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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科54巻13号

2000年12月発行

雑誌目次

カラーアトラス

皮膚リンパ管型Mycobacterium marinum感染症

著者: 池田美智子 ,   南光弘子

ページ範囲:P.1038 - P.1039

 患者 24歳,男性,美容師,熱帯魚飼育
 初診 1998年3月3日

原著

免疫不全者にみられた水痘再罹患例のまとめ

著者: 小松崎眞 ,   横井清 ,   本田まりこ ,   新村眞人

ページ範囲:P.1041 - P.1044

 1988年から1999年までに当科で経験した,水痘の再罹患と考えられた8症例をまとめた,全例で,皮疹が特定の神経支配領域に偏ることなく播種状で,神経痛様疼痛がなかった.8例とも水痘の既往があり,2例に帯状疱疹の既往があった.基礎疾患は,造血器腫瘍4例,固形癌2例,皮膚筋炎1例,脳梗塞1例であった.血清特異的抗ウイルス抗体価VZV-IgM(EIA法)は全例で有意な上昇がなかった.2例に化学療法後の白血球減少症があった.3例でCD4/8比が低下していた.健常人の場合,水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)に再感染しても不顕性感染に終わり,booster効果により免疫が維持されていくと言われている.自験例のような免疲低下した患者では,VZVの再感染が顕性発症することが考えられた.

帯状疱疹後神経痛に対する低反応レベルレーザー治療(第3報)—自験例100例による再評価

著者: 込山悦子 ,   松葉よう子 ,   岩本真一郎 ,   山田裕道 ,   小川秀興

ページ範囲:P.1045 - P.1049

 帯状疱疹後神経痛(PHN)100例に対し,低反応レベルレーザー治療(LLLT)を行った.患者は26〜88歳,平均68.2歳,男女比は49:51である.用いたレーザー機種はGaAlAs半導体レーザー,治療は疼痛部位を1回につき1〜15分,10日〜11か月間に4〜60回の照射を行った.三叉神経領域のPHNについては星状神経節領域にも照射した.結果はPHN消失24例,著明改善41例,改善13例,やや改善14例,不変8例.4例においてPHNの再発を認めたが,レーザー照射によると思われる副作用は認められなかった.有効率78.0%,著効率65.0%と優れた治療成績が示された.またLLLT群と非治療群(PHN自然経過観察群)とのPHN残存率の比較においてはLLLT群のほうが残存率が低かった.LLLT難治患者群におけるLLLT抵抗性の要因はLLLT開始までの期間と性別に問題がある可能性が示唆された.

臨床統計

アトピー性皮膚炎治療ガイドライン1999に対するアンケート調査

著者: 松下佳代 ,   吉田隆実 ,   瀧川雅浩 ,   古川福実

ページ範囲:P.1051 - P.1057

 厚生科学研究班による1999年のアトピー性皮膚炎治療ガイドラインについて静岡県皮膚科医会会員および小児科医会会員を対象にアンケート調査を行った.ガイドラインの作成とその内容,骨格については,大筋で賛成が得られたが,項目によっては見解が分かれた.診断基準として日本皮膚科学会,厚生省の両案を必要とする意見が皮膚科では39%,小児科では48%であったが,日本皮膚科学会のみもしくは厚生省のみでよいとする意見も各科でみられた.皮疹分布面積を基本とした重症度の判定方法は,両科とも80%以上が妥当としたが,実際の診療には用いないとする回答も少なくなかった.薬物療法の基本例やそのチャートも,妥当性と簡便性のいずれかで何らかの問題があるとした回答は両科とも39%を占め,顔面へのステロイド薬の使用や,抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬以外の内服薬など難治例への対応について記載の不足も指摘された.

症例報告

手掌に限局性の発汗を認めた無汗性外胚葉形成不全症の1例

著者: 内山直樹 ,   坂本ふみ子 ,   和泉純子 ,   伊藤雅章

ページ範囲:P.1059 - P.1061

 無汗性外胚葉形成不全症の4歳男児を報告した.生下時より明らかな発汗を認めず,本症に特徴的な顔貌,歯牙欠損を有し,手掌に皮膚紋理のdissociationが認められた.母親にも乏汗症および大臼歯の一部欠損が存在した.腹部皮膚生検では汗腺をはじめ皮膚付属器は認められなかった.スライドガラス法を用いた発汗試験を腋窩,背部など計10か所で試みたところ,手掌にのみ発汗が認められた.手掌の汗腺は,感情の刺激により発汗する点,また胎生期において他部位の汗腺より早期に発生するという点で独特であり,限局性の発汗はそのような手掌の特殊性が関与していると考えられた.

手指に生じた線維筋形成異常による動脈瘤の1例

著者: 梅津修 ,   小泉洋子

ページ範囲:P.1063 - P.1065

 69歳,女性.最近右示指基節背面の痛みを伴わない小豆大のドーム状に隆起した青みを帯びた波動を触れる柔らかい腫瘤に気づいた.拍動は触れない.局所の外傷の既往はない.病理組織ではelastica-vall Gieson染色で内膜の巣状の線維性の増殖,内弾性板の弾性線維の不規則な増殖と断片化,中膜の筋線維の不規則な増殖を認めた.線維筋形成異常による皮膚の動脈瘤は自験例を含め5例しか報告がない.そのうち2例に皮膚以外の臓器にも血管病変が多発していたことから,結紮がさしつかえなければ切除して病理組織検査をするのが望ましいと考える.

皮疹の治療中,突然重篤な呼吸障害を呈したChurg-Strauss症候群の1例

著者: 北島進司 ,   安本昌紀 ,   富田博司

ページ範囲:P.1067 - P.1070

 61歳,女性.気管支喘息の発作と胸部X線の浸潤影で肺炎として入院中に,両手背と両下肢に水疱と紫斑を伴う浸潤性の紅斑局面と紫紅色丘疹が散在性に生じた.皮疹の組織は,真皮全層に核破壊を伴う好中球と好酸球の密な浸潤があり,小血管のフィブリノイド壊死を伴う壊死性血管炎であった(肉芽腫は認められなかった).末梢血白血球数と好酸球数は著増し,血小板数とIgEも増加していた.退院後外来通院していたが,皮疹が増悪したため入院にてプレドニゾロンを1日30mg内服中,突然発熱と喘息発作を生じ,胸部X線上浸潤影の増強がみられ,呼吸困難を生じ意識障害を呈した.メチルプレドニゾロン(1日40mgから80mgに増量)とシクロホスファミド(1日50mg)の点滴により速やかに諸症状は軽快した.Churg-Strauss症候群では重篤な症状を呈さない場合でも,急な増悪を考え慎重な経過観察が必要と思われた.

ヒドロキシカルバミドによる四肢潰瘍の1例

著者: 鎌田麻子 ,   飯田憲治 ,   西川哲祐 ,   橋本英明

ページ範囲:P.1072 - P.1074

 74歳男性の,ヒドロキシカルバミドによる四肢の皮膚潰瘍を経験したので報告する.1994年に慢性骨髄性白血病と診断され,内科よりヒドロキシカルバミドを処方された.内科的には経過順調であったが,1999年9月,両手背,足背,肘部に暗赤色局面,潰瘍,びらんが出現したため当科を受診した.局所消毒,抗潰瘍剤による処置と,ヒドロキシカルバミド投与中止にて症状は速やかに改善した.ヒドロキシカルバミドは,本邦では1992年より認可された抗腫瘍剤で,皮膚潰瘍の報告が近年増加している.これまでの報告例では上肢に潰瘍を生じた例はないが,発症機序を考慮すると,自験例のような肘部潰瘍の可能性も常に念頭に置く必要がある.

多発性骨髄\腫に伴った全身性アミロイドーシスの1例

著者: 上田周 ,   有川順子 ,   石黒直子 ,   川島眞 ,   鮫島勇一 ,   溝口秀昭

ページ範囲:P.1076 - P.1078

 66歳,男性.2年前より眼囲に小結節と繰り返し出現する紫斑がみられ,その後全身の皮膚硬化,嚥下障害と開口障害を生じた.初診時,巨大舌と頭部,顔面の結節と眼囲の黄褐色小結節がみられ,頸部には光沢を伴う淡黄褐色の小結節が多発集簇し,躯幹,四肢に強皮症様皮膚硬化を認め,一部では板状硬結を触れた.臨床症状より全身性アミロイドーシスを考え,上眼瞼,頸部の小結節と大腿部の硬結より皮膚生検を行った.病理組織学的に,真皮に島状ないしびまん性にダイロン染色で赤染し,免疫組織学的にamyloid of light chain of immunoglobulin(AL)蛋白λ鎖で陽性の無構造物質の沈着を認め,確定診断に至った,また,血清中および尿中Bence Jones蛋白陽性,尿中β2ミクログロブリン増加を認め,骨髄穿刺にて多発性骨髄腫と診断した.インターフェロンを含む多剤併用療法を施行するも軽快なく,肺炎を併発し死亡した.

インスリン受容体異常症に伴った良性黒色表皮腫の1例

著者: 大塚俊 ,   田辺昭子 ,   山蔭明生 ,   山崎雙次

ページ範囲:P.1079 - P.1082

 13歳,女児.約3年前より両腋窩,両鼠径部に褐色斑,約1年前より全身の多毛が出現した.近医にて糖尿病を指摘され,当院小児科に入院した.高インスリン血症,インスリン抵抗性,高テストステロン血症,糖尿病の遺伝歴,多毛などよりインスリン受容体異常症と診断された.左腋窩の生検所見にて角質増生,表皮の乳頭腫症がみられ,腋窩・鼠経部の皮疹はインスリン受容体異常症に伴った良性黒色表皮腫と診断した.現在,食餌療法のみで経過観察中である.インスリン受容体異常症は非常に稀な疾患であるが,若年女子の黒色表皮腫と多毛を診たときは本症を疑う必要がある.

Id reactionを伴った痂皮性膿痂疹の1例

著者: 石田雅美 ,   水嶋淳一 ,   檜垣祐子 ,   川島眞

ページ範囲:P.1083 - P.1085

 症例は36歳,男性.アトピー性皮膚炎の既往なし.顔面に生じた痂皮性膿痂疹に続発し,体幹,上肢に紅色丘疹が多発した.顔面の膿痂疹は特徴的な厚い痂皮を形成していたが,膿汁はなく,発熱やリンパ節腫脹も認めなかった.顔面の皮疹よりC群β溶連菌を分離した.体幹の丘疹の病理組織像は,表皮の海綿状態,真皮上層の強い浮腫と血管周囲性リンパ球浸潤からなり,痂皮性膿痂疹に伴ったid reactionと診断した.レボフロキサシンの内服と,体幹,上肢にステロイド外用薬を用いたところ6日で略治した.顔面の痂皮性膿痂疹でアトピー性皮膚炎の既往のないこと,比較的軽症で起炎菌がC群β溶連菌であること,id reactionを伴ったことが特異であった.

大腸菌による壊死性筋膜炎の1例

著者: 中島武之 ,   宮島進 ,   前田知子 ,   岡田奈津子

ページ範囲:P.1087 - P.1090

 50歳男性の下肢に生じた壊死性筋膜炎の1例を報告した.アルコール多飲の生活歴があったものの,特に誘因なく陰嚢から右下肢の発赤疼痛が生じ,敗血症性ショック,DICを併発,急速に皮膚壊死へと進展した.壊死病変は筋膜にまで及び,病変部および血液培養にて大腸菌が検出された.ICUにて全身管理を行い,強力な抗生剤投与と壊死組織の広範デブリードマンを行った結果,全身状態は改善した.発症1か月後に右大腿外側および下腿屈側に対し網状分層植皮術を施行した.壊死性筋膜炎は致死率の高い疾患であるが,早期の診断と十分なデブリードマン,抗生剤投与,全身管理により救命し得た.

Cryptococcusによる脂肪織炎の1例

著者: 酒井利恵 ,   松本いづみ ,   堀口裕治 ,   有本明 ,   仁木洋子 ,   那須芳

ページ範囲:P.1091 - P.1093

 55歳,女性.特発性血小板減少性紫斑病で長期にわたりステロイド剤の内服加療中である.1998年10月に右大腿部に自発痛のある皮下硬結が出現し,周囲に境界不明瞭な紅斑を伴って徐々に拡大した.病理組織検査で皮下組織に多核巨細胞を含む肉芽腫を認め,脂肪織中および肉芽腫を構成する細胞の中に多数のCryptococcus neoformansの菌要素がみられた.アムホテリシンBとフルコナゾールと併用加療を行い,約3か月後に臨床症状は改養したが血中Cryptococcus抗原は陽性であり,治療後の病変部の組織でも巨細胞中に菌体は存在した.

両側上肢のリンパ管型スポロトリコーシスの1例

著者: 沖中竜司 ,   伴野純代 ,   新田悠紀子

ページ範囲:P.1094 - P.1096

 68歳,男性,大工.洋材を扱う業務の際に両手を外傷し,その後受傷部位の他,左前腕,右上肢にも皮疹が出現した.組織像は慢性炎症性肉芽腫であった.PAS染色にて胞子が認められた,培養にて褐色の襞壁を形成する集落が認められ,スライドカルチャーの所見と併せてSporo—thrix schenkiiと同定し,両上肢のリンパ管型スポロトリコーシスと診断した.ミトコンドリアDNAの制限酵素切断パターンによるタイプ分類ではタイプ4に相当した.治療はヨウ化カリウムとイトラコナゾールの内服3か月にて経過良好であった.両上肢に発生したスポロトリコーシスについて文献的考察を行った.

White fibrous papulosis of the neckの1例

著者: 竹内瑞恵 ,   川口博史 ,   佐々木哲雄 ,   池澤善郎

ページ範囲:P.1097 - P.1099

 アトピー性皮膚炎(AD)にて加療中の37歳男性に生じたwhite fibrous papulosis of the neck(WFPN)の1例を報告した.約半年ほど前から頸部に自覚症状を伴わない小結節が出現し,徐々に増大,増数した.右頸部の皮疹を生検したところ,組織学的には表皮肥厚を伴う真皮上層血管周囲の炎症細胞浸潤に加え,真皮上層から中層にかけて膠原線維の粗大化,増生が認められた.以上より,AD患者に生じたWFPNと診断した.WFPNは,高齢者に多くみられる疾患と考えられているが,発疹が小さく自覚症状を欠くため,これを主訴に来院することは少ないと思われる.自験例は37歳と,過去の報告よりも若年者であったが,他の疾患のために皮膚科通院中であったため早期に発見されたものと思われた.

爪下外骨腫の2例

著者: 後藤八恵 ,   田村敦志 ,   石川治

ページ範囲:P.1100 - P.1102

 11歳男児の右第4趾および18歳女性の右第2趾に生じた爪下外骨腫の2例を報告した.発症時期はそれぞれ初診の1年前,9年前であった.いずれも外科的に摘出した.組織学的所見より,症例1は骨軟骨腫型の爪下外骨腫,症例2は線維性骨化型,別名外骨腫型の爪下外骨腫と診断した.爪下外骨腫は若年者の外的刺激を受けやすい指趾に生じやすく,組織型の違いは外的刺激の継続期間に関連すると考えた.

左示指に限局したsegmental neurofibromatosisの1例

著者: 山上淳 ,   畑康樹 ,   伯野めぐみ ,   西川武二 ,   中村絹代

ページ範囲:P.1104 - P.1106

 62歳男性の左示指に限局して生じたseg—mental neurofibromatosis(NF5)の1例を報告した.他の部位にはカフェオレ斑,神経線維腫を認めず,全身症状,Recklinghausen病(R病)の家族歴もない,1指のみに限局するNF5はきわめて稀であるが,本症がR病のモザイクである以上,どの部位にも発生する可能性がある.自験例のように1指のみに限局して多発する小結節をみた場合には,鑑別診断としてNF5も考える必要があると思われた.

尋常性狼瘡の瘢痕上に生じた有棘細胞癌の1例

著者: 関姿恵 ,   田村敦志 ,   高橋亜由美 ,   鈴木裕美子 ,   石川治

ページ範囲:P.1108 - P.1110

 症例は67歳,男性,左肘頭の尋常性狼瘡の瘢痕上に生じた有棘細胞癌を報告した.過去において尋常性狼瘡に対して放射線治療を行われた時期があり,それが発癌の一因と考えられていた.放射線治療歴の有無および尋常性狼瘡発症から皮膚腫瘍発生までの期間が明らかな32例につき文献的に検討した.放射線治療未実施例12例では5〜71年(平均29年),実施例20例では6〜62年(平均30年)で皮膚悪性腫瘍が発生しており,発症までの期間に関して両者に有意差はなかった.自験例は放射線治療を行っていないが,瘢痕形成の高度な部分に発癌しており,本症における発症機構を考えた場合,瘢痕癌としての性格がより重要ではないかと推察された.

連載

Clinical Exercises・93—出題と解答

著者: 橋本隆

ページ範囲:P.1070 - P.1070

185
次のfamilial cancer syndromeに関する記載のうち正しいのはどれか.
①familial cancer syndromeでは若年者の多臓器に多発性の腫瘍が生じる.

NOTES FROM THE RICE COUNTRY・12最終回

著者:

ページ範囲:P.1115 - P.1115

皮膚科の時代変貌
 時代とともに情報入手の時間が急激に変わろうとしています.以前は学会や雑誌で年に一度だったものが半年となり,最近では日ごとにまたは1時間ごとに新しい情報が手に入れられるようになりました.そしてこれだけの膨大な量の情報を自分一人で覚え込み管理するのは非常に難しくなってきており,やはりコンピュータの力を借りなければなりません.
 皮膚科における世界的規模のインターネットグループrx-dermや日本でも三重県の谷口先生主催の皮膚科グループではお互いに診断や治療の情報を即座に交換できますし,Epocratesのように薬の副作用や服用量に至るまで市販されている薬に関するありとあらゆる情報がポケットコンピュータですぐに判るようになりました.また多くの医学雑誌がインターネットでダウンロードでき,またGrateful Medや他のソフトを使ってアメリカのNational Library of Medicineを呼び出し,必要な情報を図書館まで走って行くこともなく出せる時代になりました.そう,時代は変わっているのです.変わると言えば,私の記事もこれが最終回となりました.長年にわたり大変楽しい貴重な時間を過ごせたこと,本当にうれしく思っています.

治療

塩酸テルビナフィン錠の短期投与法が奏効したMicrosporum canisによる頭部白癬の1例

著者: 小林三保子 ,   比留間政太郎 ,   松下明子 ,   小川秀興

ページ範囲:P.1111 - P.1114

 5歳,女児.Microsporum canisによる頭部白癬を塩酸テルビナフィン錠による4週間短期投与法で治療し,奏効した1例を報告した.初診の約1か月前,野良猫を飼育し始めたところ,後頭部を中心に脱毛斑を認めるようになった.病毛の直接検鏡により毛外性小胞子菌性寄生を認め,培養でM.canisを分離した.塩酸テルビナフィン錠125mg/日を4週間内服および洗髪のみで治療し,投与開始後8週目で菌は陰性化し,4か月後には脱毛斑も完全に消失した.わが国における本剤による頭部白癬の治療例の報告は11例あり,投与期間は2週間から22週間であり,今後投与期間の検討が必要と考えた.

Bourneville-Pringle病のangiofibromaに対する炭酸ガスレーザーによる治療

著者: 橋壁道雄 ,   大塚俊 ,   酒井司 ,   村下理 ,   山蔭明生 ,   山崎雙次

ページ範囲:P.1116 - P.1118

 25歳,男性.生後3か月よりてんかん発作あり.生後9か月から,鼻唇溝に紅褐色の小丘疹が出現し徐々に増加した.1998年2月,顔面の整容的改善を目的に当科に入院した.顔面の小丘疹は,組織学的に真皮の血管の増生,拡張,膠原線維の増生を認めangiofibromaと診断した.全身麻酔下で鼻背は採皮刀にて剥削切除,鼻翼から頬部は炭酸ガス(CO2)レーザー療法を施行,両足趾のKoenen腫瘍は単純切除した.術後経過はいずれも良好であった.これまで顔面angio—fibroniaに対する治療は,局所療法として冷凍凝固術,剥削術,CO2レーザー,単純切除術,植皮術,電気凝固術,アルゴンレーザー,高周波手術など,全身療法としてビタミンD3,メトトレキセート内服療法などが報告されている.CO2レーザー治療は,Pringle病の顔面のangio—fibromaに対し,試みられるべき治療法の一つと考えられる.

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臨床皮膚科 第54巻 事項索引

ページ範囲:P. - P.

臨床皮膚科 第54巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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