臨床皮膚科55巻6号

2001年05月発行

症例報告

臀部に生じたMerkel細胞癌の1例

著者： 森川博文¹ 鹿江裕紀子¹ 野田英貴¹ 能宗紀雄¹ 米原修治² 杉田康志³

所属機関： ¹広島県厚生連尾道総合病院皮膚科 ²広島県厚生連尾道総合病院病理研究検査科 ³因島市医師会病院皮膚科

ページ範囲：P.445 - P.447

文献概要

　76歳女性の臀部に生じたMerkel細胞癌の1例を報告した．臀部の表面にびらんと壊死組織を伴った胡桃大の紅色皮下腫瘤を認めた．病理組織像では，真皮から皮下組織にかけて細胞質に乏しい小型の腫瘍細胞のびまん性増殖を認め，免疫組織化学的検索でepithelial membrane antigen，cytokeratin，neuron-specific eno—lase,chromogranin Aに陽性であり，上皮系と神経系両方への分化が認められた．初期治療として切除と化学療法を行ったが，7か月後局所再発と鼠径部へのリンパ節転移を認めた．広範囲切除に放射線治療の併用を行ったが，腫瘍は全身の皮膚へ多発性に転移した．