臨床皮膚科57巻8号

2003年07月発行

症例報告

上口唇に生じたmucoepidermoid carcinomaの1例

著者： 鈴木布衣子¹ 木花いづみ¹ 栗原誠一²

所属機関： ¹平塚市民病院 ²湘南皮膚科

ページ範囲：P.741 - P.743

　32歳，男性．5年前より出現し，徐々に増大傾向にある上口唇の結節を主訴に来院した．初診時，赤色口唇に径5mm，白色で表面凹凸を呈し軽度隆起する結節を認めた．組織学的に腫瘍は粘液産生細胞，嚢腫様構造に富み，核異型は軽度で，well differentiated typeのmucoepidermoid carcinomaと診断した．本腫瘍は唾液腺由来の腫瘍で，多くは耳下腺，顎下腺，口蓋にみられる．口唇発生例は比較的稀であるが，若年者の口唇部の腫瘍をみた場合，本症も鑑別診断に入れるべきと考えた．