症例報告
亜鉛欠乏症の二卵性双胎
著者:
高橋祥子1
益田俊樹1
山内芳忠2
所属機関:
1国立岡山病院皮膚科
2国立岡山病院小児科
ページ範囲:P.513 - P.515
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症例は在胎31週,帝王切開で出生した二卵性双胎の7か月の女児2人.低体重児.出生直後からビクシリン®,アミカシン®を投与され,日齢7より母乳栄養を開始した.途中人工乳を併用した.第1子は貧血のため鉄剤を投与されていた.生後3か月より臀部に鱗屑を付す紅斑が出現し,外用治療したが範囲が拡大し,当科を紹介された.初診時後頭部脱毛を認めた.指趾の皮疹,下痢はなかった.第1子は皮疹がより重篤であった.1人いる姉は満期正常分娩,母乳栄養で,同症状はなかった.患児の血清亜鉛は低値で,母親の血清亜鉛値は正常であり,母乳亜鉛は低値であった.患児への硫酸亜鉛投与で皮疹は速やかに消退した.本症は獲得性亜鉛欠乏であり,未熟児,低亜鉛母乳という大きな因子に,亜鉛とキレートを形成するペニシリン投与,亜鉛吸収を阻害する鉄剤内服(第1子)という因子が重なって生じた可能性があると考察した.