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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科55巻2号

2001年02月発行

雑誌目次

カラーアトラス

口腔カンジダ症および脂漏性皮膚炎を契機に診断されたHIV感染症

著者: 井上多恵 ,   米田耕造 ,   間宮繁夫 ,   岡田理 ,   真鍋求 ,   出光俊郎

ページ範囲:P.102 - P.103

 患者 42歳,男性,大工
 主訴 口腔粘膜疹

原著

女性化膿性汗腺炎患者の血中アンドロゲンとインスリン動態について

著者: 相澤浩 ,   新村眞人

ページ範囲:P.105 - P.107

 女性化膿性汗腺炎患者6例について,血中アンドロゲン動態と75g糖負荷試験による血中インスリン動態を検討した.血中アンドロゲン動態ではtestosteroneは5例中2例,free testo—steroneは6例中3例,dihvdrotestosteroneは5例中2例,dehydroepiandrosterone sulfateは6例中2例が高値を示した.また,body massindex(体重(kg)/身長(m)2)で25(kg/m2)以上の肥満傾向を示す症例は6例中5例であった.本症のインスリン動態を検討するため75gの糖負荷試験を施行した.血糖値の変化は異常はなかったが,血中インスリン値は反応高値を示し,軽度のインスリン抵抗性を認めた.よってインスリンのアンドロゲンとの相関関係を含め,化膿性汗腺炎の発症病理への関与についても検討する必要があると考えられた.

外来患者における毛包虫寄生の検討

著者: 永尾淳 ,   須貝哲郎 ,   安永千尋 ,   西井貴美子 ,   赤井育子 ,   田水智子

ページ範囲:P.109 - P.112

 外来患者の鼻翼部ないし鼻唇溝部から採取した皮脂を直接検鏡し,毛包虫の陽性率および検出数を検討した.酒皶で陽性率および検出数の増加が認められ,加齢によっても陽性率が増加する傾向がみられたが,検出数には関連が認められず,酒皶病変の形成に毛包虫の過剰寄生が関与していることが示唆された.アトピー性皮膚炎患者のうち,毛包虫が検出されたのは顔面へのステロイド外用剤使用者のみであった.皮脂量と毛包虫検出数の間にはほとんど相関は認められず,むしろ角層水分量のほうが,強い相関はみられないものの関連が示唆された.

臨床統計

アトピー性皮膚炎の診療に対する患者の認識についてのアンケート調査(第1報)

著者: 川島眞 ,   宮地良樹 ,   中川秀己 ,   飯塚一 ,   伊藤雅章 ,   塩原哲夫 ,   島田眞路 ,   瀧川雅浩 ,   竹原和彦 ,   橋本公二 ,   古江増隆

ページ範囲:P.113 - P.119

 全国11大学を初診したアトピー性皮膚炎患者530例に対し,アンケート調査を実施し,その集計解析結果から次の知見を得た.78%の患者が病院を変えた経験があり,理由としてその約2/3は治療法,医療側の対応に対する不満を挙げている.その結果として35%の患者が種々の民間療法を取り入れ,いずれの療法でも20%程度の患者が改善をみたのみで,時間的にも金銭的にも患者に負担を強いている.また掻破が症状の悪化につながることは明らかだが,くせで知らないうちに掻くことがあるという患者が40%にも達していた.ステロイド外用薬に対する誤解も多かったが,その効果と副作用について説明を十分に受けた患者では,納得したら使用してもよいと考えている割合が高かった.また抗アレルギー/抗ヒスタミン薬の効果も約半数は実感していた.以上より,患者との対話を重視してスタンダードな治療を進めていく努力を,皮膚科医は重ねることが大切であると考えた.

今月の症例

Löffler症候群を合併したcreeping eruption

著者: 木村佳史 ,   山上淳 ,   木村俊次

ページ範囲:P.120 - P.122

 症例は25歳,男性.1999年5月マレーシアを旅行中,両足底に紅色丘疹が出現,漸次拡大し,不規則な蛇行状線状丘疹となった.生食の既往なし.2週間後より発熱と咳嗽が出現し,胸部X線上,両側肺野に浸潤影を認めた.末梢血では好酸球が22.5%と増加,生検にてブラジル鉤虫の幼虫と思われる虫体を表皮内に認め,幼虫が移動した跡と思われる部位に好酸球の浸潤を伴う表皮内水疱を認めた.チアベンダゾールを6日間投与したところ,まもなく皮疹の伸長は停止,肺炎症状は約1か月後にはほぼ消失した.これらより,Löffler症候群を合併したブラジル鉤虫幼虫によるcreeping eruptionと考えられた.

症例報告

Pacemaker dermatitisの1例

著者: 石橋睦子 ,   水嶋淳一 ,   小林里実 ,   檜垣祐子 ,   川島眞 ,   野崎幹弘 ,   庄田守男

ページ範囲:P.123 - P.126

 72歳,女性.ペースメーカー植え込み術施行4か月後より,その被覆皮膚に紅斑が出現した.一部が結節状となり中央は潰瘍化し排膿がみられた.抗生剤に反応せず,膿の各種培養は陰性で,pacemaker dermatitisと診断した.その後潰瘍が拡大しペースメーカー本体が自然に露出したため本体を摘出し壊死組織を除去,残存するリード線をゴアテックス®で被覆したが再燃した.リード線をさらに短く切除しその断端を筋層内に埋没したが軽快せず,最終的にリード線をすべて抜去したところ治癒した.各種金属アレルゲンをはじめ,ペースメーカー本体,リード線のシリコン被膜を用いた貼布試験はすべて陰性であった.発症機序として本症例では物理的な組織の圧迫によるpressure dermatitisを考えた.

小柴胡湯による蕁麻疹型薬疹の1例

著者: 斎藤京 ,   甲斐美咲

ページ範囲:P.127 - P.129

 32歳,女性.C型慢性肝炎に対し小柴胡湯服用を開始し11日後に蕁麻疹を発症した.患者は以前小柴胡湯と五苓散の合方である柴苓湯で蕁麻疹を生じた既往があることから蕁麻疹型薬疹を疑い精査したところ,内服誘発試験と皮疹最盛期の採血による薬剤リンパ球幼若化試験(DLST)において陽性であった.小柴胡湯の副作用は間質性肺炎が内科領域で注目されているが,皮膚科領域の報告は少なく,蕁麻疹型薬疹はさらに稀である.自験例は寛解期の採血でDLSTを再検したところ陰性化していた.遅延型アレルギー反応との関連が強いDLSTを蕁麻疹型薬疹に行うことの意義やDLSTをどの病期に行うのがよいのかは現在確立されていない.しかし自験例の観察および文献的検討では蕁麻疹型薬疹においてDLSTを行うこと,皮疹出現時採血のDLSTや寛解期の再検は有意義と考えた.

小児皮膚筋炎の1例—本邦報告27例の統計的検討

著者: 渡辺昭洋 ,   浅井寿子

ページ範囲:P.131 - P.133

 ステロイドの内服が奏効した小児皮膚筋炎の1例を報告し,さらに近年の皮膚科領域における本邦報告27例を集計し,考察を加えた.症例は9歳男児.1997年3月下旬頃から耳介と顔面に紅斑が出現した.初診時に,両手の手指関節背面に小豆大までの角化性紅斑を,全手爪囲には紅斑を,さらに爪上皮の軽度な延長と点状出血を認めた.血液検査で軽度の肝機能障害とアルドラーゼの上昇を示した.顔面と手背の紅斑の皮膚生検にて,いずれも基底層の液状変性,真皮上層の血管周囲性の小円形細胞浸潤を認めた.プレドニゾロン投与(10mg/日により皮膚症状は軽快した.その後ステロイドを減量し,治療開始後18か月で中止したが皮膚・筋症状の再燃はみられない.皮膚症状が先行する小児皮膚筋炎では,特徴的な皮疹より早期に診断し治療を開始することが,予後の上でも重要である.

皮膚病変を契機に診断したCrohn病の1例

著者: 田島麻衣子 ,   小林誠一郎 ,   木花いづみ ,   藤森斉

ページ範囲:P.135 - P.137

 41歳,男性.数年来下腿に出没する皮下結節,潰瘍を主訴に来院し,精査の結果,消化管病変が認められ,Crohn病の診断に至った.皮下結節部の生検組織では真皮深層から皮下脂肪織にかけて非乾酪性肉芽腫の形成が認められ,metastatic Crohn病の概念に一致した.本症の報告は稀であり,若干の文献的考察を加えた.

G-CSF投与中にSweet病が発症したmyelodysplastic syndromeの1例

著者: 野田洋介 ,   岸本三郎 ,   安野洋一 ,   杉山祐介 ,   岩井俊樹

ページ範囲:P.138 - P.140

 54歳,男性.Myelodysplastic sylldromeの治療のためgramllocyte cololly-stimulating factor投与を約3か月間継続中,39℃台の発熱とともに顔面,両上肢に紅斑,膿疱,水疱が出現した.病理組織学的には真皮上層の著明な浮腫と,真皮全層にわたり好中球を主体とする核崩壊像を伴う炎症性細胞浸潤が認められSweet病と診断した.副腎皮質ステロイドの全身投与にて皮疹は速やかに軽快した.しかし,granulocyte colony-stimulating factorの継続投与により副腎皮質ステロイドの漸減とともに皮疹の再燃を認めた.

肺に浸潤を認めた全身性形質細胞増多症

著者: 本橋尚子 ,   湊原一哉 ,   音山和宣 ,   佐藤貴浩 ,   横関博雄 ,   西岡清

ページ範囲:P.141 - P.144

 35歳,男性.1989年に体幹に小豆大の暗紫褐色類円形結節が出現した.病理学的には真皮上層および付属器周囲の形質細胞を主体とする細胞浸潤.表在リンパ節腫脹,高γグロブリン血症,脾腫より全身性形質細胞増多症と診断した.10年間皮膚病変に対する治療のみで経過観察していたが,1998年に肺野の浸潤影の増強を認め,経気管支肺生検にて形質細胞の浸潤,リンパ濾胞の形成がみられ,リンパ球性間質性肺炎と診断された.全身性形質細胞増多症,および同一疾患と考えられる多中心型Castleman病,idiopathic plasmacytic lymphadenopathy with polyclonal hypergammaglobulinemiaは良性に慢性経過することが多いとされているが,リンパ球性間質性肺炎は進行性であるため合併の有無およびその程度につき注意深い観察が必要と考えられた.

道化師の鼻

著者: 藤田伸弘 ,   宇谷厚志 ,   新海浤

ページ範囲:P.146 - P.148

 53歳男性にみられた道化師の鼻(clown nose)と呼ばれる特徴的な臨床像を示す食道癌の皮膚転移を経験した.本邦における食道癌の皮膚転移の報告は,顔面,特に鼻への転移が多い.鼻の急速に増大する結節に遭遇した場合,食道癌をはじめとする内臓悪性腫瘍の皮膚転移を念頭におくべきと考えた.

大型の結節を形成し,経過中に黄色腫を形成した持久性隆起性紅斑

著者: 木村久美子 ,   小泉洋子 ,   安倍将隆 ,   横田浩一 ,   大河原章 ,   芝木秀臣

ページ範囲:P.149 - P.151

 81歳,女性.約2年前より,両膝関節伸側および両足関節外課に暗紫紅色,弾性硬の結節が出現し,著明に隆起してきた.組織学的に真皮内の稠密な炎症細胞浸潤を伴う壊死性血管炎と線維化を認め,全身検索では特に基礎疾患を認めなかった.持久性隆起性紅斑と診断し,ジアフェニルスルホン50mg/日内服後,2か月で結節は著明に縮小,扁平化し黄褐色調を呈した.組織学的には,治療前の所見に加えて,泡沫細胞の著明な浸潤,増生と線維化の増強を認めた.

大腿部に生じたグロムス腫瘍の1例

著者: 神谷篤 ,   安藤浩一

ページ範囲:P.154 - P.155

 54歳,男性.初診の2年前に右大腿部の有痛性皮下結節に気づいた.全摘出術を行い,病理組織学的に大小さまざまの血管腔周囲に類上皮細胞様細胞の増殖を認めたため,グロムス腫瘍が疑われた.免疫組織化学的所見で,これらの腫瘍細胞は,ビメンチン,α-smooth muscle actinに陽性,デスミン陰性であり,グロムス細胞として矛盾しない所見であった.大腿部は比較的稀な発生部位と考えられた.

ヒト乳頭腫ウイルス16型が検出されたbowenoid papulosisの1例

著者: 嶋田聖子 ,   三石剛 ,   吉原伸子 ,   川島眞 ,   岩崎琢也 ,   松倉俊彦

ページ範囲:P.156 - P.159

 20歳の女性にみられたbowenoid papulosisの1例を報告した.外陰部に自覚症状を欠く灰褐色小結節が多発しており,皮膚生検では限局性の表皮の増殖性病変がみられ,核異型やclumping cell,核分裂像を認めた.免疫組織学的にヒト乳頭腫ウイルス(HPV)抗原は陰性であったが,生検組織より抽出した全DNA中に,Southern blot hybridization法によりHPV 16型のウイルスゲノムを検出した.さらに,ビオチン標識HPV 16型DNAをプローブとしたin situ hybridization法により,病変部の有棘層上層の核内に陽性シグナルを検出し,この病変がHPV 16型の感染によることを確認した.

臍部に生じた悪性黒色腫の1例

著者: 曽我部陽子 ,   永井弥生 ,   原敬 ,   関原正夫 ,   都築靖

ページ範囲:P.160 - P.162

 64歳,男性.臍部に22×17mmの黒褐色の結節を認めた.悪性黒色腫の臨床診断で,辺縁は3cm離し,臍部では腹膜まで含めて切除した.術後化学療法を施行し経過を観察中である.臍部に生じた悪性黒色腫は非常に稀であるが,一般にその解剖学的特徴から予後不良とされている.治療法方針や予後についての,今後の症例の蓄積が待たれる.

顔面に生じたaneurysmal fibrous histiocytomaの1例

著者: 井上利之 ,   野本正志 ,   荒瀬誠治

ページ範囲:P.163 - P.165

 46歳,男性の顔面に生じたaneurysmalfibrous histiocytomaの1例を報告した.鼻根部に径2Cmの皮下腫瘤を認め,表画は正常皮膚色で疼痛などの自覚症状はなかった.病理組織学的所見では皮膚線維腫細胞集塊内に血液に満ちた空隙を認めた.空隙壁には腫瘍細胞,泡沫細胞,ヘモジデリンを認めたが内皮細胞を欠いていた.顔面に生じた本症の報告は少なく,若干の文献的考察を加えて報告した.

色素血管母斑症(IIa型)の1例

著者: 藤井紀和 ,   森紀子 ,   出口英樹 ,   望月隆 ,   加地明 ,   杉浦久嗣 ,   上原正巳

ページ範囲:P.166 - P.168

 61歳,男性.出生時より胸部,項部,上背部,両上肢および大腿伸側に赤色斑があり,背部から臀部の広い範囲に青黒色斑があった.右上背部と左下背部で両者が重なって存在した.また,53歳時,赤色斑上に赤色の丘疹,結節が出現した.赤色斑部の病理組織像は真皮上層の血管増生と拡大であり,青黒色斑部では基底層のメラニンおよび真皮メラノサイトの増加が認められた.また全身性病変は認められなかった.以上より自験例を色素血管母斑症(長谷川-安原分類IIa型)と診断した.自験例では出生時から現在まで赤色斑および青黒色斑の色調および範囲の著明な変化は認められなかった.

全身の紫斑にて発症したT細胞リンパ腫の1例

著者: 古瀬忍 ,   佐藤伸一 ,   高田実 ,   竹原和彦 ,   馬淵智仁 ,   加藤文彦 ,   朝倉英策

ページ範囲:P.171 - P.174

 65歳,男性.1997年8月22日初診.11日前より全身に瘙痒感を認め,翌朝,両下肢に紫斑が出現し,徐々に体幹,上肢に拡大してきた.組織学的所見では真皮血管周囲性にリンパ球様異型細胞の浸潤を認め,免疫組織学的検査にて,CD 3, HLA-DRおよびLCAに陽性を示した.末梢血で異型リンパ球(4%)が出現し,リンパ節および骨髄の生検標本で異型リンパ球の増殖を認め,免疫染色ではCD 3に陽性を示した.以上より白血病化したT細胞リンパ腫と診断した.紫斑はその特異疹と考えられた.

Primary cutaneous marginal zone B-cell lymphomaの1例

著者: 高塚純子 ,   河井一浩 ,   石井美奈 ,   伊藤雅章

ページ範囲:P.175 - P.178

 70歳,男性.約4年前,左前腕に自覚症状を伴わない紅色腫瘤が出現し,1年前より,体幹,四肢にも皮疹が新生した.組織学的には,表皮向性を伴わない真皮浅層から皮下組織に及ぶ稠密なリンパ球,形質細胞の浸潤を認めた.浸潤リンパ球の主体は,CD 20 CD 5 CD 10のmonocytoid B cellで,形質細胞はIgκ鎖優位であった.皮膚生検組織の遺伝子解析で,IgH鎖遺伝子のモノクローナルな再構成を認めた.リンパ節・他臓器病変はない.Primary cutaneous marginal zone B-cell lymphomaと診断し,無治療で経過観察中である.皮膚原発B細胞リンパ腫の分類には混乱があるが,primary cutane—ous marginal zone B-cell lymphomaの分類上の位置づけについて考察した.

連載

Clinical Exercises・95—出題と解答

著者: 小澤明

ページ範囲:P.162 - P.162

189
帯状疱疹に対する抗ウイルス薬内服療法において,バラシクロビルの用量・用法は次の症例ではどれか.
症例:62歳,男,64kg,基礎疾患なし.

海外生活16年—出会った人・学んだこと・2

著者: 神保孝一

ページ範囲:P.190 - P.190

日米色素細胞学会と故・清寺真教授
 日米色素細胞学会(US/Japan Pigment Seminar)は1969年10月29日に東京で開かれた.その内容に関しては“Biology of Normal and Almormal Melanocyte”として,当時の東京大学皮膚科・川村教授,東北大学皮膚科・清寺教授,および,Harvard大学皮膚科・Fitzpatrick教授の3名のeditorsによって出版されている.この学会は当時の皮膚科学国際学会で最も画期的なものの一つで,日米の色素細胞を研究している学者(これには皮膚科を専攻する者のみならず,生物学,生化学者を含む)が一堂に会し,当時の最新の研究情報の交換を行った.この会の中心的役割を果たしたのは,当時,東京医科歯科大学から東北大学へ移ったばかりの清寺教授であったが,同教授は久木田教授らの後にOregon大学からHarvard大学に移ったFitzpatrick教授の下でメラニン生成の研究に従事した.以来,清寺教授は世界的に最も著名な色素細胞学者の一人として多くの研究業績をあげられたが,特筆すべきことは,melanosomeという概念を初めて明らかにしたことである.日本に帰国後,現在の色素細胞学会の元となるPigment Cell Clubを開設し,そのclubの中で日本の色素細胞研究の発展の基礎を築かれた.清寺教授の多くの著作の中で,私が最も心打たれているのは,『皮膚の生化学』(金原出版株式会社)である.私自身,皮膚科学の研究を始めるときに,Rothmanの“Physiology and Biochemistry of the Skin”に加え,『皮膚の生化学』をバイブルとして何度も読ませて頂いた.
 1969年のPigment Cell Seminarには多くの学者が参加されたが,ことにLerner教授(Yale大学)はhormone(MSH, ACTH)がmelanin形成を刺激する際,cyclic AMPがsecond messengerとして重要であることを強調された.前神戸大学皮膚科・三島教授は,当時Wayne大学におり,chloropromazinを用いた抗黒色腫放射線療法を報告したが,これはその後先生が長く研究されている10Boronを用いたneutron capture療法の基礎となるものである.川村教授は母斑細胞のhistogenesisについて報告し,ことに神経堤細胞の異常分化として色素性母斑細胞を位置付けていた.当時,Fitzpatrick教授下で仕事をしていた前東京逓信病院・戸田先生はmelanosomeのStage Iの概念について報告された.清寺教授はこの会において,melanin形成におけるtyrosinaseに対する阻害物質について話された.

治療

ロキシスロマイシンが有効と思われた融合性細網状乳頭腫症の1例

著者: 小松威彦 ,   石丸咲恵 ,   山本卓 ,   北村啓次郎

ページ範囲:P.179 - P.182

 偶然にロキシスロマイシン(RXM)を投与し,有効と思われた融合性細網状乳頭腫症を経験した.症例は15歳,女性.3年間持続した皮疹のため当科を受診したが,生検後,皮疹が軽快していることに気がついた.試みに生検時に投与したRXM(ルリッド®)を再開したところ,速やかに,完全に消失した.その後2回の再発時も同様であり,RXMが奏効した可能性が考えられた.

リサーチ・トレンド

皮膚T細胞リンパ腫:25年の軌跡と21世紀への展望

著者: 瀧川雅浩

ページ範囲:P.183 - P.187

 菌状息肉症(MF),Sézary症候群(SS)およびある種の皮膚リンパ腫がT細胞由来であることから,これらを一括したcutaneous T cell lym—phoma(CTCL)という概念が25年前にEdelsonにより提唱された1).その後,免疫学の進歩とともにCTCLの考え方,治療法などに大きな変遷がみられた.今回,New York Academy of Sci—ences, Yale大学の共同スポンサーによりCTCLの基礎研究のこれまでの総括と新しい治療への方向性をめぐる研究会が開かれた(図).

印象記

「第9回ヨーロッパ皮膚性病学会(EADV)」印象記

著者: 川田暁

ページ範囲:P.188 - P.189

EADV(European Academy ofDermatology and Venereology)とは
 第9回ヨーロッパ皮膚性病学会(以下EADV)がスイスのジュネーブのPALEXPOという会場で2000年10月11〜14日に行われた.会頭は雑誌DermatologyのChief Editorであるジュネーブ大学のSaurat教授であった.ESDR(European Society for Dermatological Research)が基礎研究中心であるのに対し,EADVは臨床研究が主体の学会である.
 初日の11日にはEADVの11の各関連学会(Sister Societies)による特別プログラムが組まれた.12〜14日がEADVのプログラムで,Plenary Lectureが3,シンポジウムが26,ワークショップが32,教育コースが12であった.一般演題はポスター発表でなんと909演題を数えた.その内訳をみると,細菌・真菌感染症が102題,皮膚腫瘍が76題,自己免疫・内科疾患が70題,乾癬およびその関連疾患が61題,骨髄由来細胞による疾患が56題,光関連が52題,STDが52題の順であった.この演題の傾向は日本皮膚科学会総会やアメリカのAADと大きく異なっており,興味深かった.その他,サテライトシンポジウムが15件,ランチョン・セミナーが6件あった.本稿では私が参加した中で興味をひいたものを紹介したい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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