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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科54巻7号

2000年06月発行

症例報告

腹部原発腫瘍と鼠径リンパ節転移腫瘍間で異なる病理組織像を呈した有棘細胞癌の1例—p53遺伝子変異検索の有用性

著者: 杉内利栄子1 高橋和宏1 照井正1 田上八朗1 増田高行2

所属機関: 1東北大学医学部皮膚科学教室 2東北大学附属医療短期大学

ページ範囲:P.532 - P.534

文献概要

 47歳の女性の腹部に3年前より皮疹が出現した.近医(外科)に湿疹といわれ経過をみていたが次第に拡大し,初診時2か月前より左鼠径部に腫脹が出現したため当科を受診した.左側腹部に直径約5cmの表面が一部疣贅状の紅色腫瘤があり,左鼠径部には8×4Cmの皮下結節を触知した.臨床的に腹部の腫瘤は有棘細胞癌,鼠径部結節はそのリンパ節転移を疑った.腹部腫瘍の生検組織は表皮内癌(Bowen病の組織像)であったため,腫瘍辺縁より1cm離して脂肪織中層の深さで切除し,同時に鼠径部の皮下結節は全摘した.腹部腫瘍を連続組織切片で検索し得た範囲には基底膜を越え,真皮内へ深く浸潤している部位は見つからなかった.鼠径部皮下腫瘤は,大型の異型細胞が増殖し,一部shadow cell様変化のみられる悪性毛母腫に類似した像を呈した.皮膚以外の臓器原発の可能性も考え,画像診断学的に検索したが悪性腫瘍は見つからなかった.原発と転移巣に形態学的な違いがあり,腹部腫瘍からの転移であるか否かが問題となった症例である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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