Derm.2000
紫外線治療と基礎医学のはざまにて/実験机に向いながら
著者:
荒金兆典1
米田耕造2
所属機関:
1近畿大学皮膚科
2秋田大学皮膚科
ページ範囲:P.128 - P.128
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紫外線治療を行っている.対象疾患としては炎症性皮膚疾患(アトピー性皮膚炎や乾癬をはじめ,ほぼすべての炎症性疾患を網羅する)が主である.Bath PUVA療法を治療法の中心に据え,外用PUVAやUVB療法も行う.紫外線療法は以前より広く行われており,効果は臨床的に十分評価を受けているが,その作用機序に関しては意外なほど明らかではない.炎症の発生に寄与する免疫担当細胞のアポトーシスの誘導が抗炎症的に作用していると考えるのは一面の真実であろうと思われるが,では炎症の取っかかりである,抗原(未知のことが多い)を認識する機構を抗原特異的に抑制しうるかどうかときかれれば,現時点では答える材料がない.仮にすでに確立されたアレルギー反応を,紫外線療法により抗原特異的免疫不応答状態(トレランス)に転化できれば,多くのアレルギー性皮膚疾患の長期の改善(もちろん紫外線療法のみで)が理論上可能になる.そこで,同僚とともにマウスモデルを用い紫外線照射を行う毎日である.しかし,ヒトの病態はマウスに比べ変化が豊富で,マウスで得られた結果が即ヒトに応用できるかというと疑問が残る.その大きな理由としてヒトに紫外線療法を行った際の,皮膚の免疫担当細胞の動態に関する詳細な計時的変化に関する理解が不足している点が挙げられる.よってその点を充足するために,紫外線療法により明らかに改善傾向を示す患者さんに生検をお願いすることになる.これは尋くほうも辛いが,尋かれるほうがもっと辛いと思う.この辛さというのはマウスだけを扱っていると起こり得ないものである.しかし,患者さんが生検を許可してくださった場合,この検体を無駄にはできないという思いを新たにする.私の研究はこういう声なき多くの人々に支えられていると思うと,外来診療が神聖な行為であると再認識する.