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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科57巻11号

2003年10月発行

雑誌目次

カラーアトラス

Down症にみられた不全型Melkersson-Rosenthal症候群

著者: 妹尾明美 ,   神原宏枝

ページ範囲:P.954 - P.955

 患 者:43歳,男性

 初 診:2000年5月11日

 既往歴:Down症,多数の齲歯

 家族歴:特記すべきことはない.

 現病歴:十数年前より再発性に口唇の腫脹を繰り返し,次第に持続性に口唇が腫大してきた.医治を受けることなく放置していたところ巨大口唇を呈してきたため,2000年5月11日当科を受診した.

原著

両側性対称性帯状疱疹

著者: 中井章淳 ,   沖守生

ページ範囲:P.956 - P.960

 90歳,女性.2002年4月11日,仙骨部から臀部の両側性に広がる紅斑と小水疱を主訴に当科を受診した.病理組織では小水疱は表皮内水疱を呈し,小水疱の底辺部を中心に単核や多核のballoon cellがみられた.皮疹の分布と病理組織像より両側性対称性帯状疱疹と診断した.アシクロビル(ゾビラックス(R))750mg/日を7日間点滴し,局所はスルファジアジン(テラジアパスタ(R))外用にて神経痛は残さず略治した.複発性・多発性帯状疱疹は1970年以降ではわれわれが調べえた限り,自験例を含め46例であった.両側性対称性帯状疱疹は5例であった.自験例を含む複発性・多発性帯状疱疹と通常の帯状疱疹を文献的に比較したが,好発年齢,性差,基礎疾患,経過・予後,帯状疱疹後神経痛において大きな違いはみられなかった.

今月の症例

11歳時に寛解後,33年ぶりに再発した皮膚筋炎の1例

著者: 越後岳士 ,   佐藤伸一 ,   高田実 ,   竹原和彦 ,   和田隆志

ページ範囲:P.961 - P.963

 44歳,男性.6歳頃,小児皮膚筋炎と診断され,3~4年間のステロイド内服治療にて寛解した.ところが,33年後の初診5か月前より特に誘因なく,ヘリオトロープ疹・Gottron徴候・筋の脱力感が出現したため当院内科に入院した.血液検査では筋原性酵素が上昇し,近位筋の筋力低下,筋電図にて筋原性変化を認めたため,33年間の寛解期間を経た後の皮膚筋炎の再発と診断した.抗核抗体,抗Jo-1抗体を含め特異抗体はすべて陰性で,間質性肺炎や悪性腫瘍の合併はなく,ステロイド内服にて軽快した.

凝固系の異常を呈した悪性萎縮性丘疹症(Degos病)の1例

著者: 新田悠紀子

ページ範囲:P.965 - P.968

 78歳,女性.軀幹・四肢に5~10mm大の辺縁が堤防状に隆起し,中央部は壊死または萎縮陥凹した皮疹が孤立性に約100個ほど認められた.組織像は真皮上層部の楔状の膠原線維の均一化,脂肪織の小血管に血栓形成をみ,悪性萎縮性丘疹症と診断.皮疹の増悪と並行して,βトロンボグロブリンと血小板第4因子の高値を示したが,多臓器の異常なく,アスピリン内服にて2年間皮疹のみ.文献的考察にて凝固系に異常のあった7症例は消化器系・中枢神経系の血栓を合併していた.βトロンボグロブリンと血小板第4因子の値は病勢と相対しており,画像診断で見つけにくい微小血栓を示す指標となると思われた.

症例報告

小児顔面のBlaschko線に沿って生じた線状皮疹―線状苔癬と線状皮膚エリテマトーデスの特徴を併せもつ1例

著者: 小鍛治知子 ,   早川和人 ,   塩原哲夫

ページ範囲:P.969 - P.971

 われわれは4歳女児の頬部にBlaschko線に沿って紅色丘疹が配列する線状の皮疹を経験した.本例は当初,発症年齢,発疹の性状,分布から線状苔癬を思わせたが,組織学的検索では円板状エリテマトーデスを示唆する所見を示し,初診後3年を経た現在も完全な治癒はみられていない.以上から自験例は,線状苔癬と線状皮膚エリテマトーデス(linear cutaneous lupus erythematosus)の両者の特徴を併せもつ症例と考えられた.

SLEに合併した尋常性乾癬

著者: 宇宿一成

ページ範囲:P.972 - P.974

 33歳,女性.2001年9月26日初診.1993年よりSLEにて加療中であった.9月18日より39℃台の熱発をきたし,近医にて抗生物質を投与され解熱.その後,鱗屑を伴う紅斑が全身に拡大した.病理組織検査では,錯角化と表皮柵の肥大延長,真皮乳頭層から上層の血管周囲性の炎症細胞の浸潤を認めた.SLEに合併した尋常性乾癬と診断.両疾患の関連については不明であるが,感染症が誘因となって尋常性乾癬を発症したものと考えた.ステロイドとビタミンD3の外用剤のsequential therapyを開始し,比較的良好なコントロールが得られた.SLEの治療中にはステロイドの全身投与が行われる場合が多く,乾癬の膿疱化因子となるため,注意深い経過観察が必要であると考えた.

食道癌治療中に発症した疱疹状天疱瘡の1例

著者: 柴垣亮 ,   井上智子 ,   保島匡和 ,   三宅敏彦 ,   森原潔

ページ範囲:P.975 - P.977

 79歳,男性.食道癌手術約2週後,体幹,四肢に環状の紅斑が出現した.個々の紅斑の内部には環状に配列する小水疱,びらん,痂皮が認められた.病理組織学的にeosinophilic spongiosisを認め,蛍光抗体直接法では表皮細胞間にIgGおよびC3の沈着を認めた.ELISA法では抗デスモグレイン1抗体が単独で陽性であった.以上より自験例を疱疹状天疱瘡と診断した.ステロイド内服により皮疹は徐々に軽快したが,経過中食道癌の再発が認められ,死亡した.

自己抗体の関連が考えられた食物依存性運動誘発性アナフィラキシーの2例

著者: 長井秀明 ,   清水宏和 ,   玉田康彦 ,   松本義也

ページ範囲:P.978 - P.981

 症例1,46歳,女性.症例2,47歳,男性.いずれも小麦製品摂取後の徒歩運動にてアナフィラキシー症状が出現.小麦におけるプリックテスト,IgE RASTスコアともに陽性を示したことから,小麦による食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(FDEIA)と診断した.また症例1では運動誘発テストにてアスピリン内服によりアナフィラキシー症状の増悪が認められた.さらに2症例とも自己血清による皮内テストにて膨疹形成を認めたことから,肥満細胞の活性化が促進されFDEIAの発症に相乗的に働いているようではないかと考えた.

非イオン性ヨード造影剤イオメプロールによる薬疹の1例

著者: 堺則康 ,   國本健太 ,   安藤順 ,   川名誠司

ページ範囲:P.984 - P.987

 54歳,男性.脳動脈瘤検査時に非イオン性ヨード造影剤であるイオメプロール(商品名:イオメロン(R))を使用後,7日目にほぼ全身の紅斑が出現.パッチテスト・スクラッチパッチテストにて陽性所見を得,イオメプロールによる薬疹(播種性紅斑型)と診断した.非イオン性ヨード造影剤はイオン性造影剤に比べて,遅発型の副作用が多く,造影剤使用数日後に薬疹が発症したという報告例が複数ある.また,非イオン性ヨード造影剤では,同系の薬剤間での交差感作が多いことが知られる.自験例はこの2つの特徴をともに有していた.同薬剤を使用するに当たっては,遅発型副作用,交差感作の2点に注意する必要がある.

クロラムフェニコール腟錠によるsystemic contact-type dermatitis

著者: 花垣博史 ,   玉置昭治 ,   中村敬

ページ範囲:P.988 - P.990

 クロラムフェニコール腟錠(クロマイ(R)腟錠)によるsystemic contact-type dermatitisの1例を報告した.48歳,女性,2年前に薬疹疑いの既往あるも原因薬を同定し得ず.クロマイ(R)腟錠を3回使用した翌日より,陰部,両側眼囲,前頚部,前胸部,背部,腹部,両側大腿部に対称性に播種状の紅斑,丘疹が出現した.パッチテスト48時間後にクロロマイセチン(R)軟膏(2%)にICDRG基準+?の反応を認めるとともに,陰部にそう痒および顔面,頚部に皮疹の再燃を認め,パッチテスト7日目でもクロロマイセチン(R)軟膏にICDRG基準1+の反応を認めた.

再発性多発軟骨炎の2例

著者: 奥村えりな ,   高瀬早和子 ,   川上泰弘 ,   松島佐都子 ,   堀口裕治 ,   本田えり子 ,   松村由美 ,   森田和政 ,   高橋健造 ,   立花隆夫 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.991 - P.995

 症例1,47歳,男性.両側耳介軟骨炎とリウマチ反応陰性の非びらん性多発性関節炎,蝸牛・前庭機能障害から再発性多発軟骨炎と診断し,プレドニン(R)30mg/日の内服を開始したところ,症状は急速に改善したが,10mg/日にまで減量した時点で症状の再燃を認めた.症例2,72歳,女性.両側耳介軟骨炎を訴えて来院し,その病理組織学的所見より再発性多発軟骨炎と診断した.内服ステロイド剤の投与によって,いったんは症状の改善をみたが,B型肝炎の増悪と胸痛・動悸がみられたため,ステロイド剤内服の継続が困難となった.コルヒチン(R)と非ステロイド系消炎鎮痛剤投与を試みたところ良好な結果を得た.

先天性血管拡張性大理石様皮斑の1例

著者: 加藤優子 ,   飯豊深雪

ページ範囲:P.998 - P.1000

 生後5日,女児.家族歴に特記事項はない.満期正常分娩で出生.生下時より左臀部から下肢にかけて,紫紅色・網目状の皮斑を認めた.一部に皮膚萎縮と陥凹を伴い,患肢は健側に比べ細かった.病理組織学的所見では,真皮上層から皮下脂肪にかけて細小血管の拡張と増生を認めた.そのほかの異常や合併症はなかった.皮斑は生後1か月より改善傾向にあるが,1歳6か月現在,完全消退はしていない.

女性の外陰部に生じた被角血管腫の1例

著者: 石澤俊幸 ,   林昌浩 ,   紺野隆之

ページ範囲:P.1001 - P.1003

 51歳,女性.約1年前に外陰部に小丘疹が出現し,徐々に増数・増大した.初診時,両側大小陰唇に直径3mmまでの暗赤色または黒褐色の丘疹が多発していた.病理組織学的に,表皮はごく軽度の過角化を示し,真皮上層には1層の内皮細胞に囲まれ拡張した管腔を認め,赤血球が充満していた.以上より女性の外陰部に生じた被角血管腫と診断した.これまで本邦皮膚科領域における女性外陰部の報告例は,自験例を含め7例のみであり,文献的考察を含め報告した.

小児の頭頂部に生じた鵞卵大の色素斑―細胞増殖型青色母斑と扁平母斑の合併例

著者: 盛山吉弘 ,   高橋貴志 ,   松永剛 ,   飯田秀夫 ,   桜井由美子

ページ範囲:P.1004 - P.1007

 3歳,女児.1歳頃に気付かれた頭頂部の腫瘤が増大傾向にあり,当科に紹介され受診した.頭頂部やや後方正中に65×45mm大の境界明瞭,不整形で色調均一な褐色局面があり,一部に点状の黒色から暗青色の斑が混在していた.局面上の発毛は周囲と同様であった.さらに褐色局面の左縁に17×21mm大のドーム状隆起する弾性硬の腫瘤が存在していた.部分生検にて診断後,tissue expanderを用い切除,再建を行った.悪性像はみられず,帽状腱膜,頚部リンパ節への進展もなかった.本症例は,細胞増殖型であること,巨大であること,メラニンの含有が非常に多いこと,扁平母斑を合併していることが特徴的であった.

血液学的クライテリアに基づいて診断したSézary症候群の1例

著者: 田村正和 ,   河井一浩 ,   和泉純子 ,   坂本ふみ子 ,   伊藤雅章

ページ範囲:P.1008 - P.1010

 85歳,女性.約10年前に発症し,5年前から,紅皮症になった.組織学的に表皮向性を伴う真皮上層の異型リンパ球浸潤を認めた.全身の表在リンパ節腫脹がみられたが,組織学的には異型リンパ球の増殖は認められなかった.他臓器病変はなく,抗HTLV-Ⅰ抗体は陰性であった.末梢血Sézary細胞の増加は形態学的には明らかではなかったが,フローサイトメトリーで,末梢血リンパ球の90%がCD4陽性(CD4/CD8比45)であったことから,白血化を伴っていると判断し,Sézary症候群(T4N1B2M0 stageⅣA)と診断した.

骨髄癌腫症を生じ急激な経過を辿った悪性黒色腫の1例

著者: 樹神元博 ,   伊崎誠一 ,   大城貴史 ,   土田幸英 ,   鈴木正 ,   平井昭男

ページ範囲:P.1011 - P.1014

 44歳,女性.初診の10年程前から腹部に黒色の皮疹を認めていた.1か月前から増大傾向を認めたため当科を受診した.初診時,臍上壁に一部で潰瘍化し,ドーム状に隆起する黒色結節を認めた.病理学的には表皮内,真皮内に胞体の明るい,メラニンを含有する異型細胞が,胞巣を形成して増殖していた.以上より,結節型悪性黒色腫と診断した.センチネルリンパ節生検で左鼠径リンパ節に転移を認めた.両側鼠径および腋窩リンパ節郭清,化学療法を施行した.経過中,著明な汎血球減少とDICを合併し,輸血など対症療法を施行するも効果なく,初診から約4か月半後,永眠した.剖検にて椎骨の骨髄は著明に黒色調を呈し,顕微鏡的に骨髄を含む多臓器に転移を認めた.骨髄癌腫症の原発巣は胃癌が多く,DICなどの血液学的異常を合併し,急激な経過を辿ることが知られている.

センチネルリンパ節生検を実施した下口唇有棘細胞癌の1例

著者: 森田有紀子 ,   柴田真一 ,   榊原章浩 ,   富田靖

ページ範囲:P.1015 - P.1017

 59歳,女性.2001年8月より,右下口唇に結節が出現し,急激に増大した.術中に原発巣周囲に2%パテントブルーを皮内注(色素法)し,青染した右顎下リンパ節をセンチネルリンパ節として生検し,原発巣を結節の辺縁より5mm離して切除した.結節は病理組織学的に有棘細胞癌で,リンパ節は転移は認められなかった.後に,CTで顎下リンパ節の腫大を3つ認め,再度色素法を行い,2つの顎下リンパ節が青染し,センチネルリンパ節と同定した.リンパ節はいずれも転移は認められなかった.顔面はリンパ流が複雑であり,センチネルリンパ節の同定は困難なため転移判定の適応外とされがちだが,積極的に行うべきと考える.

下腹部に生じた異所性乳房外Paget病の1例

著者: 松浦亜紀 ,   村西浩二 ,   宮下文 ,   迫裕孝 ,   井岡二朗 ,   山野剛

ページ範囲:P.1018 - P.1020

 76歳,女性.初診の3年前より下腹部に紅斑を認め,徐々に拡大した.ステロイド外用剤にて効果がなく,Bowen病を疑い皮膚生検を行ったところ,Paget病であった.皮膚腫瘍切除術,両側浅鼠径リンパ節郭清術,遊離分層植皮術を施行した.転移は認めなかった.乳房外Paget病は本来,外陰部,腋窩,肛門周囲などのアポクリン腺の分布部に生じることの多い腫瘍であり,その他の部位にみられることは稀である.

健康成人の眼囲に生じ汗管腫と思われた伝染性軟属腫

著者: 宇宿一成

ページ範囲:P.1021 - P.1022

 36歳,女性.2002年8月中旬ごろから左眼瞼に小丘疹が出現し,徐々に両側の上下眼瞼に拡大した.病理組織学的に封入体が認められ,伝染性軟属腫と診断し,トラコーマ鉗子にてすべての丘疹を摘除した.伝染性軟属腫はありふれた疾患であるが,自験例では皮疹の分布や性状が汗管腫などを考えさせる非定型的な臨床像を呈していた.眼囲に集簇する小丘疹を診断する際には,伝染性軟属腫も鑑別する必要があると考えた.

帯状疱疹後の腹筋麻痺の1例

著者: 曽我部陽子 ,   大西一徳 ,   石川治

ページ範囲:P.1024 - P.1026

 59歳,男性.帯状疱疹後の腹部の膨隆を主訴に皮膚科受診.初診時,右側腹部Th9-11領域に立位で著明となる腹部の膨隆を認め,腹筋の収縮は不可能であった.腹部CT上膨隆部の内・外腹斜筋,腹直筋は,左側と比較し収縮性を失い菲薄化していた.経過を通じて起き上がりや立位の困難はなく,便秘も認めなかった.帯状疱疹による腹筋麻痺と考え,筋力トレーニングとビタミンB12の内服を行い,症状は軽快した.帯状疱疹に合併する運動麻痺としては,顔面神経麻痺や上肢の運動麻痺が知られているが,腹筋麻痺も起こりうる.この場合,先行症状や随伴症状として便秘を認めることが多く,患者のQOLを著しく損なうことになる.腹部帯状疱疹の患者の診療にあたっては,皮疹軽快後も便秘の有無の聴取や注意深い腹部の視診および触診が大切であると考えた.

ヒトヒフバエによる皮膚蛆症の1例

著者: 川島綾 ,   滝脇弘嗣 ,   荒瀬誠治 ,   浜正造

ページ範囲:P.1027 - P.1029

 29歳,男性.南米ボリビアに滞在中に左足関節背面の硬結を伴う紅斑に気付いたが放置していた.約1か月後,休暇のため帰国した際にそう痒が強くなり,結節を圧迫したところ蛆様の虫体が排出されたので虫体を持参して当科を受診した.排出孔を中心に硬結を切除したが,ほかの虫体の寄生は認めなかった.虫体はDermatobia hominisの2齢幼虫と同定された.後日知りえたことではあるが,ボリビアでは本症は珍しいものではなく,外科的処置の必要はないという.

連載

Clinical Exercises・123―出題と解答

著者: 清水宏

ページ範囲:P.987 - P.987

出題と解答:清水宏(北海道大学)
245 表皮水疱症について誤りを1つ選べ.

A:栄養障害型表皮水疱症はⅦ型コラーゲン遺伝子(COL7A1)の変異によって起こる.

B:単純型表皮水疱症はケラチン1ないし10の遺伝子変異によって起こる.

C:Herlitz接合部型表皮水疱症はラミニン5を構成する分子の遺伝子変異によって起こる.

D:劣性栄養障害型表皮水疱症では全身の著明な水疱,びらんが多発し,瘢痕形成や稗粒腫を残す.

米国皮膚科医への道(7)

著者: 藤田真由美

ページ範囲:P.1040 - P.1041

 インターンシップ(Internship)

 グリーンカードを取得し,内科と皮膚科のマッチングにもマッチし,いよいよ1998年の6月末より,本格的な医学研修が始まった.まずは,シアトルのワシントン大学で内科研修である.研修医はアメリカではレジデントと呼ばれるが,1年目のレジデントは特別にインターンと呼ばれる.インターンになると,それまでと違って丈の長い白衣を着て(連載第3回参照),給料も支給される.ちなみに給料は,ポスドクの給料よりは高い.ワシントン大学の内科インターンは毎年60人程いるが,マッチングの際にTraditional Program(内科3年の研修後さらに内科専門医に進む医師用の教育),Primary Care Program(内科3年の研修後に勤務医になる医師用の教育)とPreliminary Program(内科1年の研修後に他科の専門医になる医師用の教育)の3種類に大別され,おのおの20人ずついる.目的と研修期間が異なるため,1年目は60人いるレジデントが2年目には40人となり,3年経つと20人が残ることになる.私の場合は,まずPreliminary Programで1年の内科研修の後,皮膚科の研修へ進むことになる.このように,2年目以降の研修内容は各プログラムによって異なるが,1年目のインターンの研修内容は全員ほぼ同じである.

 インターンの研修は各4週ごとの13のローテーションから成り立つ.ワシントン大学関連病院(大学病院,公立病院,私立病院,VA(Veterans'Administration:在郷軍人)病院)の一般内科病棟勤務が7回に加えて,MICU(内科集中治療室),CCU(心臓集中治療室),血液内科病棟,ER(救急治療室),専門科,外来の6ローテーションがある.その間に休暇が3週間あり,自分の意思や予定と関係なく,任務の楽なローテーションなどのなかにすでに組み込まれていて,いやでもその時に休まないといけない.60人のインターンがいると60通りのローテーションがあり,MICUやCCUなどの難しいローテーションから始まる人もいれば,楽なローテーションから始まる人もいる.

治療

タクロリムス軟膏が奏効した尋常性白斑の2例

著者: 岩垣正人 ,   河野由美子 ,   平田靖彦

ページ範囲:P.1030 - P.1032

 症例1は48歳,男性.症例2は51歳,男性.ともに顔面の脱色素斑に対してタクロリムス軟膏の外用を行い,良好な色素再生を認めた.尋常性白斑の治療としては一般にステロイド外用やPUVA療法などが行われるが,難治例も多い.表皮移植などの外科的治療も有効であるが,ある程度患者への侵襲があり,手技が煩雑である.タクロリムス軟膏外用は簡便かつ安価で,患者に侵襲の少ない治療法であるといえる.尋常性白斑の原因としては,自己免疫説が広く受け入れられている.メラノサイトにおいてICAM-1などの抗原発現が増強し,好中球やT cellなどの免疫系細胞の反応が惹起され,その結果メラノサイトが破壊され白斑が生じるという機序である.本例でタクロリムス軟膏が奏功した機序は,T cellのサイトカイン産生抑制機能によるものと考えた.

タクロリムス軟膏によるアトピー性皮膚炎の治療―長期使用のレトロスペクティブ調査結果

著者: 津嶋友央 ,   瀧川雅浩

ページ範囲:P.1033 - P.1038

 【対象】1999年12月~2001年6月までにタクロリムス(PR軟膏)で治療されたアト ピー性皮膚炎(AD)患者344人.男性:女性≒1:1,平均年齢(中央値)27歳.顔面のみ 塗布例:80%,軀幹のみ塗布例:11%,顔面・軀幹塗布例:9%.塗布期間:1~18か 月.【治療開始時の重症度】顔面塗布患者では中等症が58%,軀幹塗布患者では軽度 が約半数,中等症が約40%.【1日あたりの外用回数】70%が1回/日で治療を開始 し,9割以上で塗布回数は変更なかった(平均観察期間,7か月).30%が2回/日で開始 し(平均観察期間:4.7か月),約70%が平均1.4か月で1回/日塗布になった.【1週間 あたりの外用日数】80%がほぼ毎日外用で治療をスタートした.3~5日/週群も含め て,半数以上で外用日数が減った.【月平均外用量】顔面塗布群では6g,軀幹塗布 群では5~15g.【重症度別改善度】顔面あるいは軀幹塗布群いずれも塗布開始3か月 後には,重症度ポイントが開始時の約半分になった.開始時重症度(重症,中等症, 軽症,軽微)別にみると,いずれの群でも,塗布3か月後にはポイントが半分あるい はそれ以下になっていた.【PR軟膏と因果関係がある副作用】刺激感,Kaposi水痘 様発疹症,単純ヘルペス,毛嚢炎,ニキビがみられた.Kaposi水痘様発疹症につい ては,ADの重症度,PR軟膏の外用回数,塗布量,塗布日数と発症しやすさとの間に は関連がなかった.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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