症例報告
顔面に生じたeccrine poromaの1例
著者:
今淳1
橋本功1
花田勝美1
所属機関:
1弘前大学医学部皮膚科学講座
ページ範囲:P.970 - P.972
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41歳,女性.初診の約5年前より右眼窩下部に直径4mm,紅色調で,ドーム状に隆起する小腫瘤が出現した.病理組織学的には,表皮と連続性のない嚢腫構造が真皮の浅層から中層にかけてみられた.嚢腫壁を構成する細胞は有棘細胞よりやや小型の円形もしくは立方形の細胞であり,特に嚢腫壁の辺縁には管腔構造が著明であった.以上から自験例をeccrine poroma(Winkel—mann-McLeod型,subtype I)と診断した.Ec—crine poromaは表皮内エクリン汗管由来の皮膚付属器良性腫瘍と考えられており,好発部位は通常足蹠である.顔面の発症は比較的稀で,本邦報告例は自験例を含め17例に過ぎない.エクリン汗腺は顔面では頬および鼻尖に発達し,眼瞼では眼瞼縁のみにみられる.しかしながら,本邦報告例では眼窩部に最も多くみられ,逆に鼻部に少ないことは,顔面における発症頻度が単にエクリン汗腺の分布の点からでは説明ができず,多様な発症因子の関与が推察された.