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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科56巻11号

2002年10月発行

雑誌目次

カラーアトラス

乳房Paget病の1例

著者: 田島麻衣子 ,   木花いづみ ,   中野政男

ページ範囲:P.900 - P.901

 患者:55歳,女性
 現病歴:約10か月前より左乳頭部にびらんが出現,近医にて乳房Paget病が疑われ,当院外科へ紹介された.細胞診にてclass V,腫瘍細胞はメラニンを含有し悪性黒色腫も考えられ,当科に依頼となった.

原著

穿孔型石灰化上皮腫—当科過去10年間の石灰化上皮腫についての検討

著者: 前島英樹 ,   嶋村祐美 ,   白井京美 ,   原田晴美 ,   衛藤光

ページ範囲:P.904 - P.908

 症例1:27歳,男性.初診の5年前に右下腿後面に腫瘤が出現,徐々に増大してきた.初診時,右下腿後面に径13x11mmで半球状隆起性で弾性硬の腫瘤を認めた.腫瘤の中心は黒色角化物質で満たされ,噴火口様外観を呈していた.症例2:31歳,男性.初診の23年前に左上腕後面に腫瘤が出現,徐々に増大してきた.初診時,左上腕後面に径20×17mmで症例1と同様の腫瘤を認めた.いずれも,組織像は陰影細胞を主体として一部に好塩基細胞を伴う腫瘍巣があり,石灰化上皮腫と診断した.当科では過去10年間に石灰化上皮腫を,52症例54個経験している.これらの症例において,発生部位,腫瘍を自覚してから切除するまでの期間を集計し,臨床型および組織像を区分し検討した.穿孔型外観を呈した石灰化上皮腫の発生原因につき,この集計および解析した結果をもとに考察した.

今月の症例

妊娠性疱疹との鑑別を要した妊娠性痒疹の1例

著者: 石橋正史 ,   山上淳 ,   永尾圭介 ,   杉浦丹

ページ範囲:P.909 - P.911

 35歳経産婦に生じた妊娠性疱疹との鑑別を要した妊娠性痒疹の1例を報告した.過去の妊娠時には異常を認めず.第5子妊娠20週頃より,躯幹,四肢に痒みを伴う紅色丘疹および滲出性紅斑が出現,表面には小びらんおよび血痂を伴っており,激しい痒みのため,睡眠障害をきたした.病理組織学的に真皮浅層に炎症性細胞浸潤を認めた.蛍光抗体法直接法にて基底膜部にIgG,C3の沈着を認めず,血中HG因子,抗基底膜抗体陰性であった.ステロイド外用などの治療には抵抗性を示し,分娩後急速に皮疹が消退した.

ハンセン病の1小児例

著者: 慶田朋子 ,   神田憲子 ,   檜垣祐子 ,   川島眞 ,   杉田泰之

ページ範囲:P.912 - P.915

 10歳,女児.マダガスカル人.5年前に来日.半年前より左手背に皮疹が出現し,1か月前より左肘部の疼痛を生じたため当科を受診した.初診時,左手背から前腕に知覚鈍麻を伴う環状から弧状の紅褐色結節と,左尺骨神経の肥厚,圧痛を認めた.組織像では真皮全層に類上皮細胞肉芽腫を多数認めた.Ziehl-Neelsen染色,皮膚スメアで抗酸菌は陰性であったが,生検組織を用いたPCR法ではらい菌特異的DNAが証明された.DDS,リファンピシンによる6か月間の多剤併用療法と,神経症状に対するプレドニゾロンの併用にて症状は軽快したが,治療開始9か月後,左肘に有痛性の皮下結節が出現し,DDSの内服を再開し,3か月で結節は縮小した.

症例報告

ガス産生菌を起因菌とする壊死性筋膜炎の1例

著者: 国井隆英 ,   田畑伸子 ,   水芦政人 ,   橋本彰 ,   舩山道隆 ,   菊地克子 ,   原正啓 ,   高橋和宏 ,   末武茂樹 ,   照井正 ,   田上八朗 ,   平井完史 ,   佐藤譲

ページ範囲:P.916 - P.919

 糖尿病のある52歳,男性に1998年7月初め頃より食欲不振,全身倦怠感が出現した.同時期より陰嚢の腫脹にも気付いたが,放置していたところ,体がよろよろして意識がもうろうとし,動けなくなったため,7月11日に近医を受診し,救急車で当院に搬送された.初診時,陰嚢の著明な発赤,腫脹があり,下腹部,腰部,臀部,股部を中心に浸潤を触れる紅斑を認めた.その周囲の一見正常に見えるところを含め,触診で広い範囲に捻髪音を認めた.同日,緊急に全身麻酔下に壊死巣除去を行ったところ,壊死巣は固有筋膜に沿って側胸部まで及んでいた.肛門周囲の壊死巣の中から魚の骨が見つかり,発症の原因となった可能性が考えられた.壊死巣からの細菌培養でPeptostreptococcus,溶連菌,ブドウ球菌,大腸菌などの複数菌が検出された.一時は敗血症,播種性血管内凝固(DIC)の状態になったが,合計4回の壊死巣除去,植皮を行い,救命しえた.

EBウイルスによるGianotti-Crosti症候群の1例

著者: 石田雅美 ,   檜垣祐子 ,   川島眞

ページ範囲:P.920 - P.923

 2歳1か月,男児.両親にB型肝炎の既往なし.両頬部,体幹,四肢に紅色丘疹と滲出性紅斑が多発し,38.5℃までの熱発と,軽度の肝障害,異型リンパ球の出現を認めた.EB VCA IgM抗体は20倍,VCA IgG抗体は160倍,EBNA陰性でEBウイルスの初感染によるGianotti Crosti症候群と診断した.右下腿後面の紅斑の病理組織像は,表皮基底層の液状変性とリンパ球の表皮内侵入を認め,真皮上層の血管周囲性にリンパ球主体の細胞浸潤を認めた.皮疹は未治療で約10日で色素沈着を残して略治し,肝障害も軽快した.皮疹が多形紅斑様であったこと,短期間で軽快したことが特異と思われた.

ステロイド含有テープ剤が奏効した多発性斑状色素沈着症の1例

著者: 滝脇弘嗣 ,   河野嘉文

ページ範囲:P.924 - P.927

 ステロイド(フルオシノロンアセトニド)含有テープが奏効した多発性斑状色素沈着症の7歳,男児例を報告する.遺伝性球状赤血球症のため脾臓摘出術を受け,ペニシリン製剤を内服していた患児の躯幹に灰褐色の色素斑が多発した.経過からは固定薬疹とはみなし難く,また,紅斑が先行することもなかった.約半年間改善傾向がなかったため,1日1回のテープ貼付を試みたところ,約2か月で色素斑は略治し,同時に生じた皮膚萎縮は数か月で回復した.無処置の皮疹,ハイドロキノンクリーム塗布を行った皮疹は改善しなかった.本症に著効する治療法は知られておらず,小さなテスト部位を設けて効果を確認した上で用いるなら,ステロイド含有テープは治療の選択肢の一つになりうると思われた.

再発性多発性軟骨炎,骨髄異形成症候群に合併したSweet病の1例

著者: 山本隆之 ,   宮島進 ,   伊藤由佳 ,   岡田奈津子

ページ範囲:P.929 - P.932

 63歳,男性,1997年12月両側耳介の発赤腫脹で発症し,再発性多発性軟骨炎にてプレドニゾロンの内服治療を行っていた.20mg/day内服中の2000年10月頃より汎血球減少を認め,骨髄検査で無効造血,好中球系の核異型性を認め,骨髄異形成症候群refractory anemia(RA)typeと診断した.12月27日,39℃台の熱発,CRPの上昇とともにアフタ性口内炎,体幹,四肢に有痛性の浮腫性紅斑が出現.皮膚生検にてSweet病と診断した.プレドニゾロン内服増量を試みるも不応で,ステロイドパルス施行にて症状の軽快を認めた.

ステロイド外用が奏効したlichen aureusの1例

著者: 辻晶子 ,   安川香菜 ,   清水宏

ページ範囲:P.933 - P.935

 28歳,男性.手背,前腕に生じたlichen aureusを報告した.臨床所見および組織学的に典型的であり,皮疹はステロイド外用にて改善した.また,本邦報告例25例と欧米での56例について比較検討した.

特発性後天性全身性無汗症の1例

著者: 常深祐一郎 ,   松下貴史 ,   長山隆志 ,   高橋毅法 ,   玉木毅

ページ範囲:P.936 - P.939

 23歳,男性にみられたidiopathic pure sudomotor failure(特発性後天性全身性無汗症の1亜型)の1例を報告した.初診3年前に体温上昇時の疼痛を伴う無汗を自覚したが,自然軽快した.初診半年前に同症状が再出現し,紅斑・毛孔の隆起も伴うようになった.発汗試験では,顔面・頸部・腋窩・掌蹠・背部の一部・殿裂部以外はまったく無汗で,紅斑と疼痛を生じた.これら以外に身体所見・検査所見上異常はなく,組織学的にも汗腺の変性像などは認めなかった.ステロイドパルス療法を2クール施行したところ,症状は改善した.本症について文献的考察を加えた.

末梢神経障害を伴いリベドを呈したサルコイドーシスの1例

著者: 岡本玲子 ,   檜垣祐子 ,   川島眞 ,   竹内恵

ページ範囲:P.941 - P.944

 58歳,女性.両下腿にリベドと皮下硬結を伴う紅斑を認め,ヒリヒリ感を伴っていた.組織像は,真皮全層の島嶼状をなす類上皮細胞肉芽腫で,肉芽腫は血管を取り囲むように形成され,血管内皮細胞の腫大や内腔の狭小化がみられた.血清Ca,リゾチーム,ACE値は正常.血沈26 mm/hr,RF211U/mlと上昇.ツ反陰性.BHL(—).眼症状(—).末梢神経伝導検査で正中,尺骨神経の振幅の低下と右腓腹神経の伝導速度が正常範囲ながら左側に比べて低下していた.サルコイドーシスでリベドを呈することは稀である.リベド形成機序を考察し,末梢神経障害の成因との関連性についても述べた.

鼠径部に生じた子宮内膜症の1例

著者: 滝愛子 ,   永井弥生

ページ範囲:P.945 - P.947

 43歳,女性.初診の約半年前より,右鼠径部の皮下結節に気付き,月経時に疼痛が増強していた.初診時,右鼠径部内側に拇指頭大の弾性硬の皮下結節を認めた.組織学的には,1層〜数層の円柱上皮からなる腺腔構造とその周囲をとりまく細胞成分に富む間質を認め,皮膚子宮内膜症と診断した.皮膚科領域における子宮内膜症の報告は比較的稀であるが,鼠径部に生じる皮下腫瘤の鑑別診断の一つと思われた.

炎症性線状疣状表皮母斑の1例

著者: 高田香織 ,   新見やよい ,   楠俊雄 ,   川名誠司

ページ範囲:P.949 - P.951

 52歳,女性.10歳頃より左前腕から手背にかけて,瘙痒を伴う帯状の角化性局面が出現,その後左1趾,2趾にも同様の症状が出現した.組織所見では著明な角質増殖,表皮肥厚,顆粒層の肥厚,表皮突起の延長を認め,この中に,島状に錯角化,顆粒層の消失した部位が混在し,真皮乳頭層の血管周囲に軽度の炎症性細胞浸潤を認めた.以上よりinfiammatory linear verrucous epidermal nevusと診断した.タカルシトール含有軟膏外用にて角化,紅斑はやや改善したが皮疹はいまだ残存している,本症の病態は乾癬に類似しているとの報告があるが,皮疹の性質,経過からは母斑性の性質が強い疾患と考えられる.

前頭部に生じたproliferating trichilemmal cystの1例—Ki-S5の染色態度の検討

著者: 藤村卓 ,   舩山道隆 ,   高橋和宏 ,   照井正 ,   田上八朗

ページ範囲:P.952 - P.954

 68歳,女性.左側頭部の腫瘤を主訴に来院した.粉瘤,trichilemma1 cystを疑い局麻下に切除した.病理組織所見では腫瘍は中心部での角化傾向と辺縁部への膨張性増殖を示しており,proliferating trichilemmal cystと診断した.免疫組織学的には,腫瘍辺縁部にのみKi-S5陽性所見を呈した.Proliferating trichilemmal cystは臨床所見,病理所見上,有棘細胞癌との鑑別が困難であり,鑑別にKi-S5による免疫染色が有効であると考えられる.

青黒色調を呈した皮膚混合腫瘍の1例

著者: 松下貴史 ,   常深祐一郎 ,   長山隆志 ,   高橋毅法 ,   玉木毅

ページ範囲:P.955 - P.957

 42歳,女性.顔面に生じた皮膚混合腫瘍の1例を報告した.右鼻翼の7×6×6mm,青黒色調〜常色を呈する弾性硬の小結節で,病理組織学的に表皮との連続性のない腫瘍塊を真皮上層から下層にかけて認めた.腫瘍は上皮性成分と間質により構成されており,上皮性成分はapocrine系分化,毛包系分化を示し,間質は粘液腫様で一部軟骨様を示す部分も認めた.皮膚混合腫瘍は通常,常色ないし紅色を呈することが多く,自験例のように青黒色調を呈することは比較的稀と思われる.

下腹部から外陰部にかけて生じた巨大な基底細胞癌の1例

著者: 間山淳 ,   松崎康司 ,   熊野高行 ,   原田研 ,   玉井克人 ,   花田勝美 ,   四ツ柳高敏 ,   鈴木唯司

ページ範囲:P.958 - P.960

 78歳,男性と10年前より下腹部に自覚症状を伴わない黒色調皮疹が出現,徐々に増大するも放置.2000年1月頃より排尿困難となり近医入院.皮膚病変の治療を目的に同年2月22日当科紹介となった.初診時,下腹部から陰茎基部にかけて巨大な潰瘍を認め,その辺縁は黒色調で堤防状に隆起していた.組織は角化型基底細胞癌で,病変部は真皮深部に到達していた.広範囲腫瘍切除術,腹直筋皮弁,遊離全層植皮術および尿道再建術を施行した.5か月後および6か月後,植皮部に小結節が出現.基底細胞癌の再発をみている.

Giant cell tumor of tendon sheathの2例

著者: 武藤潤 ,   齋藤京 ,   大畑恵之 ,   小澤雅邦

ページ範囲:P.961 - P.963

 症例1:60歳,男性.左第3趾末節骨背側に1.4cm大,弾性硬で下床と癒着し半球状に隆起する多房性皮下結節.症例2:13歳,女性.左拇指MP関節尺側の1cm大,弾性硬,無症候性の皮下結節.両症例ともMRIで,T1強調,T2強調にて筋組織よりも低信号を示す腫瘤であり,骨侵食像を認めなかった.全摘術施行し,病理学的に組織球類似細胞が胞巣を形成し,巨細胞が散在していた.Giant cell tumor of tendon sheathの診断と進展度の評価におけるMRIの有用性につき考察する.

隆起性皮膚線維肉腫との鑑別を要したaneurysmal fibrous histiocytoma

著者: 五十嵐努 ,   竹内紋子 ,   石地尚興 ,   上出良一 ,   新村眞人

ページ範囲:P.965 - P.968

 33歳,男性.初診の7〜8年前より背部に小腫瘤が出現し徐々に増大した.初診時腫瘤の大きさは鶏卵大に及び,一部皮面から隆起し青紫色に透見され,びらんを伴っていた.臨床像,生検像にて隆起性皮膚線維肉腫が疑われたため拡大切除後皮弁形成を行った.病理組織学的には真皮浅層から脂肪織内に腫瘍塊が浸潤性に発育し,その中に赤血球を含む大小の裂隙を形成していた.紡錘形の細胞が花むしろ状に増殖している部分が多く存在し,腫瘍細胞のproliferating cell nuclear antigenの陽性率が高く,一部の腫瘍細胞でCD34が陽性であった.しかし,泡沫細胞の出現,リンパ球,形質細胞の濾胞様細胞浸潤,豊富な出血性病変を有するなど多彩な組織像を呈し,特に腫瘍の中央部では血腫を形成し,ヘモジデリン沈着も著明であったことからaneurysmal fibrous histiocytomaと診断した.

肝血管腫を伴った皮膚多発性血管腫

著者: 外川八英 ,   籏持淳 ,   松島弘典 ,   新海浤 ,   小林進 ,   浅野武秀 ,   落合武徳

ページ範囲:P.969 - P.972

 43歳,女性の皮膚多発血管腫に肝血管腫を伴った1例を報告する.約12年前より左前腕部,躯幹,四肢に紅色丘疹が出現.約10年前より肝腫瘍を指摘された.左前腕部の生検皮膚組織は,真皮上層部より皮下脂肪織境界部にわたり,1層の扁平な内皮細胞を有する大小多数の管腔構造を呈した海綿状血管腫の像で,肝腫瘍も同様の組織像を示した.皮膚および内臓に多発する血管腫をきたす従来の血管腫症に合致せず,新たな血管腫症の可能性が考えられた.

右踵部に生じたnerve sheath myxomaの1例

著者: 五十嵐直弥 ,   田村敦志 ,   大西一徳 ,   石川治

ページ範囲:P.973 - P.975

 62歳,男性.右踵部のドーム状に隆起する淡紅色結節を主訴に来院.病理組織学的に腫瘍は真皮浅層から皮下にかけて多房性の小葉状構造を示し,小葉内には紡錐形ないし星芒状の細胞が増殖し,個々の腫瘍細胞は著明に離開していた.腫瘍細胞はS−100蛋白陽性,neuron-specific enolase陽性で,離開した細胞間にはアルシアン青陽性物質が沈着していた.

広範囲に脱毛を伴った皮膚T細胞リンパ腫の1例

著者: 西山浩美 ,   天羽康之 ,   田邊和美 ,   矢口厚 ,   坪井廣美 ,   勝岡憲生

ページ範囲:P.977 - P.980

 77歳,女性.初診の約1年前に前頭部の脱毛斑,顔面には浸潤を有する紅斑・結節が出現し,徐々に全身へ拡大した.初診時,顔面を含むほぼ全身に,淡紅褐色〜紫赤色の爪甲大までの浸潤ある紅斑および隆起性の結節が多発・融合して認められ,陰毛や腋毛を含めた全身のびまん性脱毛も伴っていた.結節の病理組織像では,真皮全層から皮下脂肪織にかけて異型リンパ球の稠密な浸潤・増殖を認め,脱毛斑部では,毛包内およびeccrine汗器官周囲への異型リンパ球浸潤がみられた.組織学的にcutaneous T-cell lymphoma(CTCL)と診断し,プレドニゾロン内服投与15mg/dayを開始したところ,全身の結節,紅斑は消退し,発毛が認められた.

人工真皮の繰り返し使用が有効であった骨露出を含む外傷性皮膚全層欠損の1例

著者: 西藤由美 ,   奈良武史 ,   若林晃子 ,   竹中秀也 ,   岸本三郎

ページ範囲:P.981 - P.983

 7歳,女児.交通事故にて右側頭部を受傷し,直径5cm大の皮膚全層欠損創を認め,中央部は直径3cmの範囲で骨膜が欠損し,骨が露出していた.皮膚全層欠損創に対し,人工真皮植皮術を施行したが骨露出部は肉芽組織の形成が思わしくなかったため,約1か月間に計4回の人工真皮植皮術を繰り返し行い,十分な肉芽組織の形成を得た後,頭部より採皮し二次植皮を行い,良好な経過を得た.

苔癬型皮疹を生じたサルコイドーシスと急性骨髄性白血病の合併例

著者: 黛真理子 ,   加藤直子 ,   青柳哲 ,   菅原弘士 ,   相川啓子

ページ範囲:P.984 - P.987

 苔癬型皮疹を認めたサルコイドーシスと急性骨髄性白血病(AML)の合併例を報告する.両疾患は同時期発症か,あるいはサルコイドーシスが先行したと考えられた.症例は62歳,男性で,顔面,手掌,足底を除く,ほぼ全身の皮膚に,半米粒大で扁平に隆起した,淡褐色から淡紅色の丘疹の多発を認めた.それらの一部は毛孔一致性で,一部は集簇性に認められたが融合傾向は示さなかった.組織学的に類上皮細胞,リンパ球,巨細胞からなる非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を示した.眼ブドウ膜炎,ツベルクリン反応陰性,リゾチーム高値を認め,皮膚病変として苔癬型皮疹を伴ったサルコイドーシスと診断した.4年前にAMLを発症し,化学療法にて寛解を得ていたが,再発ではない原因不明の一過性の白血球数増加に伴って皮疹も悪化した.サルコイドーシスと急性白血病の合併は稀で,報告例は自験例を含めて13例である.その中でも苔癬型皮疹を伴った例は自験1例のみであった.

連載

Clinical Exercises・115—出題と解答

著者: 竹原和彦

ページ範囲:P.944 - P.944

229
抗リン脂抗体症候群において,正しい文章を2つ選べ.
A:主要な抗体として,抗カルジオリピン抗体とループスアンチコアグラントが挙げられる.

海外生活16年—出会った人・学んだこと・22

著者: 神保孝一

ページ範囲:P.996 - P.999

「フィンランド点描(その2):ツルク,オウル,クオピオ,タンベレ大学医学部皮膚科とPUVAbath療法の開発
 前項ではフィンランドのヘルシンキ大学医学部皮膚科について話した.本項ではフィンランドのヘルシンキ大学以外の4つの大学医学部について紹介する.これらの大学は,ツルク大学,オウル大学,クオピオ大学,タンベレ大学である.もちろん紹介する内容は私が1970年代後半に訪問した当時のフィンランドにおける頃の大学医学部の様子である.

臨床統計

糖尿病患者における足白癬の罹患率

著者: 鈴木健司 ,   白井滋子 ,   伊東武志 ,   森田浩 ,   中村浩淑 ,   瀧川雅浩

ページ範囲:P.989 - P.992

 1999年4月〜2001年3月までの2年間に浜松医科大学第二内科に糖尿病教育入院した患者の足を診察し,真菌感染の有無を苛性カリ法などで検査し足白癬の罹患率を調べた.また,男女の性,年齢,糖尿病のコントロール状態(HbA1c)で罹患率に差があるかを検討した.
 1999年度は50名(男21名,女29名),2000年度は58名(男34名,女24名)の合計108名が受診した.足白癬の罹患率は56%(男56%,女56%)で男女の性差は認めなかった.年齢においては30歳代以上でほぼ横ばいで,年齢が上昇するにつれて罹患率が上昇する傾向はなかった.糖尿病のコントロール状態との関係は,コントロールが悪い群においてコントロール状態と罹患率は相関関係にあった.

治療

トラフェルミン(フィブラスト®スプレー)による強皮症の指尖部難治性潰瘍の1治療経験

著者: 大原鐘敏 ,   太田栄一 ,   江藤ひとみ

ページ範囲:P.993 - P.995

 強皮症を基礎疾患に持つ58歳,女性の環指遠位指節間関節にみられた難治性潰瘍に対し,プロスタグランディン製剤,抗トロンビン製剤の点滴投与を行ったものの,明らかな改善がみられなかったため,関節軟骨の掻爬に加え,血管新生作用を持つトラフェルミンの外用を行った.使用開始より約2週で良好な肉芽の増生がみられるようになり,約8週で完全に上皮化し,指の切断を免れた.強皮症にみられる指部の潰瘍は治療に難渋することが多く,指の温存のため外科的処置として血行のない関節軟骨の除去と,潰瘍治療薬としてのトラフェルミンの有用性が確認された.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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