Derm.2000
皮膚潰瘍について/患者さんの訴え
著者:
菊池かな子1
江畑俊哉2
所属機関:
1東京大学分院皮膚科
2東京慈恵会医科大学第三病院皮膚科
ページ範囲:P.51 - P.51
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1999年5月まで,2年ほど病棟医長を担当させていただいた.もちろん様々な疾患の方がいらっしゃるのだが,何故か難治性皮膚潰瘍が多かった印象がある.褥瘡,静脈瘤性,糖尿病性,血管炎によるもの,膠原病性と成因は多様であった.これらに対し,保存療法,手術療法を適宜組み合わせることになる.保存療法については,bFGFなどの細胞成長因子が実際に使用可能となりつつあるのは大いに楽しみである.10年以上前,キーストーンシンポジウムで創傷治癒のセクションがあり,当時留学中だったので参加させてもらった.その当時の最先端の講演でも,多くの細胞成長因子の使用がまだ動物実験の段階であった.コストも高いことだし実用化されるのはまだまだ先だろうなと思った記憶がある.これらが実際に使用可能になるまでの現状ではTopical Hemotherapyも捨てがたい.何例か試み,以外に早く良好な肉芽形成をみた.
強皮症は私の専門でもあるので,内科より皮膚潰瘍治療を依頼される場合もあった.つい最近までの常識では,強皮症の皮膚潰瘍は保存療法のみで,手術療法は禁忌に近いとされていたと思う.人工真皮の併用により潰瘍面への分層植皮が可能になり,症例によっては相当入院期間の短縮が図られた.残念ながら,強皮症では決定的基礎治療薬がないが,対症療法の組み合わせでQOLを改善する余地は多分にあるのだ.