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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科56巻12号

2002年11月発行

雑誌目次

カラーアトラス

Poroid hidradenomaの1例

著者: 新谷洋一 ,   森田明理 ,   辻卓夫 ,   玉田康彦

ページ範囲:P.1006 - P.1007

 症例:91歳,女性
 初診:2000年12月19日

原著

Microsoft Access®によるデジタル画像のデータベース

著者: 秋山正基 ,   北見周 ,   末木博彦 ,   飯島正文

ページ範囲:P.1011 - P.1015

 昭和大学皮膚科では1961年から臨床スライドを保管しているが,その収納スペースがなくなってしまったため,2001年3月よりデジタル一眼レフカメラCanon D−30を導入した.連日生ずる大量のデジタル画像を相手に悪戦苦闘しながらも,Microsoft Access®を用いた比較的安価で簡便なデジタル画像の保管法を考案したので報告する.具体的には,まずWindows Me®かWindows 2000®で可能な「ファイルの縮小表示」を用いて症例ごとのフォルダに仕分ける.ファイルの一括縮小はフリーソフト「藤—Resizer—」による.フリーソフト「ファイル・フォルダリストアップSYSTEM」を使って,Accessファイルへフォルダ名(カルテ番号)をインポートした後,その他の事項を入力しデータベースを作成する.実際の画像フォルダへの移動のためにAccessファイルからハイパーリンクを作成しておく.

今月の症例

Fibroma of tendon sheathの1例

著者: 長坂武 ,   木花光

ページ範囲:P.1016 - P.1018

 64歳,男性のflbroma of tendon sheathの1例を報告した.約5年前より圧痛を伴う右足底の皮下結節があった.局所麻酔下で切除した.病理組織学的には真皮深層〜皮下組織の線維性被膜を有する多房性腫瘍で,硝子化した膠原線維束間に線維芽細胞を少数認める部位・線維芽細胞の増生が主体の部位が混在,両者の移行帯もみられる.腫瘍内にスリット状の裂隙を認めた.本症は病理・整形外科領域から多数報告されている一方,皮膚科領域での本邦報告は調べえた限り5例と少ない.本症はpalmo plantar fibromatosis, giant cell tumor of tendon sheath, nodular fasciitisとの鑑別疾患としても重要であり,皮膚科医も熟知しておく必要がある.

免疫グロブリン大量療法後に生じた汗疱の5症例

著者: 笹田昌宏 ,   松井美萌 ,   服部ゆかり

ページ範囲:P.1019 - P.1021

 免疫グロブリン大量療法(intravenous immune globulin treatment;IVIg)後に汗疱を生じた5例を報告する.発症時期は薬剤投与終了直後から3日目にかけてであり,経過中に発熱や発汗増加などは認められなかった.IVIgが用いられた基礎疾患は慢性炎症性脱髄性多発根神経炎が3例,Guillian—Barré syndromeが1例,Fisher syndromeが1例であった.1症例について施行した金属パッチテストは陰性であった.いずれもステロイド剤の外用または内服により軽快した.IVIg後に汗疱を生じた症例は,同療法の神経疾患への適応が認められて以降,国内外で報告が認められるようになった.

症例報告

尋常性天疱瘡の1例—ELISA法による病勢モニタリング

著者: 戸田素子 ,   小林昌和 ,   安西秀美 ,   程少為 ,   谷川瑛子 ,   天谷雅行 ,   西川武二

ページ範囲:P.1023 - P.1026

 32歳,女性の尋常性天疱瘡患者.ステロイド内服により口腔粘膜疹,皮疹ともに軽快した.通常の100倍希釈の血清を用いたELISA法では,臨床症状軽快後も抗Dsg3抗体価は高値を示し,病勢との解離が認められた.これは血清中の抗体価が高く,ELISA法における酵素反応が飽和状態にあるためと考えられた.そこで血清の希釈倍率を上げ,1,600倍希釈した血清を用いたELISA法を施行したところ,抗Dsg3抗体価が病勢と並行して推移していることが確認できた.至適血清希釈倍率を用いることにより,ELISA法が病勢のモニタリングに有用であることが示された.

ジアフェニルスルホンが著効したwidespread DLE型皮疹を有した全身性エリテマトーデスの1例

著者: 木村未夏 ,   新田悠紀子

ページ範囲:P.1028 - P.1030

 17歳,女性.9歳時にSLEと診断され,近医小児科にてプレドニゾロン27.5mg/日内服治療していた.15歳時,転居のため当科受診.全身にDLE型皮疹散在.プレドニゾロン25mg/日にて開始したが,20mg/日へ減量後,低補体増強し,DLE型皮疹改善せず.DDS75mg/日開始,2か月後には,皮疹はほぼ消失し低補体も改善した.当科においてwidespread DLE(wDLF)型皮疹を有するSLE3例,DLE型皮疹を有するSLE1例,wDLE1例にDDSの投与を試みたところ,全例皮疹の改善を認めた.

多彩な皮疹を呈したamyopathic dermatomyositisの1例

著者: 高理佳 ,   畑康樹 ,   鈴木洋介 ,   河原由恵 ,   大畑恵之 ,   谷川瑛子 ,   西川武二

ページ範囲:P.1031 - P.1034

 多彩な皮疹を呈したamyopathic dermatomyositisの1例を経験した.57歳,女性.臀部の紅斑を伴う板状硬結より初発し,次第に皮膚筋炎に典型的なゴットロン徴候,爪囲紅斑が出現.筋症状は認めなかった.経過中に,水疱形成,perforating disorderを思わせる角化性病変,臀部の潰瘍形成と多彩な皮疹が認められた.間質性肺炎を合併したため,プレドニゾロン40mg/日の内服,臀部の潰瘍に対し,シクロスポリン5mg/kg内服を併用し,いずれも軽快した.一般的に皮膚筋炎における水疱や潰瘍形成は予後不良因子として知られているが,自験例は現在のところ比較的経過良好である.しかし,本症においては,急激な間質性肺炎による予後不良な症例も散見されており,今後も慎重な経過観察が必要であると思われた.

骨髄異形成症候群に合併したBehçet病の1例

著者: 青柳哲 ,   加藤直子 ,   菅原弘士 ,   黛真理子 ,   比嘉敏夫

ページ範囲:P.1035 - P.1038

 骨髄異形成症候群(MDS)に合併したBehçet病の1例を報告した.症例は29歳,女性.1996年にMDSを発症した.同時期から口腔内の再発性アフタ,その2年後から外陰部潰瘍の出現を繰り返すようになった.インフルエンザ感染を契機に外陰部潰瘍が悪化し,2000年当科を初診した.第8番染色体のトリソミー,HLA B51陽性を認めた.赤沈亢進を示したが,アフタと外陰部潰瘍以外の皮膚症状,眼症状,副症状は認めずBehçet病の疑い例と診断した.治療はセファランチンと塩酸アゼラスチンの内服,外陰部潰瘍へのプロスタグランディン軟膏の外用を行い,約1か月半で上皮化した.本邦でのMDSとBehçet病との合併例は自験例を含めて12例で,そのうち9例に第8番染色体のトリソミー,4例にHLA B51が認められている.両疾患の病因と強く関連する因子と考えられた.

広範囲デブリードマンにより救命しえたtoxic shock-like syndromeの1例

著者: 池永健治 ,   蔵本伸生 ,   石神光雄 ,   野田洋介 ,   竹中秀也 ,   加藤則人 ,   岸本三郎 ,   安野洋一 ,   橋本悟

ページ範囲:P.1039 - P.1041

 59歳,女性.関節リウマチにて,メトトレキサートなどを内服中.入院3日前より左大腿部に有痛性の紅斑が出現し,次第に疼痛の増強と出血斑を伴うようになってきたため,当科へ入院した.入院時,左大腿部に水疱を伴った暗赤色斑を認め,血圧低下,CRPの著明な上昇と腎機能障害を認めた.入院後数時間のうちに壊死性局面が出現し,暗赤色斑が急速に下腿や下腹部方向に拡大しDICを生じた.壊死性筋膜炎および敗血症を疑い,緊急に広範囲にわたりデブリードマンを施行した.術後は大量の抗生剤を投与し全身状態の回復を待ち,入院後26日目に植皮術を施行した.なお除去した組織片よりStreptococcus pyogenesが検出され,自験例をtoxic shock-like syndromeと診断した.

左下1/4半盲を合併したSchönlein-Henoch紫斑病の1例

著者: 吉田益喜

ページ範囲:P.1043 - P.1046

 68歳,女性,化膿性膣炎と思われる膿汁を伴う不正性器出血後腹痛,紫斑がみられSchönlein—Henoch紫斑病を疑い入院させた.ステロイド剤投与により,腹痛,紫斑が軽快しはじめた頃,左下1/4半盲の視野障害が出現した.CT,MR,血管造影の結果,半盲は後大脳動脈の血管炎による後頭葉の虚血によるものと思われた.CTなどで画像診断的には改善がみられ,他の臨床症状も改善したにも関わらず,視野障害のみ残存した.Schönlein-Henoch紫斑病は腹部,腎,関節症状以外にも合併症がある.特に,神経障害の合併症は機能回復や生命予後からみても重要なので,注意して観察する必要がある.

Nocardia brasiliensisによる皮膚ノカルジア症の1例

著者: 熊谷知子 ,   嵯峨兵太 ,   石橋睦子 ,   檜垣祐子 ,   井戸田一朗 ,   川島眞

ページ範囲:P.1048 - P.1051

 23歳,女性の皮膚ノカルジア症の1例を報告した.6年前にバイク事故で転倒し,右足背に外傷を受けた.その後徐々に同部に結節が出現したため,当科を受診した.初診時,右足背に暗赤色結節が数個集簇し,圧すると膿汁の排泄をみた.生検組織像は膿瘍を伴う肉芽組織で,顆粒や菌糸は認めなかった.生検組織片の培養で,橙黄色のコロニーを得,生理学的性状,リボゾームRNAの塩基配列より本菌をNocardia brasiliensisと同定した.他臓器の病変は認めなかったため,本例を原発性皮膚ノカルジア症と診断した.治療はサルファメトキサゾールの内服が奏効した.

鼠咬傷部に生じたスポロトリコーシス

著者: 凌太郎 ,   平嘉世 ,   三砂範幸 ,   成澤寛

ページ範囲:P.1053 - P.1055

 68歳,女性.1998年3月,鼠に左示指基部を噛まれ受傷したがそのまま放置していた.約1か月後より手背に結節が出現した.受診時,咬傷部に拇指頭大の紅色局面を認め,左手背に線状に並ぶ米粒大の結節4箇所触知した.病理組織学的には真皮内にmixed cell granulomaとasteroid bodyを認めた.組織の培養にてSporothrix schenckiiを分離・同定し,スポロトリコーシスと診断した.治療はイトラコナゾール1日150mg内服にて3か月で略治した.

潜在していた脊髄病変の治療後,劇的な改善をみた足穿孔症の1例

著者: 小棚木麻衣子 ,   原田研 ,   水木大介 ,   玉井克人 ,   花田勝美 ,   岡田晶博 ,   松永宗雄

ページ範囲:P.1056 - P.1058

 16歳,男性.初診の6か月前に右踵部に小びらんが出現,徐々に拡大した.初診時,直径1cm,深さ1cmの潰瘍を形成していた.神経学的にS1領域に痛覚および触覚の低下がみられ,MRIにて脊髄空洞症を指摘され,係留脊髄の存在が示唆された.外用療法に抵抗したが,係留解除術を施行後,潰瘍は劇的に改善した.

Microscopic polyangitisの1例

著者: 三宅亜矢子 ,   田島麻衣子 ,   木花いづみ ,   藤森斉

ページ範囲:P.1059 - P.1062

 17歳,女性に発症したmicroscopic polyangitisの1例を報告した.呼吸器症状と貧血のため入院.1年前より顔面,四肢,臀部に紫斑,紅色丘疹など多彩な皮疹の出没を繰り返していた.いずれの皮疹も病理組織学的に真皮全層に壊死性血管炎を認めた.抗ミエロペルオキシダーゼ抗体陽性,腎生検にて半月体形成性腎炎が認められたためmicroscopic polyangitisと診断した.一過性にみられた呼吸器症状については肺出血が強く疑われた.最終的にパルス療法を含むステロイド投与を行ったが,経過中,皮疹に対してはジアフェニルスルホンが著効した.本症の皮膚科領域からの報告は現在までのところ少ないが,今後注目すべき疾患と考え本症についての皮疹,治療について若干の考察を加えた.

ステロイド内服が奏効したcytophagic histiocytic panniculitisの1例

著者: 辻本友高 ,   田子修 ,   浅田一幸 ,   渋谷倫子 ,   伊藤薫 ,   伊藤雅章

ページ範囲:P.1063 - P.1066

 16歳,女性.1998年12月下旬より圧痛を伴う浸潤性紅斑が上肢・体幹に出現.翌年1月頃より,発熱,白血球減少,肝機能障害もきたした.皮膚生検像はlobular panniculitisで,一部に大型の異型リンパ球を認めた.また,皮膚および骨髄に核片や赤血球を貪食した組織球,いわゆるbean-bag cellを認めた.血球貪食細胞はCD68陽性,大型の異型リンパ球はCD3,CD45ROが陽性であった.皮膚組織から抽出したDNAを用いたサザンプロット解析でT細胞の遺伝子再構成は認めず,Epstein—Barr virus由来のDNAは陰性であった.プレドニゾロン30mgの内服で皮疹は速やかに消退し,検査上も白血球数,肝機能,凝固障害の改善を認めた.現在プレドニゾロンを中止し,約2年を経過しているが再燃を認めていない.

PUVA-bath療法とIFN—γ併用が著効した菌状息肉症の1例

著者: 新谷洋一 ,   森田明理 ,   辻卓夫

ページ範囲:P.1067 - P.1070

 69歳,女性.全身に瘙痒を伴った大小扁平に隆起した紅色から茶褐色の局面が出現した.病理組織にて表皮内細胞浸潤,一部にPautrier微小膿瘍の像を認め,扁平浸潤期の菌状息肉症と診断.その後,約3年半の間に外用PUVA療法,IFN—γ単独療法,medium-dose UVA1療法,および2度のPUVA-bath単独療法を行ったが,皮疹は寛解に至るも再燃を繰り返した.今回われわれは,PUVA—bath療法(週4回計29回103.2J/cm2)とIFN—γ(200万単位を週5回連続投与から開始し計30回)を併用し,治療期間約2か月にて皮疹はほぼ寛解し,病理組織上も腫瘍細胞は消失した.どの方法においても皮疹はほぼ寛解に至ったが,再燃までの期間を比較すると,治療前の皮疹の程度は後になるほどより高度になってきたにもかかわらず,PUVA-bath療法とIFN—γの併用療法が最も長い寛解期間をもっており,PUVA-bath療法とINF—γの併用は相加効果が期待できると考えた.

皮下型環状肉芽腫の1例

著者: 高井利浩 ,   川上尚弘

ページ範囲:P.1072 - P.1075

 2歳8か月,男児.生後6か月頃より頭部に皮下腫瘤が出現,徐々に増加し5個となった.全身症状は認められなかった.病理組織学的には,皮下にpalisading granulomaを認め,中心部にはムチンの沈着がみられた.臨床経過と併せ,環状肉芽腫の皮下型と診断した.生検後,経過を観察中であるが,縮小傾向が認められ,消退傾向にある.皮下型環状肉芽腫について過去の文献と併せ若干の考察を加えた.

広範囲に皮下硬結を呈した皮下型サルコイドーシスの1例

著者: 中井菜美 ,   松岡縁 ,   多田正憲

ページ範囲:P.1076 - P.1078

 57歳,女性.1998年10月,四肢伸側および臀部に,著明な熱感と疼痛を伴う板状の皮下硬結が出現した.生検での皮下脂肪織における非乾酪性類上皮細胞肉芽腫,両側肺門部リンパ節腫脹,ツ反陰性,血清ACEおよびリゾチーム高値より,皮下型サルコイドーシスと診断した.当初非ステロイド系消炎鎮痛剤のみを投与したが,経過中に眼病変が出現したためプレドニゾロン30mg/日の内服を開始した.反応はきわめて良好で,現在2.5mg/日にて経過観察中である.自験例は,高齢女性,四肢伸側の分布,糖尿病合併,良好な経過など,広範囲に板状硬結を呈する皮下型サルコイドーシス(extensive subcutaneous sarcoidosis)の臨床的特徴に合致すると考えた.

臨床的に上皮系腫瘍を思わせた外歯瘻の1例

著者: 鈴木由貴 ,   児島壮一 ,   秋山正基 ,   末木博彦 ,   飯島正文

ページ範囲:P.1080 - P.1082

 76歳,女性の顔面に生じた外歯瘻の1例を報告した.約2年前より左頬部に小結節が出現し,漸次増大.左鼻翼の上外側頬部に豌豆大で暗紅色調の広基有茎性,表面角化性の結節を認めた.臨床診断として脂漏性角化症などの上皮系腫瘍を考え全摘術を予定したが,手術当日に,表面の痂皮が脱落し,肉芽様外観の結節が出現.下床と癒着し,一部は陥凹していたため,生検のみを施行した.病理組織学的に好中球,形質細胞を主体とした著明な炎症細胞浸潤があり,肉芽組織の形成を認めた.生検6日後には結節の鼻側に瘻孔を確認した.この時点で外歯瘻を疑い,オルトパントモグラフィにより左上犬歯歯根部カリエスに起因する外歯瘻と診断した.上顎歯を原因歯とする外歯瘻は比較的稀であり,若干の文献的考察を加えて報告した.

顆粒細胞腫の1例—免疫組織化学的,電顕的検討

著者: 田島麻衣子 ,   田口英樹 ,   木花いづみ

ページ範囲:P.1084 - P.1086

 21歳,女性の上腕に生じた顆粒細胞腫の1例を報告した.3年来存在する,径3cmの非常に硬い皮内から皮下にかけての結節で,腫瘍細胞は大型多角形の胞体内に好酸性顆粒を有していた.免疫組織学的にはS−100蛋白,NSE陽性,電顕学的にはミエリン様構造,基底膜構造など神経鞘腫と共通の所見がみられ,本腫瘍の起源を神経系と考えた.

Cowden病の1例

著者: 長坂武 ,   木花光

ページ範囲:P.1088 - P.1090

 53歳,女性のCowden病の1例を報告した.約15年前から顔面・歯肉・手足・右上肢に自覚症状のない皮疹が多発.大腸ポリポーシス・肝血管腫・甲状腺腫の合併,乳癌・子宮癌の既往あり.家族内同症は不明だが,母親に乳癌・甲状腺腫の既往があり,血液悪性腫瘍で死亡したという.局所麻酔下で鼻の扁平淡黄色丘疹,右上肢の小豆大で弾性硬の半球状常色小結節2個を切除.組織学的に鼻の丘疹はsebaceous hyperplasia,右上肢の小結節は2個ともsclerotic fibroma.過去の報告によると,顔面の丘疹のうち,本症に特徴的であるとされるtrichilemmomaの像を呈する症例は十数%と意外に少ない.また,最近本症でsclerotic fibromaの発生が注目されており,特に多発性の場合,Cowden病のマーカーになりえるとの報告がある.

Triple extramammary Paget's diseaseに右乳房部病変を伴った1例

著者: 江守裕一 ,   稲積豊子 ,   木村俊次

ページ範囲:P.1091 - P.1094

 89歳,男性の外陰部,両腋窩に生じたtriple extramammary Paget's disease(以下,triple EPD)に,右乳房部病変を伴った1例を報告した.陰嚢から一部陰茎にかけて暗紅色の紅斑と脱色素斑とを認めた.右腋窩には鶏卵大の暗紅色の扁平隆起性の局面を認め,左腋窩には淡紅色紅斑を認めた.また,右乳房部に乳輪と連続して長径2cmの淡紅褐色斑を認めた.組織学的には4病変ともほぼ同様で,胞体の明るい大型のPaget細胞が表皮内に増殖しており,それらはPASおよびCEA染色で陽性を示した.本邦でのtriple EPDの報告例は自験例を含め少なくとも60例あったが,その中で乳房部病変を伴った例は稀であり,位置付けについて若干の考察を加えた.

豆状骨骨膜浸潤を認めた左手首有棘細胞癌の1例

著者: 青柳哲 ,   加藤直子 ,   木村久美子 ,   菅原弘士 ,   加藤貞利

ページ範囲:P.1096 - P.1099

 81歳,女性.約3年前から左手首に潰瘍性腫瘤が出現した.組織学的に低分化型の有棘細胞癌(SCC)で,皮下脂肪まで達し,中央部は豆状骨の骨膜まで浸潤していた.治療は病変より2cm離して下床の筋の一部とともに豆状骨を摘出した.所属リンパ節転移も認めたため,同時に左腋窩リンパ節郭清術を施行した.術後,シスプラチンによる化学療法および左腋窩への放射線照射を行った.しかし,術後6か月目に植皮部に再発を認めたため,左肘下切断術および左肘リンパ節郭清術を施行した.組織学的に左肘リンパ節転移を認めたため,左肘窩への放射線照射およびネダプラチンによる化学療法を行った.自験例と同様の潰瘍性病変を呈した手SCCで,皮下よりも下方の臓器への深達例をまとめ,治療と予後について考察した.

連載

Clinical Exercises・116—出題と解答

著者: 古江増隆

ページ範囲:P.1026 - P.1026

231
LEOPARD症候群では認めにくい症状はどれか.
A:肺動脈弁閉鎖症

海外生活16年—出会った人・学んだこと・23

著者: 神保孝一

ページ範囲:P.1106 - P.1109

カナダ・アルバータ大学医学部皮膚科学教室—教室の誕生と主任教授就任過程
1.カナダ・アルバータ州の自然環境
 前号まで私は米国(ボストン),フィンランド(ヘルシンキ)での長期(5年半),短期(2か月)の滞在を通じ経験した米国,フィンランドの医療とその医学教育・研究環境について述べたが,私の第三の海外長期滞在は,カナダ・アルバータ州エドモントンであった.これから述べるアルバータ大学および私自身の同大学での皮膚科学教室の立ち上げ過程を理解するにはまず,アルバータ州の自然環境について述べると理解しやすい.
 エドモントン市は,カナダ・アルバータ州の首都であり,私の移住した1987年には人口約85万の都市で,トロント,バンクーバー,モントリオールに次いで大きな都市であった.今から約100年ほど前にアルバータ州北部に大量の砂金が取れ,ゴールドラッシュとなり多くの人々がエドモントンを流れるサスカチュアン川を上り,アルバータ州北部へと移住し砂金の採掘に励んだ.したがって,当時はそういった金の採掘者が北上する際の中継地として栄えた.また,それ以前には毛皮の交易の町としても栄えていた.そのため,カナダとしては早くから開かれた古い都市の一つである.しかし,アルバータを世界的に有名な州とせしめたのは,第2次世界大戦後の1947年に突然地下から油が噴出してきて,自分たちの住んでいる地下に大量の石油資源があり,しかも石油のみならず,大量のオイルサンド,さらにはナチュラルガスの3つがあることがわかったことである.そこで石油ブームが起こったわけであるが,その時,州政府が賢かったのは,売上の3割をプールして医療行政に使用することを決めたことである.その運営に関しては,Alberta Heritage Foundation for Medical Research(AHFMR)を設立し,この財団が売上の3割をプールした利益を用い,州民のために大病院の設立,大学の施設の設立,さらには医学従事者,医療研究者のリクルート・育成に用いたことである.金の採掘はその後廃れたが,今でもエドモントン市を流れるサスカチュアン川には砂金が取れる.毎年,6月に砂金採掘時の隆盛期にちなんだクロンダイク日という祭りが開かれ,多くの観光客が各地から訪れ,川辺で金の採掘を行う.

治療

レチノイン酸外用剤による治療を試みた顔面播種状粟粒性狼瘡の1例

著者: 小林直隆 ,   向田雅司 ,   中島重紀

ページ範囲:P.1101 - P.1104

 52歳,女性の顔面に生じた顔面播種状粟粒性狼瘡の1例に対し,海外で尋常性痤瘡の治療に広く使用されているレチノイン酸(all-trans retinoic acid)外用剤を用いて治療を行った1例を報告した.レチノイン酸外用後約2か月で皮疹は平坦化し,約9か月で大部分が消失した.顔面播種状粟粒性狼瘡に対するレチノイン酸の作用機序は不明であるが,臨床的に問題となる治癒後の瘢痕形成がほとんどみられず,疼痛も伴わないことから今後新しい治療となる可能性があると思われた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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