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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科55巻14号

2001年12月発行

雑誌目次

特集 皮膚真菌症の新しい治療戦略

はじめに

著者: 西川武二

ページ範囲:P.3 - P.3

 皮膚科外来診療において足白癬をはじめとする皮膚真菌症の治療は日常的な問題で,適切な治療を施すことは皮膚科専門医の重大な任務でもあります.例えば足白癬が,患者さんの誤った自己診断や中途半端な治療などにより,なかなか治癒にいたらないような場合,専門医の適切な判断で短期間に治癒に導くことも可能です.最近は新しい経口抗真菌剤も登場し難治とされていた爪真菌症などの完治も可能となりました.一方,未だ外用剤を漫然と使用していたり,経口剤に対して依然として懸念を持っている医師も少なくありません.
 経口抗真菌剤イトリゾールは1993年の発売以来,皮膚科および内科領域の真菌症の治療に幅広く使われています.そこで,今回,イトラコナゾールによる表在性皮膚真菌症を中心に皮膚真菌症の臨床研究および国内の症例から,本剤の有用性と適正使用を「視覚」に訴え,読者の先生方にお示ししようという意図の下にまとめられたものが本特別号です.本号を先生方の診療室に置いていただくことによって皮膚科領域の真菌症の日常診療が容易となり,患者さんのQOL向上を目指すことにつながればと願っております.

Overview

皮膚真菌症の疫学

著者: 渡辺晋一

ページ範囲:P.7 - P.14

はじめに
 足白癬をはじめとした皮膚真菌症は,外来診療におけるcommon diseaseであるが,その実態は十分解明されているわけではない.そこで今までのわが国の疫学調査を紹介し,次いでJapan Foot Week研究会が行った足・爪白癬の調査結果1)を報告する.

診断—外来における真菌検査,診断のコツ

著者: 原田敬之

ページ範囲:P.15 - P.16

はじめに
 他の皮膚疾患と同様に,皮膚真菌症の治療に当たって,まずその診断を確定することが必須であることは論をまたない.特に,経口抗真菌剤を投与する際にはさらにその重要性は高くなる.真菌症と誤診された症例に延々と抗真菌剤を投与することは,単に無益というだけでなく,患者に肉体的,精神的,経済的な負担を与える.
 皮膚真菌症は典型的な臨床症状を呈する症例では診断は容易であるが,副腎皮質ホルモン剤が誤用されていたような非定型例も少なからず存在するので疑わしい例は必ず真菌学的検査を行う必要がある.皮膚真菌症の診断は臨床的な診断力とそれを裏付ける検査とが相まって確実なものとなる.前者は経験による力で,いわばカンが必要である.後者は技術で,科学的な証拠付けであり,コツが必要である.臨床経験を積んで臨床診断力に自信のある臨床家がかえって真菌学的検査を怠って誤診する傾向も否めないので,研修医時代より面倒がらずに検査を行うように習慣づけることが肝要である.

皮膚真菌症の治療方針

著者: 仲弥 ,   西川武二

ページ範囲:P.17 - P.22

はじめに
 皮膚科外来で真菌症患者の占める割合は多く,10〜18%に及んでいる.また最近,AIDSの増加に伴い日和見感染としての真菌症も増加している.このような時代の要請に応えて,新しい外用および経口抗真菌剤が次々と発売され,真菌症の治癒率も上がってきた.しかし,真菌症では似た症状を呈する他の皮膚疾患も多く,こうした優れた薬剤も,真菌検査を用いた正しい診断の下に,個々の症例に応じた適切な使い方をされなければ,宝の持ち腐れとなってしまう.

臨床研究

爪白癬に対するイトラコナゾール治療後の長期観察

著者: 飯田利博 ,   西山千秋 ,   山口全一 ,   鈴木啓之

ページ範囲:P.25 - P.30

はじめに
 最近マスコミなどで生活の質向上(QOL)が唱えられるにつれ,爪の治療を目的に医療施設を訪れる患者が徐々に増えてきている.またその中に占める爪白癬患者の割合も高い.一方,爪白癬は比較的長期の治療期間を要し,難治性のものが多いため,その治療には少なからず苦慮している.
 近年,この爪白癬に対し従来のグリセオフルビンに代わり,イトラコナゾール(1993年)をはじめ,テルビナフィン(1997年)やフルコナゾール(1989年)などの優れた経口抗真菌薬が次々に開発され,それぞれ治療効果をあげている.これら抗真菌薬の中でもイトラコナゾールは優れた選択毒性,広い抗菌スペクトラム,高い抗菌活性,また優れた組織移行性を有し,爪白癬ばかりでなく皮膚真菌症に対しても広く使用されている.しかしながら,その爪白癬に対する本薬剤を用いた最も効率的で有効な治療方法の確立はいまだなされていない.

イトラコナゾール連続療法における爪伸長速度の検討

著者: 川田暁

ページ範囲:P.31 - P.34

はじめに
 爪真菌症は患者にとって特にQOLの低下がみられる皮膚疾患の一つである1).したがって,爪真菌症の中で多くを占める爪白癬を根治的に治癒させることは極めて重要である.現在,爪白癬の根治的治療としてはイトラコナゾールやテルビナフィンなどの新しい抗真菌剤による内服治療が主流になりつつある.これらの薬剤は従来の経口抗真菌剤であるグリセオフルビンよりも臨床効果が高く,治癒率も高いとされる.しかし,日常の診療においてこれらの薬剤で治療しているにもかかわらず,爪の伸長が遅く効果の不十分な例をしばしば経験する.爪の伸長速度が経口抗真菌剤の効果にどのように影響するのか,また経口抗真菌剤内服によって爪の伸長速度が変わるのかなどの疑問に答えうる研究は少ない.そこで,筆者らはイトラコナゾールを連続で内服した爪白癬患者において,爪の伸長速度と臨床効果について検討したので,ここに報告する.

爪白癬に対するイトラコナゾール50mg/日連続服用の臨床効果

著者: 芝木秀臣

ページ範囲:P.35 - P.40

はじめに
 爪白癬の治療でイトラコナゾールの間欠療法の有効性について多数の報告1,5)があるが,厚生省が定めた保険医療養担当規則では「(爪白癬を含む)表在性皮膚真菌症では50〜100mgを1日1回食直後に経口投与する」と規定され,間欠療法は認められていない.
 爪白癬に1日1回50mg毎日連続6か月間の内服治療を試み,有効性を検討したので報告する.

第1足趾爪白癬に対するイトラコナゾール1日1回100mg連続投与による型,病爪の数,楔型症例,初期重症度分類別の治療効果の統計解析

著者: 齋藤卓也

ページ範囲:P.41 - P.45

はじめに
 イトラコナゾールは1999年6月に爪白癬の適応が承認され,多くの臨床の場で使われている.多忙な皮膚科臨床医が一目診て認識できる型,病爪の数,襖型症例,初期重症度により効果がどう違うか,それとも効果に差がないかを解析した.

イトラコナゾールおよびテルビナフィンによる爪真菌症の治療

著者: 須貝哲郎

ページ範囲:P.46 - P.51

はじめに
 爪甲白癬の治療はグリセオフルビン内服により初めて完治例をみたが,手指で1年,足趾で1年半という長期間を要したため,途中で諦める患者が大部分であった.イトラコナゾールおよびテルビナフィン内服療法はグリセオフルビンよりはるかに有効で,投与量も少なく,短期間で完治するので,患者の治そうという意欲が強く,多数の完治例をみている.
 イトラコナゾールおよびテルビナフィン内服による爪白癬の治療の実態に関して報告し,さらに両薬剤を相互に切り替えて治療を行った症例について,その効果と特徴を検討した結果を報告する.

高齢者爪白癬に対するイトラコナゾール100mg/日間欠投与療法の臨床効果

著者: 池田政身

ページ範囲:P.52 - P.55

はじめに
 爪白癬に対するイトラコナゾールの間欠投与療法(パルス療法)は,海外で広く行われており,日本でも用法・用量を検討する試験が進行中である.一方,高齢者の爪白癬は,その罹患率が非常に高いにもかかわらず,積極的な治療の対象とされてこなかった.
 そこで今回,60歳以上の爪白癬患者を対象に,イトラコナゾール100mg/日を1週間服薬,3週間休薬を1サイクルとする間欠投与療法の有用性を検討したので,若干の考察を加えて報告する.

足白癬に対するイトラコナゾール(200mg/日)間欠内服療法

著者: 小林裕美 ,   中西健史 ,   水野信之 ,   深井和吉 ,   石井正光

ページ範囲:P.56 - P.60

はじめに
 イトラコナゾールは内服終了後もなお角質内に高い貯留性があることが知られている1〜3).この特性をいかし,欧米では,爪白癬に400mg/日,手足白癬には200mg/日を1週間内服,3週間休薬する間欠内服療法が推奨され,その安全性と有用性が示されている4,5)
 本邦においても,足白癬の難治例に対し内服治療を行う際,患者からの同療法の選択希望は少なくないと考えられる.そこで,足白癬を対象に200mg/日を1か月に1週間のみ内服する間欠内服療法を行った症例を報告するとともに,この療法が患者のquality of life(QOL)に及ぼす影響についてアンケート調査の結果をもとに検討を加えたい.

症例報告

著明なQOLの改善を示した足爪白癬の1例

著者: 谷口彰治 ,   幸野健

ページ範囲:P.63 - P.64

症例
 患者:60歳,男性.農業.
 主訴:両足底および両母趾の痛み,爪変形

爪白癬のパルス療法

著者: 仲弥

ページ範囲:P.65 - P.66

症例
 患者:71歳,女.無職.
 主訴:左第1趾の爪変形.

爪真菌症—イトラコナゾールのパルス療法による治療例

著者: 比留間政太郎

ページ範囲:P.67 - P.68

症例
 爪真菌症の治療に,イトラコナゾールのパルス投与法を行ってきたが,これらの症例の中で,パルス投与1回のみしか受けていない症例について1年後の経過を調査し,興味ある結果を得た.症例は,過去4年間に,イトラコナゾールのパルス療法(1日2回,食直後に100 mg,合計1日200mgを7日間内服し,その後3週間休薬)と外用抗真菌剤の併用療法を行った84例である1).これらの症例について,1年後の経過を診察した.経過を追えた例は63例で,このうち1回のパルス投与しか受けていなかった例が8例あり,これらの詳細を表に示した.効果判定方法は,1年目に行い,治癒(健康な爪甲が完全に再生したもの),著明改善(病爪の混濁比が70%以上改善したもの),改善(40〜70%まで改善したもの),やや改善(40%までしか改善しないもの),不変(不変と悪化のほかに副作用で中止したものも含めた)とした.

胃全摘患者の手指爪白癬に対する,コカコーラを用いたイトラコナゾール内服療法が有効であった1例

著者: 齋藤卓也

ページ範囲:P.69 - P.70

はじめに
 イトラコナゾール(以下,ITCZ)はH2遮断薬と併用すると,胃酸分泌量低下のため低pH状態にならず,ITCZの消化管での溶解性が低下し,吸収が低下するとされており,併用注意とされている1).しかし,H2遮断薬の種類により吸収に有意差の生じない報告2)や,脂肪分の多い食事と併用すれば問題なく吸収されるなどの報告3)があり,胃酸との関係は詳細にはわかっていない.酸性飲料であるCoca-Cola(以下,CC)と併飲するとITCZの血中濃度が上昇するという報告4)がある.今回,筆者は,「胃全摘患者の手指爪白癬に対する,C-Cを用いたITCZ内服療法が著効した1例」を経験したので,胃全摘により胃酸の全くない状態でのITCZの吸収,C-C併用による吸収の変化,臨床症状の変化につき報告する.

イトラコナゾールの内服にて治癒した爪真菌症の1例

著者: 田沼弘之 ,   土井希文 ,   中村和哉

ページ範囲:P.71 - P.72

症例
 患者:59歳,女性,主婦.
 主訴:右第2指の爪の混濁・肥厚.

イトラコナゾール内服とLLLT併用による爪白癬の治療

著者: 庄司昭伸

ページ範囲:P.73 - P.74

症例
 患者:79歳,女性.無職.
 主訴:両揖指の爪の変色と肥厚.

いわゆる角質増殖型足白癬に対するイトラコナゾール短期投与の有用性の検討

著者: 田沼弘之 ,   土井希文 ,   中村和哉

ページ範囲:P.75 - P.76

症例
 患者:30歳,男性,建設業.
 主訴:両足蹠の角化と鱗屑.

足白癬に対するイトラコナゾールのパルス療法

著者: 渡辺晋一

ページ範囲:P.77 - P.78

症例
 患者:69歳,女性.主婦.
 主訴:足底の小水疱.

ケルスス禿瘡の1例

著者: 古谷野妙子

ページ範囲:P.79 - P.80

症例
 患者:75歳,男性.農夫.
 主訴:前頭部の痒みを伴う皮疹.

Microsporum canisによる頭部白癬—イトラコナゾールの間欠投与法による治療例

著者: 小笠原弓恵 ,   比留間政太郎 ,   中村知恵 ,   武藤正彦

ページ範囲:P.81 - P.83

症例
 患者:1歳6か月,女児,体重9.0kg.
 主訴:頭部の脱毛を伴う紅色皮疹.

顔面異型白癬の1例

著者: 大郷典子

ページ範囲:P.84 - P.85

症例
 患者:51歳,男性.
 主訴:右顔面の瘙痒性紅色皮疹.

体部白癬

著者: 足立真 ,   渡辺晋一

ページ範囲:P.86 - P.87

症例
 患者:67歳,女性.無職.
 主訴:躯幹,臀部,大腿部の痒み.

癜風

著者: 足立真 ,   渡辺晋一

ページ範囲:P.88 - P.89

症例
 患者:27歳,男性.会社員.
 主訴:前胸部の淡褐色の皮疹.

小児のスポロトリコーシス

著者: 高瀬孝子 ,   大塚藤男

ページ範囲:P.90 - P.91

はじめに
 わが国でこれまでに発表された小児のスポロトリコーシス症例は,顔面に多く,かつ固定型が多い.全体の3/4を占めるといわれる1).今回は顔面のリンパ管型の小児例にイトラコナゾールを使用した成績を述べる.

イトラコナゾールが奏効したリンパ管型スポロトリコーシスの1例

著者: 田沼弘之 ,   脇田加恵 ,   刀祢毅

ページ範囲:P.92 - P.93

症例
 患者:71歳,男性,無職.
 主訴:左手首から左前腕にかけての結節.

トラコナゾールが奏効した巨大局面状スポロトリコーシスの1例

著者: 杉浦丹 ,   海老原全

ページ範囲:P.94 - P.95

症例
 症例:73歳,男性.
 既往歴・家族歴:特記すべきことなし.

固定型スポロトリコーシスの1例

著者: 長山裕子 ,   河野志穂美 ,   五十棲健 ,   河崎昌子 ,   望月隆

ページ範囲:P.96 - P.98

症例
 患者:66歳,男性.建築業.内装関係,現場視察あり.
 主訴:左内眼角の皮疹.

爪カンジダ症とカンジダ性口角炎合併例に対するイトラコナゾールの使用経験

著者: 金子健彦 ,   岡部省吾

ページ範囲:P.99 - P.100

症例
 患者:76歳,女性.無職.
 主訴:右第2指爪の混濁肥厚,口角の亀裂.

カンジダ性毛瘡

著者: 足立真 ,   渡辺晋一

ページ範囲:P.101 - P.102

症例
 患者:49歳,男性.会社員.
 主訴:口囲の紅色丘疹

イトラコナゾールが著効した遅発性慢性皮膚粘膜カンジダ症

著者: 繁益弘志 ,   杉俊之 ,   仲弥 ,   原田敬之 ,   西川武二

ページ範囲:P.103 - P.106

はじめに
 慢性皮膚粘膜カンジダ症(chronic mucocuta—neous candidiasis,以下,CMCC)は内分泌疾患,糖尿病,鉄代謝異常,ビタミンA欠乏症,遺伝的な免疫不全症など免疫機構の異常により,皮膚や粘膜に再発性また難治性のカンジダ感染を繰り返すまれな疾患である.そして成人,特に40歳代以降に発症する場合には,しばしば胸腺腫を合併することが知られている1).筆者らはかつて,60歳で発症し重症筋無力症と胸腺腫を合併した慢性皮膚粘膜カンジダ症の症例に遭遇し,イトラコナゾールを使用したところ,劇的な効果を示した.たまたま,本症例は国際学会などで発表2,3)はしたものの,論文をまとめる機会にめぐまれていなかったので,今回,薬剤の効果を含めて報告することにした.

多発性分芽菌性間擦疹より糖尿病を見いだせた1例

著者: 齋藤卓也

ページ範囲:P.107 - P.109

はじめに
 分芽菌性間擦疹は,C.albicansを原因菌とすることが多いが,その感染力・侵襲力は弱く,感染・発症には宿主側の抵抗減弱状態が不可欠とされている.①基礎疾患の存在,②ステロイド剤,免疫抑制剤の使用,③高温度高湿度,④肥満,の4点がある.自験例では糖尿病が見いだされた.臨床経過をカラー写真で示し考察する.

くも膜下出血による意識消失,失禁患者に生じた原発性膿皮症様アスペルギルス症

著者: 加藤卓朗 ,   坂下さゆり ,   高山かおる

ページ範囲:P.110 - P.112

症例
 患者:72歳,女性.
 初診:2000年1月25日.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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