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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科57巻9号

2003年08月発行

雑誌目次

カラーアトラス

両手背のannular elastolytic giant cell granuloma

著者: 村野啓明 ,   増澤真実子 ,   古谷野妙子

ページ範囲:P.758 - P.759

 患 者:62歳,男性

 現病歴:約5年前から左手背に自覚症状のない紅色の発疹が出現し,環状に拡大.その後,右手背にも同様の発疹が出現した.

 現 症:両手背にほぼ環状の堤防状に隆起する暗紅色斑を認め,その内側には軽度の色素沈着を伴う(図1a,b).

原著

Touton型巨細胞の出現する皮膚疾患

著者: 高井利浩 ,   木村鉄宣 ,   市橋正光

ページ範囲:P.761 - P.765

 札幌皮膚病理研究所で病理診断した皮膚疾患のうち,Touton型巨細胞が存在する疾患を検討した.Touton型巨細胞は黄色肉芽腫(xanthogranuloma),黄色腫(xanthoma)など9種類の疾患で確認された.Touton型巨細胞のある各種疾患を供覧するとともに,Touton型巨細胞についての教科書的,文献的な記載について考察し,その本態と病理診断上の意義を検討した.

今月の症例

単純ヘルペスウイルス感染が原因と考えられた特異な多型滲出性紅斑―初めStevens-Johnson 症候群を疑わせる汎発性病変を認めた1例

著者: 大谷朋之 ,   国井隆英 ,   落合由理子 ,   小澤宏明 ,   照井正 ,   田上八朗

ページ範囲:P.766 - P.768

 52歳,女性.初診の6日前より悪寒,発熱,排尿時痛が出現し市販の薬剤4種を内服したところ,腹部に皮疹が出現し徐々に拡大してきた.初診時,顔面,体幹,四肢に多数の浮腫性の紅斑(虹彩状紅斑)があり,眼球,眼瞼結膜の充血と,口唇,口腔内,外陰部のびらんがみられた.39℃台の高熱を認め,眼,口唇などの粘膜症状が目立ったことや数種類の薬剤を内服していた経過からStevens-Johnson 症候群を考えた.即日入院のうえ,ステロイド内服を開始したところ,症状は徐々に軽快した.上記市販薬剤のpatch test,drug-induced lymphocyte stimulation test(DLST)はすべて陰性であった.一方,初診の2週間後にHSV Iの抗体価の上昇を認めたため,本症例は単純ヘルペスウイルス感染が原因の多型滲出性紅斑であったと考えた.

Localized mycosis fungoidesの1例

著者: 福原耕作 ,   庄野佳孝 ,   大城由美 ,   永井隆

ページ範囲:P.769 - P.772

 73歳,男性.約15年前より背部中央に紅斑が出現し,徐々に増大隆起,クルミ大までの紅色局面が集簇した不整形局面となる.組織学的にはCD3,CD4陽性の異型リンパ球を主体とする真皮上層帯状浸潤,表皮内浸潤,Pautrier微小膿瘍を認め,菌状息肉症の扁平浸潤期に一致する所見であった.血液検査に異常なく,抗HTLV-1抗体は陰性.病変部皮膚DNAの遺伝子解析ではT細胞受容体β鎖,免疫グロブリンH鎖ともに再構成を認めなかった.長期間局所に限局するリンパ球増殖性疾患としては,異型単核球の表皮内pagetoid様増殖を特徴とするWoringer-Kolopp病が知られているが,自験例はpagetoid様所見を認めなかったため,菌状息肉症の稀な亜型であるlocalized mycosis fungoidesと考えた.

症例報告

イソジン®液中のポリビニルピロリドンによるⅠ型アレルギーの1例

著者: 鄭柄貴 ,   松尾正文 ,   芦田雅士 ,   大橋明子 ,   市橋正光

ページ範囲:P.773 - P.775

 19歳,女性.歯科にて抜歯後ショック症状があった.抜歯時に消毒に用いたイソジンのスクラッチテストが陽性であり,ポリビニルピロリドン(PVP)のスクラッチテストも100倍希釈まで陽性であった.数名の健常人では陰性であり,PVPによるⅠ型アレルギーと診断した.イソジン®の有効成分であるポビドンヨードはヨウ素とPVP より構成されている.PVPは安定,可溶,粘稠などの目的のために多くの製品に含まれる.とりわけ眼,口腔内など吸収が良く症状が誘発されやすい部位に用いる医薬品が多いので注意が必要である.

蜂窩織炎を併発し急速に多発した尋常性膿瘡の1例

著者: 山本隆之 ,   森田博子 ,   梅田二郎 ,   調裕次

ページ範囲:P.778 - P.780

 78歳,男性.数年前より皮膚そう痒症で近医に通院していた.1週間前より四肢に膿疱が出現.その後,急速に痂皮の固着した辺縁鋭利な潰瘍が多発し,右下腿の発赤,腫脹を伴い当科受診.細菌検査では潰瘍底からmethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)が検出され,病理検査では表皮から真皮にかけて密な炎症細胞浸潤がみられ,表皮真皮貫通膿疱の状態で壊死塊内には菌塊を多数認めた.尋常性膿瘡と蜂窩織炎の合併と診断し,塩酸バンコマイシン全身投与にて約1か月後に瘢痕治癒した.発症に不衛生な生活環境と掻破行為が関与しており,今後高齢者が増えるにしたがい同様の症例がみられると思われ報告した.

ムチランス型の関節を呈した乾癬性関節炎の1例

著者: 谷垣武彦

ページ範囲:P.781 - P.783

 30歳,男性.19歳時に乾癬を発症し,数か月後,手指小関節に疼痛と腫脹が出現し,出没反復を繰り返し,5~6か月の経過の後に手指の機能障害が生じ,日常生活が困難になった.その単純X線写真では,手指の関節骨の破壊,脱臼のほか,中節骨の末梢への骨吸収がみられ,乾癬性関節炎ムチランス型のX線像であった.手指は太く短縮化し,皮膚はたるみ,柔らかくゴム様外観を呈していた.一般に,乾癬性関節炎の予後は良好といわれているが,この症例のように若くして急激な経過でムチランス型関節炎もあるので,ここに報告した.

関節リウマチ患者に生じ,エトレチナートが著効した角層下膿疱症の1例

著者: 斎藤昌孝 ,   順毛直弥 ,   早川和人 ,   塩原哲夫 ,   中林公正

ページ範囲:P.786 - P.788

 66歳,女性.関節リウマチのため内科外来通院中に,軀幹を中心にそう痒性皮疹が出現し,臨床および病理所見,さらに蛍光抗体直接法(DIF)の結果から角層下膿疱症(SPD)と診断した.当初はDDS内服が有効と思われたが,6週間後に全身性に再燃したため,エトレチナートに変更したところ著効した.その後約半年経過した現在も膿疱の新生はほとんどなく寛解状態が得られている.SPDの診断および治療についての考察を行った.

抗うつ剤投与中に生じた好酸球性膿疱性毛囊炎

著者: 宇宿一成

ページ範囲:P.789 - P.791

 48歳,男性.うつ病にて治療中に顔面に遠心性に拡大するそう痒感を伴う環状紅斑を生じた.臨床像,病理組織学的所見から好酸球性膿疱性毛嚢炎と診断した.うつ病治療薬によって誘発された可能性を考え検査したが,パッチテスト,プリックテストともに陰性だったが,パッチテスト後,皮疹の著明な増悪をみた.インドメタシン内服が奏効した.

電気メスの関与が考えられた術後の臀部皮膚障害の2例

著者: 矢部朋子 ,   新見やよい ,   川名誠司

ページ範囲:P.792 - P.794

 22歳,男性と21歳,女性.整形外科にて膝前十字じん靭帯再建術を受けた.翌日から臀部に圧痛を伴う紅斑を認めた.術後の臀部皮膚障害は産婦人科の手術後に多くみられるが、整形外科手術後の症例は稀である.発症機序については,褥瘡とする説や血流不全説,接触皮膚炎説,電気メス説などがある.自験例を検討した結果,電気メスの分流による皮膚障害と推測し,発症を予防するための対策を考えた.

冠動脈造影・冠動脈バイパス術後に発症したコレステロール結晶塞栓症の1例

著者: 栗原みどり ,   石川里子 ,   大塚俊 ,   大塚勤 ,   山崎雙次

ページ範囲:P.795 - P.797

 72歳,男性.高血圧症,糖尿病あり.狭心症の診断で,冠動脈造影,冠動脈バイパス術を受けた.その後,両足趾が紫紅色となり,冷感,疼痛も伴うようになった.両足背動脈は触知した.また,腎機能障害も認められた.組織学的所見で真皮下層の小血管腔に閉塞像と紡錘形の空隙を認めた.コレステロール結晶塞栓症と診断しワーファリン(R)投与を中止し,高圧酸素療法,右第4趾切断術,PGE1製剤にて加療し軽快した.

両側肩甲部に生じた硬化性萎縮性苔癬の1例

著者: 清水智子 ,   種瀬啓士 ,   新関寛徳 ,   渡辺知雄 ,   山崎雄一郎

ページ範囲:P.798 - P.800

 71歳,女性.初診の1年前より両側肩甲部に対称性に自覚症状を欠く硬化性局面が多発し,初診時には表面が軽度角化し,黒色面皰様小丘疹を伴い一部地図状に融合していた.外陰部には皮疹を認めなかった.病理組織学的には表皮の萎縮,過角化,真皮上層部に浮腫および膠原線維の膨化・均質化を認め,硬化性萎縮苔癬(LSA)と診断した.本邦報告287例中陰部外病変は147例あり,体幹部に多く,陰部病変に比べて発症年齢がやや若年で,男女差が比較的少なく,発症から初診までの期間はやや短かった.特に露出部のものでその傾向が強かった.自験例ではステロイド剤外用が有効であった.

Balanitis xerotica obliteransの1例

著者: 戸田素子 ,   小林昌和 ,   小林誠一郎 ,   谷川瑛子 ,   田中勝 ,   佐藤裕之

ページ範囲:P.801 - P.803

 既往に糖尿病のある男性患者に生じた,balanitis xerotica obliterans(BXO)の1例を報告した.包茎を呈し,有棘細胞癌の合併も否定できなかったため,包皮の環状切除術を要した.BXOは硬化性萎縮性苔癬(LSA)の一型に分類されるが,悪性化した報告例もあるため,注意が必要である.BXOの原因,治療,特に手術の適応について考察した.

心肺病変を伴った局面型皮膚サルコイドの1例

著者: 伊藤友章 ,   加藤雪彦 ,   大井綱郎 ,   古賀道之 ,   原武史 ,   山科章

ページ範囲:P.804 - P.806

 70歳,女性.約10年前より前額部に自覚症状を欠く皮疹出現し近医受診.皮膚サルコイドの診断にて経過観察となるが,その後皮疹は拡大し前額部から頭頂部にかけて局面を形成,鱗屑痂皮を伴うようになった.2001年1月より,労作時息切れ出現.胸部X線にて心肥大,両肺野のびまん性陰影,心電図にて伝導障害,心エコーにて壁運動の低下を認め,当院第2内科精査入院となる.皮膚生検,心内膜筋生検にて類上皮細胞肉芽腫を認め,心サルコイドに対してはペースメーカーを挿入,皮膚病変に対しては,経過観察中である.局面型サルコイドは顔面に好発し,心病変の合併率が高いと報告されており,肺病変の合併も多い.これらについて若干の考察を加えた.

四肢に板状硬結を呈した皮下型皮膚サルコイドの1例

著者: 石橋正史 ,   杉俊之

ページ範囲:P.808 - P.810

 59歳,女性.3か月前より,両下肢では,大腿下部から下腿下部の伸側にかけて,また両前腕伸側に広範に板状硬結が出現した.組織像で非乾酪性類上皮細胞肉芽腫がみられ,血清ACEの軽度上昇,胸部X線,CTにて両側肺門リンパ節腫脹が認められた.心病変,眼病変なし.板状硬結を呈した皮下型皮膚サルコイドの特徴について若干の考察を加えた.

遺伝性対側性色素異常症の1例

著者: 星野優子 ,   森脇真一 ,   海野公成 ,   伊藤泰介

ページ範囲:P.811 - P.813

 6歳,男児.母親,祖父に同症がある.乳児期より四肢末端に網目状の色素沈着,色素脱失が出現した.日に当たると赤くなる場合が多く,雀卵斑様皮疹も出現するようになった.足背の色素沈着部の病理組織像では,表皮基底層にメラニンが増加していた.患者皮膚由来の線維芽細胞における紫外線照射後の不定期DNA合成能(unscheduled DNA synthesis:UDS)を測定したところ正常であり,本患者を遺伝性対側性色素異常症(dyschromatosis symmetrica hereditaria:DSH)と診断した.DSHと色素性乾皮症(xeroderma pigmentosum:XP)の軽症型との鑑別にUDSの測定が重要であると思われた.

手掌,足底に限局したDarier病の1例

著者: 鈴木大介 ,   荒田次郎

ページ範囲:P.814 - P.816

 41歳,女性の手掌,足底に限局したDarier病を経験した.患者は40歳時,手掌にそう痒が出現し,一時軽快するもその後増悪した.初診時には,両手掌,両足底にのみ角質増殖を認め,その後1年間,ほかの部位への病変の広がりを認めなかった.組織像では,角質増殖,不全角化,基底層上部の裂隙,棘融解,異常角化細胞を認めた.以上の臨床的,組織学的所見から,本症例を手掌,足底に限局したDarier病と診断した.病変が肢端に初発することもあるが,次第に脂漏部位に広がっていくことが多い.しかし,病変が肢端にとどまることも稀ではあるが報告されている.本症例はエトレチネートの内服にて加療し,改善を認めた.

増殖性外毛根鞘腫様変化を伴った脂漏性角化症の1例

著者: 池田秀幸 ,   大塚俊 ,   山崎雙次

ページ範囲:P.817 - P.819

 72歳,男性.1年前頃より,左肩甲部に1.3×1cmの境界明瞭な黒褐色隆起性腫瘤に気付き,2001年11月28日当科初診.脂漏性角化症の臨床診断にて局所麻酔下にて単純切除した.病理所見より増殖性外毛根鞘腫様変化を伴った脂漏性角化症と考えられた.脂漏性角化症の悪性化の要因として,染色体異常,機械的刺激,紫外線,ヒトパピローマウイルス,遊離脂肪酸の増加などが報告されている.また脂漏性角化症の悪性化の頻度と,一般日系人の皮膚悪性腫瘍の発生頻度の比較では明らかな差がなく,脂漏性角化症が特に悪性化しやすいことはなかった.

再発した増殖性外毛根鞘囊腫の1例

著者: 中井章淳 ,   石神光雄 ,   沖守生 ,   中安清

ページ範囲:P.820 - P.822

 79歳,女性.1999年に近医にて前頭部の結節を切除した既往がある.その病理組織は増殖性外毛根鞘囊腫であった.2002年2月13日,前頭部の赤色結節を主訴に当科を受診した.初診時,前頭部に直径22×22×15mmの弾性硬な赤色結節がみられた.頚部リンパ節は触知せず,頭部CTでは,頭蓋骨に腫瘍の浸潤はみられなかった.全麻下に腫瘍より10mm離し,帽状腱膜下にて腫瘍を切除した.欠損部は左鼠径部より全層植皮術を施行した.組織は増殖性外毛根鞘囊腫であった.発生部位と病理組織より再発と考えた.術後3か月の現在,再発を認めない.

陰囊に生じた基底細胞癌の4例

著者: 堀和彦 ,   大森一範 ,   新村眞人

ページ範囲:P.824 - P.826

 症例1:59歳,男性.数か月前より増大してきた陰囊の黒色腫瘤.組織は腺様型基底細胞癌(basal cell carcinoma:BCC).症例2:75歳,男性.数年前より陰囊に自覚症状のない黒色局面が出現,徐々に増大.組織は表在型BCC.症例3:87歳,男性.10年前より存在する陰囊の黒色局面,徐々に増大.組織は充実型BCC.症例4:69歳,男性.2か月前より気付いた陰囊の黒色結節.組織は表在型BCCであった.BCCは顔面に多く,外陰部には比較的稀とされている.当科で1990年1月~2001年12月の間に経験したBCC127例と,過去に報告された各施設の統計をまとめ,考察を加えた.

Cytophagic histiocytic panniculitisの1例―subcutaneous panniculitis-like T-cell lymphomaとの関係について

著者: 樹神元博 ,   横山小名美 ,   佐藤良博 ,   伊崎誠一 ,   関口直哉 ,   亀田秀人 ,   得平道英 ,   竹内勤 ,   平井昭男

ページ範囲:P.827 - P.830

 32歳,男性.15歳時よりcytophagic histiocytic panniculitisの診断で,近医で治療されていた.2001年8月より症状が増悪し,当院を受診した.初診時,拇指頭大から鶏卵大までの多数の皮下結節を全身に認め,発熱を伴っていた.病理組織像はリンパ球と組織球の浸潤する脂肪織炎を認め,リンパ球は軽度の核異型を示し,組織球の一部は赤血球,核破片を貪食したbean-bag cellの像を示した.免疫染色の結果,浸潤細胞はCD8陽性リンパ球が優位で,細胞傷害性顆粒蛋白(TIA-1およびgranzyme-B)が陽性であった.プレドニゾロンとシクロスポリンの併用で経過良好であった.経過中,可溶性IL-2レセプターが高値を示した.Subcutaneous panniculitis-like T-cell lymphomaとの関係を考慮するベき症例と考えた.

インターフェロンγによる長期治療を行った成人T細胞リンパ腫の1例

著者: 和田直子 ,   吉永英司 ,   三浦義則 ,   大西善博 ,   多島新吾

ページ範囲:P.831 - P.833

 64歳,男性.手指に小水疱を伴う腫脹,亀頭部に潰瘍が出現した.検査所見から成人T細胞リンパ腫,くすぶり型と診断した.インターフェロンγ静注療法が著効し,約2年半,同療法により皮疹のコントロールを得たが,徐々に末梢血異型リンパ球は増加,最終的に腫瘍細胞の多臓器への浸潤をきたし,カリニ肺炎により死亡した.インターフェロンγ療法は皮疹には有効であったが,全身的な予後に関しては限界があることを感じた.

関節症および上強膜炎・虹彩炎を伴った急性型成人T細胞性白血病の1例

著者: 土屋知子 ,   岸本恵美 ,   滝沢三久 ,   轟葉子 ,   江藤隆史 ,   白戸りさ

ページ範囲:P.834 - P.837

 53歳,男性.2000年9月より関節痛,上強膜炎・虹彩炎,11月より両手掌の紅斑,右大腿の紅褐色丘疹が出現.末梢血異型リンパ球出現とHTLV-1抗体陽性あり.皮膚組織学的所見で真皮血管や付属器周囲性に核が腫大し異型性の強いリンパ球が多数浸潤し,免疫染色でCD3,CD4,CD25陽性であった.サザンブロット法でHTLV-1 proviral DNAのモノクローナルな取り込みを認め,ATLと診断.HTLV-1に関連して関節症,眼症状を起こすことも知られており,本症例における関節症,上強膜炎・虹彩炎も成人T細胞性白血病による症状と考えた.多彩な症状を呈し皮疹より急性型成人T細胞性白血病と診断しえた症例を,若干の文献的考察を加えて報告する.

治療

悪性黒色腫肝転移に対し持続肝動注による化学療法を試みた1例

著者: 吉田雄一 ,   占部和敬 ,   古賀哲也 ,   古江増隆 ,   定永倫明 ,   森正樹

ページ範囲:P.838 - P.841

 30歳,女性.2000年4月頃より軀幹に自覚症状を伴わない皮下結節が多数出現.入院後の全身精査にて肝右葉に径約9cmの巨大な転移性腫瘤を認めた.5-S-CDは885nmol/lと異常高値であった.転移性悪性黒色腫(原発不明)の診断にて肝動脈にリザーバーカテーテルを留置しCDDPによる持続肝動注およびDTIC点滴静注の併用化学療法に加え,IFN-βの局所投与による治療を4クール試みた.治療中一時5-S-CDの低下をみたが徐々に全身状態悪化し,初診の7か月後に突然の脳出血にて死亡した.

連載

米国皮膚科医への道(5)

著者: 藤田真由美

ページ範囲:P.842 - P.843

 グリーンカード(Permanent Resident Card)

 アメリカで滞在するにはビザが必要である.ビザには,F-1(学生)ビザ,J-1(交換滞在者)ビザ,H-1(労働)ビザ,グリーンカード(永住者用ビザ)などがある.J-1ビザは,研究や臨床留学の際に研修期間中に限って発行され,終了後は母国に帰ることを前提とする.H-1ビザは雇用に伴うので,雇用先が変わるごとに書き換えねばならず,解雇されると当然ビザは失効する.グリーンカードの場合は,10年ごとに更新するものの,アメリカ市民とほぼ同等の扱いを受けることができる.市民との違いは,選挙権がないこと,大統領になれないこと,裁判の陪審員になれないことなどである.しかし最近は,大学の授業料や年金などの待遇に差をつけてはどうかという意見も出てきているが.

 アメリカで頑張ろうと決心した1996年からグリーンカード取得のための準備をしてきた.書類審査なども無事終わり,1998年3月12日(木)に移民局で最終面接を受けるだけとなった.ここまでくれば,一安心.医学研修のマッチング(アメリカ特有の全国一斉医局入局制度.次号でこれについて詳細に記す)の発表も3月中旬に控え,今年は準備万全だ.移民局での面接直前の日曜日の夜,面接に持参する書類を確認してみた.身分証明書,現在のビザ,パスポート,申請書類,その他.

 「よし,すべて手元にある.」

 ビールを飲みながらパスポートを何気なく開いてみて血の気が引いていった.何とパスポートの有効期限が先月で切れていたのである…….酔いが一度に醒めていく.恐る恐る移民局からの手紙を確認すると,有効期限内のパスポート持参と明記してある.面接は木曜.今日は日曜だから後3日しかない.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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