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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科56巻1号

2002年01月発行

連載

海外生活16年—出会った人・学んだこと・13

著者: 神保孝一1

所属機関: 1札幌医科大学皮膚科

ページ範囲:P.91 - P.91

文献概要

ハーバード大学医学部皮膚科学講座におけるレジデントの研修(その5)
John Parrish教授
 ハーバード大学医学部皮膚科学講座のFitzpatrick主任教授の後任はJohn Parrishである.Johnは私がハーバード大学に在籍していたとき,丁度レジデントであった.彼とはいろいろな機会で個人的に親しく交際し,多くの思い出を作ることができた.彼はハーバード大学出身ではないが,Fitzpatrick教授の強力な推薦により後任者となった.彼は一見神経質にみえるが,非常に相手への思いやりがあり,心の深い人で,さらに大胆な計画を実行することもできる人である.また,企業からの集金(研究費)能力が極めて卓越している.
 Johnの主な研究は光生物学であるが,この方面で2つの卓越した業績がある.その1つはPUVA療法の確立,もう1つはレーザー治療法の皮膚科への導入である.PUVA療法開発のきっかけは,確か1973年6月頃フィラデルフィアの皮膚科学主任教授であったKliegman教授から突然Fitzpatrick教授に電話がきた.それは,「新しいUVAのランプが開発され,従来UVA自体が即時型の光反応を起こす以外に新しいメラニン形成(遅延型反応)を起こすということが考えられていたが,このランプはこれを実証し,明らかに人・皮膚に新しいメラニン形成を起こさせることができた.この生物学的反応を明らかにしてほしい」という内容の依頼であった.この実験は,フィラデルフィアの監獄の囚人を用いて行われた.新しいUVAランプを用い,その単一照射,頻回照射およびpsoralenとの併用に分け実験が行われた.Fitzpatrick教授は,この共同研究を行うために私とJohnをフィラデルフィアに送ったのである.フィラデルフィアの監獄に入り,ボランティアの囚人の照射皮膚をみたときに驚いたのは,いずれの照射部位にも著明な色素沈着が認められたことである.このことは,極めて画期的な新しい所見であった.私は,その光生物学的反応の機序をまとめ,シカゴで開かれた研究皮膚科学会で初めて報告し,多くの反響を呼んだ.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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