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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科56巻8号

2002年07月発行

雑誌目次

カラーアトラス

粘液水腫性苔癬

著者: 奥田賢 ,   森勝典 ,   鹿島真人 ,   中林康青

ページ範囲:P.578 - P.579

 患者:63歳,男性,会社員.
 主訴:両前腕の皮疹.

原著

基底細胞癌の発生母地についての病理組織学的検討

著者: 村澤章子 ,   木村鉄宣

ページ範囲:P.581 - P.583

 基底細胞癌の発症病理に関して,発生母地を示唆する所見につき言及した.基底細胞癌の腫瘍細胞が,既存の表皮基底細胞層や毛包上皮と連続する所見は,基底細胞癌が表皮基底細胞層または毛包上皮を発生母地としていることを示唆する所見であると判断した.自験例102例の基底細胞癌の病理組織学的検討では,腫瘍細胞が表皮基底細胞層とのみ連続している所見は102例,毛包漏斗部上皮とのみ連続している症例は16例に認められた.これより,基底細胞癌の発生母地としては表皮基底細胞層と毛包上皮の両者の可能性があると推測した.

臨床統計

悪性血管内皮細胞腫8例の臨床的検討

著者: 青島有美 ,   影山葉月 ,   藤田弘 ,   柳生理映子 ,   小西紀子 ,   東芝輝臣 ,   水島八重子 ,   鈴木牧 ,   高城倫子 ,   津嶋友央 ,   伊藤泰介 ,   戸倉新樹

ページ範囲:P.585 - P.589

 浜松医科大学皮膚科では1992〜1999年に8例の悪性血管内皮細胞腫症例を経験した.8例中7例が女性で,初診時の平均年齢は75±11歳,平均罹病期間は5か月であった.6例に打撲の既往が確認され,4例で瘙痒などの自覚症状がみられた.臨床病型では5例が斑状病変と結節とを示した.皮疹の面積は5〜220cm2であった.治療として全例にIL−2局注(平均総量18×106U)と局所電子線照射とを行った.さらに4例ではIL−2の静脈内投与,1例では動脈内投与も施行した.3例ではイリジウム線の全頭部照射も行った.転帰として1例は生存中,3例が腫瘍死,4例が他疾患で亡くなっていた.過去5年間の本邦報告例との比較では,Kaplan-Meier法による生存率に有意差は認めなかった.症例によりIL−2に対する反応性が異なる要因として,病理組織像の違いが示唆された.

今月の症例

胸腔鏡下肺生検を施行した間質性肺炎合併皮膚筋炎の1例

著者: 濱口儒人 ,   白崎文朗 ,   谷内克成 ,   佐藤伸一 ,   竹原和彦 ,   安井正英

ページ範囲:P.590 - P.594

 44歳,女性.手指関節の紅斑,筋力低下,労作時息切れ,全身倦怠感を主訴に当科を受診した.受診時,手指関節伸側・屈側に軽度浸潤を触れる暗紫紅色斑があり,握力は左右とも8kgと低下していた.検査所見ではCK,アルドラーゼは正常範囲内であったが,%クレアチン尿は約50%と上昇していた.左上腕三頭筋の筋生検で軽度のリンパ球浸潤を認めた.胸部CTで両側下肺野にすりガラス影,斑状影を認め,PO2は低下,A-aDO2は開大していた.胸腔鏡下肺生検を施行したところ,病理組織像は炎症細胞浸潤と一部に線維化を認め,nonspecific interstitial pneumonia(NSIP)group IIと診断した.以上より間質性肺炎を合併した皮膚筋炎と診断した.ステロイド投与により全身症状,呼吸機能,肺間質影の改善を認めた.

光沢苔癬と特発性色素性紫斑を合併した扁平苔癬の1例

著者: 石丸咲恵 ,   小松威彦 ,   北村啓次郎

ページ範囲:P.596 - P.599

 42歳,女性.5か月前,頬粘膜と舌に扁平苔癬を発症し,2か月前,躯幹・四肢に光沢苔癬を合併した.両疾患の関係については今世紀初頭以来議論があり,文献的考察を加えて報告する.なお,自験例は経過中に特発性色素性紫斑と思われる皮疹を伴った.

症例報告

尋常性天疱瘡と水疱性類天疱瘡の合併例

著者: 浅野歩 ,   天谷雅行

ページ範囲:P.600 - P.603

 77歳,男性.1995年6月から尋常性天疱瘡と診断され,治療されていた.1997年12月末,体幹,四肢の水疱が悪化し,病理組織像において表皮下の裂隙と表皮細胞間の空隙形成を認めた.蛍光抗体直接法で表皮細胞間と基底膜にIgG陽性,基底膜にはC3陽性であり,間接法では抗表皮細胞間抗体価,抗基底膜部抗体価ともに40倍.表皮抽出物を用いた免疫ブロット法でBP180とBP180NC16a陽性.組換え蛋白を用いたELISA法において抗Dsg1抗体強陽性,抗Dsg3抗体陽性であり,そのindex値は病勢を反映していた.以上より尋常性天疱瘡と水疱性類天疱瘡の合併例と診断した.自己免疫性水疱症の診断において,ELISA法は感度,特異性ともに優れた検査法であり,従来の検査法と組み合わせることでより確実な診断が可能となっていくと思われた.

抗デスモグレイン1抗体陽性を示した疱疹状天疱瘡の1例

著者: 近藤直子 ,   竹本啓伸 ,   鳴海博美 ,   野村和夫 ,   山本欣一

ページ範囲:P.604 - P.606

 65歳,女性.躯幹・四肢に爪甲大から手拳大までの瘙痒を伴う境界明瞭な紅斑が出現,一部環状,一部地図状の紅斑が融合した局面を形成した.紅斑の辺縁には粟粒大の小水疱が配列し,一部にはびらん,痂皮化がみられた.病理組織では表皮内水疱を呈し,eosinophilic spongiosisを伴っていたが,明らかな棘融解細胞はみられなかった.蛍光抗体直接法では表皮細胞間にIgG,C3の沈着がみられたが,特にそれらは基底細胞間で強く発現していた.ELISA法では血中抗デスモグレイン1抗体が単独高値であった.以上より自験例を疱疹状天疱瘡と診断した.自験例は蛍光抗体直接法ではIgG,C3が基底細胞間で強く発現していたが,ELISA法では抗デスモグレイン1抗体が陽性という点が興味深いと思われた.

腹部症状により発症したアナフィラクトイド紫斑の1例

著者: 大藤玲子 ,   清水隆弘 ,   足立佳世子 ,   藤田直紀 ,   亀井敏昭

ページ範囲:P.607 - P.609

 41歳,男性.腹痛,嘔吐,下血を主訴に内科を受診.消化管内視鏡検査では胃,十二指腸,大腸の粘膜に出血,びらんが多発.腹部症状に対して対症療法を行うも軽快せず,続いて出現した両下腿の紫斑を生検したところ,leukocytoclastic vasculitisの像を認めた.

陰茎の潰瘍として初発した壊疽性膿皮症の1例

著者: 佐藤香織 ,   長井泰樹 ,   草間美紀 ,   松下哲也 ,   江畑俊哉 ,   新村眞人

ページ範囲:P.610 - P.612

 32歳,男性.1996年より潰瘍性大腸炎にて治療されている.2000年7月より下痢,粘血便が頻回となり,9月中旬から陰茎部に潰瘍,浮腫が出現した.近医で細菌感染症,単純ヘルペスウイルス感染症を疑い治療されたが軽快せず当科を受診した.その後,腰部,前腕にも潰瘍が出現し,壊疽性膿皮症が,また鑑別疾患としてFournier壊疽も疑われたため,入院しプレドニゾロン20mg/日より治療を開始した.40mg/日まで増量したところ潰瘍は上皮化し,陰茎の浮腫も軽快したため,プレドニゾロンを減量して退院となった.その後,再発はみられていない.潰瘍性大腸炎に伴う壊疽性膿皮症は数多く報告されているが,陰茎の潰瘍として初発したものは少ない.

ステロイドパルス療法で救命しえた中毒性表皮壊死症型薬疹の1例

著者: 浅古佳子 ,   和田秀文 ,   高倉桃子 ,   杉田泰之 ,   相原道子 ,   岡澤ひろみ ,   川口とし子 ,   池澤善郎

ページ範囲:P.613 - P.616

 17歳,男性.感冒症状が出現したため,市販の感冒薬パブロンS錠®を内服したところ皮疹が出現.前医にてTENと診断され,リン酸ベタメタゾン16mgの投与により皮疹は一時改善したが,ステロイド減量により急速に再燃,悪化したため当科に転院した.転院時,表皮剥離性病変が全体表面積の約70%にも及ぶ広範囲な致死性TENの症例であり,直ちに実施されたステロイドパルス療法により,病勢の急速進展を抑え救命することができた.その後に実施されたDLSTでパブロンS錠®とその成分であるアセトアミノフェンが陽性であった.また入院当初血清IL-6やIL-8の高値が認められたが,症状の軽快とともに低下した.

血管浮腫のみられたアスピリン不耐症の1例

著者: 川口博史 ,   小野田雅仁 ,   竹下芳裕 ,   高橋生世 ,   池澤善郎

ページ範囲:P.617 - P.619

 主に眼瞼に血管浮腫のみられたアスピリン不耐症を経験した.症例は27歳の女性で,軽症のアトピー性皮膚炎があり,幼少児期より蕁麻疹が出現していたが,特に鎮痛薬を飲むと眼瞼,口唇が腫脹し,呼吸苦が出現していた.入院のうえアスピリンや他の酸性NSAIDsを用いてプリックテストを施行したがすべて陰性であった.アスピリンの内服テストは,常用量の1/5である100mgを内服後約1時間で結膜の充血,眼瞼の腫脹,膨疹が認められ始め陽性と考えた.ジクロフェナクとメフェナム酸は1回常用量の内服で陽性反応は認められなかった.アスピリン不耐症の中で眼瞼の血管浮腫は比較的稀と思われるが,眼瞼のみに症状のみられる理由は明らかになっていない.他の酸性NSAIDsと交叉反応しない点など,従来のアスピリン不耐症とは機序が異なっている可能性がある.

マレイン酸チモロールおよびフマル酸ケトチフェン点眼液による接触皮膚炎の1例

著者: 高瀬早和子 ,   奥田浩人 ,   荒川明子 ,   堀口裕治

ページ範囲:P.621 - P.623

 82歳,女性.緑内障のためマレイン酸チモロール点眼液を使用中に眼瞼周囲に紅斑が出現した.βブロッカー点眼液の接触皮膚炎と考え,マレイン酸チモロール,塩酸カルテオロールおよび塩酸ベフノロールの3剤でパッチテストを施行したところ,マレイン酸チモロールのみに陽性であった.点眼液を塩酸カルテオロールに変更し,症状は改善していたが,1か月後,再び同症状が出現した.数日前より新たにフマル酸ケトチフェン点眼液を使用していたという.そこで,フマル酸ケトチフェンでパッチテストを施行したところ陽性であった.マレイン酸チモロールおよびフマル酸ケトチフェン両剤に対する接触皮膚炎と診断した.

Papular elastolytic giant cell granulomaの1例

著者: 小澤麻紀 ,   熱海正昭

ページ範囲:P.624 - P.626

 67歳,女性.慢性関節リウマチの治療中,両前腕と両大腿に多発する自覚症状のない硬い紅色丘疹が出現した.組織像では真皮浅層から中層にかけて組織球を主体とした細胞浸潤があり,弾力線維を貪食した多核巨細胞もみられた.ムチンの沈着はなく,近年,annular elastolytic giant cell granulomaのvariantとして報告されているpapular elastolytic giant cell granulomaに相当すると考えた.皮疹は外用ステロイドで消退した.

Pseudoxanthoma elasticum-like papillary dermal elastolysisの1例

著者: 長坂武 ,   木花光

ページ範囲:P.627 - P.629

 77歳,女性のpseudoxanthoma elasticum-like papillary dermal elastolysisの1例を報告する.約2年前より,両側頸部〜鎖骨上窩にpseudoxanthoma elasticum様の皮疹が多発集簇し,ときに軽度の瘙痒を伴う.病理組織学的には真皮乳頭層の弾性線維が減少,石灰沈着はない.眼科的所見は認めない.筆者らが調べえた限りでは過去の本症報告は19例と稀である.本症とその鑑別で挙げられるwhite fibrous papulosis of the neckは同一疾患のvariantに過ぎないという説があるが,厳密には両者の臨床像・組織像は異なるため,筆者らは両者を別の疾患として分類すべきであると考える.

虫蝕様皮膚萎縮症の1例

著者: 森口八重子 ,   小楠浩二 ,   森脇真一

ページ範囲:P.630 - P.632

 3歳4か月,男児.生後6か月頃より両側頬部に点状あるいは網目状の陥凹性病変が出現,またところどころ面皰様の黒点も混じるようになった.皮疹は徐々にその数を増し,額部,上眼瞼,オトガイ部にまで拡大したが,その傾向は2歳3か月頃まで継続した.既往歴に乳児湿疹,先天性白内障があるが,現在まで脱毛や成長障害は認められない.組織学的には表皮の萎縮と真皮内の角質嚢腫形成,膠原線維の変性を認めた.発症が乳児期という点が典型例とは異なるものの,特徴的な臨床所見と病理組織像より虫蝕様皮膚萎縮症と診断した.現在,皮疹の進行を認めないため,無治療にて経過観察中である.

フッ化水素酸による化学熱傷の2例

著者: 伊藤治夫 ,   菊池麻紀 ,   繁益弘志 ,   原田敬之 ,   木下茂美 ,   大山克巳

ページ範囲:P.633 - P.635

 症例1は45歳,男性.作業中プラチナ製指輪の表面洗浄の目的でフッ化水素酸溶液を使用し右第4,5指に付着.症例2は35歳,男性.タイル洗浄剤の製造過程でフッ化水素酸溶液が右第2,3,4指に付着.症例1においてデブリードマンの際に得られた標本について病理学的検討を行い,表皮から真皮全層,脂肪織に及ぶ壊死,変性を認めた.2例とも治療法としてデブリードマン後のグルコン酸カルシウム溶液の温浴が有効と思われた.

陰茎縫線嚢腫の1例

著者: 茂木精一郎 ,   高橋亜由美 ,   田村敦志 ,   石川治

ページ範囲:P.636 - P.638

 10歳,男児.外尿道口の腹側の正中からやや右側にかけて,陰茎縫線に接して結節を認めた.病理組織学的に真皮内に単房性の嚢腫を認め,嚢腫壁は重層円柱上皮ないし重層立方上皮で構成され,断頭分泌を認めた.臨床的,組織学的所見より陰茎縫線嚢腫と診断した.陰茎縫線嚢腫は陰茎の腹側の縫線上に生じる比較的稀な嚢腫である.発生起源の違いから,陰茎縫線嚢腫と傍外尿道口嚢腫に分類されている.両者の臨床的,組織学的相違について過去の報告例を検討し,考察を加えた.

爪囲に生じたBowen病の2例

著者: 山本圭子 ,   谷内克成 ,   高田実 ,   竹原和彦

ページ範囲:P.639 - P.641

 比較的稀と思われる爪囲のBowen病を2例経験した.症例1は32歳,男性.症例2は58歳,男性.症例1は免疫染色では乳頭腫ウイルス抗原は陰性であったが,in situ hybridization法ではHPV-DNAが表皮上層の腫瘍細胞の核に検出され,発症にHPVが関与していると思われた.症例2はいずれも陰性であった.また臨床像と発症部位から悪性黒色腫の鑑別が必要であった.

左環指のaggressive digital papillary adenocarcinomaの1例

著者: 菅原弘士 ,   加藤直子 ,   黛真理子 ,   青柳哲 ,   田中伸哉 ,   清水道生

ページ範囲:P.642 - P.644

 25歳,女性.左環指末節部腹側の米粒大の圧痛ある皮下結節の摘出術を施行され,組織学的にaggressive digital papillary adenocarcinoma(ADPAca)と診断された.腫瘍細胞は免疫組織化学染色にてCEA,S−100,サイトケラチンに陽性を示した.手術瘢痕辺縁から5mm離し,底部は皮下脂肪織全層を含めて再切除術を施行した.ADPAcaは切除後の残存腫瘍からの局所再発率が高く,さらに肺などへの転移がみられることが知られている稀な腫瘍であるため,現在までの報告例をまとめ考察を加えた.

表皮嚢腫壁に生じた有棘細胞癌の1例

著者: 前田文彦 ,   孫正義 ,   間山諭 ,   松田真弓 ,   赤坂俊英

ページ範囲:P.645 - P.647

 72歳,男性.30年前から臀部に皮下腫瘤を認める.今まで数度にわたり腫脹排膿を繰り返してきた.6か月前,他院にて切開排膿を受けたが,腫瘤が残存し再び増大してきたため当科を受診.初診時,左臀部に皮下硬結を認め,同日切除を行った.組織検査にて壁の一部に有棘細胞癌を伴う表皮嚢腫を認めた.また自験例に対しp53蛋白染色を行ったところ,有棘細胞癌の範囲をわずかに越えて周囲の壁肥厚部分まで陽性所見を示した.

皮下小結節を呈したMerkel細胞癌

著者: 永井弥生 ,   大野順弘 ,   曽我部陽子

ページ範囲:P.648 - P.650

 60歳,女性.初診約1か月前より右頬部に皮下結節が出現し,しだいに増大した.初診時,小指頭大の境界明瞭な皮下結節を認めた.組織学的に真皮中層から皮下にかけて腫瘍塊を認め,卵円形の核を有する腫瘍細胞が胞巣状,一部索状を呈して増殖していた.免疫組織学的にNSE,サイトケラチン陽性.拡大切除を施行し,経過観察中.本症において皮下結節を呈する例も散見されており,顔面に生じる皮下結節の鑑別診断の1つとして留意すべきと思われた.

Sister Joseph's noduleより発見された上行結腸癌の1例

著者: 藤井紀和 ,   段野貴一郎 ,   上原正巳

ページ範囲:P.651 - P.653

 65歳,女性.初診の約2か月前,臍部腫瘤に気づいた.生検の結果,中分化型腺癌で,経上皮性排除現象を伴っていた.精査を行ったところ,原発巣は上行結腸で,肺,肝臓にも多数の転移所見を認めた.内臓悪性腫瘍の臍部への転移はSister Joseph's noduleと呼ばれ,臍部腫瘤が初発症状であることが多い.高齢者で臍部腫瘤をみた場合,転移性皮膚癌を考え,病理組織学的検査に加え全身検索も進めていく必要があると思われた.

Bowen様丘疹症との鑑別を要した色素性尖圭コンジローマの1例

著者: 山田元人 ,   安立あゆみ ,   加藤陽一 ,   平岩厚郎 ,   富田靖

ページ範囲:P.654 - P.657

 29歳,男性.陰茎と下腹部の多発する黒色丘疹を主訴に来院.臨床的には典型的bowenoid papulosisであったが,病理組織学的には尖圭コンジローマであり,ウイルス学的検索でも尖圭コンジローマの病因ウイルスであるヒト乳頭腫ウイルス6型DNAが検出された.筆者らは本症例をcon—dyloma acuminatum with pigmented papular lesionsの1例として報告した.皮疹からは,bowenoid papulosisと診断される症例でも,ヒト乳頭腫ウイルス6型による,尖圭コンジローマとすべき症例がある.

頸部リンパ節結核を伴ったBazin硬結性紅斑の1例

著者: 小西研史 ,   森田和政 ,   高橋健造 ,   錦織千佳子 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.658 - P.660

 36歳,女性.2年前より両下腿に硬結性の紅斑を認めた.また,半年くらい前より左頸部リンパ節腫大に気づいた.母に肺結核の既往がある.CRP0.4mg/dl,ESR62mm/hと亢進していた.ツベルクリン反応は最大径45×36mmで,硬結,二重発赤を伴っていた.胸部X線写真にて陳旧性結核を疑わせる肺陰影を認めた.結核菌は塗抹,PCR法では喀痰,皮疹部,頸部リンパ節いずれからも検出されなかった.培養では尿,喀痰,皮疹部は陰性だったが,頸部リンパ節から10コロニー検出された.皮疹部の組織では真皮深層から皮下脂肪織にかけて巨細胞を伴った肉芽形成を認めた.頸部リンパ節の組織では乾酪壊死とその周囲に類上皮細胞を認める結核結節を形成していた.イソニアジド,リファンピシン,エタンブトールの投与後3か月で頸部リンパ節は著明に縮小し,下腿皮下硬結はほぼ消失した.

連載

Clinical Exercises・112—出題と解答

著者: 水谷仁

ページ範囲:P.657 - P.657

223
多形滲出性紅斑の病因として考慮しなければならないのはどれか.
①単純疱疹ウイルス

海外生活16年—出会った人・学んだこと・19

著者: 神保孝一

ページ範囲:P.667 - P.668

ハーバード大学医学部皮膚科における外国からの研究者・フェローの研究活動と支援体制
 ハーバード大学には日本から多くのポスト・ドクトラールフェローが訪れ,研究のトレーニングを受けている.私自身もリサーチフェローとして,1970年に札幌医科大学大学院生の途中から渡米したわけであるが,既にハーバード大学医学部皮膚科学研究室には東京逓信病院から戸田浄先生が来ておられ,私に対して米国と日本との生活環境の違いやフェローとしての心構えなど親身なアドバイスをしてくださった.彼は,よくジョークとして「自分はリサーチフェローではなく,リサーチスレイブ(奴隷)である」と言っていた.多くの米国人はこれを聞くと顔をしかめたが,私はあながちこの発言が間違いではないと思った.実際,当時日本から米国に来てフェローとして働いていた多くの人々は,安サラリーで多大な苦労を自分自身と家族に強いながら苦しい環境で働いていた.しかし,当時の日本はまだ米国と比較し生活・研究のレベルが極めて低く,そういった意味では米国での新しい環境は若い人々にとって先進文化に接するという意味で魅力的であり,多くのことを学ぶことができ,苦労することは決して無駄ではなかった.
 当時のハーバード大学医学部皮膚科の研究活動を支えていた研究者は大きく分けて2つのグループより成っていた.その一つは外国(ヨーロッパ,中近東,アジア,日本など)から研究のトレーニングを受けに来ているフェローかまたは外国(ヨーロッパ,中近東,アジアなど)での生活が不安定なので新転地の米国へと移住し,研究業績を通じ生活の糧を得,生活基盤を得ようとしているPhD研究者である.もう一つは,ネイティブの米国人であり,MDまたはPhDの学位を既に持っている人々である.これら2群の人々のうち最も将来への飛躍が期待されているエリート集団は,ネイティブのMDである.1970年私がハーバード大学医学部皮膚科に在籍していた当時,このグループの中で研究活動を行っていた多くのMDは,現在世界的なリーダーとして活躍している.多分一番惨めな思いをしたのはnon-MD,non-PhDのヨーロッパ(主として中近東,東欧)およびアジアから来た移住者であろう.このような人々の中で当時私の身近にいた研究者はM.A. Pathak,G.Szaboである.G.SzaboはB.Gilchrest(現,ボストン大学医学部皮膚科主任教授)が最初に皮膚科で研究活動を行った時に実験手技の基礎を教えた人であるが,メラノサイト生物学において世界的な第一人者でもあった.同様M.A. PathakはJ.Parrish(現,ハーバード大学医学部皮膚科主任教授)にPUVAを含む光生物学研究の糸口を教えた師であり,また,Fitzpatrick教授の光生物学に関する研究のほとんどを行っていた研究者であった.しかし,彼らは一様に私との個人的な会話の端々に自分自身の恵まれない環境に対する不満を述べていた.一方,日本人フェローはこれらの人々とは少し異なっていた.これは,帰る国を持っていたこと,帰国すると多くの人々は日本でのエリートコースの道を歩む可能性があることがあり,さらに滞米期間自体が3年以内と限定されていたので,十分自分自身の置かれていた環境を割り切って考えることができたためであろう.

治療

Medial plantar flapにて再建した足底悪性黒色腫の3例

著者: 青柳哲 ,   加藤直子 ,   菅原弘士 ,   黛真理子 ,   皆川英彦

ページ範囲:P.661 - P.664

 症例1は53歳,男性.約10年前に左足底の黒色皮疹,2か月前に左鼠径部の腫瘤が出現した.組織学的所見と全身精査の結果から,pT4bN2aM1b,stage IVの悪性黒色腫と診断した.症例2は63歳,女性.約1か月前に右足底の黒色皮疹に気づいた.組織学的にはthickness 1.9mm,level IVの黒色腫であった.症例3は67歳,男性.約7年前に右足底の黒色皮疹に気づき,1か月前より隆起してきた.組織学的にはthickness 1.8mm,level IVの黒色腫であった.3症例とも病変部から3cm離して足底腱膜上で切除し,medial plantar flapにて再建した.術後,3症例とも皮弁は良好に生着し,術後歩行には支障をきたしていない.踵部に生じた悪性黒色腫に対する再建法について考察する.

セミナー

皮膚科領域における抗菌薬選択のポイント

著者: 渡辺晋一

ページ範囲:P.671 - P.676

去る2002年4月14日,第18回日本臨床皮膚科学会総会(仙台市)において,モーニングセミナーが座長;東京逓信病院皮膚科,江藤隆史氏のもと開催された.講演は帝京大学医学部皮膚科,渡辺晋一氏により,皮膚科領域における感染症と起炎菌,および抗菌薬の使い方を中心に解説された.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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