた.

Microsporum canisによるケルスス禿瘡の成人親子例

著者: 西村百合香 ,   高橋泰英

ページ範囲:P.84 - P.86

 症例1;81歳,女性.初診10か月前に背部に皮疹を生じ,某医にて体部白癬と診断され,抗真菌剤の外用でまもなく消退した.同時期に飼い猫も真菌感染と診断された.半年前より頭部,四肢,体幹に瘙痒性皮疹が出現し,ステロイドの外用で頭部皮疹が悪化したため当科を受診した.頭頂部および後頭部に膿疱,痂皮,鱗屑を伴う紅色脱毛局面を認め,病毛の直接検鏡,培養所見より原因菌はMicrosporum canisと同定した.グリセオフルビン内服を8週間行い皮疹は治癒した.症例2;50歳,女性.症例1と同居する娘.初診3週間前より,頭部に瘙痒を伴う皮疹が出現し,ステロイドの外用で悪化したため,当科を受診した.前頭部,頭頂部に膿疱,痂皮,鱗屑を伴う紅色局面を認めた.病毛の直接検鏡で菌要素を認め,原因菌はM.canisと同定した.イトラコナゾール内服を6週間行い,皮疹は治癒した.

連載

Clinical Exercises・82—出題と解答

著者: 多田讓治

ページ範囲:P.60 - P.60

163
ハンセン病について正しいものはどれか.
①眼は侵されない.

NOTIES FROM THE RICE COUNTRY・1【新連載】

著者:

ページ範囲:P.87 - P.87

西暦2000年を迎えて
 まずはじめに西暦2000年を迎えるに当たりまして皆様にとって良い年となりますようお祈り申し上げます.またY2K問題もなく平穏な年をお迎え下さい.ここで新しい世紀を迎えるのにふさわしくこのコーナーも衣替えをすることになりました.もうちょっとリラックスして堅苦しい文法は忘れ,もっと楽しいこと,例えば皮膚科医の現状やコンピュータに関する情報などをお伝えしていきたいと思いますのでよろしくお願い致します.皆さんからも何かご要望がありましたらぜひお知らせ下さい.
 早速こちらでの医療の最新情報とまいりましょう.アメリカでは医療と金銭とが密接な関係にあり大産業となっています.そんな中,最近New York Times新聞で病院の経営コンサルト会社についての記事がありましたのでご紹介しましょう.これらの会社はいかに経費を節約し病院の利益を上げるために病院の経営状態を詳しく調べ,それらの会社のアドバイスは研究費の削減,人員(看護婦)削減,貧困者への無料医療行為の削減,分院の数を減らし,患者へのいろいろの検査件数を同じく削減するというものです.実際のところこのお陰で病院の経営状態は良くなり,それに伴い新しい治療法や薬剤も可能になるかもしれません.またこれらのコンサルタント費用は月額$400,000かそれ以上で,それに加えて実費負担となっています.もちろんそれらのアドバイスが絶対的に効果あるという保証はどこにもありません.ここでひとつ付け加えておきますが,アメリカではemergency roomでは患者の支払い能力に関係なくその患者に緊急治療を施さなければならないと国の法律で定められています.これに関するオリジナルの記事をお読みになりたい方は,WWW.nytimes.comで自由に読むことができます.

治療

ステロイド外用剤の希釈は安全性向上に寄与するか?

著者: 速水誠

ページ範囲:P.88 - P.91

 最近,竹原和彦教授の「アトピービジネス論」を筆頭とする正論がようやく受け入れはじめられ,一時世間を騒がせ,我々の日常診療の大きな妨げとなっていた「脱ステロイド療法」,「ステロイド性悪説」も徐々に下火になりつつあることは大変喜ばしいことである.しかし,副作用を軽減するため(?)のステロイド外用剤の希釈使用は,明確な解説,レシピのないまま,皮膚科および他科医師によって広く行われている.筆者は従来よりこれに強い疑問を憶えていたが,第97回日本皮膚科学会総会のイブニングセミナーの講師に選ばれたのを好機に,この問題について検討を加え,希釈,特に十分な設備を持たない医療機関における希釈は有害無益なものではないかとの結論に達した.

印象記

第11回日韓合同皮膚科学会印象記

著者: 大山学

ページ範囲:P.92 - P.93

 第11回日韓合同皮膚科学会は,去る1999年10月11日から12日にかけて韓国の古都慶州にて開催された.ここに,本学会の運営に御尽力された諸先生方に謝意を表しつつレポートする.
 今回の学会は新羅の都であった慶州にて行われた.慶州は,世界文化遺産に指定されている仏国寺をはじめとする史跡も多く,日本で言えばほぼ奈良のような側面をもつ一方で,最近は郊外に位置する普門湖を中心とした開発も盛んで,リゾート的な側面ももつ観光都市である.学会はそのリゾートに林立するホテル群(観光団地と呼ばれる)のなかでも,もっとも新しいホテルHyundaiにて開催された.広々とした吹き抜けのあるエントランスをもち,客室,レクリエーション施設も充実しており,20世紀最後の学会となる本会に誠に相応しい会場であった.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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