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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科58巻1号

2004年01月発行

雑誌目次

カラーアトラス

Hidroacanthoma simplex

著者: 黒木茂 ,   加藤泰三 ,   照井正 ,   田上八朗 ,   笠井達也

ページ範囲:P.6 - P.7

患 者:68歳,女性

 当科初診:2001年6月14日

 家族歴・既往歴:特記すべき事項はない.

現病歴:17歳頃,右肩甲部の小さな結節に気付いた.その後きわめてゆっくり増大し,2,3年前から中心部の隆起が目立つようになり色調も濃くなってきた.

原著

乳房外Paget病における5-aminolevulinic acidを用いたphotodynamic diagnosis―4症例の検討

著者: 伊藤圭 ,   加藤直子 ,   田村あゆみ ,   水野修 ,   皆川英彦 ,   武藤英生 ,   安田秀美 ,   佐々木絹子 ,   宮澤仁

ページ範囲:P.8 - P.13

外陰部や肛囲の乳房外Paget病の79歳女性,62歳女性,79歳男性,63歳男性の4症例に,20%5-aminolevulinic acid(ALA)軟膏の外用(ODT)4時間後にWood lampにて病変部を赤色発光させ,病変範囲を確認し切除範囲を決定するphotodynamic diagnosis(PDD)を施行した.PDDの発光を強く認めた強陽性部位は腫瘍細胞増殖部および最近の生検痕で,弱い発光を示した弱陽性部位は少数の腫瘍細胞増殖部や炎症性病変部で,発光を認めなかった陰性部位は腫瘍細胞陰性部のほか,腫瘍細胞が陽性の粘膜移行部や,手技的にALA軟膏のODTが困難な間擦部などであった.PDDの長所として,1) ALAの腫瘍への選択性は良好である,2) PDDの発光所見に再現性がある,3) ALA自体に発癌性や光毒性がなく安全である,4) 検査による侵襲性が低い,5) 手技が簡便である,が挙げられた.

今月の症例

直腸カルチノイドに合併したparaneoplastic pemphigusの1例

著者: 前川嘉洋 ,   国武裕子 ,   橋本隆

ページ範囲:P.14 - P.18

症例は直腸カルチノイド術後,転移性肝腫瘍・腹腔内リンパ節転移をきたした65歳,男性.口唇,口腔,鼻腔にびらん・潰瘍を認め,眼瞼に偽膜性結膜炎,陰茎にもびらんを生じた.免疫学的検査により,患者血清は蛍光抗体間接法で抗細胞質抗体が陽性,ラット膀胱上皮にも陽性,免疫ブロット法で複数の抗原に陽性であることや免疫沈降法の結果からparaneoplastic pemphigus(PNP)と診断した.本邦におけるPNPは1996年以来,学会報告を含め20症例がみられる.合併する腫瘍でカルチノイドは自験例のみであった.非Hodgkin性リンパ腫5例,B細胞リンパ腫4例,骨髄腫1例で血液系の悪性腫瘍が半数を占めた.固形癌では肺癌,食道癌,子宮癌が各1例,後腹膜腔腫瘍,縦隔腫瘍が各1例みられ,Castleman腫瘍や胸腺腫といった良性腫瘍の合併もみられた.

小児期発症の皮膚筋炎に続発した皮膚アミロイドーシスの1例

著者: 安藤菜緒 ,   福屋泰子 ,   林伸和 ,   石黒直子 ,   川島眞

ページ範囲:P.19 - P.22

20歳,男性.2歳時より顔面,頚部,背部に紅斑を認める.9歳時,某病院皮膚科にて頚部の紅褐色斑より皮膚生検を施行され皮膚筋炎と診断されるが,臨床的にも検査成績からも筋炎所見を認めず,ストロングクラスのステロイド外用剤で経過観察されていた.15歳頃より皮疹の色調が濃くなり,当院内科を紹介され,ミゾリビン100~300mg/日の投与を1年半受けるも軽快しないため,当科を紹介された.初診時,爪囲紅斑,Gottron徴候,頚部,胸部,背部にポイキロデルマと顔面,背部に境界明瞭な紅褐色斑を認めた.徒手筋力テストは上下肢とも5で,筋原性酵素の上昇はなく,胸部X線,心電図も異常はなかった.背部の紅褐色斑の病理組織像では液状変性,真皮上層の浮腫と軽度のリンパ球浸潤に加え,真皮乳頭層にアミロイドの沈着を認めた.ストロンゲストクラスのステロイドの外用にて色調の軽快を認めている.

症例報告

Actinic reticuloidの1例

著者: 池田秀幸 ,   大塚勤 ,   山崎雙次

ページ範囲:P.24 - P.26

64歳,男性.1999年9月頃顔面,項部,背部,両手背に紅色丘疹が出現.副腎皮質ホルモン剤の内服・外用,外用PUVA療法にて加療していたが2001年3月頃より両手背を中心に皮疹が増悪したため,光線過敏性皮膚炎の臨床診断にて左手背より皮膚生検を施行.臨床および組織学的所見よりactinic reticuloidと診断した.副腎皮膚ホルモン剤の内服・外用,抗ヒスタミン剤内服,遮光を励行し,皮疹はやや軽快した.

鼠径リンパ節腫脹を主訴としたChurg-Strauss症候群の1例

著者: 山﨑典子 ,   本田まりこ ,   新村眞人

ページ範囲:P.27 - P.29

19歳,男性.1995年3月頃両鼠径リンパ節腫脹に気付いた.1996年7月より両下腿の疼痛,腫脹が出現し,当科を紹介された.末梢血好酸球は12,420/mm3(62.1%).下腿皮膚の真皮中下層に肉芽腫性血管炎を認めた.1996年9月下旬より夜間咳嗽,感冒様症状,呼吸困難が出現した.末梢血好酸球増多,呼吸器症状,下腿のしびれ,肉芽腫性血管炎よりChurg-Strauss症候群と診断した.

坐骨部褥瘡より生じたガス壊疽

著者: 本橋尚子 ,   林健 ,   小原宏之 ,   岩村経子

ページ範囲:P.30 - P.32

67歳,男性.コントロール不良の糖尿病あり,1年前に糖尿病性壊疽にて右下腿を切断.2か月前退院してすぐに右坐骨部に褥瘡が出現,保存的に加療されていた.初診の4日前より右臀部,大腿後面に激しい疼痛を伴う紅斑,腫脹が出現,急激に拡大した.同部の触診にて握雪感があり,単純X線上ガス像を認めたためガス壊疽と診断した.緊急デブリードマン,右股離断により救命しえた.細菌培養検査ではE. coli, Enterobact. aerogenesを検出した.

胸腺癌患者に生じた成人発症のアナフィラクトイド紫斑の1例

著者: 大澤倫子 ,   横田浩一 ,   西江渉 ,   大久保佐土美 ,   清水宏

ページ範囲:P.35 - P.37

60歳,男性.既往歴に糖尿病,胸腺癌がある.初診の3日前より特に誘因なく,米粒大の無症候性皮疹が両下肢に出現した.初診時,両下肢,前腕,臀部に直径5~10mm大,一部癒合性でびらん,血疱,浸潤を伴う紫紅色の紫斑を伴う小丘疹が散在し,下肢には浮腫を認めた.病理組織像では,主に真皮上層の血管に好中球核破砕性血管炎を認め,蛍光抗体直接法でIgAが血管内皮細胞に沈着し,アナフィラクトイド紫斑と診断した.入院後皮疹はPLS30mg/日で速やかに軽快した.成人発症のアナフィラクトイド紫斑は悪性腫瘍を含む基礎疾患をもつことが多いとされ,自験例では胸腺癌との関連が示唆された.

深部静脈血栓症を合併したKyrle病の1例

著者: 吉成康 ,   森脇真一 ,   橋爪秀夫 ,   瀧川雅浩 ,   戸倉新樹

ページ範囲:P.40 - P.43

54歳,男性.42歳より深部静脈血栓症と肺塞栓にてワーファリン内服中であった.腎不全や糖尿病の合併はない.初診の約3か月前から四肢,臀部に角栓を有する丘疹,結節が出現し徐々にその数を増してきた.病理組織学的所見では,巨大な角栓が表皮に陥入し,表皮の一部を穿孔していた.角栓内に弾性線維はみられなかった.以上の所見より本症をKyrle病と診断した.Kyrle病の過去の報告例では糖尿病や腎不全を合併することがほとんどであり,自験例はこれらを合併しない稀な症例と思われた.

Pachydermoperiostosisの1例

著者: 芳賀貴裕 ,   松永純 ,   相場節也 ,   沼田透効 ,   笹井収 ,   田上八朗

ページ範囲:P.44 - P.46

17歳,男性.当科初診時,頭部被髪部と顔面の皮膚に深い皺があり,毛孔は開大し,皮脂分泌増多,および多発性ざ瘡を認めた.指趾は太く,ばち状指趾を呈していた.骨X線では脛骨,腓骨に骨膜反応および骨膜性骨肥厚像を認めた.太鼓ばち状指趾,皮膚の肥厚性変化,および骨膜性骨新生の三徴を認め,また,関連性があると考えられる明らかな基礎疾患がなかったので,完全型,特発性pachydermoperiostosisと診断した.今回われわれは,外見上の対症療法として,外科的に除皺術を施行し,それが患者の希望を満たす有効な術式であったので報告した.

脂肪類壊死症様皮疹を呈したサルコイドーシスの1例

著者: 栗原みどり ,   大塚俊 ,   大塚勤 ,   山崎雙次

ページ範囲:P.47 - P.49

31歳,男性.1993年に健康診断にて肺門リンパ節腫脹を指摘され,サルコイドーシスの診断を受けたが,放置していた.2002年5月に心電図異常よりサルコイドーシスの増悪を疑われ,下腿の皮疹につき当科を紹介された.両下腿に鶏卵大までの軽度落屑と浸潤を伴う褐色局面が多発していた.臨床的には脂肪類壊死症が疑われたが,組織学的には類上皮細胞の集塊が帯状に存在し,膠原線維の膨化,増生はみられず,サルコイドーシスの局面型と考えた.

水疱性エリテマトーデスに多発性筋炎を合併した1例

著者: 沖田博 ,   大塚勤 ,   山崎雙次

ページ範囲:P.50 - P.53

76歳,女性.2001年7月の初診の1か月前より,特に誘因なく顔面・頚部・両手背・両前腕に自覚症状のない米粒大から小豆大の紅色丘疹・血疱が出現し,また,全身の筋力低下と意識障害も認めた.アメリカリウマチ学会のSLEの診断基準は5項目,Bohanの多発性・皮膚筋炎の診断基準を3徴候,Camisa & Sharma1)らの水疱性エリテマトーデスの診断基準の3項目を満たし,水疱性エリテマトーデスと多発性筋炎の合併と診断した.治療はプレドニゾロン50mg/日より投与開始し,8週間後プレドニゾロン15mg/日に減量したところカリニ肺炎と成人呼吸促迫症候群を併発し,ステロイドパルス療法施行するも播種性血管内凝固(DIC)を合併し2001年年10月18日永眠された.

体幹・四肢のgeneralized morpheaに対してステロイド内服中に剣創状強皮症の新生をみた1例

著者: 早川郁子 ,   佐藤伸一 ,   竹原和彦

ページ範囲:P.55 - P.57

13歳,男児.約1年前より右下腿に皮膚硬化が出現し,徐々に拡大し大腿まで及ぶようになった.初診時,右前胸部に斑状の光沢を伴う硬化局面と右大腿内側から右膝関節,右下腿内側に帯状の褐色の硬化局面が認められ,右膝関節の可動域制限があった.抗核抗体は40倍陽性で,抗ssDNA抗体は306.8AU/mlと上昇していた.可動域制限や皮疹の拡大傾向があったため,プレドニゾロン15mg/日の内服を開始したところ,皮膚硬化および関節可動域制限の改善を認めた.初診より2年半が経過した16歳春頃,プレドニゾロン5mg/日内服中に左前額部に剣創状を呈する硬化局面と右臀部に線状の硬化局面が出現した.プレドニゾロンを10mg/日に増量し,経過観察中である.

Infantile perianal protrusionの1例

著者: 大嶋雄一郎 ,   高間弘道 ,   玉田康彦 ,   松本義也

ページ範囲:P.58 - P.60

1歳1か月,女児.2001年8月頃,肛門周囲部の淡紅色結節に母親が気付き,経過をみていたが発赤・腫脹を繰り返し排便時に痛がるため当科を受診した.肛門部12時,5時方向に5×10mm,3×7mm大,淡紅色,表面平滑,弾性軟の結節を認めた.病理組織像では角層の一部に不全角化を認め,表皮は肥厚し,表皮内に好中球浸潤が認められた.真皮は高度の浮腫,好中球・リンパ球を中心とした炎症細胞浸潤,毛細血管拡張が認められた.特徴的臨床所見,組織学的所見からinfantile perianal protrusionと診断し経過観察したところ,3か月の経過で5時方向の結節は消退し,12時方向の結節も縮小傾向を認めた.infantile perianal protrusionの発症病因について考察した.

皮角様外観を呈したperforating pilomatricomaの1例

著者: 澁谷修一郎 ,   山村幸子 ,   大西誉光 ,   渡辺晋一

ページ範囲:P.61 - P.63

26歳,女性.約1年半前より右上腕伸側に軽度のそう痒を伴う皮疹が出現.その後自覚症状は消失するも,皮疹が徐々に増大した.現症は右上腕伸側に9×7mm大のドーム状に隆起する弾性軟の淡紅色小結節を認め,中央に直径4mmほどの黒褐色の角質様物質が存在し,皮角様外観を呈していた.組織では真皮上~中層にかけて好塩基性細胞よりなる類円形の胞巣が数個と,陰影細胞よりなる胞巣が少数みられ,好酸性の胞巣は表皮を覆う痂皮性角質塊と一部で連続していた.連続部ではその周囲の被覆表皮はこの部で反転し真皮内へ進展し,好酸性胞巣をU字型に取り囲む好塩基細胞巣と連続していた.組織学的に腫瘍の eliminationと判断し,perforating pilomatricomaと診断した.

耳介後面に生じたmalignant trichilemmomaの1例

著者: 竹田公英

ページ範囲:P.64 - P.66

患者は77歳,男性.左耳介後面の腫瘤を主訴に2000年12月22日当科受診.2000年8月頃から左耳介後面に小豆大までのざらざらした紅色の結節を認めた.徐々に増大,隆起し,出血も伴うようになる.左耳介後面に19×15×10mmの広基性に隆起した易出血を伴う,赤色の腫瘤あり.表面粗造で血痂を付す.病理組織は角層は出血と不全角化を伴い,表皮は不規則に乳頭腫状に増殖し,棍棒状の表皮突起を有し,外方向性に増殖している.腫瘍を構成する細胞は,基底細胞様細胞と有棘細胞様細胞で,核異型,核分裂像,個細胞角化を認める.2001年1月11日,局麻下で腫瘤辺縁より10mm離して,軟骨上で全切除,左頚部より採皮し全層植皮した.

Malignant proliferating trichilemmal tumorの1例

著者: 萩原正則 ,   石地尚興 ,   上出良一 ,   新村眞人

ページ範囲:P.67 - P.70

57歳,男性.初診の3年前に後頭部の皮下腫瘤に気付いた.他医にて粉瘤の診断のもと計2回切開を受けた.初診時58×50×21mm大の半球状に隆起する弾性硬の淡紅色腫瘤を認めた.生検にて,真皮内に分葉状に浸潤する大小の腫瘍細胞巣を認め,胞巣外層は異型性の強い好酸性細胞で中心付近は角質嚢腫様構造や壊死性変化がみられた.malignant proliferating trichilemmal tumorと診断し,拡大切除および植皮術を施行した.術後1年を経過した現在,再発や転移はみられない.

経皮経肝胆道ドレナージ挿入部に認められた胆管癌皮膚転移の1例

著者: 伊藤友章 ,   加藤雪彦 ,   坪井良治 ,   中村和人

ページ範囲:P.71 - P.73

74歳,男性.体重減少,黄疸のため当院内科に入院.右季肋部より減黄目的のため 経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)術が施行された.その後,精査にて肝門部胆管癌と診 断されたが,門脈,胆嚢動脈への浸潤が認められたため手術適応がなく,放射線療法 が施行された.PTBD挿入後3か月後より右季肋部ドレーン周囲に痛みを伴う局面が出 現した.皮膚生検により腺癌と診断され,原発巣と病理組織像が類似していた.腹部 CTと剖検所見から,皮疹は原発巣の腫瘍細胞の直接浸潤ではなく,ドレーン部位に一 致しているため,経皮的手技による転移と考えた.

Sweet病疑いで経過観察中に発症したMDSの特異疹の1例

著者: 田辺健一 ,   新山史朗 ,   坪井廣美 ,   勝岡憲生

ページ範囲:P.74 - P.76

39歳,男性.1999年より四肢の関節痛を自覚し,翌年より体幹,上肢に皮疹が出現してきた.38℃台の発熱を伴い,当初,Sweet病を疑い治療,観察していた.PSL,DDS内服にて軽快はするものの治癒には至らず,約1年後,末梢血に単球を主とする白血球増多を認め骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome:MDS)と診断した.同時期より小結節が出現し,病理組織学的に異型の単核球を多数認め,特異疹と診断した.近年,MDSに伴って特異疹が出現する症例が増加してきているが,化学療法,骨髄移植を含めた治療法の進歩によって患者の延命が図られるようになったために,その経過中に特異疹をみることが多くなったと考えられる.特異疹の出現が予後を予見できる症例も存在するため,皮疹の十分な観察が必要である.

20年間リンパ腫様丘疹症の出没を繰り返した後に生じたanaplastic large cell lymphoma

著者: 堀和彦 ,   福地修 ,   大森一範 ,   新村眞人

ページ範囲:P.77 - P.79

65歳,男性.1980年頃より全身に自覚症状のない紅色丘疹の出没を繰り返していた.2000年6月,左前腕に生じた紅色丘疹が急速に増大し腫瘤を形成した.紅色腫瘤の組織像は真皮から脂肪織にかけて稠密に大型の異型細胞が増殖し,異型細胞はCD30陽性であった.体幹の紅色丘疹の組織像は真皮浅層にリンパ球,好酸球主体の細胞浸潤がみられ,核小体の明らかな大小不同のリンパ球様の細胞が散在し,浸潤細胞の一部にCD30陽性であった.腫瘤切除後,同部に再発を認め電子線40Gy照射した.2000年11月より左腋窩のリンパ節が腫大し,組織像では左前腕の腫瘤と同様の大型の腫瘍細胞が増殖していた.胸部CTにて縦隔リンパ節の腫大を認めanaplastic large cell lymphomaと診断した.2001年1月よりCHOP療法を施行し,左前腕の腫瘤,リンパ節腫大は消退した.全身の紅色丘疹は一時消退したものの再発した.

皮膚原発follicule center cell lymphoma―bcl-2陽性であったが緩徐な臨床経過を辿った1例

著者: 谷岡未樹 ,   松村康洋 ,   藤井秀孝 ,   錦織千佳子 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.80 - P.82

80歳,女性.頭部に多発する紅色丘疹を認めた.皮膚生検にて真皮内に異型リンパ球による濾胞形成を認め,免疫組織学的検査にてCD20とbcl-2が陽性であった.bcl-2陽性であるために節性リンパ腫の皮膚浸潤を疑ったが,全身検索にて他部位にリンパ腫を疑わせる所見がないため皮膚原発follicule center cell lymphomaと診断した.電子線照射により皮疹は消失した.1年半後に電子線照射部位の周囲に,さらにその1年後に電子線照射部位に局所再発を認めたが,同様に電子線照射が著効した.発症後5年を経ているが節性リンパ腫の所見はない.

臨床統計

伝染性膿痂疹の臨床的,細菌学的検討

著者: 延山嘉眞 ,   新村眞人

ページ範囲:P.83 - P.85

2002年7~9月に埼玉県川口市の東川口病院皮膚科を受診した伝染性膿痂疹患者75例全例を臨床的,細菌学的に検討した.病変部より検出された細菌は,メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)54例(72%),メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)12例(16%),MSSAを含む混合感染6例(8%),A群β溶血性連鎖球菌1例(1%)であった.湿疹皮膚炎群の合併が18例(24%)にみられた.病変部に頭頚部が含まれる症例のうちMRSAが分離された症例は27例中8例(30%),頚部以下に限られる場合は48例中4例(8%)あり,両者の間にχ2検定(P<0.05)で有意差が認められた.頭頚部に病変が存在する場合MRSA感染を考慮に入れるべきであると考えられる.

治療

尋常性乾癬に対するビタミンD3外用薬の有効性―マキサカルシトール軟膏とカルシポトリオール軟膏との左右比較オープン試験

著者: 高城倫子 ,   八木宏明 ,   瀧川雅浩 ,   浦野聖子 ,   白濱茂穂 ,   田中正人 ,   堀部尚弘 ,   松本賢太郎 ,   石川学 ,   古川富紀子 ,   坂本泰子 ,   小楠浩二 ,   冨田浩一 ,   小出まさよ ,   藤本篤嗣 ,   小菅治彦 ,   影山葉月 ,   青島有美 ,   鈴木陽子 ,   松下佳代

ページ範囲:P.86 - P.91

浜松医科大学および静岡県下14施設で,尋常性乾癬患者45例を対象として,マキサカルシトール25μg/g軟膏(O群)とカルシポトリオール50μg/g軟膏(C群)を1日1回あるいは2回,左右対称部位に原則として8週間塗布し,有効性について左右比較オープン試験を行った.1) 皮膚所見(紅斑,浸潤・肥厚,鱗屑)に対する有効性評価では両群間に有意差はなかった.2) 最終時全般改善度は,著明改善以上がO群33%,C群27%,中等度改善以上がO群71%,C群76%であり,両群間に有意差はなかった.3) 全般改善度の左右優劣比較は4週後ではO群がC群に有意に優った(p=0.0455)が,8週後あるいは最終時では両群間に有意差はなかった.4) 局所性副作用として「カサツキ,ケバダチ」がC群に1例みられた.全身性副作用はなかった.5) 有用度の評価では,極めて有用以上がO群13%,C群11%であり,有用度の左右優劣比較とともに有意差はなかった.これらの点から,マキサカルシトール25μg/g軟膏は尋常性乾癬治療において早期に有効性が出現し,局所刺激も認められず有用性の高い薬剤であることが示唆された.

連載

米国皮膚科医への道(10)

著者: 藤田真由美

ページ範囲:P.92 - P.93

症例検討会(Case Presentation)

 レジデント教育のメインイベントは,毎週水曜日の8時から始まる症例検討会とグランドラウンド(大講義)である.症例検討会では難しい症例を直接診て討議するのに対し,グランドラウンドでは難しい症例をもとに講義形式でスライドを使って討論する.後者は学会の総説発表をもう少し活発にしたもので日本人でも容易に想像がつくが,前者のようなものは日本には少ない.入院患者さんを前にした教授回診とも全く違う.ここでは,診断や治療の困難な症例や珍しい症例の患者さんに検討会に来てもらい,医師がおのおの直接診断してから討議室にて討論する.患者さんによっては遠方から何時間もかけて来ることもある.奉仕料やお手当てなどもない代わりに,大学病院の教授を含む多数の医師にただで診てもらうことになる.レジデントにとってはこれは教育の場であるとともに,教室員全員の前での毎週の実地試験のようなものでもある.

 症例検討会の形式は各大学のプログラムによって多少異なる.形態診断学を中心にしたり,問診も含めた総合診断学に重点を置いたりするが,いずれの場合も,目的は患者さんのケアとレジデントの教育の2つにあることに変わりはない.私のいたワシントン大学では,その2年前より,症例検討会ではレジデントの形態診断学を鍛えようということになり,レジデントは患者さんと挨拶はするものの病気に関する質問は禁じられ,観察所見のみから鑑別診断を挙げて議論することを要求される.初めの頃は,所見の言い方からつっこまれ,少し慣れると鑑別診断やその病気に関する知識も試される.レジデントが議論した後で,主治医が経過や生検結果についての種明かしをし,さらに皮膚科スタッフや開業医が自分の意見を議論する.写真ではなく実物の患者さんを出すため,症例数は日によって異なり,4,5例のことが多いが,まったくない日もあれば,10例あった日もある.それでも,診察時間は全部で30分,討論が45分と決まっているため,時間配分をしながら,どの症例が当たっても答えられるように短時間でまとめておかないといけない.患者さんはおのおの8~10畳ぐらいの個室に入っているので,頭と足と手(メモを取る)をフル回転させながら次々と診察していくことになる.レジデントが10人弱,医学生数人に,皮膚科スタッフが10数人と,総勢30人が各患者の部屋を出たり入ったりする.患者数が少ない時には全員が同じ部屋に入ろうとしてごった返し,前のグループが終わるまで部屋の外でしばらく待つことになる.また,難しい症例や珍しい症例では,皆が長居するので,その部屋だけ混雑する.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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