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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科54巻8号

2000年07月発行

雑誌目次

カラーアトラス

Hallopeau稽留性肢端皮膚炎

著者: 金子勝美 ,   青木見佳子 ,   川名誠司

ページ範囲:P.582 - P.583

 患者 49歳,女性
 現病歴 12年前に両指趾に疹痛を伴う紅斑,腫脹,膿庖,および爪甲の脱落が出現した.近医にてステロイドによる加療を受けたが軽快しないため,市販の漢方薬を使用し,その後は寛解していた.初診の2か月前より再び同様の症状が出現した.

原著

PTEN遺伝子の変異を認めたCowden病

著者: 木村久美子 ,   加藤直子 ,   青柳哲 ,   菅原弘士 ,   斉藤忠範 ,   内藤春彦 ,   池田崇之 ,   堀井明

ページ範囲:P.585 - P.589

 56歳,女性.息子2人に消化管ポリポージスがあり,20代から歯肉に丘疹,40代から躯幹に多発性紅色丘疹が生じ,1年前から顔面および頸部から肩部にわたる多発性小丘疹と右前腕の丘疹に気づいた.組織像では,顔面の丘疹はangiofibroma,躯幹の紅色丘疹は血管腫,前腕の丘疹はsclerotic fibroma,頸部の小丘疹は軽度の角質増生と表皮の盆状陥凹を示した.また消化管のポリポージス(食道から直腸)と直腸の粘膜下脂肪腫を有し,ポリープの一部には,腺癌を合併していた.他に両側乳癌,両側甲状腺腫,多発性肝血管腫,卵巣嚢腫も認められた.PTEN遺伝子の変異を認め,exon 5のcodon 130にてArg(アルギニン)からstop codonとなる,nonsense mutationが確認された.

環状肉芽腫の病理組織学的分類

著者: 村澤章子 ,   木村鉄宣

ページ範囲:P.591 - P.594

 われわれは環状肉芽腫の病理組織像をpalisaded type,epithelioid type,interstitial typeの3型に分類した.当科保存の環状肉芽腫50症例,56検体を型分類した結果,palisaded typeが35例(63%),epithelioid typeが9例(16%),interstitial typeが12例(21%)であった.環状肉芽腫の病理組織診断を行う際には,pal—isading granulomaの像を示さない環状肉芽腫が存在することを念頭におく必要がある.また,66歳女性の下肢に発症したinterstitial typeの環状肉芽腫を紹介した.

今月の症例

広範囲に扁平コンジローマを認めた第2期顕症梅毒の1例

著者: 嵯峨兵太 ,   檜垣祐子 ,   川島眞

ページ範囲:P.595 - P.597

 33歳,男性.約4か月前にピンクサロンで感染の機会があった.1か月前から口囲に皮疹が出現し,肛囲,腋窩に拡大した.初診時頭部,耳介,口囲,鼻入口,左肩に痂皮を伴う小豆大紅色丘疹を認め,両腋窩,陰部には表面が湿潤した扁平隆起性淡紅色丘疹が多発し,悪臭を伴っていた.ガラス板法は128倍,TPHA法は10240倍であった.右腋窩の丘疹の組織像は,表皮索の延長が著明で,真皮上層から中層にかけて形質細胞主体の稠密な細胞浸潤を認め,酵素抗体法で有棘層に多数のTreponema Pallidumを認めた.第2期顕症梅毒と診断し,ベンジルペニシリンベンザチン1日160万単位の内服にて軽快した.腋窩,陰部に広範囲に扁平コンジローマが生じた理由として多汗や摩擦などの局所的要因の関与が考えられた.

症例報告

Punctate porokeratotic keratoderma

著者: 洙田由美子 ,   野本正志 ,   荒瀬誠治

ページ範囲:P.599 - P.601

 75歳女性に生じたpunctate porokerato—tic keratodermaの1例を報告した.2年前より,両手掌および足底に棘状角化性小丘疹が播種状に出現した.病理組織学的にcornoid lamella様の角柱形成と顆粒層の減少を認め,典型例と考えた.結腸癌の既往があったが,発症時期と経過よりデルマドロームの可能性は低いと思われた.また,自験例では尿素軟膏の外用が有効であった.

横紋筋融解症を合併したcoma blisterの1例

著者: 谷戸克己 ,   石地尚興 ,   荻野聡子 ,   井上奈津彦 ,   本田まりこ ,   新村眞人

ページ範囲:P.602 - P.604

 32歳,女性.初診の約5年前よりうつ状態のため近医に通院中であった.体調の不良,不穏状態に対して多量の抗精神病薬を服用後に昏睡状態となり,右前額部,右肩,右腰部に浮腫性紅斑,水疱を,両下肢内側に皮膚潰瘍を生じた.皮疹の発生部位は昏睡時に圧迫された部位に一致し,患者は右半身のしびれと疼痛を訴え,発熱を伴っていた.臨床検査成績はGOT 224IU/l,GPT 141IU/l,LDH 769IU/l,CRP 4.3mg/dlと上昇,特にCPKは7985IU/l,アルドラーゼは21.8IU/lと異常高値を示した.水疱部の組織学的検査では真皮の浮腫と真皮浅層の血管周囲にリンパ球を主体とした炎症性細胞浸潤を認めた.血清学的異常値は5日後には正常化した.以上より本症を横紋筋融解症を合併したcoma blisterと診断した.

イトラコナゾールが奏効したSchamberg病の1例

著者: 杉内利栄子 ,   高橋和宏 ,   照井正

ページ範囲:P.605 - P.607

 71歳,女性.イトラコナゾール(イトリゾール®)が奏効したと考えられた,下腿,臀部にまで拡大したSchamberg病の症例を報告した.手,足,股部などを含めて臨床的に真菌症を思わせる部位はなかったが,トリコフィチン皮内反応陽性,カンジダスクラッチパッチテストが陽性であった.自験例にイトラコナゾールが奏効した機序は不明であるが,Schamberg病の病態を考える上でも興味深い症例と思われた.

カルバマゼピンによるhypersensitivity syndromeの1例

著者: 佐藤淳 ,   大野貴司 ,   荒田次郎

ページ範囲:P.608 - P.610

 46歳,男性.躁うつ病のためカルバマゼピン(テグレトール®)の内服を開始したところ,2か月後より全身に皮疹が出現し,38.5℃の発熱,リンパ節腫脹,肝機能障害,末梢血中と真皮内の異型リンパ球を認め,一見悪性リンパ腫を疑わせる薬疹を経験した.カルバマゼピンのリンパ球刺激試験は陽性であった.このように遅発性に発症し多臓器傷害を伴う重症な薬疹を引き起こす原因として薬剤に加えて,HHV−6ウイルスが関与している可能性が考えられた.

カリニ肺炎を併発した水疱性類天疱瘡の1例

著者: 三浦義則 ,   赤木淳 ,   榎本韻世 ,   多島新吾 ,   石橋明

ページ範囲:P.612 - P.614

 症例は77歳,男性.水疱性類天疱瘡の診断でメチルプレドニゾロン20mg/日を開始したが,口腔内のびらんが難治のため,メトトレキセートの内服を追加した.併用開始から約5週間後,間質性肺炎が出現し,喀痰からカリニの嚢子が検出された.ST合剤等を投与し,メチルプレドニゾロンのパルス療法を追加して効果が認められたが,気胸の続発を契機に病状は悪化し,発症から3週間余で永眠した.カリニ肺炎の好発時期は,原疾患が治療により軽快し薬剤が減量された,治療開始2〜4か月後頃にあり,この時期は特にカリニ肺炎の監視を怠るべきでないことを強調したい.

Hypertrophic discoid lupus erythematosusの1例

著者: 沖田博 ,   木根淵明 ,   山崎智徳 ,   大塚勤 ,   山蔭明生 ,   山崎雙次

ページ範囲:P.615 - P.618

 61歳,男性.17年前より口唇,両耳介,項部,右肩関節部,両上肢,上背部,右足関節に鱗屑が固着した角化性紅斑が出現した.その後,前腕,上腕,肩関節部の紅斑は次第に隆起してきた.臨床像,抗核抗体陽性,病理組織学的所見よりhypertrophic discoid lupus erythematosusと診断した.また,1991年の初診時と1998年に皮膚生検を施行し,病理組織学的に比較検討した.プレドニゾロン内服,ステロイド軟膏外用するも治療に抵抗性であった.

血小板減少症とアナフィラクトイド紫斑を合併したSjögren症候群

著者: 清家正博 ,   中島英貴 ,   山本康生 ,   小玉肇

ページ範囲:P.620 - P.622

 54歳,Sjögren症候群の女性.半年前より両下腿に,大豆大までの浸潤のある紫斑および紫斑と浸潤を伴う爪甲大の滲出性紅斑が出現し始めた.高ガンマグロブリン血症を認め,platelet associated IgGが高値で血小板減少症を合併していた.紫斑部の病理組織学所見では明らかなleucocytoclastic vasculitisの像を呈しており,血小板減少性紫斑や高ガンマグロブリン血症性紫斑ではなく,アナフィラクトイド紫斑と診断した.

PUVA療法が奏効したストッキング型generalized morphea

著者: 清家正博 ,   山本康生 ,   小玉肇

ページ範囲:P.624 - P.626

 60歳,女性.Sjögren症候群のためベタメサゾン1mg/日で加療中,両下腿と両前腕に皮膚硬化が出現した.病理組織学的にmorpheaの所見を示し,皮疹の分布を考慮してストッキング型generalized morphea(GM)と診断した.高γグロブリン血症,抗核抗体1,280倍以上等の免疫血清学的異常を伴っていた.両下腿と両前腕への外用PUVA療法にて,皮膚硬化は消失した.同時にγグロブリン量も正常化し,抗核抗体価も改善したことは,GMの改善に続発した現象である可能性もあるが,PUVA療法によってTh 2細胞が抑制されることにより皮疹が消退した可能性も示唆された.

乾癬様皮疹を呈したサルコイドーシスの1例

著者: 秦まき ,   藤田弘 ,   横手隆一 ,   小嶋俊一

ページ範囲:P.627 - P.629

 44歳,女性にみられた乾癬様皮疹を呈したサルコイドーシスの1例を報告した.前頭部,外陰部ともに,厚い痂皮と落屑を伴う一見乾癬を思わせる浸潤性紅斑がみられた.病理組織像では,真皮はサルコイドーシスに矛盾しない類上皮細胞性肉芽腫を呈していた.表皮の微小膿瘍など乾癬を示唆する所見は認められなかった.臨床的,組織学的所見から局面型サルコイドーシスの非典型的な症例と考えられた.

アトピー性皮膚炎皮疹部に生じたcutaneous focal mucinosisの多発例

著者: 大塚俊 ,   山蔭明生 ,   山崎雙次 ,   石田晋之介

ページ範囲:P.631 - P.633

 37歳,男性.幼少時よりアトピー性皮膚炎.1年前より,項部の苔癬化局面上に白覚症のない黄白色の丘疹ないし結節が多発.生検所見にて真皮内にヒアルロン酸の沈着を認め,cutane—ous focal mucinosisと診断した.肝障害,糖尿病,甲状腺機能異常などはみられなかった.成因として掻破による慢性外傷やアトピー性皮膚炎皮疹部におけるサイトカインの関与が考えられた.これまでの報告例について若干の統計的考察を加えた.

Zosteriform porokeratosisの1例

著者: 吉永英司 ,   大西善博 ,   多島新吾 ,   石橋明 ,   番場秀和

ページ範囲:P.635 - P.637

 14歳,男性.3年前に右上腹部に皮疹が出現した.徐々に増加するとともに列序性配列を示した.個疹は粟粒大から米粒大の黒褐色角化性丘疹で一部の丘疹は中央が陥凹し辺縁が環状に隆起していた.生検で皮疹部表皮の過角化と皮疹辺縁部のcornoid lamellaを認めた.免疫染色により病変部表皮細胞がinvolucrin,PCNA,p 53に陽性を示したことから癌化の危険性が高まっていることが示唆された.

巨大嚢腫を形成した皮膚結核の1例

著者: 柴山久代 ,   加藤文美香 ,   近藤隆男 ,   満間照之 ,   原一夫

ページ範囲:P.639 - P.641

 82歳,女性.5年前から肺に異常陰影を認める.初診の2日前から,右腋窩が腫脹し,手拳大の無痛性の嚢腫を形成した.穿刺にて100mlの黄色漿液性の排液を得た.嚢腫下に索状物を認めたので生検したところ,病理組織学的にLanghans型巨細胞を含む類上皮細胞性肉芽腫の像を呈していた.Ziehl-Neelsen染色は陰性であった.ツベルクリン反応は強陽性で,右腋窩MRIで右上腕骨前面に膿瘍を示唆する所見を得た.生検部の結核菌培養は陽性であった.イソニアジド,リファンピシンの2剤併用療法で6か月後嚢腫は消失したが,創部は閉鎖していない.以上より,陳旧性肺結核から血行性に右上腕骨前面に膿瘍を形成し,皮膚の方へ痩孔をつくり嚢腫を形成したものと推察した.

皮膚クリプトコックス症の1例

著者: 宮岡由規 ,   榊哲彦 ,   滝脇弘嗣 ,   荒瀬誠治

ページ範囲:P.643 - P.645

 皮膚クリプトコックス症の79歳男性例を報告した.8年前より特発性血小板減少性紫斑病にて副腎皮質ホルモン剤を内服していた.1997年3月,悪性リンパ腫を併発し精査目的で内科入院中,両側前腕から手背部にかけ浸潤性紅斑と,両側大腿部から下腿屈側面にかけて硬結を伴う紅斑が出現した.病理組織像は,脂肪組織全体がPAS染色陽性の小型で球形の菌要素で埋められていた.滲出液の墨汁検鏡は,厚い莢膜を有する胞子を多数認めた.血液・髄液検査は明らかな異常所見を認めず,胸部X線像,胸・腹・頭部CT像とも異常陰影はなかった.しかしながらラテックス凝集反応法にて血中および髄液中のCryptococcus neoformans抗原陽性.生検組織,血液,髄液のサブローブドウ糖寒天培地による培養にて分離同定された.各種抗真菌剤を投与するも効なく死亡した.本症例は臨床像が特異であり,本邦皮膚クリプトコックス症と比較検討を行った.

Apocrine cystadenomaの1例

著者: 佐藤恵美 ,   南仁子 ,   坂井博之 ,   飯塚一

ページ範囲:P.648 - P.650

 73歳,女性の顔面に発症したapocrine cystadenomaを報告する.右鼻唇溝に生じた8mm大のドーム状に隆起した青灰色の小結節で,病理組織学的に真皮上層から皮下にかけて線維性被膜で包まれた大小の嚢腫からなる腫瘍塊を認めた.嚢腫壁は1層から数層の円柱状細胞からなり,内層細胞に断頭分泌を認めた。また,嚢腫内の一部は著明な乳頭状増殖を呈し,管状構造を示す部分があった.免疫組織化学染色では,CEA,EMAは管腔内面に,S100蛋白は管腔外側細胞に陽性で,アポクリン汗腺分泌部由来の腫瘍と考えた.

Multiple eccrine spiradenomaの1例

著者: 福永麻紀 ,   杉俊之 ,   久保和夫

ページ範囲:P.651 - P.653

 24歳,男性の前胸部から腋窩,上腕にかけて帯状に配列したmultiple eccrine spirad—enomaの1例を報告した.組織像は,真皮から皮下脂肪織にかけて薄い結合織性被膜に包まれた境界明瞭な好塩基性の腫瘍塊を認めた.腫瘍細胞は索状に増殖し一部で管腔構造を有し,ヘマトキシリンに濃染する核を持つ小型の細胞が外側に配列しヘマトキシリンに淡染する核を持つ大型の細胞が内側を形成していた.Multiple eccrine spira—denomaの本邦での報告例は自験例を含め23例あり,統計的に検討した.自験例のように帯状,線状または列序性の配列を示したものは7例のみであり,比較的稀と思われる.

Eccrine spiradenomaの1例

著者: 関姿恵 ,   田村敦志 ,   嶋岡正利 ,   石川治 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.655 - P.657

 39歳,男性.右前額部に生じたeccrine spiradenomaの1例を報告した.組織学的に小管腔構造が散在する充実性胞巣からなり,大型で明るい胞体を持つ明調細胞,小型の暗調細胞,およびこれらの間に散在性に浸潤する小型リンパ球を認めた.免疫組織化学的には,carcinoem—bryonic antigenが管腔壁の細胞と管腔内容物質に,epithelial membrane antigenが管腔構造の内腔縁と管腔内容物質に,S−100蛋白が淡明な大型細胞に陽性であり,エクリン汗腺分泌細胞への分化が示された.

甲状腺癌の皮膚転移の1例

著者: 石神光雄 ,   竹中秀也 ,   柴垣亮 ,   岸本三郎 ,   安野洋一

ページ範囲:P.659 - P.661

 甲状腺癌の摘出術後に皮膚転移をきたした69歳,男性例を報告した.甲状腺癌発症約1年6か月後より頸部,上胸部に瘙痒,疼痛を伴う浸潤性紅斑が出現し,徐々に拡大してきた.皮膚生検の病理組織学的所見より,甲状腺癌の皮膚転移と診断した.転移性皮膚癌のうち甲状腺を原発巣とするものは比較的稀であり,それらについて若干の文献的考察を行った.

連載

Clinical Exercises・88—出題と解答

著者: 熊切正信

ページ範囲:P.618 - P.618

175
帯状疱疹に伴う運動麻痺について,正しいものを選べ.
①耳介・外耳道領域ではHunt症候群を伴う.

NOTES FROM THE RICE COUNTRY・7

著者:

ページ範囲:P.662 - P.662

信頼と立証について
 皆さんは“arms race”というのをお聞きになったことがおありでしょうか.これは新しい英語の表現の一つで,医学界においても有効なものです.つまり“信頼”と“立証”ということです.皆さんは何かを読んだり聞いたりしてそれを信じても,更に実際にそれを立証する必要があるわけですね.例えばtopical anti-herpesの新薬がplaceboより2倍以上の効果が表されているグラフを見たとします.しかし実際に患者に使用してみると,placeboよりわずか半日だけ効き目が早いということもあったりするわけです.
 Journal of the American Medical Association(JAMA)1999年11月号にDrummond Rennie MDが書かれた大変大切な論説が出ております.ぜひとも読んで頂きたいと思います.彼によると製薬会社たちは同じデータをそれぞれ自社の製品に合わせて別々のものに書き上げ,そうすることによって先生方は多くの研究がなされた素晴らしい薬品だと思ってしまうわけです.しかし,実はそうではないのです.巧みにそれは隠されているのです.自社の製品を,明らかに効果のないものと比較していかに効果的であるかを訴えたり,また時に期待した結果が得られないときには,あっさり発表しないこともあります.それと製薬会社が医学雑誌にお金を出して厳しい審査なしに論文を載せることもあるわけで,そうすれば会社側は“大手”を振れるわけです.

治療

Topical haemotherapyが有効であった難治性下腿潰瘍の1例

著者: 澤田陽子 ,   青山裕美 ,   船橋美雪 ,   野田徳朗 ,   神谷秀喜 ,   北島康雄

ページ範囲:P.663 - P.665

 40歳,女性.1992年8月から,不全型Behçet病と診断され,近医で加療されていた.1995年春頃より下腿に潰瘍が多発し,徐々に拡大,増加した.様々な外用療法,ステロイドおよびシクロスポリンの全身投与を受けたが潰瘍は縮小しなかった.その後デブリードマンおよび薄目分層植皮術を施行したが,生着が不良であった.潰瘍にtopical haemotherapy(THT)を単独で開始したところ,良好な肉芽形成と上皮化がみられた.また,デブリードマンおよびメッシュ植皮術後にTHTを併用したところ植皮片の生着は良好であった.THTが有効な理由として成長因子やプロテアーゼの関与があげられているが詳細は不明である.治療抵抗性の下腿潰瘍に対して,THTは試みるべき一つの方法と考えた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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