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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科56巻6号

2002年05月発行

雑誌目次

カラーアトラス

水疱様外観を呈した石灰化上皮腫

著者: 西嶋攝子 ,   鈴木健司 ,   吉岡晃

ページ範囲:P.384 - P.385

 患者:9歳,女児.
 初診:1999年6月7日.

原著

痤瘡患者における掻破行動の実態調査

著者: 林伸和 ,   小林美咲 ,   細谷律子 ,   前口瑞恵 ,   山田美奈 ,   北原比呂人 ,   杼木真理子 ,   秋吉栄美子 ,   川島眞

ページ範囲:P.387 - P.391

 139名の痤瘡患者を対象に掻破行動についてアンケート調査を行った.何らかの掻破行動があると答えた患者は89.2%であった.掻破行動の内容は,昼間は,何となく触る(66.1%),つぶす(49.2%)が多く,洗顔時は,つぶすと答えた患者が58.9%で,夜間は,寝床に入ると掻いてしまうことがある(48.6%),朝,掻き傷ができている(21.6%)であった.掻破の理由は,86.9%の患者が気になるからと答えていた.一方で,皮膚に触ることは悪いと意識している患者が86.7%いた.
 習慣性の掻破行動は,長時間の皮膚に対する圧迫もしくは接触と同様の機序で増悪因子となりうるが,何となく触ってしまう,寝床に入ると掻いてしまうという行為は,習慣性の無意識の行動であり,つぶすことや皮をむくといった座瘡を積極的に触る行為とは異なっている.無意識の習慣性の掻破行動は,痤瘡患者の半数以上で認められ,今後の患者指導の中で重要な点と思われた.

基底細胞癌の病理組織学的分類法

著者: 村澤章子 ,   木村鉄宣

ページ範囲:P.392 - P.397

 今回,筆者らは,基底細胞癌を腫瘍巣の形態と周囲との境界の明瞭さを考慮し,病理組織学的に①nodular type(亜型としてmicronodular type, basosquamous type),②superficial type,③fibroepitheliomatous type,④morpheic typeの4型と2亜型に分類した.102例の分類の結果は,nodular type 79例(うちmicronodular type 2例,basosquamous type 5例),superficial type 10例,fibroepitheliomatous type 3例,morpheic type 10例であった.このうち,周囲健常組織との境界が不明瞭なタイプはnodular typeの中のmicronodular typeとmorpheic typeであり,切除の際に腫瘍を取り残す可能性があるため,手術範囲の決定に注意が必要である.また,basosquamous typeの治療については個々の症例に応じた対応が必要である.

今月の症例

先天性巨大母斑細胞母斑に対する早期curettageの有効性

著者: 木本雅之 ,   小林誠一郎 ,   鈴木洋介 ,   布袋祐子 ,   谷川瑛子 ,   西川武二 ,   清水宏 ,   中島龍夫

ページ範囲:P.399 - P.402

 2か月の女児.右下肢に先天性巨大母斑細胞母斑あり.新生児期における先天性母斑細胞母斑では,色素を持つ真皮浅層部の母斑細胞が容易に剥離される性質を持っている.Curettage法は鋭匙を用いて母斑を掻爬し色素部を剥離していく方法であり,1987年,Mossにより報告された.本症は従来,治療が非常に困難であるために無治療で経過観察せざるをえない場合が多かったが,curettage法は高い整容的効果を持っており,本症に非常に有効な方法である.ただし,本法は施行時期が新生児期に限られるということを皮膚科医が熟知しておくことが重要であると思われる.

臨床統計

成人麻疹14例の臨床的検討

著者: 瀧澤一 ,   宮崎貴子 ,   大西誉光 ,   渡辺晋一

ページ範囲:P.403 - P.406

 2000年5月から2001年2月に経験した麻疹14例にっいて検討した.年齢は15〜32歳に分布し,平均は21歳で,男女比は5:9であった.予防接種歴は2例にあり,11例にはなく,残り1例は不明であった.既往のある2例の初診時の麻疹抗体価は低値でvaccine failureと考えられた.臨床症状では,全例に発熱がみられたが,二峰性の発熱は5例のみであった.11例に口腔粘膜疹がみられ,典型的なKoplik斑は7例で,うち1例は上口蓋に点状出血斑もみられた.他の4例ではアフタ様の白色びらん面または帽針頭大の紅色小丘疹がみられた.臨床検査では4,000/μl以下の白血球減少が7例に,10×104/μl以下の血小板減少が5例にみられ,全例に異型リンパ球が出現し,3例では10%以上に増大していた.ASTまたはALTの250IU/l以上の上昇が4例にみられ,AST,ALTの平均値は各々135IU/lと160IU/lであった.麻疹の肝障害の頻度は低くなく,比較的高度なAST,ALTの上昇がみられることに注意を払う必要があると考えられた.

症例報告

生検が早期確定診断に有効であった麻疹の1例

著者: 杉山美紀子 ,   池田祐輔 ,   馬場利容 ,   末木博彦 ,   飯島正文

ページ範囲:P.407 - P.409

 28歳,男性.麻疹の既往,予防接種歴はない.初診12日前より感冒様症状が出現し,市販の感冒薬を内服した.いったん解熱後,4日前に再び38℃の発熱とともに皮疹が出現した.皮疹はほぼ全身に浮腫性の紅斑が多発し,融合傾向がみられ,一部では丘疹や漿液性丘疹が認められた.麻疹またはStevens-Johnson症候群を疑い,即日入院のうえ,生検を施行した.凍結切片を用いた迅速病理標本にて,表皮内に核内封入体を持つ多核の表皮細胞が認められたことより麻疹を強く疑った.後日,蛍光抗体間接法にて表皮内に麻疹ウイルス抗原の局在が認められたことや,ペア血清により麻疹ウイルス抗体価の有意な上昇が確認され,確定診断した.麻疹と重症薬疹との緊急な鑑別が必要な場合には,迅速病理診断法は試みてもよい検査法の1つであると考えられた.

末梢血好酸球,IgE高値を示したnapkin psoriasisの1例

著者: 弓削真由美 ,   青木見佳子 ,   川名誠司

ページ範囲:P.411 - P.413

 7か月,女児.生後2か月より外陰部,臀部のおむつ皮膚炎様の紅斑,びらんとして始まり,徐々に全身に鱗屑が付着する紅褐色局面を呈する乾癬様の皮疹が拡大した.病理組織学的に乾癬型反応を認め,ステロイド剤の外用にて軽快した.発症から皮疹が消退するまでに6か月を要したが,nap—kin psoriasisとしてほぼ典型的と思われた.しかし,頭部,顔面の鱗屑,痂皮,びらん,浮腫を伴うびまん性の紅斑は脂漏性皮膚炎様で,血液検査では好酸球が7,155/μl,IgE 2,300 U/mlと高値を示した.本症例からはnapkin psoriasisの病態として,特殊型の脂漏性皮膚炎およびアトピー素因の関与が考えられる.

緑内障点眼液2剤による接触皮膚炎

著者: 大山正俊 ,   西田徹

ページ範囲:P.414 - P.416

 71歳,女性.緑内障治療中に眼瞼および外眼角に接触皮膚炎を生じた.点眼液とその添加物による成分パッチテストを行い,プロスタグランジンF2α誘導体であるラタノプロスト,β遮断薬であるニプラジロールの2剤主成分による接触皮膚炎と診断した.また,各点眼液による接触皮膚炎は,調べえた限りでは未報告である.

糖尿病患者に合併したガス壊疽の2例

著者: 吉野恵 ,   鈴木かやの ,   青木見佳子 ,   川名誠司

ページ範囲:P.417 - P.420

 症例1は74歳,女性.糖尿病性腎症にて透析中であった.子宮頸癌の放射線療法にて膀胱膣瘻を形成した.右鼠径から下肢に悪臭を伴う皮膚の青銅色変化と水庖が出現し,高度の腫脹と握雪愁を認めた.症例2は72歳,女性.30年来の糖尿病がある.1か月前より左第1趾に水疱が出現したが放置していた.前日より足背に腫脹が拡大し,悪臭を伴った.2例とも単純X線撮影にて皮下のガス像が描出され,ガス壊疽と診断した.症例1は非クロストリジウム性,症例2はClostridium perfringensを検出した.糖尿病患者の炎症性,潰瘍性病変の診療にあたっては,積極的にX線撮影,嫌気培養などを行うことが早期診断に役立つと思われた.

Tufted hair folliculitisの1例

著者: 江守裕一 ,   稲積豊子 ,   木村俊次

ページ範囲:P.421 - P.423

 48歳,女性.初診の約2年前から頭頂部に瘙痒を伴う脱毛斑が出現した.初診時,鶏卵大の脱毛斑を認め,淡紅色,瘢痕性で硬く多少の凹凸と圧痛があり,束状で疎な発毛がみられた.ミノサイクリン,トラニラストにて炎症と硬さが多少軽快したが,それ以上軽快しないため,局麻下にて切除,縫縮した.病理組織学的に毛包周囲の多核巨細胞による毛破片貪食像から真皮全般の線維化に至る変化がみられた.また,複数の毛包が一塊となって1つの開口部を形成していた.以上の臨床症状と病理組織学的所見からtufted hair folliculitis(THF)と診断した.THFの本邦報告例は少なく,これまで切除例はみられない.

オープンテストで誘発したアリルイソプロピルアセチル尿素によるnonpigmenting fixed drug eruptionの1例

著者: 岡恵子 ,   ,   斎藤文雄 ,   西原カズヨ

ページ範囲:P.425 - P.427

 32歳,男性.頭痛治療のためにセデスGを1g内服し,2時間半後より四肢,頸部,臀部に浮腫性紅斑が生じた.18日後には左大腿のみ紅斑を認め,他の皮疹は消失した.同部に50%濃度のセデスGと20%濃度のセデスGの諸成分でオープンテストを施行し,セデスGとアリルイソプロピルアセチル尿素塗布部に30分後から陽性反応が生じた.約2年半経過して,皮疹のまったく認めない左大腿に20%アリルイソプロピルアセチル尿素のオープンテストを施行した.塗布1時間後より,塗布した範囲のうち以前の皮疹に一致したところに瘙痒,紅斑が生じ,数時間後には左大腿の皮疹が再現した.また同時に右大腿,右頸部,臀部にも以前と同様の紅斑が惹起された.

Duhring疱疹状皮膚炎(granular IgA type)の日本人女性例

著者: 伯野めぐみ ,   海老原全 ,   木村育子 ,   宮地百子 ,   中山秀夫 ,   大山学 ,   天谷雅行

ページ範囲:P.428 - P.430

 55歳,日本人女性.頭部,項部,肘頭,背部,臀部,鼠径部,膝蓋に痂皮を付着する小豆大までの紅斑が左右対称に分布し,一部に小水疱が混在し,痒みを伴っていた.組織学的に真皮乳頭層の好中球からなる微小膿瘍と表皮下水疱を認め,水疱内には多数の好中球と核破片,フィブリン析出像がみられた.蛍光抗体直接法で真皮乳頭部にIgAの顆粒状沈着を認めた.小腸生検ではリンパ球,好酸球の浸潤はみられるものの絨毛萎縮はなく,HLA検査でB8,DR3,DQw2は検出されなかった.DDS内服が著効した.

急性陰門潰瘍の1例

著者: 松浦亜紀 ,   竹中秀也 ,   岸本三郎 ,   安野洋一

ページ範囲:P.431 - P.433

 基礎疾患を持たない41歳,女性に熱発,口腔内アフタ,末梢血中の著明な好中球増多を伴う外陰部の再発性,多発性潰瘍が出現した.組織全体に棚密な好中球浸潤を認めた.急性陰門潰瘍のうち,Behçet病の部分症状の可能性を考え,Behçet病に準じてステロイドの全身投与にて治療を行ったところ著効し,寛解に至った.Behçet病の診断基準を満たさず,症状名として急性陰門潰瘍とした.今後の再発や,他の症状の出現の可能性があり,慎重な経過観察が必要と考えられた.

ステロイド治療が有効であった特発性無汗症の1例

著者: 若林晃子 ,   竹中秀也 ,   山本真理 ,   岸本三郎 ,   安野洋一 ,   宮下文 ,   吉川治雄

ページ範囲:P.434 - P.437

 34歳,男性.1996年9月頃より耳介,腋窩を除く皮膚からの発汗量が減少した.初診時,皮膚に異常所見はなく,血液検査,尿検査,自律神経機能検査にも異常はなかった.病理組織学的にはエクリン汗腺分泌部の汗腺壁の肥厚,空胞変性,明調細胞の減少を認めた.コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム1,000mg/日を3日間点滴静注後,プレドニゾロン内服40mg/日より漸減した.ステロイド投与前と投与開始後10日目に,15分間トレッドミルにて運動負荷し,桜井モンタニア法発汗テストを行ったところ,後者で胸部・腹部の発汗量の増加を認めた.現在でもプレドニゾロン5mg内服隔日投与により発汗量の低下は認めない.

体幹に大型の環状紅斑を呈したサルコイドーシスの1例

著者: 岩井千華 ,   乾重樹 ,   中島武之 ,   小阪博 ,   板見智 ,   吉川邦彦

ページ範囲:P.438 - P.440

 65歳,女性.背部を中心に,径2〜10cmまでの淡紅色の環状の紅斑を多発した局面型サルコイドーシスを経験した.血清中のLDH,リゾチーム,ACEは上昇していた.ツベルクリン反応は陰性.病理組織学的には真皮全層に乾酪壊死を伴わない小型の類上皮細胞性肉芽腫が島状に散在していた.神経症状は認められないものの,Hansen病との鑑別が必要と考えた.PGL−1に対する血清反応検査,皮膚組織抽出DNAを用いたPCR法による癩菌DNA検索を実施し,これを否定した.

Addison病の1例

著者: 新村美和 ,   福田英嗣 ,   長谷川毅 ,   斉藤隆三

ページ範囲:P.442 - P.444

 70歳,女性.初診の7か月前より露光部を中心に色素沈着が出現した.その後,感冒様症状が出現し,全身倦怠感や食欲の低下が著明となる.Addison型の色素沈着および全身症状より内分泌学的検査を行い,血中ACTHの高値や血中コルチゾールの低値を認め,Addison病と診断した,画像検査にて副腎の石灰化および腫大を認め,結核性と考えられる.治療はグルココルチコイドであるhydrocortisone 20 mg/日およびミネラルコルチコイドであるfludrocortisone acetate 0.1mg/日の補充療法にて,全身倦怠感や色素沈着の著明な改善をみた.

胃癌患者に発症した丘疹—紅皮症(太藤)の1例

著者: 渡辺雅子 ,   木村鉄宣 ,   村澤章子

ページ範囲:P.445 - P.447

 71歳,男性.初診の3か月前より頸部に瘙痒を伴う紅色丘疹が出現し,徐々に全身に広がった.臨床症状および病理組織学的所見より丘疹—紅皮症(太藤)と診断した.ステロイド剤外用,抗ヒスタミン剤内服,スキンケアによって皮膚症状は改善したが,胃癌の進行により死亡した.丘疹—紅皮症の発症に胃癌の直接的な関与は考えにくかったが,過去の報告でも丘疹—紅皮症(太藤)と悪性腫瘍の合併した症例は多く,本症の経過観察では悪性腫瘍の存在を念頭におく必要があると考えた.

ムチンの沈着を認めたcoccygeal padの女性例

著者: 安倍将隆 ,   吉田哲憲 ,   堀内勝己 ,   小浦場祥夫 ,   岩田豊英 ,   佐藤英俊

ページ範囲:P.449 - P.452

 仙骨部の皮膚表面に生じた13歳ならびに14歳,女性2例のcoccygeal padについて報告する.初診の約3年前から仙尾部に淡褐色から淡紅色の結節が出現し,徐々に増大してきた.病理組織像で真皮全層にわたる膠原線維の増生とムチンの沈着を認めた.以前に報告されていた「脊椎の直上部皮膚にみられる粘液多糖類沈着局面」との異同について,若干の考察を加える.

大腿に発生したtumoral calcinosisの1例

著者: 速水真理子 ,   速水誠

ページ範囲:P.453 - P.456

 Tumoral calcinosis(TC)は大関節周囲の皮下に比較的大型の石灰沈着をきたす疾患で黒人に好発する.世界には200例以上の報告があるが,わが国には少なく,皮膚料領域からの報告はさらに少数にとどまっている.本症の疾患概念には混乱がみられ,Harkess & Peters, Touartらにより提唱された定義に合致しない多数の症例も本症として報告され,その独立性に疑問が投げかけられている.
 筆者らは30歳,女性の大腿皮下に認められたTCに根治手術を行い,機能的,整容的に極めて満足すべき結果を得ることができたので報告する.あわせて行った若干の文献考察では,本症は発生病理の異なるグループからなり,臨床像,摘出腫瘤外観および予後に大きな差がみられるが,X線像,組織像には共通所見が存在した.筆者らはこの所見を本症を独立疾患として扱うのに十分な根拠と考え,TCは「原因にかかわりなく蜂巣状構造の線維性隔壁を伴う皮下の大型石灰沈着」との定義を提唱したい.

陰嚢に発生した基底細胞癌

著者: 半田芳浩 ,   荒木美好

ページ範囲:P.457 - P.460

 84歳,男性.陰嚢左側に基底細胞癌が発生した.臨床型は結節型,組織型は充実型と一部嚢腫型を呈した.また1990年以降に本邦で報告された陰嚢部の基底細胞癌19例について文献的考察を行った結果,以下の所見を呈するものが多かった.①好発年齢は65歳以上,②発症から初診までの期間は約5年以内,③好発部位は陰嚢左側,④大きさは長径20mm以下,⑤臨床像は結節〜結節潰瘍型で,色調は黒〜褐色調,⑥自覚症状はない,⑦組織型は充実型,⑧再発は認めず,予後はよい.③を除けば,これらの所見は他部位も含めた基底細胞癌全体の特徴と比較して明らかな差異はなく,陰嚢部の基底細胞癌に特異的な所見は得られなかった.

Mucoepidermoid carcinomaの1例

著者: 原藤玲 ,   鈴木洋介 ,   村田隆幸 ,   谷川瑛子 ,   石河晃 ,   田中勝 ,   中嶋英雄

ページ範囲:P.461 - P.464

 57歳,男性.上口唇に潰瘍を伴う結節を認め,組織学的に高分化型のmucoepidermoid carcinomaと診断し,辺縁より1cm離して拡大切除した.術後6か月の経過で再発・転移を認めていない.本腫瘍は大唾液腺に好発し,口唇発症は1.4〜5.4%と稀であり,調べえた限り,本邦における口唇発症例は17例であった.拡大切除例では再発・転移を認めた報告はなく,本症口唇発症例の治療としては,拡大切除術が第一選択と考えられた.切除範囲については,組織学的分化度を考慮して設定する必要があると思われた.

皮膚線維腫から発生したと考えられるatypical fibroxanthoma

著者: 藤本晃英 ,   八田尚人 ,   高田実 ,   竹原和彦 ,   柳下邦男

ページ範囲:P.465 - P.467

 42歳,男性.1年前に出現した左アキレス腱部の10×10mmのドーム状に隆起した黒褐色腫瘤を単純切除.切除標本の組織像は真皮内における異型性の顕著な大型細胞の増殖を示し,多核の巨細胞,異型核分裂像も散見された.腫瘍の下部にはstoriform patternを示す異型性の乏しい紡錘形細胞の増殖を認め,皮膚線維腫の像が併存していた.免疫組織化学的に腫瘍細胞はビメンチン陽性,CD 34,サイトケラチン,デスミン陰性.第XIIIa因子は大部分の異型腫瘍細胞には陰性であったが,腫瘍下部の紡錘形細胞では陽性であった.皮膚線維腫から発生したatypical fibroxanthomaと診断し,切除瘢痕より1.5cm離して拡大再切除し植皮した.術後2年経過した現在,再発・転移は認められない.

陥凹性病変を呈した隆起性皮膚線維肉腫の1例

著者: 茂木精一郎 ,   高橋亜由美 ,   田村敦志 ,   石川治

ページ範囲:P.469 - P.471

 19歳,女性.右頬部中央に皮膚陥凹を伴う拇指頭大の皮内から皮下にかけての結節を認めた.病理組織学的に,真皮中層から皮下脂肪織にかけて紡錘形の核を持つ腫瘍細胞がstoriform patternをとって増殖していた.免疫組織化学的には,腫瘍細胞はCD 34陽性であり,隆起性皮膚線維肉腫と診断した.陥凹性病変を呈した隆起性皮膚線維肉腫の過去の報告例について検討し,若干の考察を加えて報告する.

連載

Clinical Exercises・110—出題と解答

著者: 松永佳世子

ページ範囲:P.416 - P.416

219
乳液をFinn-chamberでパッチテストして48時間後に紅斑と浮腫の反応を得た.アレルギー反応判定するための根拠となるのはどれか.①浮腫は触れると浸潤がある.

海外生活16年—出会った人・学んだこと・17

著者: 神保孝一

ページ範囲:P.476 - P.476

ハーバ—ド大学医学部皮膚科学講座におけるレジデントの研修(その9)
女性のチーフレジデントとBarbara Gilchrest教授
 Barbara Gilchrestは1971年にハーバード大学医学部を卒業し,その後MGHでチーフレジデントとなり,助教授まで昇進し,最終的に1985年,ボストン大学皮膚科学講座の主任教授となった.
 彼女はMGHでのレジデント時代,リサーチフェローとしても研究のトレーニングを受けた.私は,彼女のレジデント研修時代に彼女と皮膚科学の研究活動について話し合う機会をしばしば持った.その中で私は,彼女がメラノサイト生物学の研究に興味を持っていることを知った.彼女は,私がMGHを去るときに私の撮ったメラノサイトの電顕写真を記念として壁に飾りたいと希望した.10年後,彼女と国際学会で会ったとき,私はBarbaraが皮膚科学会で将来性のある研究者として注目を浴びていることを誉に思っていると話したが,彼女は「自分はまだあなたの研究レベルまで達していない」と謙遜し,10年前に私があげた電顕写真を壁に貼り,いつもメラノサイトについて考えていると話していた.

治療

関節症状に対してエトレチナートが奏効した掌踪膿疱症の2例

著者: 菅原伸幸 ,   安部正敏 ,   田村敦志 ,   石川治

ページ範囲:P.473 - P.475

 症例は高度の関節症状を伴った55歳と40歳の掌蹠膿疱症の女性患者.単純X線像にて2症例ともに右胸鎖関節部と左胸鎖関節部,仙腸関節部に骨硬化像を認めた.両症例の関節症状は非ステロイド系抗炎症剤の内服に抵抗性であったが,エトレチナート内服により,皮疹および関節症状は改善した.エトレチナートは催奇形性,口唇炎,口角炎などの副作用の点から,掌蹠膿疱症に対してはやや使用しにくい薬剤であるが,関節症状の強い症例に対しては試みる価値のある治療薬と考えた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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