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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科55巻3号

2001年03月発行

雑誌目次

カラーアトラス

Penile Mondor's phlebitis—Superficial dorsal penile vein thrombosis

著者: 青木見佳子 ,   川名誠司

ページ範囲:P.198 - P.199

 患者 44歳,男性
 既往歴 外陰部の外傷,感染症,過度の性行為の既往はない.

原著

深部静脈血栓症

著者: 宮島進 ,   山本隆之 ,   西村雅恵 ,   岡田奈津子 ,   長谷川順一 ,   門場啓司 ,   小林伸行

ページ範囲:P.201 - P.205

 深部静脈血栓症は早期の的確な診断と治療を必要とされる疾患である.今回我々が経験した深部静脈血栓症の3例を呈示し,その報告と併せて文献的考察を行った.3例とも片側性の下腿,あるいは下肢全体に突発性の疼痛,腫脹で発症した.2例は静脈造影で深部静脈の血栓が確認され,1例は腹部CTにて下大静脈から左腸骨静脈に血栓が認められた.ヘパリン,ウロキナーゼの点滴による抗凝固,線溶療法で症状の改善がみられたが,治療開始の遅れた1例は症状が遷延した.肺塞栓等の重篤な合併症はみられなかった.

皮膚筋炎患者28例の臨床的検討—特に皮膚症状について

著者: 石橋睦子 ,   石黒直子 ,   伏見英子 ,   瀬川聡子 ,   川島眞 ,   肥田野信

ページ範囲:P.206 - P.211

 1979年から1998年までに当科で経験した皮膚筋炎患者28例について臨床的に検討を加えた.平均発症年齢は42歳で,27例(96.4%)が発症時に皮膚症状を認め,なかでも顔面の紅斑が多く,次いでGottron徴候,ヘリオトロープ疹が高率に認められた.28例中経過不詳の1例を除く27例(経過観察期間:初診後17日から19年)において,2例は臨床上も検査上も明らかな筋炎所見を認めなかったが,残りの25例での筋症状の出現時期は,発症後3か月以内が10例(40%),3〜12か月が11例(44%)と1年以内が多数を占めたが,1年以上も3例(12%)みられた(不詳1例).28例中15例(53.6%)で間質性肺炎,1例(3.6%)で悪性腫瘍の合併を認めた.急性間質性肺炎を認めた4例中1例は,組織学的に膜嚢胞性病変を伴う脂肪織炎からなる皮下硬結のみを初発症状としたが,7か月時に合併した間質性肺炎が急速に進行し死亡に至った.

今月の症例

多発性脂漏性角化症を合併したlymphomatoid papulosisの1例

著者: 小芦雄介 ,   苅谷清徳 ,   小林桂子 ,   辻卓夫 ,   守宣男

ページ範囲:P.212 - P.214

 42歳,女性.中学生頃から四肢,体幹,顔面に自覚症状を欠く紅色丘疹が散在性に出現し,新生,消退を繰り返し,同時期から体幹を中心に黒褐色丘疹が出現し始め,徐々に増加してきた.黒褐色丘疹の組織所見は脂漏性角化症で,紅色丘疹は真皮上層に大型異型リンパ球,好酸球,好中球,リンパ球が密に浸潤し,大型異型細胞はCD30陽性であるためlymphomatoid papulosisと診断した.紅色丘疹の遺伝子解析ではTCRCβ1,TCR Jγに再構成は認めず,Epstein-Barrウイルスは既往感染,HTLV−1抗体,HIV抗体は陰性であった.多発性脂漏性角化症とlymphomatoid papulosisが同時に発症していることから,両者の間に何か因果関係があるのではないかと考えられた.

症例報告

中高年女性に生じた播種状型あるいは汗疹型皮膚カンジダ症の2例

著者: 青山浩明

ページ範囲:P.215 - P.217

 1999年夏に58歳女性と71歳女性の播種状型あるいは汗疹型皮膚カンジダ症を経験した.2例とも頸部から体幹,上腕の被覆部位に薄い膜状の鱗屑と一部小膿疱を伴う直径1〜3mmの紅色丘疹が急激に多発した.いずれも検鏡で仮性菌糸と出芽胞子がみられた.成書では乳児の皮膚カンジダ症の一型として播種状型あるいは汗疹型皮膚カンジダ症の記載があるが,成人例の記載や報告は近年ほとんどなく稀な病型と思われる.2例とも免疫低下を考えさせる基礎疾患や検査所見はなく,また,先行する分芽菌性間擦疹も認めなかった.1999年夏の猛暑とそれによる多汗,多湿が発症の誘因になったものと推察した.

縦隔部のリンパ芽球性リンパ腫が原因となった上大静脈症候群の1例

著者: 佐山重敏 ,   田邊洋 ,   吉田紀子

ページ範囲:P.220 - P.222

 34歳,男性に生じた上大静脈症候群の1例を報告した.主要症状は急激に生じた顔面の腫脹であった.上大静脈症候群を起こした原因は縦隔部に生じたリンパ芽球性リンパ腫によるリンパ節腫脹であった.化学療法と放射線照射療法で縦隔部のリンパ節が縮小するとともに顔面の腫脹も消失した.ステロイドの全身投与が症状の改善にある程度有効であった.

シクロスポリン投与中内臓悪性腫瘍を合併した皮膚筋炎の2例

著者: 永尾圭介 ,   石橋正史 ,   佐藤友隆 ,   杉浦丹

ページ範囲:P.223 - P.225

 皮膚筋炎の2例を報告した.両症例とも数回にわたる全身検索にて内臓悪性腫瘍は認めなかった.シクロスポリン投与中,症例1はstage IIIbの肺癌,症例2は原発性不明悪性腫瘍の肝・骨多発性転移を認めた.シクロスポリンによる腫瘍の発育および転移が促進されたことが考えられた.免疫抑制剤を長期投与した場合,腫瘍免疫が低下するため内臓悪性腫瘍の合併リスクが高まることが知られている.最近シクロスポリンは腫瘍細胞への直接作用にて発育・転移の促進をすることが証明された.シクロスポリンは現在ステロイド抵抗性皮膚筋炎や間質性肺炎合併例の治療において有用な薬剤であるが,皮膚筋炎の悪性腫瘍合併率を考慮すると適応は慎重に決定すべきである.シクロスポリンと悪性腫瘍につき文献的考察も加え報告した.

チアマゾールによって誘発された落葉状天疱瘡の1例

著者: 中村裕之 ,   古屋和彦 ,   筒井理裕

ページ範囲:P.226 - P.228

 薬剤誘発性天疱瘡の原因薬剤は,構造式中に遊離のSH基を持つ薬剤であることが多い.抗甲状腺剤であるチアマゾールもSH基を含み,かつその使用頻度が高いのにもかかわらず,天疱瘡誘発の報告は意外にもきわめて少ない.筆者らは,41歳女性の,本剤による落葉状天疱瘡の1例を経験した.皮疹は内服開始3か月後(総量940mg)に生じ,初め躯幹の多発性浮腫性紅斑,次いで紅斑上に水疱を形成し,落葉状天疱瘡様となった.組織像,免疫蛍光抗体法による所見も特発性落葉状天疱瘡と類似した.チアマゾール内服中止後1か月半で皮疹は速やかに消失し,以後再発をみない.本剤による報告例がきわめて少ないことから,実際の天疱瘡発生率もきわめて稀であると想像されるが,やはり留意すべき原因薬剤の一つであると考えた.

塩酸ミノサイクリンによるhypersensitivity syndromeの1例

著者: 慶田朋子 ,   神田憲子 ,   石黒直子 ,   川島眞

ページ範囲:P.230 - P.232

 76歳,男性の塩酸ミノサイクリンによるhypersensitivity syndromeの1例を報告した.慢性腎不全にて当院内科に入院中に,肺炎に対して24日間塩酸ミノサイクリンの100mg/日の点滴が施行され,症状改善により中止した2日後より躯幹,四肢に紅斑が出現した.初診時の検査所見では貧血と好酸球数の増加,肝障害を認めた.抗アレルギー剤の内服,ステロイド軟膏の外用にて皮疹は軽快傾向を示したが,鼠径部のリンパ節腫脹と発熱に対して塩酸ミノサイクリンが再投与されたところ,紅斑と丘疹の再燃を認めた.病理組織像は苔癬型組織反応を呈した.発症約9週目のヒトヘルペスウイルス6IgG抗体価は40倍から160倍に上昇した.皮疹は軽快増悪を繰り返し,全経過約3か月で色素沈着を残して治癒した.

多発単神経炎を伴ったRothmann-Makai症候群

著者: 大森謙太郎 ,   幸田衞 ,   植木宏明

ページ範囲:P.234 - P.236

 42歳,女性.初診の約3週間前より体幹に拇指頭大までの有痛性皮下結節が出現し,左右対称性に四肢にも拡大した.ほぼ同時期に四肢に知覚異常が出現したが,発熱,関節痛などの全身症状は認めず,明らかな検査値異常も認めなかった.病理組織学的には血管のフィブリノイド変性を伴うlobular panniculitisの像で,除外診断からのRothmann-Makai症候群と診断した.少量のステロイドにて皮下結節は速やかに消退傾向を示したが,単神経炎は残存した.自験例で認められた単神経炎は血管炎によって惹起された可能性が強く,本症の発生病理の一つとして血管炎の存在も示唆される症例であった.

Unilateral nevoid telangiectasiaの1例

著者: 辻ひとみ ,   久保等 ,   飯塚一

ページ範囲:P.238 - P.240

 23歳,女性.妊娠26週頃から左上背部,左胸部,左上肢に,限局性に無症候性の血管拡張が出現,出産3か月後に皮疹は消失した.2度目の妊娠時においても同部位に血管拡張が出現し,出産2か月後には消失した.組織学的には真皮上層に毛細血管拡張を認めた.免疫組織化学的検索ではエストロゲンレセプター,プロゲステロンレセプターとも拡張した血管内皮細胞に陽性所見を認めなかった.

妊娠中に生じた毛細血管拡張性肉芽腫

著者: 永井弥生 ,   清水晶 ,   石川治

ページ範囲:P.241 - P.243

 妊娠中に手指に生じた毛細血管拡張性肉芽腫の3例を報告した.症例1:27歳女性.妊娠37週より左第4指に出現.出産2週間後に切除した.症例2:26歳女性.妊娠38週より右第1指に出現,生検のみで経過観察したところ,出産6週後に自然消退した.症例3:25歳女性.妊娠39週より右第3指に出現.出産後も不変のため,出産2か月半後に切除した.いずれも,組織学的に毛細血管拡張性肉芽腫と診断した.妊娠中に生じる本症の多くは口腔内の症例であり,皮膚に生じた報告は少ない.口腔内の報告では,妊娠との関連として血中エストロゲン,プロゲステロンが上昇することの関与が指摘されている.自験例においても,3例ともにこれらのホルモン値が最も上昇する妊娠後期に生じたこと,出産後に自然消退した例が存在したことより,同様の関連が示唆された.

組織学的に悪性像を伴ったtrichilemmal hornの1例

著者: 牟田麻理子 ,   伊藤治夫 ,   繁益弘志 ,   原田敬之

ページ範囲:P.246 - P.248

 85歳女性の右膝窩に生じた皮角を全摘した.組織学的にはtrichilemmal keratinizationを伴い,一部U字型に肥厚,増殖する上皮とその上部の厚い角質増殖よりなる腫瘍であり,Brownsteinの提唱したtrichilemmal hornに合致すると思われた.しかし,腫瘍巣内にBowen病様の悪性所見が散見された.同様の報告例は過去にも少数ながら存在する.疾患名の妥当性や自験例における悪性所見の意義について若干の考察を加えた.

Verruciform xanthomaの1例

著者: 下瀬川雅子 ,   大原学 ,   赤坂俊英

ページ範囲:P.250 - P.252

 91歳,男性のverruciform xanthomaを報告した.陰嚢左側に大豆大の有茎性腫瘤を認めた.組織学的に,表皮の角質増生と著明な乳頭腫様増殖,および真皮乳頭部に泡沫細胞の増殖と形質細胞を主体とした細胞浸潤を認めた.浸潤泡沫細胞は抗S−100蛋白抗体陰性であった.

Pagetoid Bowen病の1例

著者: 薮並英夫 ,   永山博敏 ,   鈴木良夫

ページ範囲:P.253 - P.255

 74歳,男性.5年前より左下腹部に難治性色素斑が出現し,痂皮化,脱落を繰り返しながら徐々に拡大.臨床的にはBowen病の像を呈したが,組織学的には大型で明るい胞体を持つPaget様細胞が病巣内に多数認められた.Extramam—mary Paget病,pagetoid Bowen病,malignantmelanoma in situなどが鑑別疾患として考えられたが,特殊染色および免疫組織学的にpagetoid Bowen病と診断した.

Bowen癌の局面内に生じたMerkel細胞癌

著者: 古川裕利 ,   元木良和 ,   金子史男

ページ範囲:P.256 - P.258

 92歳,女性.20年前に左腰部をストーブに接触して熱傷を受傷した.6年前より同部に紅斑局面が出現,3か月前より隆起してきたため当科を受診.左腰部に浸潤を伴う淡紅色紅斑局面があり,その局面上にびらん,壊死を伴う紅色腫瘤を認めた.紅斑局面部の表皮内では極性を失った異型表皮細胞が個細胞角化やclumping cellを伴いながら増殖しており,腫瘤部の真皮内では小型で類円形の核を持つ好塩基性腫瘍細胞がびまん性に浸潤していた.一部では表皮性腫瘍と真皮内好塩基性腫瘍は混在していた.互いの腫瘍細胞の移行像はなかった.真皮内腫瘍部では,neuron—specific enolase染色およびkeratin 20染色が陽性を示し,Bowen癌の局面内にMerkel細胞癌が合併したものと考えた.

陰茎癌の1例

著者: 杜一原 ,   斉藤隆三 ,   田島政晴 ,   澤村良勝 ,   松島正浩 ,   高橋啓

ページ範囲:P.259 - P.261

 84歳,男性.生来,仮性包茎で,包皮下の腫瘤を主訴として受診.受診時に包皮の翻転はできず,陰茎背側の包皮下に拇指頭大の硬結を触知し,両側鼠径リンパ節の腫脹も認めた.カラードプラー超音波検査では腫瘍部に豊富な血管像がみられた.背面切開術を施行したところ,亀頭冠状溝から陰茎体部背側にかけて約3.2×5.0cmの潰瘍を伴う易出血カリフラワー状腫瘍を認め,生検では中等度分化型有棘細胞癌であった.SCC値上昇のため他臓器の検索を行ったが,いずれも異常はなかった.以上より陰茎癌(Jackson分類stage II, TNM分類T2N0M0)と診断し,ペプロマイシンによる術前術後化学療法,陰茎切断術,鼠径リンパ節郭清術を施行した.

頸部のspindle cell lipomaの1例

著者: 経隆紀 ,   松井千尋 ,   諸橋正昭 ,   長谷川義典

ページ範囲:P.262 - P.264

 69歳男性の後頭部に出現したspindle cell lipomaの1例を報告した.臨床的には自覚症状のない可動性良好の皮下腫瘤であったが,病理組織学的所見上,腫瘍辺縁は明らかな被膜を欠き,一部境界不明な部分もみられた.腫瘍内部は脂肪細胞,紡錘形細胞,膠原線維の増殖が混在し,部位によって多様な組織像を呈し,肥満細胞が散見された.特殊染色上,腫瘍細胞はdesmin陽性でfibroblast系細胞起源が示唆された.自験例のように周囲浸潤,癒着を伴う場合は治療,経過観察には慎重な対応が必要と思われた.

Atypical cutaneous fibrous histiocytomaの1例

著者: 有田賢 ,   谷藤順士 ,   吉田豊

ページ範囲:P.265 - P.267

 症例は28歳,女性.右前腕に黒色調の小丘疹が出現し,徐々に増大した.組織学的に,全体としてcutaneous fibrous histiocytomaの特徴を有していたが,一部に異型細胞の増殖を認め,atypical cutaneous fibrous histiocytomaと診断した.腫瘍組織の残存があり,追加切除を施行し,現在再発を認めない.同様に真皮上層に出現し異型細胞を認める腫瘍としてatypical fibro—xanthomaがあるが,異型細胞の増殖が部分的であること,組織学的にgrenz zoneの存在を認めたことなどから鑑別した.

陰茎に生じた悪性黒色腫の1例

著者: 谷戸克己 ,   石地尚興 ,   伊丹聡巳 ,   上出良一 ,   新村眞人

ページ範囲:P.269 - P.272

 59歳,男性.生下時より陰茎茎部に黒色斑を認めた.初診の約2年前より黒色斑が拡大,半年前より中心部に小豆大の腫瘤が生じてきた.陰茎原発の悪性黒色腫の診断で術前にDAV・フェロン療法を1クール施行後,陰茎を温存し,陰茎皮膚広範切除術と分層植皮術および両側鼠径リンパ節郭清を施行した.Breslow's tumor thick—nessは4.0mmでTNM分類ではpT3bN0M0で現在まで再発なく3年を経過している.陰茎という特殊な部位に生じた悪性黒色腫における治療方針について文献的考察を加えた.

連載

Clinical Exercises・96—出題と解答

著者: 片山一朗

ページ範囲:P.243 - P.243

191
アレルギー性接触皮膚炎につき正しい組み合わせを選べ.
①アレルギー性接触皮膚炎の原因物質はハプテンとよばれる蛋白抗原である.

海外生活16年—出会った人・学んだこと・3

著者: 神保孝一

ページ範囲:P.277 - P.277

カリフォルニア大学Blois教授とワシントン大学Odland教授
 私がボストンのハーバード大学に留学するために日本を発ったのは1970年の6月である.当時私はまだ大学院の3年次学生であったが,特別留学という形で大学院に在籍のまま留学をすることができた.日本からの出発に際しては,当時,関東逓信病院皮膚科部長であられた故・安田利顕先生と東京逓信病院皮膚科部長であられた故・小堀辰治先生が,私のために送別会を開いてくださり,3人で食事をしたことを覚えている.当時はまだ1ドルが360円の時代であり,また,海外への持ち出しのドルも制限を受けており,一人1000ドルが上限であった.
 私は羽田からまずサンフランシスコに飛び立ち,University of California,Medicanl CenterのBlois教授とそのお弟子さんのThathachari先生とお会いした.これは私が日本を出発する前に大学院生時代に学位論文として研究を行っていたときに偶然発見した所見の学問的意義に対する示唆をうるためである.これは人工的にドーパ・メラニンを作成し,それを白色マウスのhind foodpadにうち,局所領域リンパ節(鼠径部,膝窩部)等への運搬系路を研究していたが,その際,領域リンパ節に達したメラニンは一定の約4Åの等間隔をもつ格子状構造を呈していた.当時,メラニンの化学構造についてはまったく分かっておらず,2つの説があった.つまり,インドール・メラニン重合体が単一polymerを形成するというhomopolymer説と,異なったインドール体が重合するheteropolymer説の2説があり,個々のインドール連合体がどのような結晶構造等を呈しているかについては不明であった.そこで私の所見が丁度Blois教授らの提唱していたメラニンのpolymer説の理論的化学構造と偶然よく一致したことであった.私自身これら所見を更に整理し,実際に論文として発表したのは1984年であった1).

治療

疥癬に対するイベルメクチンの効果—1例報告と当科における25例の検討

著者: 樹神元博 ,   小林誠一郎 ,   谷川瑛子 ,   竹内勤 ,   座覇修 ,   斎藤厚 ,   田中勝 ,   西川武二

ページ範囲:P.273 - P.276

 71歳,男性.8か月前から陰部に瘙痒感を伴う皮疹が出現した.近医にて治療されるも軽快せず全身に拡大したため当科を受診した.初診時,躯幹,四肢,頸部に紅斑および小丘疹,漿液性丘疹と掻破痕,両手,両足には落屑,亀裂を認めた.臨床症状および経過より疥癬を疑い,顕微鏡検査にて疥癬虫の虫体を確認した.イベルメクチン2錠を1回内服投与の4週間後に皮疹,瘙痒感とも著明に改善した.自験例を含め,当科イベルメクチン使用例25例のうち経過を追えた24例全例に有効であり,副作用は瘙痒感,上肢のむくみ感のみであった.イベルメクチンは回旋糸状虫症,リンパ系フィラリア症や糞線虫症などに対する経口駆虫薬で,疥癬に対しても非常に有効との報告が海外で相次いでいる.従来の疥癬の治療薬と比較すると効果も高く副作用も少ない.通常1回投与でよいため,非常に手軽でコンプライアンスの良い優れた薬剤である.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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