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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科56巻13号

2002年12月発行

雑誌目次

カラーアトラス

外陰部汗管腫

著者: 河合幹雄 ,   山田悟 ,   有廣光司 ,   中山宏文 ,   片岡和洋

ページ範囲:P.1118 - P.1119

【症例1】
 患者:71歳,女性
 既往歴:うつ病,肺結核,網膜剥離

原著

抗デスモグレイン抗体価が陰性化した天疱瘡の検討

著者: 岸本和裕 ,   金子史男

ページ範囲:P.1120 - P.1124

 福島医科大学皮膚科において最近13年間に経験した天疱瘡33例(粘膜優位型尋常性天疱瘡:PV—M7例,粘膜皮膚型尋常性天疱瘡:PV-MC11例,落葉状天疱瘡:PF15例)のうち経過中最終的に臨床症状が消失し,ELISA法を用いて測定した抗デスモグレイン(Dsg)抗体価が陰性化した4例について臨床症状と抗Dsg抗体価の推移を中心に検討した.その内訳はPV-M3例,PV-MC1例であった.一方,予後の良いとされるPF患者に陰性化例は認めなかった.陰性化例には粘膜病変を伴う病型である以外に重症度,治療など共通の特徴は認めなかった.いずれの症例においてもELISA法により測定した抗Dsg抗体価が天疱瘡の病勢と相関していた.天疱瘡患者には副腎皮質ステロイド長期投与により副腎皮質機能が低下している症例があり,抗体価が陰性化してもステロイドの減量,中止には注意が必要であると思われた.

今月の症例

全身の毛細血管拡張を生じたintravascular large B-cell lymphomaの1例

著者: 小西朝子 ,   神戸直智 ,   松村由美 ,   宮地良樹 ,   山本玲 ,   幸谷愛 ,   堀利行

ページ範囲:P.1125 - P.1127

 74歳,女性.38℃台の発熱,急激な体重増加,躯幹,四肢の広汎な毛細血管の拡張を認めた.全身検索が行われたが,一連の症状を説明しうる原因を同定できなかったため,当科に紹介された.皮膚生検にて毛細血管が拡張し,拡張した血管内に大型異型リンパ球様細胞が充満し,管腔を完全に閉塞する像を認めた.免疫組織化学的検査にて腫瘍細胞はCD 20が陽性であり,遺伝子検査では免疫グロブリン重鎖JH領域の遺伝子再構成が確認された.以上よりintravascular large B-cell lymphomaと診断した.THP-COP療法開始後,発熱や浮腫の消退とともに毛細血管拡張も軽快した.原因不明に,全身に毛細血管拡張を認めた場合は,本疾患も念頭に置き積極的な皮膚生検を行う必要があると考える.

症例報告

全身に皮疹を認めたにもかかわらず,ステロイド外用のみで軽快した落葉状天疱瘡の1例

著者: 竹中基 ,   西村香織 ,   片山一朗

ページ範囲:P.1128 - P.1130

 47歳,女性.1992年12月より顔面を除く全身各所に紅斑,小水疱が出現,散在するようになった.近医皮膚科を転々とし治療されるも軽快しなかったため,1997年3月に自己判断で治療を中止した.1999年2月より,顔面にも紅斑,水疱,びらんが出現するようになり,3月からは全身に多発するようになったため,国立嬉野病院皮膚科を受診した.初診時には,頭部顔面を含むほぼ全身に,落屑や痂皮を付すびらん局面,紅斑の多発を認めた.水疱は弛緩性で少数しか認められなかった.粘膜疹はみられなかった.病理組織像では,角層直下に水疱を認め,水疱内には棘融解細胞を認めた.蛍光抗体直接法では,表皮細胞間にC3の沈着を認めた.血清抗デスモグレイン1抗体陽性,抗デスモグレイン3抗体陰性.以上より落葉状天疱瘡と診断した.皮疹は,ステロイド外用のみでわずか約2週間で消退し,全身投与は必要なかった.

限局型小水疱性類天疱瘡の1例

著者: 戸田淳 ,   村上孝 ,   山田朋子 ,   臼井恵太郎 ,   鈴木正之 ,   大槻マミ太郎 ,   中川秀巳

ページ範囲:P.1131 - P.1133

 43歳,男性.1998年6月より髪際部から前頭部にかけて紅斑が出現し,時々同部に小水疱を認めていた.紅斑の拡大と小水疱の新生のため1999年5月当科を受診した.前額部から髪際部,前頭部の一部にかけて半米粒大までの緊満性小水疱を散在性に認め,一部に小びらんを伴う淡紅色斑を認めた.組織学的所見は好酸球浸潤を伴う表皮下水疱.蛍光抗体直接法でIgG,C3が基底膜部に沈着し蛍光抗体間接法でもIgG抗基底膜抗体が32倍陽性であった.1M-NaCI split skin法では表皮側にIgGの沈着が認められた.以上の結果より限局型小水疱性類天疱瘡と診断.ステロイド軟膏の外用,塩酸ミノサイクリン,ニコチン酸アミドの内服で紅斑,小水疱とも徐々に軽快した.

タクロリムス外用が奏効した口唇,口腔粘膜の扁平苔癬の1例

著者: 西江渉

ページ範囲:P.1136 - P.1138

 68歳,男性.1年2か月前から下口唇および口腔内にびらん,疼痛を伴う粘膜疹が出現し,臨床,病理組織学的に扁平苔癬と診断した.ステロイド外用は無効で難治性であったが,タクロリムスを外用したところ4週間で粘膜疹は著明に改善した.難治性の口唇,口腔内の扁平苔癬に対しタクロリムス外用は試みる価値があると考えた.

IgE RAST陰性で誘発試験陽性の小麦による食物依存性運動誘発性蕁麻疹の1例

著者: 渡邉昌彦 ,   奥口順也 ,   大河内亨子

ページ範囲:P.1139 - P.1141

 22歳,男性.半年前からエビの天ぷらとインスタントラーメン,メンチカツなどを食べた後に激しい運動をすると全身に蕁麻疹が出現するようになった.小麦およびエビのIgE RASTはclass 0,グルテンのIgE RASTはclass 1であった.病歴から小麦あるいはエビによるfood dependent exerciseinduced anaphylaxis(FDEIA)を考え,蕁麻疹誘発試験および血漿ヒスタミン濃度の測定を施行した.運動のみの負荷,エビ摂取後の運動負荷では蕁麻疹などのアナフィラキシー症状や血漿ヒスタミン濃度の上昇は認められなかった.しかし,小麦摂取後に運動を負荷したところ運動直後から蕁麻疹が出現し,血漿ヒスタミン濃度の上昇も認められ,自験例を小麦によるFDEIAと診断した.

Monoclonal gammopathy of undetermined significanceの経過中に発症した全身性アミロイドーシス

著者: 細見尚子 ,   水野信之 ,   石井正光 ,   山根孝久 ,   岡田あかね

ページ範囲:P.1143 - P.1145

 71歳,女性.Monoclonal gammopathy of undetermined significanceの経過観察中に,紫斑,緊満性水疱,血疱,痂皮を生じた.生検にて皮膚,胃,腎にアミロイドの沈着が認められ,また,免疫電気泳動にて血中,尿中にmonoclonalなIgGλ鎖が認められた.M蛋白由来のALアミロイドの沈着による全身性ALアミロイドーシスと考えられた.ALアミロイドーシスではその約半数に皮膚症状が認められるため,紫斑を伴う水疱形成を認めた場合,アミロイドーシスの可能性について検索を進めることが必要と考えられた.

タクロリムス軟膏が奏効したchronic actinic dermatitisの1例

著者: 森次龍太 ,   原田研 ,   中野創 ,   玉井克人 ,   花田勝美

ページ範囲:P.1147 - P.1149

 45歳,男性.職業は青果業.初診時の約1年前から露光部に一致して湿疹病変を認め,近医受診するも難治.UVA,UVBにおける最少紅斑量の低下を認めた.病理組織像と併せ,chronic actinic dermatitisと診断.ステロイド外用に抵抗を示したが,タクロリムス軟膏が著効した.

多発性cutaneous focal mucinosisの1例

著者: 加藤優子 ,   木村鉄宣 ,   飯豊深雪

ページ範囲:P.1150 - P.1152

 13歳,女性.初診の1年前より自覚症状のない正常皮膚色丘疹が四肢を中心に散在性に出現.血液検査上は異常所見なく,病理組織学的所見で真皮全層にムチン(ヒアルロン酸)の沈着と線維芽細胞の増加を認め,多発性cutaneous focal mucinosisと診断した.ステロイドの局所注射で次第に平坦化した.

Eruptive pyogenic granuloma

著者: 速水誠 ,   速水真理子 ,   住本公日乙 ,   河合修三

ページ範囲:P.1153 - P.1156

 22歳,男性,ベトナム人.約1年前母国で手術時に輸血を受けた.初診1週間前から頭部,顔面,上胸背部に暗赤色の小腫瘤多数を急激に発生した.口腔内粘膜疹は認めなかった.全身状態は良好.皮疹は直径1〜3mm,円〜楕円型,光沢ある紅色を示す血管腫様小腫瘤で,掻破によるびらんも認めた.bacillary angiomatosism,Kaposi肉腫を疑ったが,HIV−1,2抗体(EIA)陰性,そのほかにも目立った検査値の異常はなかった.組織学的にはcollaretteに抱かれた多数の毛細血管と,その周囲の間質から成る腫瘍で,血管腔の形は整い,内皮は腫大するが異型は示さず核分裂像も観察されなかった.間質には少数のリンパ球,組織球が浸潤するのみで,好中球の浸潤,鍍銀染色による細菌塊などは観察できなかった.アモキシリン1,500mg/日を投与し,約1.5か月後にはすべての皮疹が跡形を残さず消退し,再発はない.本邦にいまだ報告のないeruptive pyogenic granulomaと考え,報告する.

Neutrophilic eccrine hidradenitisの1例

著者: 根井まり子 ,   阿部俊文 ,   御厨賢 ,   森理 ,   一木幹生 ,   橋本隆

ページ範囲:P.1157 - P.1160

 25歳,女性.片頭痛に対してセデスG®を計2回内服.数時間後に発熱を伴って四肢に多数の浸潤性紅斑が出現した.薬疹の疑いにて皮膚生検を施行し,病理組織学的に真皮深層のeccrine汗腺周囲に好中球を含む細胞浸潤を認めた.皮疹は薬剤中止約2週間で色素沈着を残し消退した.以上より,本症例をneutrophilic eccrine hidradenitisと診断した.現在まで国内外で16例の本症の報告があるが,14例は白血病治療薬を中心とする抗腫瘍薬によって発症している.本例は抗腫瘍薬以外によって発症した本症の2例目である.

硬化局面を呈した胃癌の多発性皮膚転移例

著者: 関姿恵 ,   田村敦志 ,   石川治

ページ範囲:P.1162 - P.1164

 51歳,女性.5年前に胃癌(Borrmalm 4型,低分化腺癌)と診断され,無治療で経過観察中に硬化局面が出現.初診時,腹部,被髪頭部および頸部に鶏卵大までの淡紅褐色硬化局面,両下眼瞼,頸部に皮下硬結を認めた.生検組織では真皮膠原線維間に索状あるいは孤立性に浸潤増殖する腫瘍細胞を認め,原発巣と類似していた.鎧状硬化局面を呈した転移性皮膚癌の本邦報告15例(1989〜2000年)のうち,胃癌を原発腫瘍としたものは5例(33.3%)と乳癌に次いで多かった.しかし,胃癌皮膚転移40例中,硬化型は12.5%と比較的少なかった.

肛囲に生じた基底細胞癌の1例

著者: 村尾和俊

ページ範囲:P.1166 - P.1168

 79歳,女性.肛囲に約2×0.7cm,黒灰色の腫瘤を生じる.病理組織検査にて基底細胞癌と診断した.本症が肛囲に生じることは極めて稀であり,文献的考察を加えて報告した.

大陰唇に生じた巨大懸垂性軟性線維腫の1例

著者: 若林晃子 ,   竹中秀也 ,   岸本三郎 ,   多田佳宏

ページ範囲:P.1169 - P.1171

 43歳,女性の外陰部に生じた懸垂性線維腫の1例を報告した.約4年前より,左大陰唇に小豆大の腫瘤に気付いたが,放置しているうちに徐々に増大した.初診時,左大陰唇に縦8cm,幅6cm,厚さ1cmの淡褐色調で弾性軟の表面平滑な有茎性腫瘤を認めた.局所麻酔下に茎部を含め切除した.

トラニラストが奏効した両側足底線維腫症の1例

著者: 渡辺昭洋 ,   神谷受利 ,   鈴木康彦 ,   小野謙三

ページ範囲:P.1172 - P.1174

 62歳,男性.糖尿病の加療中に,両側足底線維腫症を発症した.初診時の病理組織像は増殖期であった.トラニラスト投与1か月にて歩行時の疼痛が改善し,2か月後のMRI検査では腫瘤の縮小がみられた.線維腫症に対する保存的療法として,トラニラスト内服を試みる価値があると考えられた.

有茎性,多房性に増殖したSpitz母斑の1例

著者: 橋本隆 ,   水谷建太郎 ,   玉田康彦 ,   松本義也 ,   原一夫

ページ範囲:P.1175 - P.1177

 29歳,男性.左上腕に12×10×8mm大の有茎性多房性紅色結節を認め,所々に黒色調を呈し,結節周囲に赤褐色斑および丘疹がみられた.臨床像より悪性黒色腫,基底細胞癌などを考え,皮膚生検を施行した.病理組織では,大型の母斑細胞が表皮真皮境界部および真皮内の双方に増生する複合型(compound type)のSpitz母斑と診断した.

第9,10,11脳神経障害を伴ったHunt症候群の1例

著者: 服部浩明 ,   吉田巧 ,   斉藤まり ,   中北隆 ,   元持雅男 ,   石田達也 ,   川地康司

ページ範囲:P.1179 - P.1182

 第7,8,9,10,11脳神経障害,髄液中細胞数増加,髄液中水痘帯状疱疹ウイルスIgG抗体陽性より脳髄膜炎の合併が考えられた高齢者のRamsay Hunt syndrome(Hunt症候群)を経験した.下位脳神経障害により咽頭神経叢麻痺を生じ,誤嚥性肺炎を併発して一時的に気管切開・レスピレーター管理を必要とした.また,発症後約10日以内と思われる時期にアシクロビル750mg/日点滴静注とプレドニゾロン50mg/日経口投与を開始したが,顔面神経・下位脳神経麻痺症状は改善はみられるものの完治には至っていない.

高齢女性に発症したFournier壊疽の1例

著者: 小西裕子 ,   工藤比等志 ,   近藤摂子

ページ範囲:P.1184 - P.1186

 82歳,女性.1999年4月,高熱および右外陰部に表皮壊死と周囲の発赤,腫脹を認めた.骨盤内CTにて著明な皮下気腫と膿瘍形成を認め,Fournier壊疽と診断.外科的切開,排膿,抗生物質の投与にて局所は軽快傾向であったが,心筋梗塞,多発性脳塞栓を併発したため死亡した.Fournier壊疽について若干の文献的考察を加え報告する.

在日ブラジル人日系2世にみられた類結核型ハンセン病

著者: 川瀬正昭 ,   本田まりこ ,   新村眞人 ,   杉田泰之 ,   石井則久

ページ範囲:P.1188 - P.1190

 37歳,男性.ブラジル人日系2世(1981年来日).初診は1996年8月13日.1993年頃から鼻周囲に境界明瞭な浸潤を触れる紅斑が出現し,徐々に前額部,両頬部,口唇白唇部に拡大した.1996年2月より左肘頭にも同様の皮疹が出現したため当科を受診した.皮疹部では知覚鈍麻がみられ,尺骨神経の軽度肥厚があった.組織学的所見では神経,血管周囲性に非乾酪壊死性の類上皮細胞肉芽腫を形成していた.組織および鼻腔粘液のスメアは抗酸菌染色し菌体陰性であったが,血液から抽出したDNAはpolymerase chain reaction(PCR)法にて,らい菌特異的DNAが証明された.以上より類結核型ハンセン病と診断した.症状はdiaphenylsulfone(DDS),リファンピシンにて治癒した.妻と子供2人に同様の症状はなかったが,血液のPCR法にてらい菌特異的DNAが証明された.

鼻出血を初発症状としたハンセン病の1例

著者: 杉田康志 ,   谷川徹 ,   高橋宏幸 ,   石井則久

ページ範囲:P.1191 - P.1194

 58歳,日系ブラジル人男性.1994年に来日.1999年1月頃から鼻出血が出現した.2000年8月頃から両側大腿前面,腹部の表面に軽度紅斑を伴った1.5cm大の皮下腫瘤が多発し,右上腕に境界不明瞭で一部紅色の丘疹を伴った10×5cm大の紅色局面が出現した.鼻腔内では,鼻中隔は肥厚,凹凸不整で,鼻粘膜全体にびらんがみられた.皮疹部は病理組織学的に真皮上層から皮下組織にかけて泡沫細胞と軽度リンパ球浸潤を伴った大小多数の肉芽腫がみられた.抗酸菌染色(Fite法)で泡沫細胞の空胞内に多数の桿菌,菌球の形成がみられ,さらに免疫組織染色では皮膚,鼻粘膜組織中にPGL−1陽性細胞が多数みられた.以上より,鼻出血を初発症状としたらい腫型ハンセン病と診断した.

Trichophyton violaceumによるblack dot ringwormの姉妹例

著者: 望月隆 ,   若松伸彦 ,   阿部真也 ,   河崎昌子 ,   石崎宏

ページ範囲:P.1195 - P.1198

 7歳女児と,1歳の妹に生じたblack dot ringwormを経験した.2例ともに脱毛斑内の毛孔は面皰様の黒点を呈し,毛孔の内容物のKOH検査で毛内性に胞子状菌要素を認めた.培養ではともにTrichophyton violaceumが分離された.治療は病巣の広かった姉がグリセオフルビン250mg/日を7か月内服,妹が同じく125mg/日を3か月内服し,治癒した.また,患児の母(27歳)の左頸部に体部白癬を認めたが,これは母が1歳の患児を抱くと頭部の病巣に接触する部位であった.培養は不成立であった.

再発を繰り返した急性汎発性膿疱性細菌疹の1例

著者: 大藤玲子 ,   清水隆弘 ,   亀井敏昭

ページ範囲:P.1200 - P.1202

 48歳,男性.初診の10日前,全身倦怠感,発熱,咽頭痛が出現.その後,四肢末端部,体幹に膿疱が多発.皮疹部の糸状菌検査,細菌培養検査はともに陰性であった.数年前より年に2〜3回,同様のエピソードを繰り返していた.

連載

Clinical Exercises・117—出題と解答

著者: 清水宏

ページ範囲:P.1164 - P.1164

233
皮膚基底膜に対する自己抗体が水疱形成に関与する疾患はどれか.
A:全身性エリテマトーデス

海外生活16年—出会った人・学んだこと・24

著者: 神保孝一

ページ範囲:P.1207 - P.1210

カナダにおける卒後皮膚科臨床研修と皮膚科専門医施設の認定(その1)
 現在,日本では,卒後臨床研修の新しい制度について大幅な改革が試みられている.私は,1966年に大学を卒業したが,この時全国的に行われたインターン闘争の一環として大学院入学,医師国家試験をボイコットしたグループの一人であった.この闘争の主たる目的は,①身分保障(経済保障)と②卒後臨床研修の教育内容の充実であった.この闘争の結果として数年後にインターン制は廃止され,学生は,卒業と同時に医師国家試験を受け,医師の免許証を与えられることとなった.これにより,収入を得ることが可能となり,ある一定の経済保障がなされたわけである.
 現在,2004年度から予定されている2年間の卒後臨床研修制度は,この時以来,約36年ぶりの新しい改革であり,この新制度の設立に対しては十分注意深いフォローが必要である.殊に,この2年間の卒後臨床研修を義務化し,研修内容を一定に絞り(必修カリキュラム),同時にこの研修を修了しない限り,独立した医師としての資格(例えば,独立して開業すること)が得られないこととなる.現在問題となっていることは,厚生労働省が従来大学附属病院が主としてなっていた卒業生の(約75%に対して)卒後臨床研修の教育機関としての役割を大幅に縮少させ,逆に現在勤務医師の少ない地方の2次医療圏に研修医を配置し,これにより地域医療における医師不足を解消すること,さらに経済保障を確立するために研修医を労働者(教育を受ける医師としてではなく)として扱い,その主たる収入源を国からの支給ではなく,おのおのの研修病院の医療費の収入の中から支給するということである.さらに研修医の配分をマッチング・プログラムという新しい方式を導入することにより厚生労働省の意図としている「医師不足の2次医療圏」などに均等に医師配分しようとすることに利用される可能性がある.

臨床統計

成人麻疹・水痘と肝機瀧障害—成人(満15歳以上)の麻疹・水痘における肝・胆道系酵素値異常と末梢血異型リンパ球数の相関関係について

著者: 村上順子 ,   秋山正基 ,   末木博彦 ,   飯島正文

ページ範囲:P.1203 - P.1206

 麻疹や水痘などのウィルス感染症で,肝機能障害や異型リンパ球数増加が認められることが知られている.1991年1月〜2001年8月の間に,麻疹あるいは水痘で当科に入院した成人(満15歳以上)の患者計169例を対象とし,retrospectiveに調査したGOT・GPT・LDH・CK値と末梢血異型リンパ球絶対数の相関関係を,回帰直線を用いて検討した.麻疹ではLDHと異型リンパ球絶対数で,水痘ではGOT・GPT・LDH・CK値と異型リンパ球絶対数との間で相関が認められた.経時的に血液検査を行っている症例が少なく,LDH・CKのアイソザイムもほとんどの例で検査されていなかった.今後,経時的推移やアイソザイムなど,さらなる検索が必要であると考えられた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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