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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科56巻1号

2002年01月発行

雑誌目次

カラーアトラス

Perforating calcifying epithelioma

著者: 鈴木さやか ,   松川中 ,   石黒直子

ページ範囲:P.6 - P.7

 患者:53歳,男性.
 初診:1999年6月1日.

原著

弾力線維性仮性黄色腫—3例の報告と本邦報告例の検討ならびに穿孔性弾力線維性仮性黄色腫と蛇行性穿孔性弾力線維症の差異について

著者: 松本聡子 ,   中村敦子 ,   谷昌寛 ,   村用洋三 ,   熊野公子

ページ範囲:P.9 - P.13

 26歳,21歳の女性,9歳の女児に発症した弾力線維性仮性黄色腫(PXE)の3例を報告する.自験例3例を含めた1956〜1999年までのPXEの報告例275例を皮膚および眼病変以外の病変の面からまとめてみた.心・血管系病変が68%,消化器系病変が7%,中枢神経系病変が15%であった.眼科領域を含む全身的かつ長期的な注意深い経過観察がPXEには必要であると考えられた.自験例の21歳女性例では穿孔性弾力線維性仮性黄色腫(perforating PXE)の像を認めた.PXEと蛇行性穿孔性弾力線維症(EPS)の合併と従来考えられていた大部分の例はperforating PXEであると現在では考えられている.EPSでは石灰沈着を伴わないエオジン好性の大きな直線状の弾力線維が排泄されるのに対し,perforating PXEでは断裂し短くなって巻毛様を呈し,石灰沈着の結果,好塩基性に染まるようになった弾力線維が排泄されることより両者を鑑別することができる.

臨床統計

獨協医科大学皮膚科における隆起性皮膚線維肉腫と悪性線維性組織球腫の統計的比較

著者: 沖田博 ,   大塚勤 ,   新井聖一 ,   村下理 ,   山蔭明生 ,   山崎雙次

ページ範囲:P.15 - P.18

 1973〜1998年の間に獨協医科大学皮膚科において経験した隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)14例,悪性線維性組織球腫(MFH)16例につき統計的に比較した.平均年齢はDFSP 41.2歳,MFH 47.9歳,発生部位はDFSPでは体幹(50%)に,MFHでは四肢・頭部(87%)に多い傾向があった.再発はDFSP 36%,MFH 21%とDFSPに多く,転移はDFSP 7.7%,MFH 27%とMFHに多かった.抗CD 34抗体による免疫学的検査でDFSPは100%陽性,MFHは30.8%に陽性であった.他院より紹介された単純切除のみでは高率に再発が認められた.

今月の症例

種痘様水疱症様の皮疹を呈し,死の転帰をとった皮膚のEpstein-Barrウイルス関連リンパ球増殖症の1例

著者: 竹内紋子 ,   石地尚興 ,   上出良一 ,   新村眞人

ページ範囲:P.19 - P.22

 16歳,女性.7歳頃から顔面に紅色丘疹や水疱が出現し,皮疹は徐々に躯幹へ拡大した.初診時,全身に直径約1cmまでの壊死性痂皮を伴う潰瘍と瘢痕が多発しており,1週間前より続く40℃の発熱を伴っていた.病理組織学的に真皮浅層から皮下脂肪組織の血管周囲に,一部に異型性を有するリンパ球の稠密な浸潤がみられた.浸潤細胞はT細胞系で,約30%がlatent membrane protein−1陽性,約30%がEB virus-encoded small nuclear RNAs陽性であったことより,種痘様水疱症様皮疹を呈したEBウイルス関連リンパ球増殖症と診断した.初診の翌日,全身の血疱と皮下出血,腹痛が生じて他医を受診し,翌々日に死亡した.

症例報告

悪性関節リウマチに合併し,再燃を認めた皮膚クリプトコックス症

著者: 小寺華子 ,   田中達朗 ,   成澤寛

ページ範囲:P.23 - P.25

 67歳,女性.34歳時に慢性関節リウマチ,60歳時に悪性関節リウマチと診断され,長期にわたりステロイド内服を含めた治療を受けていた.1996年1月頃より左上肢に皮膚潰瘍が出現し,同部からの培養にてCryptococcus neoformansが検出されたため,皮膚クリプトコックス症の診断にて入院した.このとき,頭部CT・胸水穿刺・胸膜穿刺などの検査を行い,胸水および血清よりクリプトコックス抗原を検出したが,明らかな原発巣は同定できなかった.皮膚病変はフルコナゾールの投与にて略治した.1998年5月,胸水および膿胸のため内科に入院した際,左頬部に径7mmの潰瘍とその下方に紅斑を認めた.それぞれ培養にてCryptococcus neoformansを検出し,血中・右胸水中よりもクリプトコックス抗原が検出され,再燃と考えられた.フルコナゾール投与にて再度治療し軽快した.

多発性皮下結節を生じたMycobacterium marinum皮膚感染症の1例

著者: 田島麻衣子 ,   田口英樹 ,   木花いづみ ,   川井保男

ページ範囲:P.27 - P.29

 87歳,女性.左前腕から手背にかけて多発性の皮下結節と,肘頭部に紅色角化性小丘疹からなる局面を認めた.生検にて乾酪壊死を伴う肉芽腫像が得られ,結節組織からMycobacterium marinumを検出,本菌によるリンパ管型皮膚感染症と診断した.イソニアジドは無効で,ミノサイクリン内服とカイロによる温熱療法にて軽快した.

サルモネラ胃腸炎との関連が示唆された結節性紅斑

著者: 勝田倫江 ,   狩野葉子 ,   塩原哲夫 ,   村山亜紀 ,   藁谷理

ページ範囲:P.30 - P.33

 3歳,男児.約2週間前より発熱,腹痛,関節痛を認め,近医を受診し抗生剤を内服するも,症状が持続し当院を受診.入院時より両下腿伸側に鶉卵大までの境界不明瞭な有痛性皮下結節が認められた.病理組織学的に皮下脂肪織に巨細胞を主体とし,少数のリンパ球を混じる細胞浸潤を認めた.便培養からSalmonella Enteritidisが103個検出され,サルモネラ胃腸炎に関連した結節性紅斑と診断した.過去のサルモネラ胃腸炎と関連して出現した結節性紅斑の報告例について検討し,自験例の特徴的な組織所見を,サルモネラが細胞内寄生菌である特性と関連づけて考察した.

壊疽性丘疹状結核疹とBazin硬結性紅斑を認め,肺結核が確認された1例

著者: 石田雅美 ,   間中泉 ,   石黒直子 ,   川島眞

ページ範囲:P.34 - P.36

 43歳,女性.右背部に痂皮の付着と陥凹を認める紅色丘疹と,両足側縁に発赤を伴う有痛性皮下硬結を認めた.病理組織像では前者は表皮から真皮浅層にかけての楔形壊死と周囲のリンパ球,組織球の浸潤がみられ,後者ではlobular panniculitisと比較的太い血管の閉塞像を認め,それぞれ壊疽性丘疹状結核疹,Bazin硬結性紅斑と診断した.検査ではツベルクリン反応強陽性,胸部CTで両側肺尖部に衛星病巣を伴う結節像を認め,気管支肺胞洗浄液より結核菌群を検出し肺結核と診断した.イソニアジド,リファンピシン,エタンブトールの3剤併用療法により皮疹は約3か月で略治した.

橈骨動脈カテーテル留置後に生じたOsler結節の1例

著者: 芳賀貴裕 ,   末武茂樹

ページ範囲:P.37 - P.39

 68歳,男性.下咽頭癌の手術の際,左橈骨動脈にカテーテルを留置され,その1週間後,左手に疼痛を生じ始めた.カテーテル留置部位より末梢側の前腕,母指球,小指球および指腹に疼痛を伴う直径5mm大程度の紅斑,紫斑,小結節を生じた.病理組織学的には小動脈血管腔の狭小化,血管周囲性に好中球主体の炎症性細胞浸潤,さらに核残渣を認めた.動脈カテーテル留置によって生じたOsler結節の報告は,外国での報告が少数あるだけで,本邦では本症例が初めてである.

歯科治療後に生じた感染性心内膜炎の1例

著者: 足立準 ,   庄田裕紀子 ,   羽白誠

ページ範囲:P.41 - P.43

 40歳,女性.小児よりアトピー性皮膚炎があった.30歳頃までステロイド外用療法,その後,化粧水などで外用していた.1999年12月1日,歯科で歯根部の治療を行った.2日後より発熱がみられ,その後自宅で倒れた.当院に紹介され,諸検査の結果,Staphylococcus capitisによる感染性心内膜炎およびそれに伴う脳出血と判明した.皮疹としては,出血斑,爪下出血,Staphylococcus capitisの膿疱が認められた.歯科治療から15日という短期間で死亡した.

疱疹状天疱瘡の1例

著者: 津田達也 ,   中井章淳 ,   池永健治 ,   岸本三郎 ,   安野洋一

ページ範囲:P.44 - P.47

 70歳,女性.1999年より口腔粘膜にびらんが生じ,治療を受けるも軽快しなかった.2000年には背部に軽度瘙痒を伴う環状の紅斑が出現し,水疱を伴うようになった.病理組織学的にはフィブリンと好酸球を内容とする表皮内水疱の形成,好酸球性海綿状態がみられた.蛍光抗体直接法にて表皮細胞間にIgG, C 3の沈着を認めた.以上の所見より疱疹状天疱瘡と診断し,ステロイドの内服を開始したところ皮疹は速やかに消退した.ELISA法による血清学的解析では抗デスモグレイン(抗Dsg)1抗体,抗Dsg 3抗体が検出され,特に抗Dsg 3抗体は非常に高値であった.

小水疱性類天疱瘡の1例

著者: 神人正寿 ,   尹浩信 ,   矢野正一郎 ,   門野岳史 ,   大河内仁志 ,   玉置邦彦

ページ範囲:P.48 - P.50

 62歳,男性.ほぼ全身に貨幣大までの境界明瞭で鮮紅色の浮腫性紅斑と緊満性の小水疱・びらんが出現.口腔内にもびらんが存在していた.病理組織学的所見では好酸球浸潤を伴う表皮下水疱,蛍光抗体直接法で基底膜部にIgG, C 3の線状の沈着を認め,1mol/l食塩水によるsplit skinにて表皮側に線状にIgGの沈着がみられた.ウエスタンブロット法で患者血清は水疱性類天疱瘡BP 180抗原のNC16a領域の組換え蛋白質に対する反応性を認めた.ニコチン酸アミド,ミノサイクリンの内服にて皮疹は軽快.既報告の小水疱性類天疱瘡19例のうち4例,21.1%に粘膜病変が存在し,水疱性類天疱瘡とほぼ同様の頻度であった.

幼児の左半身に急速に拡大した多発性限局性強皮症の1例

著者: 石田勝英 ,   高橋健造 ,   是枝哲 ,   錦織千佳子 ,   宮地良樹 ,   岩田政広

ページ範囲:P.51 - P.53

 4歳,女児.約2か月間で主に左半身に急速に硬化性光沢局面が拡大し,来院時には軽度の関節拘縮を認めていた.ステロイドの内服・外用を開始したところ,新たな局面の出現が抑制され,局面の硬化が軽減した.ステロイドの減量とともに新生局面が再び出現したため,ステロイドの内服をいったん増量し,症状が安定した後にゆるやかに漸減した.以降,新生局面は認められず,関節の拘縮も軽減した.また,治療経過とともに軟化していく局面の変化を皮膚エコーで評価した.真皮領域において,病側が健側に比べて低エコーを示していたが,治療経過とともに病側のエコーレベルが健側のエコーレベルに近づいた.皮膚エコーは,病状の程度や変化を調べるうえで客観的で簡便な方法と考えられた.

漢方治療が奏効した色素性紫斑性苔癬様皮膚炎の1例

著者: 安岐敏行 ,   三原基之

ページ範囲:P.54 - P.56

 67歳,女性.上肢から体幹,下肢にかけて米粒大の丘疹状紫斑が集簇なしい融合して大小の局面を形成していた.組織学的には基底層に液状変性がみられ,真皮上層には帯状に炎症性細胞が浸潤していた.また,赤血球の漏出が表皮内,真皮毛細血管周囲にみられた.臨床像および組織学的に苔癬化反応を示したことより色素性紫斑性苔癬様皮膚炎(Gougerot-Blum病)と診断した.近医にてステロイド剤の外用,内服を含む諸治療が行われたが無効であったため,漢方治療を試みた.漢方的に本例には寒証と瘀血証があり,これを目標に八味地黄丸と桂枝茯苓丸のエキス剤の内服を行い,外用は以前のステロイド剤を継続した.約1か月で皮疹は色素沈着を残してすべて消失した.体調も良好なため,以後1年以上にわたり漢方の内服を継続しているが,皮疹の再燃はみられない.

広範囲皮下型サルコイドーシスの1例

著者: 飛澤慎一 ,   柏木孝之 ,   真鍋公 ,   浅野一弘 ,   高橋英俊 ,   山本明美 ,   橋本喜夫 ,   飯塚一

ページ範囲:P.57 - P.59

 52歳,女性.両側肘・右下腿前面に10cmに及ぶ局所熱感を伴う板状の皮下硬結を認めた.皮膚生検で類上皮細胞肉芽腫を認め,リゾチームの高値も認められた.ACE正常.ツベルクリン反応弱陽性.耐糖能試験で境界型糖尿病が証明された.皮下結節が増大してきたためステロイド局注療法を施行し,皮下結節の縮小が認められた.本邦における10 cm以上の広範囲多発皮下型サルコイドーシスを集計し,若干の考察を加えた.

感電により筋肉組織まで深達した左上肢の第III度熱傷

著者: 杉内利栄子 ,   村上憲孝 ,   兼子忠延 ,   高橋和宏

ページ範囲:P.61 - P.63

 57歳,男性.合板会社勤務.仕事中,接着剤が入っている180℃の釜を抱きかかえるようにして倒れているのを同僚に発見され,近医脳外科より当科に転送された.初診時,左前胸部から左上肢の皮膚は紅色から乳白色調の硬い局面を呈し,10%弱のII度真皮深層熱傷(deep dermal burn;DDB)からIII度の熱傷と診断したが,感電後に意識消失したことより,電撃傷の可能性も考えた.受傷1か月後,壊死巣除去術,メッシュ分層植皮術を施行した.手術時,壊死は筋,脂肪組織に達し,大胸筋,小胸筋,上腕三頭筋の一部に筋壊死を認めた.

電撃傷の1例

著者: 石井文人 ,   松尾圭三 ,   根井まり子 ,   橋本隆 ,   高須修 ,   恒吉俊美

ページ範囲:P.64 - P.66

 24歳,男性.電気工事作業中に2万ボルトの交流電線に接触した.受傷部位は両上肢,背部,下腹部,頸部で,約33%の面積に第I〜III度の熱傷を認めた.入院時検査所見では白血球,LDH, CPKの上昇を認め,尿所見,血液ガス,胸部X線,心電図,神経学的に異常は認めなかった.電流は右手掌,小指球部および右手第2〜3指の指腹より流入し,左腋窩および左前腕部より流出したと考えられた.搬入後,ICUにて全身管理および局所の創処置を開始した.電撃傷は腎不全・肺水腫・消化管出血など多彩な病態を呈することが多い.自験例では皮膚損傷のみで,このような全身徴候は認めなかった.

プロテインC活性の低下を認めたワーファリン®による皮膚壊死の1例

著者: 坂井博之 ,   南仁子 ,   佐藤恵美 ,   飯塚一 ,   秋葉裕二

ページ範囲:P.67 - P.69

 82歳,女性.左肺塞栓症の治療中,ワーファリン®投与の7日目に左大腿内側に皮内から皮下にかけて硬結を伴う暗赤色紅斑が存在するのに気づいた.表面には水疱とびらんおよび潰瘍を伴い,病変部はしだいに境界明瞭な皮膚壊死に進行した.ワーファリン®投与前の検査でプロテインC活性が38%と低下しており,皮膚壊死発症の危険因子として作用したものと考えられる.

上口唇に生じたintravascular papillary endothelial hyperplasiaの1例—CD 34,第VIII因子の染色態度の検討

著者: 藤村卓 ,   橋本彰 ,   高橋和宏 ,   川村真樹 ,   照井正 ,   田上八朗

ページ範囲:P.71 - P.73

 上口唇に生じた先行血管病変を持たないintravascular papillary endothelia1 hyperplasia(IPEH)の1例を経験した.患者は22歳,男性.組織学的には,真皮の浅層から深層にかけて大小の管腔構造が認められ,管腔内には器質化した血栓および内皮細胞の乳頭状増殖が著明に認められた.免疫組織化学的染色では,拡張した血管内腔の増殖した内皮細胞は第VIII因子陽性,CD 34陰性であった.当科で経験したIPEHに加えて,他の類似の血管病変を示す血管肉腫などに対しても同様に免疫組織学的検討を行い,本症を構成する内皮細胞がいまだ成熟していない分化過程の途中のものであるという考察を加えた.

恥丘部に生じた有茎性基底細胞癌の1例

著者: 戸所由起子 ,   平賀教子 ,   加倉井真樹 ,   山田朋子 ,   村上孝 ,   藤本美津夫 ,   清澤智晴 ,   大槻マミ太郎 ,   中川秀己

ページ範囲:P.74 - P.76

 84歳,女性.40年前に恥丘部外傷後,黒色斑が出現.放置していたところ,2か月前から急速に増大した.恥丘部に直径8×7.5×2.5cmの有茎性腫瘤が存在.両鼠径部のリンパ節を触知した.エクリン汗孔癌,結節型悪性黒色腫も鑑別に入れ,辺縁から3cm離して切除.病理組織学的に多様な分化を示した基底細胞癌であった.恥丘部に生じた有茎性を呈する基底細胞癌の特徴について考察した.

両側水腎症を伴い,急激な経過をとった外陰部Paget病

著者: 山下周子 ,   吉岡啓子 ,   真本卓司 ,   蓮池孝夫 ,   玉田聡 ,   岩井謙仁 ,   田中勲

ページ範囲:P.77 - P.79

 66歳,男性.1999年初め,陰茎より左側の股間部に紅斑が出現し徐々に拡大した.4月頃より全身倦怠感のため近医を受診し,CEA高値と両側水腎症がみられ,精査目的で当院泌尿器科に紹介入院となった.腹部CTで腹腔内・左鼠径部に多数のリンパ節腫大があった.左鼠径部リンパ節の生検では明るい大型の腫瘍細胞を認め,PAS染色で陽性であった.皮膚科に紹介後,外陰部Paget病を疑い,紅斑部から生検した結果,リンパ節の所見と同様,CEA染色が陽性であった.6月には脳に腫瘍巣が発見され全脳照射を施行.8月末にはほぼ全身に転移し,急激な経過をとった.局所は最期まで腫瘤形成はみられなかった.早期の生検と他科医師ならびに一般への啓発の必要性を痛感した.

6年後に転移を認めた悪性外毛根鞘腫

著者: 三好研 ,   平田靖彦 ,   小玉肇 ,   松浦喜美夫 ,   荒木京二郎 ,   小田勝志 ,   福冨敬

ページ範囲:P.80 - P.82

 54歳,女性.右鼠径部の腫瘍が広範囲かつ動静脈を巻き込んで深達していたために広範囲に摘出し,腫瘍細胞に取り囲まれた動脈は中膜レベルで剥離し,大腿静脈は人工血管に置換した.術後,肉眼的には確認できない腫瘍細胞が残存している可能性を考え,インターフェロンβ 300万単位を27回局注した.2年後の現在,再発は認めていない.腫瘍細胞は異型性が強く毛包分化を示し,34βE12を表出したが,34βB4を表出しなかったことから,悪性外毛根鞘腫と診断した.6年前に摘出された右大腿部腫瘤も同様の病理組織学的所見を呈していたため,右鼠径部腫瘍はリンパ節転移と考えた.

甲状腺乳頭癌皮膚転移の1例

著者: 三宅亜矢子 ,   斎藤京 ,   木花いづみ

ページ範囲:P.84 - P.86

 62歳,女性.34年前,甲状腺乳頭癌のため右葉切除術を施行された.5年前,胸部単純X線写真にて異常陰影を指摘され,ほぼ同時期より頭頂部の脱毛を伴う自覚症状を欠く結節が出現し,徐々に増大してきた.組織所見は34年前の甲状腺癌切除組織と類似していた.皮膚転移巣出現までに30年,その後少なくとも5年間経過しており,極めて緩徐な経過をとった稀な症例と思われたので報告するとともに,甲状腺癌皮膚転移の特徴についても簡単にまとめる.

治療

慢性骨髄炎に合併した難治性下腿潰瘍に人工真皮を用いた1例

著者: 島内隆寿 ,   木本由紀 ,   力久航 ,   安田浩 ,   旭正一

ページ範囲:P.87 - P.89

 56歳,男性,6歳頃より右脛骨慢性骨髄炎のため植皮術など10回以上の手術を他医で施行されてきた.1998年頃より右下腿脛骨部前面が潰瘍化し,脛骨皮質の露出を伴うようになった.今回,骨皮質に骨髄まで達する開孔部をドリルで数か所作製し,人工真皮を貼付した後,肉芽の形成を待って2期的に分層植皮で被覆した.潰瘍の大部分は被覆できたが,一部に潰瘍と骨皮質の露出が残存している.

連載

Clinical Exercises・106—出題と解答

著者: 清水宏

ページ範囲:P.89 - P.89

211
転移性皮膚癌について正しいものを選べ.
①転移巣の組織学的構造は,原発巣より高分化を示すことが多い.

海外生活16年—出会った人・学んだこと・13

著者: 神保孝一

ページ範囲:P.91 - P.91

ハーバード大学医学部皮膚科学講座におけるレジデントの研修(その5)
John Parrish教授
 ハーバード大学医学部皮膚科学講座のFitzpatrick主任教授の後任はJohn Parrishである.Johnは私がハーバード大学に在籍していたとき,丁度レジデントであった.彼とはいろいろな機会で個人的に親しく交際し,多くの思い出を作ることができた.彼はハーバード大学出身ではないが,Fitzpatrick教授の強力な推薦により後任者となった.彼は一見神経質にみえるが,非常に相手への思いやりがあり,心の深い人で,さらに大胆な計画を実行することもできる人である.また,企業からの集金(研究費)能力が極めて卓越している.
 Johnの主な研究は光生物学であるが,この方面で2つの卓越した業績がある.その1つはPUVA療法の確立,もう1つはレーザー治療法の皮膚科への導入である.PUVA療法開発のきっかけは,確か1973年6月頃フィラデルフィアの皮膚科学主任教授であったKliegman教授から突然Fitzpatrick教授に電話がきた.それは,「新しいUVAのランプが開発され,従来UVA自体が即時型の光反応を起こす以外に新しいメラニン形成(遅延型反応)を起こすということが考えられていたが,このランプはこれを実証し,明らかに人・皮膚に新しいメラニン形成を起こさせることができた.この生物学的反応を明らかにしてほしい」という内容の依頼であった.この実験は,フィラデルフィアの監獄の囚人を用いて行われた.新しいUVAランプを用い,その単一照射,頻回照射およびpsoralenとの併用に分け実験が行われた.Fitzpatrick教授は,この共同研究を行うために私とJohnをフィラデルフィアに送ったのである.フィラデルフィアの監獄に入り,ボランティアの囚人の照射皮膚をみたときに驚いたのは,いずれの照射部位にも著明な色素沈着が認められたことである.このことは,極めて画期的な新しい所見であった.私は,その光生物学的反応の機序をまとめ,シカゴで開かれた研究皮膚科学会で初めて報告し,多くの反響を呼んだ.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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