icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科54巻7号

2000年06月発行

連載

NOTIES FROM THE RICE COUNTRY・6

所属機関: 1California大学San Diego校

ページ範囲:P.559 - P.559

文献概要

医者が起こす医療訴訟
 今回は久しぶりに保険制度についてお話ししましょう.どの国においても裁判訴訟は実に厄介なものですが,ここアメリカでもそれに伴い皮膚科医の現状に変化が起きています.私の父が皮膚科医をやっていたころはbasal cell carcinomaと思われるものはbiopsyなしでその場で診断を下し,処置を行ったものですが,今日ではそのようなことは医者を危険な立場に追い込むばかりでなく,biopsyなしの皮膚癌の処置手術に対しては保険会社から支払いが出ません.その保険会社といえば皆さんもよくご存じのように,HMOの会社は何億というお金を政治家たちにつぎ込んできましたが,近々HMO加入の患者が十分な医療を受けられなかった場合,HMO保険会社を訴えられるようになるようです.そうなるとHMO保険会社はその訴訟に莫大な費用を要することになります.また面白いことにその患者側の弁護士事務所が実はタバコ会社たちを訴えたのと同じ事務所なのです.ここアメリカでは勝訴した場合,弁護士側の取り分は勝訴金の33%ですから,彼らも必死なわけです.そうなるとHMO保険会社が気の毒だと思われる方も何人かはいらっしゃるかもしれませんが,去年HMO会社の重役の年収は1,700万ドル(約18億円)でしたからご心配なく!そして腹がたつことに,その会社たちは皮膚癌のためにbiopsyをしてもそれはtinea corporisと同等扱いで,診察を無視し治療に対してのみ支払いを行っています.そしていまAADではこのように診察と治療を同時に行った場合,診察料の支払いを拒否した会社たちを相手に訴訟を起こしています.まったく難しい時代になったものです.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら