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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科56巻10号

2002年09月発行

雑誌目次

カラーアトラス

Cutaneous plexiform neurilemmomaの1例

著者: 金子栄 ,   江木素子 ,   矢野貴彦 ,   立山義朗 ,   林雄三

ページ範囲:P.788 - P.789

 患者:22歳,女性.
 家族歴・既往歴:特記事項はない.

原著

B型肝炎にみられた皮膚症状—leukocytoclastic vasculitis,苔癬型組織反応を認めた症例

著者: 嵯峨兵太 ,   檜垣祐子 ,   川島眞 ,   清水京子 ,   中村哲夫

ページ範囲:P.791 - P.794

 症例1:64歳,男性.咽頭痛,リンパ節腫脹とともに両下肢に半米粒大の紅斑,紫斑が多発した.肝酵素の急激な上昇を認め,HBs抗原陽性で急性B型肝炎と診断した.紫斑の組織像はleukocyto—clastic vasculitisであり,HBs抗原を含む免疫複合体によるserum sickness-like prodromeと考えた.症例2:23歳女性.B型肝炎ウイルスのキャリアであり,seroconversion目的でステロイド,次いでインターフェロンαの投与中,肝酵素の上昇に伴い手背,足背に小紅斑が出現した.組織像は液状変性,表皮細胞の好酸性壊死とリンパ球の表皮内侵入,真皮上層の血管周囲性のリンパ球の浸潤で苔癬型組織反応を示した.皮疹の発症において,細胞傷害性Tリンパ球の関与が示唆された.

臨床統計

乾癬外用療法におけるステロイドからカルシポトリオールへの切りかえによる臨床効果

著者: 梅澤慶紀 ,   飯塚万利子 ,   松山孝 ,   川久保洋 ,   小澤明

ページ範囲:P.795 - P.798

 乾癬の治療においてステロイド外用薬から活性型ビタミンD3外用薬への切りかえにより,治療効果が不十分な場合や,症状が悪化するなどの経験をすることがある.今回,カルシポトリオール外用薬においても,同様な経過が生じるかどうか観察し,乾癬における外用薬のより有用な治療法について検討した.対象は乾癬患者43例とし,今まで外用していたステロイド外用薬を対照薬として左右比較試験を行い,3か月間の臨床経過を観察した.その結果,3か月後の臨床評価は,改善:25例,同等:5例,悪化:4例,中止:9例であった.約7割の症例で有効性を認め,活性型ビタミンD3外用薬は乾癬の主外用療法になりうるものと考えられた.しかし,3か月間の経過観察で,最初は治療効果を認めたがその後徐々に皮疹が悪化する症例もあり,切りかえ直後だけでなく,経時的な症状の変化に注意を要すると思われた.

今月の症例

悪性外毛根鞘腫を伴った巨大脂漏性角化症の1例

著者: 奥田浩人 ,   岸達郎 ,   高瀬早和子 ,   堀口裕治 ,   日下貴文 ,   月江富男 ,   是枝哲

ページ範囲:P.799 - P.802

 73歳,男性.35年前より胸腹部に淡褐色結節が出現し,その後徐々に増加して大小さまざまな乳嘴状黒色腫瘤を多数示すようになった.最近,胸部の黒色腫瘤の近傍に赤褐色肉芽様の腫瘤が出現し,急速に増大してきたため当科を受診した.全身検索で内臓悪性腫瘍や悪性腫瘍の転移巣を認めなかった.赤色腫瘤を含めて大きな黒色腫瘤を切除した.病理および免疫組織化学的に黒色腫瘤部は表皮肥厚型の脂漏性角化症,赤色腫瘤部は悪性外毛根鞘腫と診断した.本例の悪性外毛根鞘腫は脂漏性角化症から生じた可能性がある.

外傷後アナフィラクトイド紫斑を合併した顔面の壊疽性膿皮症の1例

著者: 小林昌和 ,   陳科栄

ページ範囲:P.804 - P.808

 18歳,男性.初診2か月前に交通事故にて顔面挫傷.初診時,両側頬部に虫喰い状潰瘍を形成する紫紅色局面があり,その局面周囲と前額部には爪甲大までの紫紅色調の局面,丘疹,膿疱が多発していた.また,両下腿には米粒大までの紫斑が多発散在し,同時に尿潜血と腹痛を伴う便潜血陽性所見も認められた.頬部の潰瘍辺縁部の暗紫紅色局面の病理組織では,真皮全層にびまん性に著明な好中球の浸潤があり,膠原線維は破壊され,血管壁のフィブリノイド変性を伴う血管破壊像を認めた.下肢の紫斑の病理組織では,壊死性血管炎の所見はみられなかったが,蛍光抗体直接法で真皮浅層の血管壁にIgA,C3の沈着を認めた.ステロイドの全身投与にて潰瘍は編物状の瘢痕を残し上皮化し,紫斑,血尿,腹痛などのアナフィラクトイド紫斑の症状も改善された.瘢痕に対しては瘢痕切除,皮弁形成術を施行した.

症例報告

市販の解熱鎮痛剤内服により生じた急性全身性発疹性膿疱症の1例

著者: 佐々木喜教 ,   笹井収 ,   松永純 ,   田上八朗 ,   大井知教

ページ範囲:P.810 - P.813

 16歳,男性.生後48日目に一卵性双生児である弟とともに膿疱性乾癬を発症した.治療に抵抗性であり膿疱化を繰り返していたが,成長とともにその頻度が減少し,最近では皮疹を認めていなかった.しかし,6年前にイブプロフェンを主成分とする市販の解熱鎮痛剤を服用後,全身に膿疱が多発した既往がある.今回,市販のアスピリンを主成分とするバファリンA®を服用した翌日より,高熱とともに全身に紅斑と粟粒大膿疱が出現した.病理組織学的に典型的なKogojの海綿状膿疱と真皮乳頭の著明な浮腫と好酸球浸潤がみられた.補液とペニシリン系抗生剤の点滴投与を数日行い,皮疹は一週間ほどで略治した.バファリンA®のパッチテストで陽性であったことから膿疱型薬疹の一型とされる急性全身性発疹性膿疱症と診断したが,膿疱性乾癬の内的ケブネル反応とも解釈できる症例であり報告した.

Churg-Strauss症候群の1例

著者: 牧野輝彦 ,   豊田雅彦 ,   籠浦正順 ,   池田陽子 ,   松井千尋 ,   諸橋正昭

ページ範囲:P.814 - P.817

 45歳,男性.以前より気管支喘息の既往あり.2000年6月より発熱,四肢に膨疹,筋痛が出現し,好酸球増多を認めた.組織学的に皮膚には血管炎や肉芽腫はみられなかったが,筋間質に好酸球を伴う血管外肉芽腫を認めた.以上の所見より,Churg-Strauss症候群と診断した.プレドニゾロンの内服により皮疹や筋痛などの症状は軽快し,同時に好酸球数も正常化した.また,血清eosinophil cationic proteinと血清インターロイキン2レセプターも測定したところ,初診時は共に高値を示していたが,治療により速やかに軽快し,病勢を非常に鋭敏に反映していると考えられた.

Kaposi肉腫から診断したAIDSの1例

著者: 堀和彦 ,   中田良子 ,   本田まりこ ,   上出良一 ,   新村眞人 ,   伊東秀記 ,   片野晴隆 ,   佐多徹太郎

ページ範囲:P.818 - P.820

 52歳男性.両性愛者.初診の3年前より足関節部に暗紫色斑が出現し,体幹,四肢にも徐々に浸潤を伴う暗紫色局面が拡大してきた.病理組織像は,真皮全層に核異型のある紡錘形細胞の増殖,スリット状の内腔を有する血管の増生と拡張,赤血球の漏出とヘモジデリンの沈着を認め,Kaposi肉腫に合致する所見であった.血清中の抗HIV抗体はWestern-blot法で陽性であることが確認された.生検組織のPCR法による検索で,human herpesvirus 8(HHV−8)に特異的なDNA塩基配列を示した.また,陰茎根部にBowen様丘疹症を認めた.

Exophiala jeanselmeiによるPhaeohyphomycosisの1例

著者: 常光龍輔 ,   中西元 ,   山崎修 ,   近藤厚敏 ,   赤木理 ,   佐々木恵美

ページ範囲:P.821 - P.823

 64歳,男性.職業は農業.多発性筋炎のためプレドニゾロン内服中,左手首に発赤を伴う結節を生じた.感染粉瘤を疑い全摘するも,手術から1年2か月後に同部位に結節が多発したため,当科を再受診.組織学的には真皮内に辺縁にepithelioid cellの集簇を伴った好中球性の膿瘍と多数の核塵を認めた.PAS染色にて菌糸,胞子型の真菌要素がみられ,菌学的にはサブロー培地で黒色絨毛状のコロニーを形成しスライド培養の結果,Exophiala jeanselmeiと同定した.イトラコナゾール100mg/日内服を2か月半続けるも症状不変のため,局麻下にすべての結節を全摘した.その後フルコナゾール100mg/日内服を4週間続け,現在無投薬で経過を観察しているが再発はみられていない.結節が多発したexophiala jeansemei感染症は比較的稀なため,日和見感染症の一つとして報告した.

ミノサイクリンが奏効した融合性細網状乳頭腫症の1例

著者: 永岡譲 ,   神人正寿 ,   土屋知子 ,   滝澤三久 ,   松尾光一 ,   佐藤佐由里 ,   轟葉子 ,   守屋修二 ,   江藤隆史

ページ範囲:P.825 - P.827

 ミノサイクリンが著効した融合性細網状乳頭腫症の1例を報告した.症例は21歳,男性.肥満と赤血球増多症を合併.約7年前より両側の上腕,胸部,腹部,上背部に褐色の扁平小丘疹が出現し次第に増数した.組織は過角化と乳頭腫症.鱗屑の直接鏡検で真菌要素は陰性.ミノサイクリン内服により治癒した.

Subcutaneous granuloma pyogenicumの1例

著者: 服部瑛 ,   田村多繪子

ページ範囲:P.829 - P.831

 11歳,女児.初診の3か月前,右胸部上方の自覚症状のない皮膚常色の皮下結節に気付いた.病理組織学的に皮下脂肪組織内に結合織性の被膜で覆われた腫瘍巣を認め,腫瘍細胞は赤血球を入れる管腔を形成していた.免疫組織学的に,腫瘍内のほとんどすべての血管内皮がCD34陽性であったが,第VIII因子関連抗原は,ごく一部の血管のみ陽性であった.その臨床,一病理組織学的所見よりCooperの提唱するsubcutaneous granuloma pyogenicumと診断した.本腫瘍あるいは類似腫瘍の本邦報告例は稀であるが,皮下腫瘍の鑑別の一つとして念頭に置くべき疾患である.

糖尿病患者に生じた汎発性環状肉芽腫の1例

著者: 根岸泉 ,   田村敦志 ,   大西一徳 ,   石川治

ページ範囲:P.832 - P.834

 77歳,女性.腰部から腹部にかけては辺縁が堤防状に隆起した類円形ないしは環状の紅斑,左下腿伸側には米粒大までの淡紅色丘疹を多数認めた.サルコイドーシスや環状肉芽腫などを疑い精査した.腰部皮疹の生検組織像で,変性した膠原線維を柵状に取り囲む類上皮細胞と多核巨細胞,その外側に小円形細胞からなる肉芽腫構造を認めた.以上の臨床ならびに病理所見から環状肉芽腫と診断した.皮疹が躯幹と下腿という異なる解剖学的部位に分布していたことから,汎発性環状肉芽腫と考えた.限局性と汎発性肉芽腫の皮疹の形状について,文献的考察を加えた.

トラニラストが奏効した汎発性環状肉芽腫症の1例

著者: 水島八重子 ,   園田京子 ,   小楠浩二 ,   白井滋子 ,   森脇真一

ページ範囲:P.836 - P.838

 64歳,男性.初診の1年前より上半身に自覚症状のない紅色丘疹および結節が出現した.皮疹は徐々にその数を増し,初診の1か月前より皮疹が多発融合してきたため当科を受診した.病理組織学的には,真皮内に限局性の膠原線維の断裂を認め,膠原線維間には組織球や巨細胞が浸潤する肉芽腫反応を示したため,汎発性環状肉芽腫と診断した.生検後も自然消退を認めなかったため,ステロイド外用剤およびオキサトミド,塩酸エピナスチン,あるいはメキタジン内服による治療を計5か月間行ったが,皮疹は新生,拡大した.トラニラスト内服(300mg/日)を開始したところ皮疹の新生が止まり,徐々に色調と隆起が軽減してきた,しかし,1年10か月内服したところで,トラニラストによる副作用と思われる頭痛が出現し内服継続が困難となったため,トラニラストを中止したところ皮疹は再燃した.治療をフマル酸ケトフェチン,ジアフェニルスルホン,グリセオフルビン,塩酸アゼラスチンに変更したが,これら薬剤では明らかな効果は得られていない.

Annular elastolytic giant cell granulomaと鑑別を要したgranuloma annulareの1例

著者: 石橋正史 ,   村田隆幸 ,   谷川瑛子 ,   田中勝 ,   清水宏

ページ範囲:P.840 - P.842

 49歳,女性.初診4年前より右前腕に,半年前より左前腕に皮疹が出現し,徐々に拡大.初診時,右前腕にannular elastolytic giant cell granuloma(以下,AEGCG)を思わせる手掌大の環状堤防状隆起性皮疹,左前腕にgranuloma annulare(以下,GA)を思わせる爪甲大までの環状皮疹が数個認められた.組織学的にいずれも変性した膠原線維巣を組織球,リンパ球が取り囲む肉芽腫像がみられ,Elastica van Gieson染色で,elastophagiaを認めた.GAとAEGCGは基本的に同一スペクトラム上の疾患であることを示唆する症例と考えた.

皮下型サルコイドーシスの1例

著者: 嵯峨兵太 ,   石黒直子 ,   川島眞

ページ範囲:P.843 - P.846

 52歳,女性既往に1979年発症の成人Still病がある.1998年2月に,当院内科にて両側肺門リンパ節腫脹と肺野の結節性陰影を,眼科ではブドウ膜炎を指摘され,サルコイドーシスとして経過観察されていた.同年10月頃に両下肢の皮疹に気付き,翌年8月当科受診時には,両大腿外側に鵞卵大の皮下硬結と紫褐色斑を,両下腿に褐色調の浸潤を触れる局面を認めた.病理組織像にて,真皮深層から脂肪織にかけて類上皮細胞肉芽腫を認め,皮下型サルコイドーシスと診断した.皮下硬結および局面は生検1か月後より軽快し始め,5か月後には消退した.免疫組織化学的検討にて肉芽腫内の細胞間質にテネイシンの発現を認め,消退過程におけるテネイシンの関与が示唆された.

爪甲下粘液腫の1例

著者: 山前恵美子 ,   伊東優 ,   溝口昌子

ページ範囲:P.847 - P.849

 25歳,女性.左母指に,爪甲の隆起を伴う爪甲下の紫紅色腫瘤を認めた.組織学的に被膜はなく,周囲との境界は比較的明瞭な腫瘍で,紡錘形から星芒状の核を持つ細胞が無構造な間質の中にみられた.腫瘍細胞はビメンチン陽性,S−100とNSEは陰性.間質の無定型物質はアルシアンブルー陽性,鍍銀染色で細網線維のネットワーク形成が認められた.以上より,爪甲下粘液腫と診断した.

広基性に隆起したgranular cell tumorの1例

著者: 関姿恵 ,   田村敦志 ,   石川治

ページ範囲:P.850 - P.852

 52歳,男性.約5年前に胸部に隆起性皮疹が出現,徐々に増大した.初診時,左胸部に27×24×20mm,黄褐色調の広基性に皮面より突出した腫瘤を認めた.病理組織学的に表皮直下から皮下脂肪織上層まで,細胞質が好酸性に染まる腫瘍細胞が充実性に増殖し,胞体内に微細顆粒が充満していた.細胞質内顆粒はPAS染色陽性,免疫組織化学染色ではS−100蛋白およびneuron specific enolase(NSE)陽性であり,granular cell tumorと診断した.過去21年間の本邦皮膚科領域における報告例は148例で,臨床的に黄褐色調または黄色調を呈した例は13例あり,本腫瘍の特徴的な色調の一つと考えられた.しかし,広基性に皮面より隆起したとの報告例はなく,自験例は稀な形態をとったgranular cell tumorであった.

多発性グロムス腫瘍の1例

著者: 牧万里子 ,   富山幹 ,   竹下芳裕 ,   川口博史

ページ範囲:P.854 - P.856

 25歳.男性.小学生の頃に左下腿後面に径10mm程の青紫色結節が出現し,徐々に大腿,前胸部,背部,上腕に多数増加した.個々の皮疹は圧痛をわずかに認めるが自発痛はなかった.組織学的には,被膜を持たない結節の病変部の中央に大小不規則に拡張した血管腔を認め,その周囲には好酸性の細胞質と類円形の核を持つグロムス細胞が多数認められた.免疫組織化学染色ではα—smooth muscle actinが腫瘍細胞で弱く,周囲の筋組織で強く染色され,CD34は血管内皮細胞で陽性だったが腫瘍細胞は陰性であった.腫瘍塊の周囲ではS−100に陽性の神経線維が認められた.自験例は腫瘍細胞の周辺に平滑筋が多く認められ,Enzingerによる分類のglomangiomyomaに近いものと考えられた.

Syringoid eccrine carcinomaの1例

著者: 根井まり子 ,   濱田尚宏 ,   名嘉眞武国 ,   森理 ,   橋本隆

ページ範囲:P.858 - P.860

 54歳,女性.4年前より右上背部に扁平隆起した結節が出現,徐々に拡大傾向を呈したため,当科を受診した.組織学的に好塩基性腫瘍細胞が真皮より脂肪層深部まで島状に胞巣を形成し,間質に膠原線維の増生を伴い免疫染色にてepitherial membrane antigen, carcinoembryonic antigenも陽性でありsyringoid eccrine carcinomaと診断した.

Pyogenic granuloma様外観を呈したamelanotic malignant melanomaの1例

著者: 武藤潤 ,   安西秀美 ,   小林昌和 ,   畑康樹 ,   谷川瑛子 ,   西川武二

ページ範囲:P.862 - P.865

 57歳,男性.背部に4mm大の広基有茎性紅色小結節を認め,pyogenic granulomaの診断のもとに全摘した.組織所見では,真皮内に異型性に富む類円形の腫瘍細胞が増生していた.これらの細胞はメラニンt顆粒に乏しく,HMB−45,S−100蛋白染色にて陽性であった.以上より,amelanotic malignant melanomaと診断した.有茎性を呈するamelanotic malignant melanomaは稀で,臨床的にpyogenic granulomaとの鑑別が非常に困難な場合があり,組織学的に確定診断することが肝要であると思われた.

放射線皮膚炎に続発した多発性有棘細胞癌の1例

著者: 瀬川聡子 ,   五十嵐泰子 ,   神田憲子 ,   石黒直子 ,   川島眞

ページ範囲:P.866 - P.868

 53歳,女性.1965年頃,足白癬の治療として某医で両足に超軟X線の一つである限界線を照射された.1994年に右足背の,1997年には左母趾の有棘細胞癌の切除歴あり.今回1997年より出現した右足底の小潰瘍を主訴に当科を受診した.初診時,両足背,足趾にびまん性の皮膚萎縮と,色素沈着,色素脱失,紅斑,角化性丘疹が混在し,放射線皮膚炎の像を呈していた.右足底には2×3mmの潰瘍を認めた.全摘した潰瘍の組織像は低分化型有棘細胞癌であった.

Melanocyte colonizationがみられた乳房Paget病の1例

著者: 奥田浩人 ,   中村えりな ,   高瀬早和子 ,   堀口裕治 ,   鍛俊幸 ,   新宅雅幸 ,   東久志夫 ,   松原為明

ページ範囲:P.870 - P.874

 36歳,女性.2000年の夏頃から左乳頭部に黒褐色斑が出現し,徐々に拡大してきた.色素性母斑の疑いで切除したところ,表皮内に大型で明るい円形の細胞が胞巣を作るように増殖し,メラニン顆粒を有する細胞が多数みられた.Paget病様悪性黒色腫,あるいは乳房Paget病が疑われ,両者を鑑別する目的で免疫組織化学的検査を行った.Paget細胞を染色する115D8,67D11染色で腫瘍細胞は陽性を示し,S−100,HMB−45染色では腫瘍巣内にメラニン顆粒を有する樹枝状のメラノサイトが多数みられた.melanocyte colonizationを伴う乳房Paget病と診断し,左乳房切断術を施行したところ乳管内癌が認められた.

悪性黒色腫との鑑別を要した男性乳癌の1例

著者: 近藤正孝 ,   加倉井真樹 ,   清澤智晴 ,   梅本尚可 ,   出光俊郎 ,   中川秀己 ,   日引太郎 ,   遠藤則之 ,   穂積康夫 ,   川井俊郎

ページ範囲:P.875 - P.878

 臨床的に黒色結節を呈し,組織学的には浸潤型乳癌の表皮向性(Paget現象)を認めた男性乳癌の1例を経験したので報告する.患者は55歳,男性.4か月前から存在する右乳頭部の小指頭大黒色結節を主訴に来院した.組織学的にはサイトケラチン陽性,S−100蛋白陰性,HMB−45陰性の浸潤型乳管癌で,腫瘍細胞は表皮向性浸潤を示した.また,腫瘍巣内にはメラニン,メラノファージが混在し,表皮のメラノサイトの増加がみられた.また,腫瘍組織のエストロゲンレセプター定量は陽性であった.右胸筋合併乳房切除術を行い,術後,5年2か月後の現在まで再発,転移はない.また,自験例と文献をもとに,乳癌における黒色調を呈する機序について考察を行った.

線維肉腫様変化を伴った隆起性皮膚線維肉腫の1例

著者: 簗場広一 ,   松本孝治 ,   延山嘉眞 ,   米本広明 ,   石地尚興 ,   上出良一 ,   新村眞人

ページ範囲:P.880 - P.882

 47歳,男性.約5年前より下腹部に存在した紅色の小腫瘍が3か月前より急速に増大してきた.初診時,下腹部正中に有茎性広基性紅色腫瘤を認めた.生検にて隆起性皮膚線維肉腫(dermatofibrosarcoma protuberans;DFSP)を考え腫瘍切除術を行った.組織学的にはstoriform patternがみられる典型的なDFSPの組織像を呈するが,一部にherringbone patternを示す線維肉腫様の変化がみられた.CD34染色にて前者は陽性であり,後者は陰性であった.線維肉腫様変化を伴ったDFSPと診断した.このような症例は通常のDFSPに比べ遠隔転移することが多く予後が悪い.したがって,術後の腫瘍の局所再発,遠隔転移に注意して経過を観察する必要があると考えられる.

20%グリコール酸ピーリングの尋常性痤瘡に対する治療効果について

著者: 梶田尚美 ,   田中伸 ,   玉田康彦 ,   松本義也

ページ範囲:P.883 - P.885

 顔面の尋常性痤瘡に対し精製水をコントロールとし,20%のグリコール酸を用い3分間のケミカルピーリング(CP)を2週間毎に計5回施行した.CP施行前とCP施行後2週間毎に皮疹別(面皰,紅色丘疹・膿疱)の数を数えその経過を追い,著明な皮疹の改善がみられた.また施行中ないし施行後の炎症反応や色素沈着の副作用はみられず,20%という低濃度のGAでも尋常性痤瘡に対しては十分に有用であると考えた.

連載

Clinical Exercises・114—出題と解答

著者: 小澤明

ページ範囲:P.813 - P.813

227
乾癬治療において用いられる活性型ビタミンD3外用薬の最もよく見られる副作用はどれか?
A:局所刺激症状

海外生活16年—出会った人・学んだこと・21

著者: 神保孝一

ページ範囲:P.886 - P.888

フィンランド点描(その1):ヘルシンキ大学医学部皮膚科—フィン・チャンバーとサクショク・ブリスター法の開発」
 1978年の2〜3月へと2か月間フィンランドを訪問する機会があった.これは,1970年から5年半に及ぶボストンでの滞米生活を終え,日本に帰国してからちょうど2年半が経った時に突然大学側からフィンランドへの長期出張を命じられたことによる.その理由は,当時の北海道知事がフィンランドのヘルシンキを訪問した際に北海道とフィンランドとの2国間で国際医学交流提携を行う事の話が実り,知事の命を受け,札幌医科大学がその具体的な展開を図ろうとしていたが,札幌医科大学の学長が幾度となく手紙,または電報を出してもフィンランド側からこの交流の開始に関し,全く返事がなかったため,その実態の調査をする事が命令であった.ヘルシンキ大学を訪問し,なぜフィンランド側から音信が途絶えていたのか理由がすぐに判明した.その理由は,ちょうどその時期は,ヘルシンキ大学の医学部長の交代の時期であり,新しい医学部長自身も経過についてよく把握する事ができず,すぐに返事を出せなかったためと,さらに予算が認められていなかったため返事を出したくてもまったく出せなかったことによるものであった.そこで私に課せられた任務はまず,この国際医学交流のスポンサーをフィンランド内で探す事であった.ヘルシンキ大学から可能性のあるいくつかの財団を紹介してもらい,個々の財団の理事長に直接会い,日本とフィンランドの国際医学交流の支援を要請した.その中でPaulo財団の理事長がこの国際交流に興味を示し,財政的支援を約束してくれた.その後,現在まで約25年間一度も途絶えることなくこのPaulo財団からの経済的支援が継続し,この国際医学交流は成功に行われている.当時の理事長はすぐに亡くなったが,その息子さんが現理事長となり,色々と国際交流に深い理解を示してくれ,フィンランドのすべての5つの大学の医学部を含めた国際医学交流活動が行われている.余談として後に私は1987年からカナダへ移住したが,その挨拶を前理事長にしたところ「自分はカナダのアルバータ大学を訪問した事がない.また,どのような大学であるか全く知らないが,お前が永住すると選んだアルバータ大学はきっと良い大学であろうからその大学に対し,フィンランドのヘルシンキ大学医学部と国際医学交流を行う事が出来るよう財政的支援を行ってもよい.これは,私が今までの同財団に対して行ってきた事へのプレゼントだ」との事であった.この財政支援は,現実的に実を結び現在もずっと両国間(ヘルシンキ大学とアルバータ大学とで)で継続している.
 フィンランドは,北緯60度と70度の間に位置し非常に寒い北国であり,面積も長径1,160km,短径540kmと非常に小さくちょうど北海道とほぼ同じくらいの大きさである.2〜3月にかけて滞在したが,到着して最初の2週間は1度も太陽の顔を見ることがなく,絶えずどんよりした空で寒く,雪がしばしば降る気候であり,外気の温度も−20℃以下となっていた.私はなぜフィンランド人にアル中の患者が多いのか.また,冬期間の自殺者が多いかについてフィンランドの訪問前に疑問を持っていたが,到着後すぐにその理由がわかった.すべてこの冬期間の雪の降るどんよりした寒い天候の中で,しかも日中の時間が短い(目中の明るい時間は朝8時頃から夕方の4時頃迄)ためにより,うつ状態へと進行するためであると思った.しかし,戸外の寒さにかかわらず個々の住宅の室内は極めて暖かく窓ガラスは古い建物でも2重であり,新しい建物では当時,既に4重であった.また,ドアも2重ドアの所が多く,一度得た暖かさは決して逃がさないという工夫が随所に感じられた.したがって,一般に多くの人々は室内では薄着で冬を過ごしていた.

印象記

「第101回日本皮膚科学会総会・学術大会」に参加して

著者: 須賀康

ページ範囲:P.890 - P.892

 雄大な阿蘇山と日本三名城の一つ「熊本城」を有する肥後の国,熊本県.第101回日本皮膚科学会総会は2002年6月7日〜9日までの3日間,熊本大学,小野友道教授の会頭のもとで開催されました.
 昨年,日本皮膚科学会が100周年を迎え,その記念事業が盛大に行われたのは記憶に新しいところです.第101回はこれを受けて,「次なる100年への新しいスタートを切るための総会」と位置付けられ,『新しい「形」をもとめて—Structure & Function, Genotype & Phenotype』を統一テーマに総会が開催されました.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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