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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科56巻4号

2002年04月発行

雑誌目次

カラーアトラス

発疹性黄色腫

著者: 山田佐知子 ,   木花光

ページ範囲:P.288 - P.289

 患者:24歳,男性.
 現病歴:2週間前より軽度瘙痒を伴う皮疹が四肢に多発してきた.同時に発熱も出現.

原著

背部に遊走性紅斑を生じたライム病—最近報告された国内72症例の臨床的特徴

著者: 金子健彦 ,   浅野善英 ,   服部尚子 ,   小宮根真弓 ,   川端康浩 ,   相馬良直 ,   薦田房子

ページ範囲:P.291 - P.294

 11歳,女児.長野県軽井沢町にて背部を刺症.約20日後,同部位を中心として拡大傾向のある紅斑を生じた.全身状態良好.血算,生化学検査で著変なし.Borrelia gariniiならびにburgdorferiに対するIgM抗体陽性.組織学的に虫体口器の残存を認めた.ドキシサイクリンハイドロクロライド計5週間の投与にて紅斑は消失した.本邦報告72症例(男性39例,女性32例,不明1例)を集計した.年齢分布では40〜60歳台までの症例が52例(72%)と過半数を占めていた.刺症部位は上肢を刺された症例が17例(27%)と最も多かった.紅斑の大きさは平均18.5cmであった.23例(32%)では臨床的に皮膚症状のみであったが,何らかの神経症状を認めた症例が15例(21%)存在した.治療としては,ペニシリン系とテトラサイクリン系薬剤がそれぞれ25例(37%),23例(34%)で使用されていた.

皮膚混合腫瘍18例の病理組織学的検討

著者: 村澤章子 ,   木村鉄宣

ページ範囲:P.295 - P.299

 皮膚混合腫瘍18例の病理組織学的検討を行った.病理組織学的には,上皮成分は18例全例で腫瘍細胞が2層の上皮細胞よりなる大小不同の管腔を形成するアポクリン型の管腔構造を有しており,全例アポクリン型の皮膚混合腫瘍と診断した.間質成分は粘液腫様(myxoid)・軟骨様(chondroid)・線維性(fibrous)の3型に分類可能で,粘液腫様間質が18例,軟骨様間質が10例,線維性間質が18例に認められた.粘液腫様および軟骨様間質は互いに移行しヒアルロン酸を主成分としていることから,粘液腫様間質がより凝集し密になった状態が軟骨様間質を形成していると推測した.また,線維性間質は膠原線維を主成分としていた.ヒアルロン酸と膠原線維を産生しうる細胞としては線維芽細胞が挙げられ,皮膚混合腫瘍における間質の形成には線維芽細胞の関与が推測された.

臨床統計

皮膚疾患患者のQOL—疾患特異的QOL評価票Skindex16日本語版作成の試み

著者: 檜垣祐子 ,   川本恭子 ,   加茂登志子 ,   堀川直史 ,   川島眞

ページ範囲:P.301 - P.303

 皮膚疾患においては痒みや外観上の問題が患者のQOLを低下させることが推察され,適切なQOLの評価方法が望まれる.そこで皮膚疾患特異的QOLの評価票であるSkindexを紹介し,その日本語版作成の意義について述べる.Skindexは1996年に英語版が作成され,その後当初の61項目から項目数を減らし,29項目からなるSkindex29,さらに16項目からなるSkindex16が作成された.これらは症状,感情,機能の3つの要素についての質問項目から構成され,患者がその度合いを回答するもので,その整合性,妥当性,弁別性などが確認され,皮膚疾患患者のQOLの測定においては感度が高く,優れた評価票であることが示されている.筆者らはSkindex16の日本語版の作成に取り組んでおり,近い将来,本邦の皮膚疾患患者のQOLの評価票としてSkindex16日本語版がQOLの研究に有用な手段の1つとなると考えている.

アトピー性皮膚炎の診療に対する患者の認識についてのアンケート調査—第2報

著者: 川島眞 ,   宮地良樹 ,   中川秀己 ,   飯塚一 ,   伊藤雅章 ,   塩原哲夫 ,   島田眞路 ,   瀧川雅浩 ,   竹原和彦 ,   橋本公二 ,   古江増隆

ページ範囲:P.304 - P.312

 前回調査した530名の患者に第2回アンケート調査を実施し,284名から回答を得た.日本皮膚科学会編「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン」に沿う治療法により,大変満足と満足が50.0%,やや満足まで含めると77.8%と高い満足度が得られた.ステロイド外用薬に対する恐怖が前回より減ったとする率は63.3%であり,ステロイド外用薬に対する認識に明らかな変化が生じてきていた.アトピー性皮膚炎の最大の原因をアレルギーと答えた患者が28.2%と多かったが,それとほぼ同数が皮膚の敏感さと答えており,ストレスと答えた患者も19.0%にみられた.抗アレルギー薬,抗ヒスタミン薬に対する評価は,非常に満足と多少満足で65.8%であり,痒みを抑えてくれると感じている率も50.0%で,半数では痒み抑制効果を実感していた.くせで掻くことへの自覚は53.9%でみられ,治療とともに46.7%で減少したが,46.1%では変わらなかった.アトピー性皮膚炎自体が大きなストレスと感じている率は,第1回目アンケートでは58.6%であったが,そのうちの63.8%は治療中に減少したと答えていた.今後医療サイドに求めることは,より効果の高い治療法が55.4%と最も高かったが,医療サイドとの対話30.5%,精神的ケア10.4%と薬物療法以外への要望も高かった.以上より,スタンダードな薬物療法に加え,精神的ケアを含む患者との対話の重要性を認識した日常の診療活動がアトピー性皮膚炎の治療において大切であると考えた.

今月の症例

ブフェキサマクによるacute generalized exanthematous pustulosisの1例

著者: 順毛直弥 ,   藤田明子 ,   早川和人 ,   塩原哲夫

ページ範囲:P.313 - P.316

 30歳,女性.咽頭炎の先行症状あり.その後アンダーム軟膏®の外用により,顔面,躯幹,上肢にびまん性の潮紅と粟粒大の膿疱が多発してきた.アンダーム軟膏®を中止し,プレドニゾロンの内服を開始したところ,皮疹は軽快傾向を示した.しかし,高熱が続くため,抗生剤の点滴投与を開始したところ,速やかに解熱し,再燃することなく約3週間で治癒した.パッチテストではアンダーム軟膏®陽性で,成分別ではブフェキサマクに陽性反応を認めた.また,血液培養で化膿性レンサ球菌が検出された.本例はブフェキサマク外用が原因のacute generalized exanthematous pustulosisで,化膿性レンサ球菌による敗血症を併発したと考えられた.また,化膿性レンサ球菌が病変形成に何らかの役割を果たした可能性が推測された.

症例報告

アリルイソプロピルアセチル尿素による固定薬疹

著者: 矢沢仁 ,   濱田重雄 ,   大森房之 ,   嵯峨賢次

ページ範囲:P.318 - P.319

 63歳,男性.グレダナA®錠内服後,口囲,項部,四肢,陰部に痛みを伴う浮腫性紅斑が出現,色素沈着を残して治癒した.以前,セデスG®にて同様の皮疹出現の既往あり.固定薬疹を疑い,両剤によるパッチテストを施行したところ,皮疹部,健常部とも陰性であったが,両者の共通成分であるアリルイソプロピルアセチル尿素による内服誘発試験にて陽性であった.

アモキシシリンによる間擦疹型薬疹の1例

著者: 小鍛治知子 ,   堀田隆之 ,   塩原哲夫

ページ範囲:P.320 - P.323

 28歳,女性.鼠径・腋窩を中心に全身に拡大する瘙痒性紅斑を主訴に当科を初診した.犬咬傷にてアモキシシリン(サワシリン®)を3日間内服,中止2日目より両腋窩,鼠径,左上下肢,左膝窩に一部環状を呈する紅斑が出現した.組織所見では表皮向性リンパ球浸潤と血管周囲性の好中球・好酸球浸潤および核塵が認められた.アモキシシリンのパッチテストは陰性であったが,2か月後に行った1/10量の内服テストにて,2時間後に同じ部位に皮疹が誘発された.皮疹の特徴的な発症部位より間擦疹型薬疹と診断したが,同様の臨床症状を呈する薬疹はこれまでnonpigmenting fixed drug eruption,baboon syndromeなどの名称で報告されている.

スピロノラクトンが原因と考えられる扁平苔癬型薬疹の1例

著者: 永岡譲 ,   大河内仁志 ,   中村晃一郎 ,   玉置邦彦

ページ範囲:P.325 - P.327

 スピロノラクトン(ラッカルミン®)による扁平苔癬型薬疹の1例を報告する.症例は63歳,女性.本態性高血圧の治療のためスピロノラクトン(ラッカルミン®)1日50mg内服6年後より,四肢に紫紅色の隆起性皮疹が出現した.組織は典型的で,パッチテストとリンパ球幼若化試験は陰性.薬剤中止により皮疹は約2か月で色素沈着を残して消退した.

異なる背景をもって発症した柑皮症の2例

著者: 杉内利栄子 ,   赤羽武弘 ,   高橋和宏

ページ範囲:P.328 - P.330

 症例1は37歳,女性.体重減少と全身皮膚の黄染がみられ,胆嚢癌,直腸癌など悪性腫瘍の精査目的で近医より当院消化器を紹介された.ビリルビンを含め肝機能検査は正常.腹部エコー,CTにて肝・胆道系に異常なし.胃・腸ファイバー所見で粘膜が黄色調を呈しているほかは異常はなかったため,当科を紹介された.菜食主義という自覚はなかったが,カロチン697μg/dlと身長150cm,体重36kgとかなりのやせを認め,神経性食思不振症を考えた.症例2は65歳,女性.肉,油をとり,皮疹が出現したことがあり,近医外科で食物アレルギーを指摘されて,ここ10年食事制限をしていた.最近,皮膚が黄色いと感じ,消化器科受診.一般血液検査に異常はなく,当科を紹介された.カロチン336μg/dl,偏食による柑皮症と診断.栄養指導を実施した.

シクロホスファミドが有効であったpityriasis lichenoides et varioliformis acutaの1例

著者: 新田悠紀子

ページ範囲:P.331 - P.333

 13歳,男児.既往歴に先天性IgA欠損症があり,全身に孤立性壊死性丘疹を多数生じ来院した.組織所見で表皮内のリンパ球,赤血球侵入,乳頭層に帯状のリンパ球の浸潤と出血を認め,pityriasis lichenoides et varioliformis acutaと診断した.プレドニゾロン,ミノサイクリン,DDS(diaphenyl—sulfone)内服2か月後も改善しないため,シクロホスファミド(cyclophosphamide;CPA)を投与し,内服1か月後,皮疹は消退した.CPA内服中止後3年間,再発はない.

肺癌を合併し,特異な所見を示したIgA天疱瘡の1例

著者: 速水誠 ,   速水真理子 ,   杉原肇 ,   橋本洋子 ,   左川均

ページ範囲:P.335 - P.338

 78歳,男性.初診時所見は背部と両大腿に散在性に発生した小水疱と膿疱で,組織学的には角層下の棘融解像を伴う好中球性膿疱であった.皮疹は2週間で拡大・増悪し,小水疱と膿疱よりなる環状〜蛇行状の大型局面を形成した.増悪時の組織像は初診時と一変し,基底層直上の棘融解性膿疱で,浸潤細胞の中心は好酸球に変化していた.直接免疫蛍光染色では表皮全層の細胞間にIgAの強い蛍光とC3とIgGの弱い蛍光を認めた.皮疹はプレドニゾロン15mgによく反応したが,患者は肺の扁平上皮癌のため永眠された.全体像としてはIgA天疱瘡であるが,IgAのほかにIgG,C3の沈着をみたこと,わずかの間に膿疱の位置が角層下から基底層直上に変わるとともに,浸潤細胞の好中球から好酸球への転換をみたこと,比較的少量のブレドニゾロンによく反応したこと,肺癌を合併したことなど,特異な症例と考え報告する.

慢性骨髄性白血病の骨髄移植後に発症した頭頸部の広汎な帯状疱疹の1例

著者: 鈴木やよい ,   北島進司 ,   徳田瑞子 ,   辻卓夫

ページ範囲:P.339 - P.341

 46歳,女性.1999年3月に慢性骨髄性白血病と診断され,2000年2月に骨髄移植を受けた.経過は順調であったが,骨髄移植後約80日目の5月に帯状疱疹を発症した.免疫抑制剤の追加と抗ウイルス剤の投与で症状は軽快した.骨髄移植後の合併症の1つに水痘・帯状疱疹ウイルス感染症がある.骨髄移植後に生じた帯状疱疹について検討した.

大腸癌を合併した弾力線維性仮性黄色腫の1例

著者: 吉成力 ,   桑島利子 ,   下沖収 ,   吉田徹 ,   佐藤俊樹 ,   赤坂俊英

ページ範囲:P.342 - P.344

 56歳,女性.20歳頃より頸部,腋窩に皮疹が出現.皮疹は淡黄色の扁平丘疹が集簇性に多発していた.エラスチカ・ワンギーソン染色にて褐色調に染まる弾力線維の膨化,断裂,コッサ染色においては真皮に集塊状のカルシウム沈着を認め,弾力線維性仮性黄色腫と診断.両側網膜色素線条も伴っていた.また,大腸癌を合併しており,摘出標本の血管壁にも皮膚と同様な組織変化を認めた.症状のない心血管系にも注意が必要と考えた.

皮下腫瘤を呈した前頭洞嚢腫の1例

著者: 川上麻弥子 ,   秋山真志 ,   木本雅之 ,   五味博子 ,   松尾聿朗 ,   横山智一 ,   高雪恵

ページ範囲:P.345 - P.347

 50歳,女性.右前額部から右上眼瞼にかけて,正常皮膚色の3.5×4.5cmの皮下腫瘤を認めた.右眼は外側に偏位し,複視,頭痛を自覚していた.CTで,皮下から右前頭洞,篩骨洞,眼窩内に及ぶlow density massを認めた.病理組織学的には線維性の嚢腫で,壁の一部は上皮成分に被われ,間質には炎症性細胞浸潤が認められた.以上より前頭洞嚢腫と診断した.前頭洞嚢腫は前頭洞由来の良性の粘液嚢腫であるが,放置すると前頭洞から眼窩内,頭蓋内に拡大する.主に耳鼻科にて診断,加療されることが多く,皮膚科領域での報告例は非常に少なく,本例のように皮下腫瘤として皮膚科を初診する例は比較的稀と思われる.前頭洞嚢腫も皮膚科外来における前額部の皮下腫瘤の鑑別診断の1つに加えられるべき疾患と考える.

前胸部に生じたbronchogenic cystの1例

著者: 加茂理英 ,   石井正光 ,   鈴木伸典

ページ範囲:P.348 - P.349

 48歳,女性.1993年3月,偶然入浴中に前胸部の皮下腫瘤に気づく.6月16日,局麻下に腫瘤を摘出した.腫瘤は皮下に存在した.病理組織学的所見では,皮下脂肪内に限局して嚢腫が存在し,嚢腫壁は線毛を持つほぼ1層の円柱上皮より構成されていた.ゴブレット細胞も散見された.アザン・マロリー染色では,嚢腫上皮下に赤色に染まる筋組織を認めた.皮下のbronchogenic cystと診断した.

膠原病の合併が示唆された多発性皮膚線維腫の1例

著者: 石澤俊幸 ,   片桐美之 ,   三橋善比古 ,   近藤慈夫 ,   畠山明

ページ範囲:P.351 - P.353

 26歳,女性.初診の4年前より右手指の関節痛,さらに1年前より両上下肢近位筋の筋痛を自覚し,階段昇降にも困難を感じるようになったため,東北労災病院を受診.精査の結果,筋症状を伴うSLEの疑いにてプレドニゾロンの投与を受けていた.初診の2年前頃より躯幹に褐色調で弾性硬の結節が数個出現し,徐々に増大・増数してきたため当科を初診.躯幹,四肢に褐色の結節が16個散在し,組織学的に皮膚線維腫であった.15個以上多発した多発性皮膚線維腫の本邦報告例をまとめた結果,SLE5例,Sjögren症候群1例,免疫異常5例と約78%に何らかの免疫異常を認めた.

Trichoepithelioma multiplexの小児例

著者: 亀谷葉子 ,   原田玲子

ページ範囲:P.354 - P.356

 6歳,女児.4歳頃から左右対称性に鼻唇溝から頬部に多発する丘疹があり,徐々に増加してきた.病理組織所見は一部表皮と連続性に真皮浅層に基底細胞様細胞から構成される腫瘍塊が存在.家族歴を欠いていたが,臨床所見と合わせてtrichoepithelioma inultiplexと診断した.1982〜2000年6月までに本邦で報告された48症例につき若干の統計的考察を加えた.48症例中,自験例は最年少症例に次いで若かった.11種類の抗ケラチンモノクローナル抗体を用いて免疫組織化学的に検討を行った.その結果,本腫瘍は外毛根鞘峡部以下に分化していると考えられた.

良性対称性脂肪腫症の1例

著者: 東條理子 ,   古川裕利 ,   高橋政史 ,   舘下亨 ,   佐久間陽子 ,   元木良和 ,   小野一郎 ,   金子史男

ページ範囲:P.357 - P.359

 良性対称性脂肪腫症は頸部,体幹および四肢に左右対称性,びまん性に脂肪組織の増殖をきたし,独特な外観を呈する稀な疾患である.症例は55歳,男性.42歳時よりアルコール性慢性肝炎を指摘されていた.その後,45歳頃より頸部,背部,両側上腕部の腫脹に気づき,54歳時に後頸部の腫脹は脂肪腫と診断され,精査・加療のため当科に入院した.入院時所見では,身長,体重に比して躯幹はやや肥満を示し,頸部,胸背部,肩部,両側上腕部に境界不明瞭で柔らかい皮下の腫瘤状隆起が左右対称性にみられた.生検所見では被膜のない正常の脂肪組織像であった.本症の成因についてはアルコール多飲,高脂血症,高尿酸血症,OGTT異常,内分泌疾患などの報告があり,その典型例と考えられた.

多発性皮膚線維腫の1例

著者: 神戸有希 ,   今淳 ,   間山淳 ,   熊野高行 ,   佐々木千秋 ,   玉井克人 ,   鎌田義正 ,   橋本功

ページ範囲:P.360 - P.362

 47歳,女性.1998年1月に慢性胆嚢炎および胆嚢ポリープによる開腹術を施行され,その際,軽度の肝機能障害および軽度の糖尿病を指摘された.同年7月頃から開腹術の術創周囲に暗赤色調,ドーム状にやや隆起する柔らかな丘疹および結節が多数出現した.徐々に体幹前面全体にもみられるようになり,55個を数えた.病理組織学的には真皮上層から中層にかけて組織球様細胞および線維芽細胞様細胞の増生がみられ,以上から自験例を多発性皮膚線維腫と診断した.本症は自己免疫性疾患や免疫異常のほか,さまざまな疾患および病態と合併することが多い.自験例では最初,術創周囲に皮疹が限局していたことから,皮疹出現には開腹術操作による刺激あるいは創閉鎖による何らかの免疫学的機序の関与を考えた.

慢性放射線皮膚炎より生じた有棘細胞癌の1例—照射深度の観点からみた慢性放射線皮膚炎

著者: 常深祐一郎 ,   出月健夫 ,   帆足俊彦 ,   湧川基史 ,   大河内仁志 ,   玉置邦彦 ,   川端康浩

ページ範囲:P.363 - P.366

 84歳,女性.頸部の血管芽細胞腫に対して長期の放射線照射を施行後,難治性潰瘍が出現したため手術的に切除・植皮を行った.慢性放射線皮膚炎を母地とした有棘細胞癌であった.慢性放射線皮膚炎は,悪性化の頻度,障害の深さ,治療方法の点から,照射深度(体表病変に対する照射と深部病変に対する照射)により分けてとらえることが有用であると考えられた.

XXX症候群に発生した悪性黒色腫の1例

著者: 高瀬麻衣子 ,   白濱茂穂

ページ範囲:P.367 - P.369

 34歳,女性.1998年3月中旬より左頸部痛とリンパ節腫大が出現し,悪性腫瘍のリンパ節転移を指摘された.経過中,左頬部に隆起性病変が出現し,病理組織学的には,クロマチンに富む核を持つ紡錘形の細胞が真皮全層に胞巣を形成しつつ浸潤していた.肝,腰椎の転移性病変の浸潤細胞も皮膚と同様の細胞で,S−100染色は陽性であった。全身検索で性染色体に異常を認め,XXX症候群であった.XXX症候群に発症した原発不明の転移性悪性黒色腫と考え,文献的考察を加えて報告する.

PUVA療法中の成人T細胞白血病・リンパ腫に対して塩酸プロカルバジンの内服を併用した1例

著者: 生駒晃彦 ,   森田和政 ,   高垣謙二 ,   長廻錬 ,   小笹正三郎

ページ範囲:P.370 - P.372

 88歳,女性.体幹部に次々と浸潤を触れる紅斑が出現し,菌状息肉症としてステロイド外用剤にて治療されていたが,背部の紅斑は消退せず一部は腫瘤化した.皮膚病理組織所見,血液検査所見より成人T細胞白血病・リンパ腫(ATLL)と診断した.PUVA療法により皮疹の改善がみられたが,少数ながら末梢血中にATL細胞がみられたことから,塩酸プロカルバジンの内服も開始した.皮疹は速やかに消退して色素沈着を残すのみとなり,末梢血からもATL細胞は検出されなくなった.しかし,塩酸プロカルバジンの副作用と思われる汎血球減少とカリニ肺炎を発症した.PUVA療法はATLLに有効であることと,化学療法の適用については慎重になる必要があることを認識した.

連載

海外生活16年—出会った人・学んだこと・16

著者: 神保孝一

ページ範囲:P.373 - P.373

ハーバード大学医学部皮膚科学講座におけるレジデントの研修(その8)
女性のチーフレジデントとAntoinette F Hood教授
 卒後臨床研修でのレジデント制におけるチーフレジデントの占める役割は重要である.レジデントの意見・希望などの総意をまとめるばかりではなく,スタッフとの交渉,さらにはジュニア・スタッフとしての役割をも兼ねている.ちょうど,日本においては医局制の中の医局長の役割に似ているかもしれない.
 ハーバード大学(MGII)皮膚科学講座のこのような重要なポストに,2人の女性がチーフレジデントととして登場した.彼女らの名前はBarbara GilchrestとAntoinette F Hoodである.私の記憶している限りにおいては,全米で(少なくとも皮膚科において)初めての女性チーフレジデントの出現であった.Fitzpatrick教授自身,このような女性の活躍に極めて好意的な意見を述べていたのを記憶している.

Clinical Exercises・109—出題と解答

著者: 古川福実

ページ範囲:P.375 - P.375

217
ケミカルピーリングに用いる薬剤の中で,最も全身状態に留意すべきものはどれか.
A:グリコール酸

印象記

「ハンガリー皮膚科学会」に参加して

著者: 西川武二

ページ範囲:P.374 - P.375

 2001年12月13〜15日,ハンガリーの首都ブダペストにおいてハンガリー皮膚科学会(図)が行われ,筆者はこの学会に国外招待講演者の1人として参加の機会があったので,簡単にその概要について紹介する.といっても,この会は国際学会ではなく,ハンガリー皮膚科学会の年次総会であり,英語のセッションは2日目の昼前後の2時間半のみで,ポスターの一部が英語で発表されている以外は母国語であり,限られた範囲の情報での報告であることをあらかじめお断りしておく.
 そもそもハンガリー皮膚科学会は1928年に始まり,数年のブランクはあるものの,伝統的に毎年12月に行われているという.今年の当番校はハンガリーにある4つの医科大学のうち,ブダペストのSemmelweis大学皮膚科で,会長にはSTDが専門のAttila Horvath教授が,そしてこの教室のNo.2にあたるSarolta Kar—pati教授はじめ,教室員が日本と同様に学会エージェントとともに運営に当たっていた.ハンガリー皮膚科学会では,3年に一度役員の交代があり,この学会が終わると今回の学会長Horvath教授が理事長を務めることになる由である.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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