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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科55巻5号

2001年04月発行

文献概要

Derm.2001

出生前診断から遺伝子治療へ

著者: 秋山真志1

所属機関: 1帝京大学市原病院皮膚科

ページ範囲:P.134 - P.134

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 10年来,重症遺伝性皮膚疾患の出生前診断にたずさわってきました.一般に出生前診断(pre—natal diagnosis)とは,胎児が重篤で,致命的な遺伝疾患などに罹患している可能性がある場合に,なんらかの方法で出生する前に,児の予後についての信頼性の高い診断情報を,多くの場合,妊娠中の母体を通して,得ることを言います.生殖医学が進歩し,また,遺伝性疾患の分子遺伝学的な原因の解明が進むにつれて,出生前診断の技術は急速に進歩しつつあり,また同時にその適応疾患も増えてきています.現在,皮膚科領域で実際に行われている出生前診断は,胎児皮膚生検を用いた道化師様魚鱗癬の出生前診断,分子遺伝学的手法を用いた葉状魚鱗癬,先天性表皮水疱症,チロジナーゼ陰性型の白皮症の出生前診断などです.今後,皮膚科領域でもさらに出生前診断の適応となる疾患が増え,また,出生前診断の方法自体も,胎児皮膚生検等の古典的な方法から,母体に与える影響がより少なく,診断の確実性もさらに高い方法へと進歩してくることが予想されます.着床前の受精卵に対する出生前診断である着床前遺伝子診断(preim—plantation genetic diagnosis)も,cystic fibrosis, Duchenne型などの筋ジストロフィーなどいくつかの遺伝性疾患について行われつつあります.皮膚科領域でも,表皮水疱症などについては,技術的には,この着床前遺伝子診断が十分可能になっています.
 近年,出生前診断の現場にあって,私があらためて強く感じていることは,あくまで私どもの最終目標は病気を治すことであるということです.現在,出生前診断に用いられているテクノロジー,知識がさらに一歩進んで(とても遠く,険しい一歩かもしれませんが),近い将来皮膚疾患の遺伝子治療へと発展していくことを信じ,日々,微力ながら研究を続けております.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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