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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科57巻10号

2003年09月発行

雑誌目次

カラーアトラス

単発性毛包上皮腫

著者: 戸田淳 ,   梅本尚可 ,   加倉井真樹 ,   出光俊郎

ページ範囲:P.852 - P.853

 患 者:49歳,男性

 初 診:2002年1月23日

 家族歴:同症はない.

 既往歴:特記すべきことはない.

 現病歴:約10年前から右鼻翼部に紅色結節があるのに気付いていた.最近,気になるため,切除を希望して来院した.

原著

広範囲に皮疹を認めたlivedoid vasculopathyの1例―自験例のまとめと本症についての一考察

著者: 倉田ふみ ,   石黒直子 ,   石橋睦子 ,   川島眞

ページ範囲:P.855 - P.860

 34歳,男性.初診時,四肢,胸腹部と広範囲に,軽度浸潤を触れる類円形もしくは折れ曲がった線状の紅褐色斑を認め,足の内側では網状を呈していた.病理組織学的には真皮中層の小血管の閉塞像を認めた.抗核抗体陰性,BFPはなく,抗カルジオリピンIgG抗体,ループスアンチコアグラントの上昇も認めなかった.β-トロンボグロブリン,血小板第4因子の軽度上昇を認め,血小板の血栓形成能の活性化がみられた.頭部MRIは異常なし.アスピリン81mg/日の内服を開始し,皮疹は7か月後には浸潤を触れなくなった.Livedoid vasculopathyと診断した自験12例のうち,6例では明らかなリベドはなく,紫斑,潰瘍を主症状とした.検査を施行した4例全例で血小板の活性化を認め,症状の軽快とともに低下した.経過の明らかな7例中5例では,血管拡張療法や抗凝固療法のみで軽快を認めた.

今月の症例

妊婦の乳房に生じた悪性黒色腫の1例

著者: 谷岡未樹 ,   鈴木利栄子 ,   岸川智子 ,   藤井秀孝 ,   立花隆夫 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.861 - P.864

 33歳,女性.初診時,第2子妊娠18週6日.3か月前頃より右乳房内側の黒色斑が急速に増大してきた.全摘生検の結果は表在拡大型悪性黒色腫(SSM:tumor thickness2.1mm,びらんなし)であったが,右腋窩より採取したセンチネルリンパ節生検では転移を認めた.そのため,化学療法に加えて,早急な拡大切除および右腋窩リンパ節郭清が必要と考えられた.児のintact survivalが期待できる妊娠30週頃まで待機すると母体の生命予後が悪くなることを患者および家族に十分説明し,同意を得た後に人工妊娠中絶を行った.画像検索等による全身検索では遠隔転移を認めなかったので,SSM(stageⅢ:pT3aN1M0,UICC1997,stageⅢA:pT3aN1aM0,AJCC/UICC2002)と診断した.局所の拡大切除,右腋窩リンパ節郭清を施行した後に,DAV-feron療法を6クール行った.術後1年経過した現在まで再発・転移を認めていない.

陰茎に潰瘍を呈した悪性萎縮性丘疹症(Degos病)

著者: 岩垣正人 ,   平田靖彦 ,   佐藤宏彦

ページ範囲:P.865 - P.867

 64歳,男性.原因不明の多発性小腸穿孔による腹膜炎に対して当院外科にて回腸切除術を施行された.前胸部と右上腕部に中央が黄白色で陥凹し,辺縁が淡紅色で隆起する丘疹と陰茎の潰瘍を認めた.臨床像,病理組織像より悪性萎縮性丘疹症(Degos病)と,それに伴う多発性小腸穿孔と診断した.現在はアスピリン配合剤(バファリン(R))81mgの投与にて経過観察中で,腹部症状の再燃は認めていない.特徴的な皮疹と多発性小腸穿孔に加え,Degos病にはきわめて稀である陰茎に潰瘍を呈した症例を,若干の考察を加えて報告する.

症例報告

カバキコマチグモ刺咬症

著者: 藤本栄大 ,   大西善博 ,   石橋明 ,   多島新吾

ページ範囲:P.870 - P.872

 46歳,女性.7月の夕刻,左薬指をカバキコマチグモに刺され来院した.刺咬部周囲は発赤腫脹し,強い疼痛があった.しびれ感が生じ,前腕に及んだが,4日間で治癒した.

肛囲溶連菌性皮膚炎の1例

著者: 宇宿一成

ページ範囲:P.873 - P.874

 2歳11か月,男児.肛囲にそう痒を伴う紅斑を生じた.直接鏡検で真菌要素を認めなかったことから接触皮膚炎としてステロイド外用剤を処方したが改善しなかった.細菌培養でA群β溶連菌を検出したため,肛囲溶連菌性皮膚炎(perianal streptococcal dermatitis:PSD)と考え,セフジニル内服,フシジン酸ナトリウム軟膏外用を行ったところ,1週間で治癒した.PSDはおむつ皮膚炎やカンジダ症と誤診されやすい臨床像を呈し,症状も軽いために見逃されていることも多いと考えられる.小児の肛囲の皮疹をみる場合には,PSDを念頭に置いた診察がなされるべきであると考えた.

2期梅毒を呈したHIV感染者の2例

著者: 井上明美 ,   坪井良治 ,   小川秀興

ページ範囲:P.875 - P.877

 2期梅毒にHIV感染症を合併した症例を経験し,文献的に考按を加えた.症例1は29歳,男性で同性愛者.皮疹は体幹・四肢の紅斑,小潰瘍.症例2は28歳,男性で同性愛者.皮疹は手掌・足底の紅斑.いずれも当科初診時,梅毒血清反応陽性で,初診時の検査でHIV抗体陽性が判明.皮疹は抗生物質内服にて消失.HIV感染を合併した場合の梅毒の臨床および血液検査学的特徴について,簡単に考察を述べる.

ケトプロフェンによる光接触皮膚炎の2例

著者: 高橋雅子 ,   西江渉 ,   宮澤仁

ページ範囲:P.878 - P.881

 ケトプロフェン(モーラステープ(R))による光接触皮膚炎の2例を報告した.症例1は29歳,女性.モーラステープ(R)を右足関節部に貼付しその後日光曝露をしていたところ,約20日後に貼付部位に一致してそう痒を伴う浮腫性の紅斑と丘疹が出現した.症例2は11歳,男性.モーラステープ(R)を2日間貼付後日光曝露し,翌日貼付部位に一致してそう痒を伴う浮腫性の紅斑と丘疹が出現した.2例とも光パッチテストでケトプロフェン,チアプロフェン酸およびモーラステープ(R)製品に陽性を示し,ケトプロフェンによる光接触皮膚炎と診断した.

急性膵炎を伴ったアナフィラクトイド紫斑の1例

著者: 飛田泰斗史 ,   浦野芳夫 ,   後藤田康夫 ,   長田淳一 ,   藤井義幸

ページ範囲:P.882 - P.884

 58歳,女性.上腹部痛,下痢,両下肢に浸潤触れる紫斑が出現し当院受診.血中アミラーゼ2,160U/l,尿中アミラーゼ31,311U/lと異常高値.組織像はleukocytoclastic vasculitis.真皮上層の血管壁にはIgAの沈着を認めた.安静および輸液等の保存的治療にて,数日で腹部症状,皮疹軽快.血中,尿中アミラーゼも正常化した.アナフィラクトイド紫斑に急性膵炎を合併した報告は稀と思われた.

クレアチニンキナーゼ上昇をみなかった皮膚筋炎の1例

著者: 奥田富士子 ,   陳貴史 ,   筏さやか ,   益田浩司 ,   加藤則人 ,   岸本三郎 ,   伊地智俊晴

ページ範囲:P.886 - P.888

 27歳,女性.初診の約2年前から両手背に紅斑が出現した.その後,顔面にも紅斑が拡大し,倦怠感,筋力低下を伴うようになった.初診時,ヘリオトロープ疹,Gottron徴候,大腿部の筋の把握痛を認めた.クレアチニンキナーゼやアルドラーゼなどの筋原性酵素は正常範囲であったが,筋電図では筋原性変化,筋生検では筋線維の変性,炎症細胞の浸潤がみられた.以上より皮膚筋炎と診断し,プレドニゾロン50mg/日より治療を開始したところ,皮疹,筋力ともに徐々に回復し,経過中,間質性肺炎や悪性腫瘍の合併はみられなかった.

発熱と浸潤性紅斑を繰り返し生じたSjögren症候群

著者: 江内田智子 ,   曽我部陽子 ,   高橋亜由美 ,   田村敦志 ,   石川治 ,   田村政昭

ページ範囲:P.890 - P.892

 20歳,女性.40℃台の発熱と軀幹・四肢に多発する紅斑を主訴に受診.口唇唾液腺組織像および抗SS-A抗体,抗SS-B抗体陽性所見よりSjögren症候群と診断した.その後の2年6か月間に同様の症状を2回繰り返し,いずれもステロイド内服により軽快した.自験例は発熱とともに紅斑を繰り返している点が興味深く,Sjögren症候群の腺外症状としての紅斑出現の意義について,文献的考察を加え報告した.

急激な体重増加に伴って出現した融合性細網状乳頭腫症の1例

著者: 山上淳 ,   藤本篤嗣 ,   小菅治彦 ,   杉浦丹

ページ範囲:P.893 - P.895

 18歳,男性.運動部をやめた後,体重が増加し,上腹部の皺襞に一致して網目状の褐色斑が出現した.組織学的に軽度の乳頭腫症と基底層のメラニン沈着を認め,融合性細網状乳頭腫症と診断した.ミノサイクリン内服により約3週間で略治した.本症の原因は不明であるが,自験例では急激な体重増加が誘因となっており,肥満による皺襞形成で細菌増殖に適した環境が生じたと推察され,抗生剤が有効であったことから,病変部における何らかの細菌の存在が本症の発生に関与した可能性が疑われた.

インスリン依存性糖尿病患者の経過中に急激に発症したacquired perforating dermatosis

著者: 小棚木麻衣子 ,   中島康爾 ,   野村和夫

ページ範囲:P.897 - P.899

 38歳,男性.10歳時よりインスリン依存性糖尿病にてインスリン治療中.38歳時より両足関節にそう痒感を伴う孤立性の小結節が出現し始め,掻破しているうちに急激に上行性に拡大してきた.初診時,四肢に紅色および褐色調の小結節が散在性にみられ,各個疹の中央部は角栓を有していた.病理組織学的所見では角栓は壊死物質や錯角化物質から構成されており,表皮は陥凹していた.それまでは早期腎症の第Ⅱ期糖尿病性腎症であったが皮疹出現の2か月後,感冒様症状をきっかけに急激に腎機能が悪化し,血液透析療法を導入した.本症の発症には従来,血液透析が要因の一つとして挙げられているが,自験例は透析導入前に急激に発症し,また発症直後に腎機能の悪化がみられたことは注目すべき点と思われた.

サルコイド様肉芽腫を呈し経表皮排泄がみられた眉毛部刺青の1例

著者: 吉永英司 ,   大西善博 ,   多島新吾 ,   石橋明

ページ範囲:P.902 - P.904

 71歳,女性.眉毛部に刺青を施術し,約1年後,同部にそう痒を伴う軽度浸潤を触れる紅斑が出現.組織はサルコイド様の肉芽腫であったが,リンパ球の浸潤もあり典型的なサルコイド肉芽腫ではなかった.刺入物は,黒の顆粒が大部分で,ほかに赤,茶,緑の顆粒を少量ずつ含んでおり,金属元素定量ではカルシウム,ナトリウム,鉄,銅のほか,微量のクロムを含んでいた.金属パッチテストではクロムが++であった.経過中に経表皮排泄を思わせる現象がみられ,排泄物内に前述した4色の色素顆粒がみられた.本例の発症にアレルギー性反応と肉芽腫性反応の両方が関与していると考え,経表皮排泄については異物に対する反応と思われた.

MR venographyにより診断した深部静脈血栓症の1例

著者: 鈴木やよい ,   浜輝石 ,   井口智雄 ,   池田勝利 ,   森田明理

ページ範囲:P.905 - P.907

 81歳,女性.2001年7月10日ごろより左下肢の腫脹と紫斑が出現した.約3か月前の左被殻出血により意識低下,右半身の麻痺のため長期臥床であった.magnetic resonance(MR)venographyを施行したところ,左総腸骨静脈に描出不良が認められたので,深部静脈血栓症と診断した.抗凝固薬および抗血小板薬の内服を開始したところ約3週間後には左下肢の腫脹と紫斑は消失した.皮疹発症から約3か月後に再度MR venographyを施行したところ左大腿の静脈の血流改善が認められた.

副腎皮質ステロイド薬内服が奏効した結節性粘液水腫性苔癬

著者: 長谷川道子 ,   天野博雄 ,   田村敦志 ,   石川治

ページ範囲:P.908 - P.910

 53歳,男性.初診の3か月前に左大腿に結節が出現し,3週間前より,ほぼ全身に多発した.初診時,軀幹,四肢を中心に拇指頭大からくるみ大までの結節が50個多発し,上背部には不整形の大型局面を認めた.一般検査では軽度の高コレステロール血症を認めたが,そのほかには甲状腺機能を含め,異常所見は認められなかった.組織学的に真皮全層で著明な膠原線維の離開があり,同部にアルシアン青陽性物質が沈着していたことから,結節性粘液水腫性苔癬と診断した.プレドニゾロン20mg/日の内服により皮疹は消退したが,内服中止で再発した.皮膚ムチノーシスの分類についての文献的考察を加えた.

線状配列を呈したcutaneous pseudolymphomaの1例

著者: 水谷建太郎 ,   玉田康彦 ,   松本義也 ,   水野榮二

ページ範囲:P.911 - P.912

 24歳,女性.左上眼瞼から外眼角にかけて線状に配列する丘疹を主訴に受診.丘疹部の生検組織像では,表皮に著変なく,真皮浅層~深層にかけて結節状に密な細胞浸潤を認めた.浸潤細胞は,小型のリンパ球を主体に形質細胞,組織球が混在しており多彩な様相を呈していた.小リンパ球の核異型,分裂像は認められず,cutaneous pseudolymphomaと診断した.

巨大な皮膚壊死を生じたangiocentric lymphomaの1例―MRI画像診断の有用性

著者: 宮岡由規 ,   滝脇弘嗣 ,   荒瀬誠治 ,   大島隆志 ,   安倍正博 ,   若槻真吾 ,   榊哲彦

ページ範囲:P.913 - P.916

 83歳,男性.当科初診3か月前より右下腿脛骨前面に浮腫状紅斑が出現し,次第に潰瘍を伴ってきたため当科を受診した.初診時,右下腿脛骨前面のほぼ全域にわたって板状硬の紅斑を認め,その中央に広範な壊死を伴っていた.初回生検で確診できず診断に苦慮したが,MRI所見では筋肉から骨髄にかけ,T1強調像にて高信号,T2強調像にて筋肉と等信号を呈する蚕食状の異常信号域がみられ,骨髄腫やリンパ腫の骨浸潤を疑った.再度の拡大生検で血管中心性に異常リンパ球の浸潤と血管の破壊・塞栓が確認され,angiocentric lymphomaと診断しえた.免疫組織学的に腫瘍細胞はNK細胞のマーカーを有し,TCR(Cβ1,γ)の遺伝子再構成を認めず,EB virus encoded small RNAが陽性であった.各種治療の効果なく初診より11か月後に死亡した.

女児の外陰部に限局した汗管腫の1例

著者: 嶋田八恵 ,   秋元幸子 ,   割田昌司 ,   石井朗子

ページ範囲:P.917 - P.919

 11歳,女児.初診の2年前より陰部に軽度のそう痒を伴う小結節が生じ徐々に増加した.組織学的所見より,汗管腫と診断した.トラニラスト内服によりそう痒は軽減し結節も縮小した.女性外陰部にそう痒を伴う小結節を認めた際には汗管腫も考慮すべきである.また,トラニラスト内服も試みる価値がある治療法と考えた.

ムチン産生有棘細胞癌の1例

著者: 森本亜玲 ,   安西秀美 ,   高橋勇人 ,   畑康樹 ,   石河晃 ,   谷川瑛子 ,   西川武二

ページ範囲:P.922 - P.925

 65歳,男性.半年前より小結節を認め,その後急速に増大した.初診時径35mm大,高さ20mmの広基有茎性紅色腫瘤で,皮膚生検にて有棘細胞癌(SCC)と診断し,拡大切除を施行した.病理組織にて,有棘細胞様異型細胞のほか,ムチカルミン染色,アルシアンブルー染色,d-PAS染色に陽性のムチンを豊富に認めたことより,ムチン産生SCCと診断した.Tc99m-Snコロイドによるセンチネルリンパ節生検で転移所見を認めたため,右腋窩リンパ節郭清を施行し,郭清リンパ節20個中6個に転移を認めた.5FU+CDDPによる化学療法を3クール施行し,約2年経過するが再発を認めない.ムチン産生SCCは本邦,海外を併せ24例しか報告がない稀な腫瘍で,通常のSCCに比し予後不良とされ,重要であると考え報告した.

好酸球性筋炎を合併したKi-1リンパ腫に生じた皮膚炎部位の扁平黄色腫

著者: 榊原章浩 ,   田上八朗 ,   石橋正夫 ,   志賀裕正 ,   千田圭二 ,   小野寺淳一 ,   林健

ページ範囲:P.926 - P.929

 好酸球性筋炎として発症し,4年の経過でKi-1リンパ腫が顕在化した27歳,男性患者に生じた特異な黄色腫について述べる.皮疹は,患者が四肢の筋力低下を自覚してから約1年後に,項部に色素沈着を伴う紅斑と肛門周囲に潰瘍を伴う紅斑として出現した.いずれも病理組織学的に真皮にびまん性に泡沫細胞の浸潤を認めたため扁平黄色腫と診断した.その時点では,好酸球性筋炎に伴う慢性皮膚炎より続発性に扁平黄色腫が生じたものと診断したが,すでに潜在していたKi-1リンパ腫のデルマドロームと解釈することも可能と思われここに報告した.

グルタールアルデヒドの外用のみにて治癒した尖圭コンジローマの2例

著者: 後藤瑞生 ,   岡本修 ,   駒田信二 ,   藤原作平

ページ範囲:P.930 - P.932

 グルタールアルデヒドのみにて治癒した尖圭コンジローマの2例を報告する.46歳男性例では肛門周囲に60mm×30mmの巨大腫瘤として存在し,凍結療法,ブレオマイシン局注等の治療に抵抗性を示したが,20%グルタールアルデヒドを使用したところ著明に軽快した.また,28歳女性例では肛門と腟口の間に米粒大丘疹が集簇していたが,治療開始時よりグルタールアルデヒドを使用し,速やかに軽快した.

ステロイド内服と外用PUVA療法で軽快した線状強皮症の1例

著者: 藤田真弓 ,   宮岡由規 ,   井上利之 ,   滝脇弘嗣 ,   荒瀬誠治

ページ範囲:P.933 - P.935

 40歳,女性.初診の約9か月前に左肘に硬化局面が出現.近医で限局性強皮症と診断されステロイド外用で一時軽快したが,皮疹が再燃,また新生・拡大し,手指や左下肢にも及んだために当科を受診した.左肘を中心にわずかな熱感を伴い光沢を有する帯状の淡褐色硬化性局面が認められ,左大腿から下腿にかけても線状に連なった同様の皮疹が認められた.また左手指関節は腫脹し,可動域が制限されていた.病理組織学的には,血管周囲に細胞浸潤が認められ,膠原線維の膨化,増加と脂肪組織の萎縮,線維化がみられた.皮疹の急速な増悪と関節の可動域制限が認められたため,ステロイド内服と外用PUVA療法を併用したところ,硬化と関節可動域障害は比較的迅速に改善した.

治療

下眼瞼の若返りを目的とした炭酸ガスレーザーによる経結膜的形成術

著者: 山本宏三 ,   山本豊

ページ範囲:P.936 - P.938

 近年,皮膚の若返りを目的に皮膚科を受診する患者が増加している.下眼瞼の若返りを希望する患者に対し,炭酸ガスレーザーを使用した経結膜的下眼瞼形成術は,1984年に最初に報告されて以来,急激に世界中で施行されるようになった.本術式は,1)手術傷残存を嫌う患者,2)下眼瞼皮膚の弾力が良く,脂肪切除後に皮膚収縮の望める患者,3)社会的な背景で,早期術後回復を望む患者などが対象になる.また,炭酸ガスレーザーを使用するために,術後腫脹が軽度,縫合が不要,皮膚切開傷を残さないなどさまざまな利点を有し,術操作も簡便である.術操作は,局所麻酔下に結膜およびfasciaをレーザーにて切開し,直視下に眼窩下脂肪を確認,切除する.本稿では,当院にて施行した症例をもとに手術手技の詳細を報告する.

臨床統計

久留米大学皮膚科における過去8年間の慢性放射線皮膚炎および続発性皮膚腫瘍の臨床的検討

著者: 橋本悟 ,   黒瀬浩一郎 ,   名嘉眞武国 ,   安元慎一郎 ,   森理 ,   橋本隆

ページ範囲:P.939 - P.941

 種々の基礎疾患に対して行われてきた放射線療法によって発症する慢性放射線皮膚炎には,さまざまな皮膚悪性腫瘍を合併することがあるが,その発生までには治療後数年~数十年と幅がある.久留米大学皮膚科において1994~2001年に19例の慢性放射線皮膚炎を経験した.そこで慢性放射線皮膚炎ならびに続発性皮膚悪性腫瘍の発生状況について臨床的,統計的検討を加えた.19例の放射線治療の対象となった原病は白癬4例,血管腫2例,子宮頚癌9例,乳癌1例,頭頚部悪性腫瘍3例であった.皮膚悪性腫瘍の合併は10例で,有棘細胞癌3例,基底細胞癌3例,Bowen病2例,有棘細胞癌と基底細胞癌の合併が1例,血管肉腫が1例であった.各症例について線源,発生までの期間,放射線皮膚炎の病型などを検討したところ,皮膚悪性腫瘍発生には,線源の種類,照射後の時間経過などの関与が大きいと考えられた.

連載

米国皮膚科医への道(6)

著者: 藤田真由美

ページ範囲:P.943 - P.944

 マッチング(National Resident Matching Program:NRMP)
 アメリカの研修医は,NRMP(National Resident Matching Program)という全国組織を通して医局に入局する.これは,医学生と医局をマッチさせる,全国一斉集団入局お見合いのようなものである.医局の定員は予算に基づいて決まっているので,皮膚科の場合は各医局,年に2~3人が普通である.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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