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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科57巻7号

2003年06月発行

雑誌目次

カラーアトラス

Lichenoid keratosis

著者: 戸田淳 ,   梅本尚可 ,   出光俊郎

ページ範囲:P.556 - P.557

 患 者:59歳,女性

 初 診:2001年7月5日

 家族歴・既往歴:特記すべきことはない.

 現病歴:初診の1か月前より左耳前部に紅色皮疹が出現し,来院した.

原著

基底細胞腫と思われる病変と孤立性毛包上皮腫の併発例

著者: 木村俊次 ,   稲積豊子 ,   江守裕一

ページ範囲:P.558 - P.562

 46歳,家婦.約1年前から右鼻背に孤立性毛包上皮腫(TE)が3個の丘疹として,また右鼻翼から上口唇にかけて基底細胞腫(B)と思われる病変が局面状皮疹として生じた.局面状皮疹は臨床的に丘疹が融合したように見え,小黒点や小潰瘍を伴い,境界がやや不明瞭であった.組織学的には左右対称性を欠き,胞巣が大小不同で密に存在すること,間質との関係がTEとは異なること,また,より好酸性で篩状やシダの葉状構造を呈する胞巣と,より好塩基性で充実性の胞巣から成り,PAS陽性基底膜は前者のみ陽性,bcl-2染色では前者は胞巣辺縁の一層のみ,後者は胞巣全体がびまん性に陽性を示したこと,などから局面状皮疹はBであって,かつTEからの移行ないしTEへの分化を示すものと考えた.TEとB,さらにtrichoblastomaとの関連について若干の考察を加えた.

今月の症例

腹腔鏡刺入部に生じた悪性中皮腫の皮膚転移の1例

著者: 荘司千鶴 ,   大西一徳 ,   石川治

ページ範囲:P.563 - P.565

 61歳,男性.悪性腹膜中皮腫で内科入院中.1週間前より臍部直下の自覚症状を欠く結節に気付き,当科初診.2か月前に同部より腹腔鏡下腹膜生検が行われていた.臍部の結節の生検組織像は悪性中皮腫であった.単発性,腹腔鏡刺入部に一致していたことより,腹腔鏡刺入を契機として発生した悪性中皮腫の皮膚転移と考えた.

下顎に生じたpilonidal diseaseの2例

著者: 原藤玲 ,   畑康樹 ,   森本亜玲

ページ範囲:P.568 - P.571

 下顎に生じたpilonidal diseaseの2例を報告した.組織学的に1例では毛髪を入れた嚢腫構造を伴う肉芽腫,他方では毛髪を含む肉芽腫が認められた.顔面発生例は稀であり,調べえた限り本邦報告例は自験例を含めて4例であった.本邦で報告された腋窩発生例はすべて女性,顔面発生例はすべて男性であることから,日常的な剃毛,抜毛の影響が発症要因の一つとして考えられた.

症例報告

先天性IgA欠乏症に尋常性白斑を合併した1例

著者: 水島八重子 ,   森脇真一 ,   白井滋子 ,   古川福実

ページ範囲:P.572 - P.574

 先天性IgA欠乏症は原発性免疫不全症の中で抗体免疫不全を主徴とする病型の一つであり,自己免疫疾患やアレルギー疾患などの合併が知られている.一方,尋常性白斑は日常の外来診療でよく経験する色素異常の一つである.汎発性の場合,自己免疫の関与が示唆されている.今回われわれは,本邦では極めて稀な先天性IgA欠乏症に汎発型尋常性白斑を合併した1例を経験した.白斑の治療経過と血清IgG値変化に注目し,抗メラニン抗体との関連の可能性を考えた.

肝細胞癌に対する経皮的エタノール注入療法施行中,皮疹の増悪をみた尋常性乾癬の1例

著者: 後藤多佳子 ,   古江増隆 ,   中山樹一郎

ページ範囲:P.575 - P.577

 67歳,男性.1988年6月,頭部にそう痒を伴う鱗屑性紅色皮疹が出現し漸次全身に拡大してきた.当科受診し,尋常性乾癬と診断され,以後外来にて加療を受けていた.以前より,肝硬変,糖尿病,高血圧症の合併があり,経過中に多発性の肝細胞癌を発症した.1992年7月,当院内科にて肝細胞癌に対する経皮的エタノール注入療法を受けたところ,同療法施行中に乾癬の皮疹の急激な増悪がみられた.著明な肝機能障害と全身浮腫も伴い,準紅皮症状態になったが,エタノール注入を中止し,対症療法にて経過観察していたところ徐々に改善が得られた.

HCV陽性肝細胞癌患者にみられた表在播種型汗孔角化症

著者: 石原幸子 ,   長坂武 ,   木花光

ページ範囲:P.579 - P.581

 73歳,女性.4年前よりC型肝炎ウイルス(HCV)抗体陽性の肝硬変,4か月前に肝細胞癌(hepatocellular carcinoma:HCC)を発見され,加療されている.2年前より出現した自覚症状のない大豆大までの角化性環状褐色斑を非露光部を含むほぼ全身に多数認め,表在播種型汗孔角化症(disseminated superficial porokeratosis:DSP)と診断した.近年,HCV(+)患者,なかでもHCC発生患者においてDSPが認められたとの報告が相次いでいる.HCC患者例ではいずれも皮疹出現後にHCCが発見されており,HCV(+)患者でDSPが発症した場合は,HCCの発生を常に念頭に置くべきである.免疫抑制状態の患者に汗孔角化症が生じることが知られており,HCVによる肝炎,肝硬変さらにはHCCへの進行過程における何らかの免疫機構の異常がDSPの発症に関わる可能性が示唆される.

肺癌を合併したサルコイドーシスの1例

著者: 浅野聖子 ,   上田周 ,   石橋睦子 ,   石黒直子 ,   川島眞

ページ範囲:P.583 - P.586

 74歳,女性.右肺門部の腫瘤陰影の精査目的で当院内科に入院中に,顔面,膝蓋の紅斑と右上腕の皮下結節について当科を紹介された.病理組織学的所見では,類上皮細胞とリンパ球により構成される肉芽腫を認めた.ACE,リゾチームの上昇,非活動性ブドウ膜炎と,胸部X線像では両側肺門リンパ節の腫大と両肺野全体の淡い陰影に加え,右肺門部に約3×4cmの腫瘤陰影を認めた.縦隔鏡下リンパ節生検で類上皮細胞肉芽腫を認め,経気管支肺生検により右肺門部の腫瘤は腺癌であり,肺癌を合併したサルコイドーシスと診断した.プレドニゾロン30mg/日の内服および腫瘍切除術と化学療法によりサルコイドーシス,肺癌ともに寛解したが,骨および胸膜転移が確認された後にサルコイドーシスの皮疹が再燃した.肺癌が関連した反応としてサルコイドーシスが進展した可能性を推察した.

リンパ節病変を伴った肉芽腫性眼瞼炎の1例

著者: 山田瑞貴 ,   大原國章

ページ範囲:P.587 - P.589

 66歳,酒さのある男性.初診6か月前から右上眼瞼に自覚症状のない持続性腫脹が出現した.顔面神経麻痺や溝状舌はなく,胸部単純X線像・血中ACE・リゾチーム値に異常なし.右上眼瞼の病理組織像では類上皮細胞性肉芽腫があり,肉芽腫性眼瞼炎と診断した.また,顎下リンパ節にも同様の肉芽腫を認めた.

糖尿病治療中,皮膚筋炎に罹患し突発性難聴を合併した1例

著者: 新田悠紀子 ,   尾之内博規 ,   竹内正行 ,   宇野雅晴

ページ範囲:P.590 - P.593

 65歳 男性.1999年6月より,糖尿病のため,グリベンクラミドを内服し,HbA1c7%とコントロ-ル良好であった.2000年9月下旬に,発熱・筋力低下・肘膝の落屑性紅斑・筋原酵素の上昇をきたし,皮膚筋炎と診断した.10月18日より,プレドニゾロン(PSL)40mg/日内服し,3週後,臨床症状・筋原性酵素改善したため,PSL減量中,12月2日突発性難聴発症した.PSL60mg/日に増量後,突発性難聴は改善したが,糖尿病の増悪を認めた.自験例の突発性難聴は,皮膚筋炎よりは糖尿病に起因すると思われた.

LE profundusで発症し,8年後に爪囲爪甲の皮疹を生じた1例

著者: 永井弥生

ページ範囲:P.594 - P.597

 55歳,女性.両上腕,胸部,臀部の皮下硬結にて発症.病理組織学的に液状変性,真皮の著明なムチン沈着,脂肪織炎を認め,深在性エリテマトーデス(LEP)と診断.抗核抗体,リウマチ因子陽性.LEP軽快8年後に手指爪囲のみに紅斑を生じ,次第に爪甲の縦溝,肥厚,次いで萎縮脱落をきたした.後爪郭紅斑の生検組織像では液状変性,コロイド体を認め,LEPに伴う皮疹と考えられた.自験例はLEPに次いで爪囲爪甲のみに限局した皮疹を生じたintermediate LEと考えられ,LEに合併する爪病変についての文献的考察を加え報告した.

巨大な水疱を形成したerythema ab igneの1例

著者: 冨田郁代 ,   東晃 ,   前田宜延

ページ範囲:P.599 - P.602

 13歳,女児.1998年2月より不登校となり日中も櫓ごたつで寝ており,下腿に網目状の褐色斑を認めた.その後,褐色斑上に小水疱~小鶏卵大までの水疱が出現.組織学的には,表皮直下の水疱で,真皮上層に軽度のリンパ球浸潤があり,小血管の拡張と増生,メラニンの脱落を認めた.蛍光抗体間接法,直接法はともに陰性.erythema ab igneとしてステロイド外用とニコチン酸トコフェロール,カリジノゲナーゼ内服により,症状軽快した.表皮真皮境界部の接着因子の一つであるtype IV collagenは非水疱部で弱陽性,水疱部で陰性であり,水疱形成には温熱刺激による表皮真皮境界部のtype IV collagenの障害が関与すると考えられた.

Symmetrical lividities of the palm and solesにより診断に至ったBasedow病の1例

著者: 長阪晶子 ,   大森正幸 ,   島田眞路

ページ範囲:P.603 - P.605

 症例は15歳,女性.初診約1か月前より,手掌・足底に自覚症状の伴わない左右対称性に分布する紅斑が出現し,微熱と多汗を合併していた.臨床像および病理所見よりsymmetrical lividities of the palm and solesと診断した.多汗の原因を検索したところ,Basedow病であることが判明した.Basedow病の治療開始後,紅斑および多汗は著明に軽快した.

両側性の側頭部潰瘍を伴った巨細胞性血管炎の1例

著者: 木下順平 ,   義澤雄介 ,   新見やよい ,   山西貴仁 ,   加藤陽子 ,   五十嵐司 ,   東直行 ,   川名誠司

ページ範囲:P.606 - P.608

 77歳,女性.数年前より,右後頭部の頭痛が持続していた.初診2か月前より,右側頭部に強い疼痛を伴う腫脹発赤と,黄褐色の壊死組織が付着した潰瘍局面が出現.また,同時期に,左眼の急激な視力低下を認め,眼科にて網膜中心動脈閉塞症と診断された.1か月前より左側頭部にも同様の病変が出現.初診時右側頭部に70×40mm,左側頭部に130×60mmの潰瘍を認めた.血沈108mm/hr,CRP6.15mg/dl,抗核抗体160倍,血管造影では浅側頭動脈は描出されなかった.浅側頭動脈の生検にて,血管壁は肥厚し,多核巨細胞,内弾性板の断裂,多層化を認め,動脈内腔は狭窄していた.巨細胞性血管炎と診断し,プレドニゾロン30mg/日の内服開始し,血沈,CRPの低下,潰瘍の上皮化を認めた.

骨髄線維症に合併した多発性結節性動脈炎の1例

著者: 有川順子 ,   岡部省吾 ,   金子健彦 ,   賀来雅弘

ページ範囲:P.609 - P.611

 63歳,男性.骨髄線維症のため治療中,39℃台の発熱,全身倦怠感が出現し当院内科に入院した.両下腿に,浮腫と圧痛を伴う浸潤を触れる紅斑が出現し,病理組織学的に脂肪織直上の中動脈に壊死性血管炎を認め,蛍光抗体法にて血管壁にIgAの沈着を認めた.検査では腎機能障害,CRP上昇,MPO-ANCA弱陽性.多発性結節性動脈炎(PN)と診断し,ステロイドパルス療法を施行するも,進行性の腎機能障害と,間質性肺炎を併発し呼吸不全のため死亡した.MPO-ANCA弱陽性や,急激な臨床経過は,PNというよりはむしろ顕微鏡的多発血管炎(MPA)を示唆しうる所見であり,診断に苦慮した.PNのなかにはMPAと重複する病態があると思われた.

インターフェロンβによる脂肪織炎の1例

著者: 吹譯紀子 ,   村上義之 ,   古江増隆 ,   山本明史

ページ範囲:P.612 - P.614

 62歳,女性.2001年2月より多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)に対し遺伝子組換え型インターフェロンβ(IFN-β)隔日皮下注を開始された.同年4月頃より皮下注部位である両側腹部,両大腿前面に浸潤を伴う紅斑が出現してきた.また左側腹部には板状の硬結を伴った.病理組織学的には真皮深層の血管の血栓形成と皮下脂肪織の隔壁の線維化とリンパ球を中心とした炎症細胞浸潤を認めた.IFN-βによる薬剤性脂肪織炎と診断した.

動静脈奇形に合併したangiolymphoid hyperplasia with eosinophiliaの1例―本邦報告例121例の統計学的考察を含めて

著者: 木村育子 ,   宍倉めぐみ ,   樹神元博 ,   海老原全 ,   長谷川時生

ページ範囲:P.615 - P.617

 63歳,男性.頭頂部から右側頭部にかけて生じたangiolymphoid hyperplasia with eosinophiliaの1例を報告した.約10年前に頭部に米粒大の結節が出現し徐々に増大,ほかに数個の結節が新生してきたため当科を受診した.初診時,頭頂部から右側頭部にかけて直径約0.5~3.5cmまでの結節を数個認めた.表在リンパ節は触知しなかった.臨床検査所見では好酸球の増多はなく,またIgEは1,104IU/mlと高値であった.病理組織像では,真皮浅層から深層にかけて島嶼状に血管周囲にリンパ球,好酸球の浸潤を認め,血管内皮細胞は内腔に突出し数珠状に連なっていた.真皮深層にはリンパ濾胞様構造を認めた.右外頚動脈造影で浅側頭動脈領域に動静脈奇形を認めた.本疾患は本邦では1974年以降121例の報告がある.自験例を含め若干の統計学的考察および本疾患と動静脈奇形の合併につき検討した.

外傷を契機に巨大血腫を形成したびまん性神経線維腫の1例

著者: 三宅亜矢子 ,   鈴木布衣子 ,   木花いづみ ,   藤倉雄二

ページ範囲:P.618 - P.620

 63歳,男性.von Recklinghausen病に合併したびまん性神経線維腫内に外傷をきっかけに巨大血腫を生じた症例を報告した.外傷後にもともと存在した腰部腫瘤の異常な腫脹が生じ,意識レベルの低下がみられたため当院へ搬送.CTで腫瘍内のびまん性出血が疑われ,急速に貧血が進行したことより血管造影を行い栄養血管の塞栓術を施行.その後全身状態の改善を待ってから血腫除去術を行った.術中および術後の出血対策についても若干の考察を加えた.

表皮嚢腫構造を伴った石灰化上皮腫の1例

著者: 神田憲子 ,   石黒直子 ,   川島眞

ページ範囲:P.621 - P.623

 12歳,男児の左頚部に生じた石灰化上皮腫の1例を報告した.左頚部に9×7mm大の中央に面皰様の黒点を有する弾性硬の皮下結節を認めた.病理組織学的には腫瘍塊は真皮中層から下層にかけて認められ,shadow cell, basophilic cell, transitional cellのほかに多数の異物型巨細胞を認め,石灰化を伴っていた.嚢腫構造を呈している部分があり,その壁のほとんどはbasophilic cellで構成されていたが,一部には表皮嚢腫の壁構造を認めた.

高カルシウム血症を呈した頬部扁平上皮癌の1例

著者: 澤田由佳 ,   山本隆之 ,   宮島進 ,   岡田奈津子

ページ範囲:P.624 - P.627

 65歳,男性.1989年,下口唇にびらんが出現し徐々に腫瘤を形成した.1992年,近医で扁平上皮癌と診断され,切除術および化学療法を施行されたが,1999年,左頬部に再び腫瘤が出現した.初診時,左頬部に中央に潰瘍を形成する径6cm大の表面不整なドーム状の腫瘤を認めた.腫瘍は下顎骨の骨融解を伴い,中咽頭まで達していた.血清補正カルシウム値は初診時13.1mg/dlと高値であった.副甲状腺ホルモン関連ペプチド(parathyroid hormone related peptide)の上昇を認め,悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症と考えた.

膝窩リンパ節郭清を行った悪性黒色腫の2例

著者: 町田秀樹 ,   山崎直也 ,   野呂佐知子 ,   山本明史

ページ範囲:P.628 - P.630

 足底原発悪性黒色腫の膝窩リンパ節転移症例の2例を報告した.膝窩リンパ節転移は,原発巣から直接リンパ行性に中枢に向かって転移した場合と,主に鼠径リンパ節郭清後にリンパ流が変化し逆行性に転移した場合が考えられる.自験例は2例とも,鼠径リンパ節郭清後に膝窩リンパ節転移が生じた.膝窩リンパ節転移の頻度は統計的に非常に稀であるが,鼠径リンパ節郭清を行った症例は,逆行性に転移する可能性があるので,定期的な観察が必要である.

指趾爪囲の腫脹で発症した皮膚型成人T細胞リンパ腫・白血病の1例

著者: 古田未征 ,   青木良憲 ,   藤井紀和 ,   桐山桂子 ,   桐山貴至 ,   尾本光祥 ,   杉浦久嗣 ,   上原正巳 ,   内山賢美 ,   安藤朗 ,   邵啓全 ,   仲口孝浩

ページ範囲:P.631 - P.634

 57歳,女性.2000年4月頃より全指趾の爪囲に腫脹が出現.ステロイドを外用したが軽快しないため,同年5月当科を受診.全指趾爪囲に腫脹,足底に水疱を伴う紅斑・腫脹,四肢・体幹に褐色丘疹を認めた.抗HTLV-1抗体陽性,病理検査で真皮全層に異型リンパ球の増殖を認めた.皮膚組織から抽出したDNAにHTLV-1プロウイルスのモノクローナルな取り込みを認めた.骨髄像で異常細胞を認めず.CT,Gaシンチグラフィでは異常所見なし.以上より本症例を皮膚型成人T細胞リンパ腫と診断した.全身電子線30Gy照射,IFN-γ投与により著明に軽快した.5か月後,全身に紅色丘疹が出現し,全身の表在リンパ節の腫脹を認めた.末梢血の白血球数増加と異型リンパ球が出現し急性転化と診断した.RE-PUVA療法,ステロイド,IFN-γ,VP-16の投与を行い皮疹,血液所見の改善を認めたが,肺アスペルギルス症で永眠された.

続発性皮膚アミロイドーシスを合併した菌状息肉症の1例

著者: 雨宮一哲 ,   河井一浩 ,   伊藤薫 ,   伊藤雅章

ページ範囲:P.635 - P.637

 64歳,女性.1989年頃より,下肢と体幹に軽度のそう痒を伴う紅斑・局面が出現し,1991年,皮膚生検で菌状息肉症と診断.その後,無治療で放置していたところ,皮疹は拡大し,1999年の再生検組織で表皮真皮境界部から真皮上層にかけてアミロイドの沈着が認められ,沈着アミロイドは抗ケラチン抗体陽性であった.菌状息肉症に続発した皮膚アミロイドーシスと診断した.

治療

帯状疱疹に伴う神経痛に対しマレイン酸フルボキサミンが奏効した1例

著者: 林昌浩 ,   石澤俊幸 ,   岡田真行

ページ範囲:P.638 - P.640

 76歳,男性.右三叉神経第一枝領域の帯状疱疹にて入院加療した.アシクロビル点滴により皮疹は軽快し退院したものの,疼痛コントロール不良のため再入院した.再入院後,種々の内服薬・治療を試みたが無効であった.リン酸コデインにより疼痛は軽減したがコントロール不十分であり,マレイン酸フルボキサミン(ルボックス(R))内服を開始したところ,数日後から疼痛が著明に改善した.近年マレイン酸フルボキサミンは麻酔科,整形外科領域の慢性疼痛に対しても有効性が報告されているが,皮膚科領域における使用経験の報告はほとんどない.従来の抗うつ剤に比べて抗コリン作用など副作用が少ないため高齢者にも使いやすく,帯状疱疹後神経痛(PHN)や帯状疱疹に伴う神経痛に対しても考慮されるべき薬剤の一つと考えた.

臨床研究

有棘細胞癌および外毛根鞘癌における核DNA量の検討

著者: 濱直人 ,   大塚勤 ,   山崎雙次

ページ範囲:P.641 - P.644

 有棘細胞癌(SCC)8例,外毛根鞘癌2例の凍結標本から作成した試料を用いて,flow cytometry(FCM)による核DNA量の検討を行った.SCCは8例中6例(75%)がaneuploidyでgrade1とgrade2の症例にもかかわらず高率に検出された.外毛根鞘癌は2例ともaneuploidyであった.FCMは組織学的に良性・悪性の判断が困難な症例では,鑑別の一助となりうる検査法の一つと考えられた.

連載

米国皮膚科医への道(3)

著者: 藤田真由美

ページ範囲:P.648 - P.649

 USMLE(米国医師国家試験)に合格して喜んでいたのも束の間,アメリカで臨床研修に応募するにはアメリカ方式での実地医療の経験が2~6か月必要であることがわかった.これはエクスターンシップ(外国人の実習一般)やサブインターンシップ(特に一般病棟での実践の場合をいう)と呼ばれ,無給であるがアメリカ人医学生のように授業料を払うこともない.幸いデンバーのVA(Veterans Administration:退役軍人)病院で1996年12月から1997年5月まで6か月間実習をさせてもらうことになった.初めの4か月は専門科でのエクスターンシップで最後の2か月は一般病棟でのサブインターンシップである.アメリカでは,入院患者はまず一般病棟に入院し,病名に応じて専門科に相談される.例えば,天疱瘡の患者は内科に入院し内科医が第一線で患者の治療をするのに対し,皮膚科医は相談役として後ろに控えて監督する.外国人医師は,まず専門科でアメリカ医学に慣れた後で,一般病棟で第一線の戦力として実習するのが常套である.

 いよいよアメリカでの実習初日がやってきた.まずは腎臓内科.専門科のチームはアテンディング(指導医)1人,フェロー1人,他科のレジデント1~2人,医学生とエクスターン2~3人とで構成され,毎月メンバーが交代する.言うまでもなくエクスターンは一番下っ端である.久し振りの白衣を着て腎臓内科の部屋に行くと,チームの人たちが私を見た途端に一瞬ハッとするのがわかった.後日わかったことだが,これは私の着ていた日本の白衣のせいであった.日本では時折外科医などが腰までの短い白衣を着ているものの,一般的には医学生も医師も膝までの長い白衣を着ている.ところがアメリカでは白衣の長さと医師の身分は比例するらしく,学生やエクスターンは短い白衣,正式な医師になって初めて長い丈の白衣が許される.では,指導医などは花嫁衣裳のように裾の長ーい白衣を引きずるのかというとそうでもなく,逆に白衣を着ないでスーツということが多い.このことを聞いてすぐに丈の短い白衣を買いに走ったのは言うまでもない.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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