icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科57巻13号

2003年12月発行

雑誌目次

カラーアトラス

Blue rubber bleb nevus syndrome

著者: 和田直子 ,   大西善博 ,   多島新吾 ,   石橋明

ページ範囲:P.1148 - P.1149

 患 者:39歳,女性

 初 診:2001年8月31日

 家族歴:特記すべきことはない.

 既往歴:23歳時より下痢,下血を繰り返し慢性特発性偽性腸閉塞症と診断され治療中である.36歳時頭蓋内血管腫切除術施行.38歳時腹部CTで肝脾腫,左卵巣腫瘍を指摘.

原著

成人のアトピー性皮膚炎患者に対するグループ療法

著者: 檜垣祐子 ,   上田周 ,   服部英子 ,   宍戸悦子 ,   有川順子 ,   川島眞 ,   川本恭子 ,   加茂登志子 ,   堀川直史

ページ範囲:P.1150 - P.1154

 成人のアトピー性皮膚炎ではストレスの緩和や対処法を習得し,行動異常としての掻破行動を修正することが治療上重要である.グループ療法では患者同士で場を共有し,同じ立場で話し合い,支持し合うことで治療意欲が増すなどの効果が期待できる.そこで当科では,2001年3月より,グループ療法を試み,2002年6月までに9回の会合を行い,36人,延べ104人が参加した.会合はストレスと掻破行動の関係や治療に関する患者自身の行動に関するミニレクチャーとフリートークで構成した.フリートークでは,自己紹介に続き,掻破行動,ストレス,治療上の工夫などにつき話し合い,ほかの患者の問題解決への支持的なかかわりが自発的に行われるようになった.参加者へのアンケート調査の結果,多くの患者がグループ療法前に比べてアトピー性皮膚炎の症状が改善し,掻破行動が軽減したほか,疾患の理解に役立ち,ストレスへの対処の仕方が向上したと回答した.

今月の症例

ゲフィチニブ(イレッサ(R))による薬疹の1例

著者: 武藤潤 ,   鈴木布衣子 ,   木花いづみ ,   阿部健二

ページ範囲:P.1155 - P.1157

 73歳,女性.肺癌(扁平上皮癌・StageⅢb)にてゲフィチニブ(イレッサ(R))250mgを内服開始.10日後に下痢と毛囊炎様の皮疹が出現するも一時軽快.その後2か月後から皮疹の増悪とともに膀胱炎症状,肝機能障害を認めたため同剤の内服を中止.悪化時,ほぼ全身の皮膚は乾燥症状を呈し,毛孔一致性の小丘疹や膿疱,びらん,痂皮を混じた暗赤色紅斑が上肢,頸部で多発し融合していた.病理組織学的に角層下膿瘍を伴い,不全角化やexocytosisを認めた.また,真皮では毛囊は萎縮し周囲にリンパ球,好中球の浸潤を認めた.ミノマイシンの内服やトレチノイン軟膏を外用し,皮疹は乾燥症状を残して軽快した.ゲフィチニブのパッチテストおよびDLSTは陰性であった.ゲフィチニブは上皮成長因子受容体(EGFR)のチロシンキナーゼ阻害剤であり,薬疹の機序としてEGFRへの直接的な関与が考えられた.

症例報告

アリルイソプロピルアセチル尿素による多発性固定薬疹の1例

著者: 原藤玲 ,   畑康樹

ページ範囲:P.1160 - P.1162

 22歳,女性.月経ごとに四肢に出没を繰り返す皮疹が,次第に範囲が拡大し,口腔内違和感も伴ってきた.20%濃度のイブ(R)の成分パッチテストを施行したところ,皮疹部のみでアリルイソプロピルアセチル尿素貼布部に陽性反応が生じた.アリルイソプロピルアセチル尿素による固定薬疹の報告は現在70例を超えている.同剤は140種類以上の一般医薬品に配合されており,今後も固定薬疹の原因薬剤の一つとして注意が必要と思われる.

Interstitial granulomatous drug reactionの1例

著者: 谷村心太郎 ,   横田浩一 ,   小玉和郎 ,   加藤まどか ,   菊池敏郎 ,   木村鉄宣 ,   清水宏

ページ範囲:P.1163 - P.1165

 77歳,女性.2000年7月から腹部に軽度の熱感とそう痒を伴う紅斑が出現.近医にてステロイド外用治療が行われたが,皮疹が拡大してきたため当科を受診した.初診時,胸腹部,臀部,左大腿に手掌大までの淡紅色から紫色の境界明瞭な浸潤を触れる環状の紅斑を複数個認めた.病理組織学的には表皮に液状変性を認めたほか,真皮の血管周囲および膠原線維間には類上皮細胞および巨細胞・リンパ球の浸潤を認め類上皮細胞性肉芽腫の像を呈していた.また,血管炎の所見はなく,膠原線維間にalcian blue染色陽性のムチンの沈着が認められた.以上の臨床的および病理所見より本症例はinterstitial granulomatous drug reactionと考えられたため,原因薬として疑わしい1996年から継続投与されていたテオフィリンの内服を中止して経過を観察したところ,皮疹は無治療で徐々に改善し初診の2か月後にはほぼ完全に消退した.

スマンクス(R) (ジノスタチンスチマラマー) 動注による皮膚潰瘍の1例

著者: 奥村美香 ,   中川浩一 ,   田宮久詩 ,   前川直輝 ,   石井正光

ページ範囲:P.1166 - P.1168

 83歳,男性.1998年に肝細胞癌と診断され,肝動脈塞栓術,抗癌剤の動脈内注射(動注)が施行された.いったんは縮小したものの再び増大してきたため,2001年8月に側副血行路である右内胸動脈よりスマンクス(R)を動注した.当日夜から右胸部痛が,また動注3日目より圧痛と硬結を伴う紅斑が胸部右側と腹部右側に出現してきた.スマンクス(R)が内胸動脈の皮枝に流入したために生じたと考え,ステロイドホルモン製剤の内服,局所注射(局注)を行うも効果を認めなかった.次第に中央部が壊死し,潰瘍を形成してきたため,デブリードマンと植皮術により再建した.スマンクス(R)はリピオドールに溶解しているため,ほかの抗癌剤に比べ長時間血管内に留まり,遷延性の潰瘍となりやすい.

巨大な腫瘤を形成した頭部乳頭状皮膚炎の1例

著者: 出来尾格 ,   村田隆幸

ページ範囲:P.1169 - P.1171

 56歳,男性.30年来無治療の糖尿病あり.15年前に項部に皮疹が散在性に出現.徐々に融合しながら増大し,巨大な腫瘤を形成した.腫瘤は8.5×3.0cmで楕円形,淡紅色,ケロイド様であった.組織学的所見では,膠原線維の増生と,真皮浅層から中層の小血管の増生と細胞浸潤を認め,頭部乳頭状皮膚炎と診断した.既往に脳梗塞,糖尿病,心筋症があり全身麻酔のリスクが高いため,切除術は施行せず,保存的にケナコルト(R)の局注を行った.本症が巨大な腫瘤を形成することは稀である.病態には不明な点が多いが,無治療の糖尿病による感染の遷延,局所の皮膚のたるみや襟との摩擦,ケロイドを生じやすい体質などが腫瘤の形成に関与しているものと推測した.

項頸部に生じた巨大頭部乳頭状皮膚炎―外科的治療法と術後管理の検討

著者: 藤村卓 ,   橋本彰 ,   高橋和宏 ,   国井隆英 ,   黒澤昌啓 ,   照井正 ,   田上八朗

ページ範囲:P.1172 - P.1174

 巨大頭部乳頭状皮膚炎は稀に臨床現場で遭遇する疾患ではあるが,その治療法は未だに確立しておらず治療に苦慮する疾患である.われわれは,後頸部の巨大な腫瘤と膿汁の流出を主訴に来院した30歳,男性で,後頸部の巨大頭部乳頭状皮膚炎と診断し,腫瘤切除および全層植皮術,分層植皮術と術後二次的治療(second-intention healing)を行い満足する結果を得た症例を経験した.切除した腫瘤は肉眼的にも組織学的にも線維化に富み,内部には多量の毛髪が存在しそれに対する異物肉芽腫反応が認められた.

CHILD症候群の1例

著者: 鬼頭由紀子 ,   松本賢太郎 ,   橋爪秀夫 ,   戸倉新樹

ページ範囲:P.1175 - P.1177

 6歳,女児.生後6か月頃より左第1趾に角化性紅斑局面が出現し,その後,左鼠径部,左大腿部,左手指,左足趾,左足底にも同様の皮疹が現れた.生後1か月に左股関節を脱臼し,生後4か月に大動脈弁狭窄症,動脈管開存症を指摘された.生後6か月頃より左頭頂部の脱毛,左上下肢の1.5cm短縮を認める.角化性紅斑の病理組織像において,表皮は不全角化,過角化を伴って肥厚し,正常角化を示す部分と不全角化とが交互にみられた.正常角化部では有棘層の上層から顆粒層までインボルクリンが発現していたが,不全角化部ではほとんど発現していなかった.左半身に限局する境界明瞭な角化性紅斑,同側の骨格異常,心奇形より,CHILD症候群と診断した.

高校生のX線被曝事故

著者: 菅原祐樹 ,   松田真弓 ,   赤坂俊英

ページ範囲:P.1180 - P.1182

 17歳,男子高校生.高校の物理実験中に右手を放射線照射装置の中に入れ,40秒ほど照射を受けた.照射3週後の2001年12月21日,当科紹介受診となる.右示指,中指,環指に比較的境界明瞭な紅斑と疼痛など急性放射線皮膚炎の症状を呈した.学校教育での放射線装置使用は放射線被曝の危険性があることを報告した.

Herpetiform pemphigus―抗デスモグレイン1抗体価と臨床症状の相関について

著者: 岸本和裕 ,   金子史男

ページ範囲:P.1184 - P.1187

 77歳,男性.紅斑の辺縁に小水疱が環状に配列しDuhring疱疹状皮膚炎様の臨床像を呈していた.病理像は好酸球性海綿状態,好酸球を含む表皮内水疱,免疫組織所見は蛍光抗体直接法,間接法とも表皮細胞間にIgG の沈着を認めた.ELISA法では抗デスモグレイン(Dsg)1抗体価が27.0と陽性で,抗Dsg3抗体価は2.1と陰性であった.以上より本例をherpetiform pemphigus(HP)と診断した.臨床症状とDsg1スコアの相関を詳細に解析することで,HPの水疱発症機序を考えるうえで示唆に富む知見が得られた.

Leriche症候群の1例

著者: 原藤玲 ,   畑康樹 ,   林忍 ,   能勢由紀子

ページ範囲:P.1188 - P.1190

 45歳,男性.初診の約1か月前より左第5趾に圧痛が出現.受診時,左第5趾は紫紅色調を呈し,著明な圧痛を認め,足縁に網状皮斑を伴っていた.両側大腿動脈以下の拍動が触知不能で,血管撮影検査にて両側総腸骨動脈の完全閉塞像を認めた.詳細な問診により間歇性跛行,インポテンスの存在も明らかとなり,Leriche症候群と診断した.腹部大動脈-両側総腸骨動脈バイパス術後,第5趾の色調は正常化し,疼痛,間歇性跛行,インポテンスも軽快した.Leriche症候群は,腹部大動脈から総腸骨動脈分岐部の慢性閉塞により,皮膚潰瘍や壊死などの皮膚症状を生じることがあるが,皮膚科領域での報告は少ない.動脈硬化性疾患の増加に伴い,本症の患者が皮膚科を初診する機会も増加すると思われ,皮膚科医も本症の知識を持つ必要があると考えた.

麻痺性イレウスおよび腹筋麻痺を合併した帯状疱疹の1例

著者: 堀田隆之 ,   狩野葉子 ,   塩原哲夫

ページ範囲:P.1191 - P.1194

 67歳,女性.左側腹部から背部(Th7~8領域)の皮疹で当科入院.初診時腹部単純X線所見で,小腸にniveauと小腸ガス像を認め,帯状疱疹と麻痺性イレウスの合併と診断した.経過中に軽度の腹筋麻痺を認めたが,アシクロビル投与にて,諸症状は改善した.また,皮疹の部位と麻痺性イレウスおよび運動麻痺の出現した部位は消化管神経支配領域や運動麻痺の好発部位に一致しており,帯状疱疹に伴った一連の反応であると考えられる.帯状疱疹による神経障害は通常,知覚神経障害が多いが,その障害が広範囲に及ぶ重症例では運動麻痺や自律神経障害を伴うことがある.抗ウイルス剤の早期投与は運動麻痺の予防的観点からも,有効であると思われる.

所属リンパ節に転移巣を認め,固定型を呈したスポロトリコーシスの1例

著者: 熊谷知子 ,   南光弘子 ,   上田周 ,   池田美智子 ,   井上泰 ,   河崎昌子

ページ範囲:P.1195 - P.1198

 臨床的に固定型を呈したが,所属リンパ節に転移巣を認めたスポロトリコーシスの72歳女性例を報告した.既往歴にコントロール不良の糖尿病,肺の非定型抗酸菌症あり.初診1年前より,外傷の覚えなく,左手首に出血,痂皮を繰り返す紅色局面が出現した.初診時,左手首尺骨側に14×19mm大の紅色局面を認め,左腋窩にはリンパ節腫脹を認めた.スポロトリキン反応陽性,病理組織像は定型像で,皮膚,リンパ節ともに培養にてSporothrix schenckiiが同定された.イトラコナゾール100mg/日を約40日間内服し,その後再燃は認めていない.皮疹部,リンパ節より得た株に対して,ミトコンドリアDNAの分析を実施し,それぞれSporothrix schenckiiタイプ5に一致するタイプが得られたため,リンパ節病変が手首の皮膚病変からの転移巣であることが裏付けられた.

高脂血症,糖尿病を伴った発疹性黄色腫

著者: 細見尚子 ,   中川浩一 ,   石井正光 ,   庄司哲雄

ページ範囲:P.1199 - P.1201

 35歳,男性.著明な高脂血症,糖尿病に伴い,四肢,体幹に弾性軟の黄色小丘疹が認められた.病理組織像にて真皮浅層から中層に泡沫細胞の巣状の浸潤を認め,臨床像と併せて,発疹性黄色腫と診断した.食事療法,経口血糖降下剤による糖尿病のコントロールによる血中脂質の低下に伴い,黄色腫は約2週間で速やかに平坦化した.血中LPLの低下を認め,ヘテロ接合体の家族性LPL欠損症に,糖尿病を合併したことによりⅤ型高脂血症を生じ,発疹性黄色腫が出現したと考えられた.

ノイロトロピン(R)が奏効した反射性交感神経性ジストロフィーの1例

著者: 敷地孝法 ,   滝脇弘嗣 ,   村尾和俊 ,   藤田真弓 ,   荒瀬誠治 ,   浦野芳夫 ,   石上剛史

ページ範囲:P.1202 - P.1204

 66歳,女性.左手の有痛性の発赤・腫脹に対してノイロトロピン(R)が奏効し,臨床経過より反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)と診断した.約1か月前に左手に強い疼痛と腫脹が出現し,近医で抗生剤の投与を受け一時は軽快したがすぐ再燃.当科受診時,左手全体に熱感・発赤を伴う腫脹あり.WBC7,100/μl,CRP0.12mg/dl.組織細菌培養は陰性.病理組織像も蜂窩織炎の所見なし.入院のうえ,再び抗生剤を点滴したが効果なし.ノイロトロピン(R)を4T/日から内服したところ1週間で効果が現れ,3週間で疼痛,腫脹とも消失した.RSDは四肢に生じる難治性の慢性疼痛症候群の一つで,初期には発赤・腫脹を伴うため蜂窩織炎との鑑別が難しい.早期の診断と治療が予後を大きく左右するため,まずはRSDを疑うことが重要と思われた.

臀部に生じた有茎性のsubepidermal calcified noduleの1例

著者: 宇宿一成

ページ範囲:P.1205 - P.1206

 18歳,男性.半年前より臀部に出現した圧痛を伴う有茎性の結節を主訴に2002年10月15日当科を受診した.切除標本の病理組織検査ではHE染色で好塩基性に染まる均質な塊状の物質の沈着を認めた.血清Ca,P値は正常で基礎疾患がないことから,subepidermal calcified noduleと診断した.臀部に有茎性に生じるsubepidermal calcified noduleは稀であると考え報告した.切除後再発を認めない.

左鼠径部に生じたアポクリン腺癌の1例

著者: 井上禎規 ,   宮本亨 ,   藤原一人 ,   奥山典秀 ,   葉狩良孝

ページ範囲:P.1207 - P.1209

 陰部,鼠径部はアポクリン腺の存在部位であるが,腋窩に比べるとアポクリン腺癌の報告例は少ない.今回,われわれは鼠径部のアポクリン腺癌を経験したので報告する.35歳,男性.左鼠径部の皮下腫瘤を2002年1月に切除され,腺癌との診断にて全身検索施行したが原発巣は認められず,その後放置されていた.4月に切除瘢痕部に腫瘤を認め,当科受診した.病理組織学的所見よりアポクリン腺癌と診断した.アポクリン腺癌は比較的悪性度が高い腫瘍とされており,本例でも腫瘤に気が付いてから1年半程度で両鼠径リンパ節転移を認めた.このため,腫瘍拡大切除術,両鼠径リンパ節郭清術が必要であった.後療法は本人の希望もあり行わなかったが,術後5か月後の現在まで再発転移を認めていない.

頰部に生じた皮膚原発extranodal marginal zone B-cell lymphoma of MALT typeの1例

著者: 古田未征 ,   藤井紀和 ,   桐山貴至 ,   尾本光祥 ,   上原正巳 ,   九嶋亮治

ページ範囲:P.1210 - P.1212

 皮膚原発のB細胞リンパ腫,新WHO分類でextranodal marginal zone B-cell lymphoma of MALT typeにあたると診断した1例を報告した.初診時,左頰部に径10mmの自覚症状のないドーム状の紅色結節を認めた.病理組織検査で真皮全層にびまん性のリンパ球の浸潤を認め,真皮下層に淡明な胞体をもつmonocytoid B細胞の増殖がみられた.遺伝子検査ではサザンブロット法により免疫グロブリンH鎖JH領域遺伝子の再構成を認めた.外科的切除後,電子線40Gyを照射し,再発はみられない.本症は悪性リンパ腫のなかでは予後が良好であるが,稀に転移をきたす例もあるため,十分な局所療法および注意深い経過観察が必要と考えられる.

治療

尋常性ざ瘡に対する30%グリコール酸(pH1.5)を用いたケミカルピーリングの有用性の検討

著者: 林伸和 ,   川島眞

ページ範囲:P.1213 - P.1216

 尋常性ざ瘡に対するケミカルピーリングの有効性と安全性を左右比較試験で検討した.20~39歳までの頰部および頸部に炎症性皮疹と非炎症性皮疹が併せて20個以上あり,左右差の少ない尋常性ざ瘡患者30例を対象とした.左頰部・左頸部のみに30%グリコール酸(pH1.5)を用いて2週間おきに最大6回のケミカルピーリングを行い,皮疹数および皮疹の減少率を左右で比較した.併用療法は制限しなかった.試験終了時のケミカルピーリング施術側の炎症性皮疹数,非炎症性皮疹数,総皮疹数の減少率は,いずれも非施術側と比較して統計学的有意差を認め,ケミカルピーリングの有効性を示していた.約2/3の患者に刺激感を認めたが,大半は5分以内に治まる程度のものであった.刺激感については,施術前に十分な説明を行うことで対応可能で,安全性についても問題ないと考えた.

薬剤

アトピー性皮膚炎におけるタクロリムス軟膏0.1%および0.03%の使用ガイダンス

著者: FK506軟膏研究会

ページ範囲:P.1217 - P.1234

はじめに

 タクロリムス(FK506)軟膏(製品名:プロトピック(R)軟膏)は薬理試験において皮膚での炎症反応,特に活性化T細胞が関与する遅延型アレルギー反応の抑制に有効であり,また即時型アレルギー反応に対する抑制効果も示唆されたことから,アトピー性皮膚炎を対象疾患として臨床開発が進められた.その結果,臨床試験においても優れた有効性が示され,本剤がアトピー性皮膚炎の治療において有用な薬剤であることが明らかになった1~9).本邦では成人に対して0.1%軟膏が1999年6月に承認となり,その後米国(2000年12月),カナダ(2001年6月)および欧州(2002年2月)において,成人に対して0.1%軟膏および0.03%軟膏,小児に対して0.03%軟膏が承認され,2003年7月時点で,世界20か国以上で承認または販売されている.本剤が使用されるまでは,アトピー性皮膚炎治療の主役はステロイド外用剤であったが,本剤の登場によりステロイド外用剤無効例や副作用により使用が困難な患者も皮疹のコントロールが容易となり,アトピー性皮膚炎治療の幅が広がった.本邦においては成人のアトピー性皮膚炎患者における0.1%軟膏の安全性・有効性が確立された後に,小児(2歳以上16歳未満)のアトピー性皮膚炎患者を対象とした臨床試験が実施され10,11),2003年7月に0.03%軟膏が承認された.これにより本邦における小児アトピー性皮膚炎治療に新たな進歩をもたらすことが期待される.

 タクロリムス軟膏0.1%が世界に先駆けて本邦で承認されてから,約4年が経過した.本邦での0.1%軟膏承認後も国内外で多くのデータが蓄積されており,さらに本邦では0.03%軟膏が小児に対し承認されたことから,「アトピー性皮膚炎におけるタクロリムス軟膏0.1%および0.03%使用ガイダンス」として,国内外の臨床試験および市販後の知見をもとに改訂版を作成した.本剤は適正に使用されれば極めて有力な治療手段になり得る薬剤であり,多くの患者のQOL向上をもたらす可能性を有する薬剤である.本剤の正しい使い方を理解し,患者にとって有用な薬剤となるよう是非参考にしていただきたい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?