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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科58巻10号

2004年09月発行

雑誌目次

連載

Dermoscopy Specialistへの道Q&A(第6回)

著者: 斎田俊明 ,   宮嵜敦

ページ範囲:P.793 - P.795

Qどんなダーモスコピー所見が認められますか?

診断は何でしょう

臨床情報

 4歳,女児.1歳頃,左足内踝部に黒色斑が生じ,次第に拡大,隆起してきた.

 初診時,右内踝のやや後下部に大きさ8×6×1 mmの黒色結節が認められた(図2).形状は全体として楕円形状を呈するが,辺縁部に多少の凹凸が認められた.色調はほぼ一様.皮疹表面は軽度角化性であった.

Clinical Exercises・128―出題と解答

著者: 石川治

ページ範囲:P.822 - P.822

出題と解答:石川治(群馬大学)

255 設問に対する答えをA~Eの中から選べ.

1) 表皮下水疱をきたす疾患はどれか?

2) C型肝炎ウイルス感染が最も高率に証明される疾患はどれか?


A:グルカゴノーマ症候群

B:ペラグラ

C:necrolytic acral erythema

D:腸性肢端皮膚炎

E:晩発性皮膚ポルフィリン症

原著

リウマチ性脈管内組織球症(仮称)の2例―関節リウマチの特異疹か?

著者: 高野浩章 ,   井上利之 ,   大浦一 ,   滝脇弘嗣 ,   荒瀬誠治

ページ範囲:P.796 - P.801

肘関節部の浮腫性紅斑とその紅斑上に丘疹が樹枝状に集簇する奇異な皮疹を呈する2女性症例を経験した.いずれも関節リウマチ(RA)を合併していた.病理組織学的には真皮内に不規則に拡張した脈管を認め,その内腔に組織球を中心とした炎症細胞集塊の突出がみられた.脈管周囲にはリンパ球・組織球の浸潤もみられ,1例ではリンパ濾胞が形成され,1例では好中球も混じていた.類似の臨床像・病理像を呈した症例は3つの異なった診断名で6例が報告されている.自験例を含め8例とも皮疹は慢性に経過するRA患者の関節周辺に生じており,薬剤誘発性とも考えにくいことからRAの特異疹の一つではないかと考えた.

今月の症例

Churg-Strauss症候群の1例

著者: 金沢博龍 ,   有川順子 ,   大野祐樹 ,   岡部省吾 ,   金子健彦 ,   党雅子 ,   佐野靖之

ページ範囲:P.804 - P.806

72歳,女性.55歳時から気管支喘息を認め,64歳時から当院アレルギー呼吸器科に通院し,気管支拡張剤の使用にて良好にコントロールされていた.10日前から出現した両下肢の倦怠感,両側内顆の紫斑,足関節の腫脹,疼痛,足底,足背の感覚鈍麻を主訴に当科を紹介受診した.血中好酸球数(29,068/mm3),IgE(959.4IU/ml)が上昇し,リウマチ因子,MPO-ANCAはいずれも陽性.紫斑の病理組織像では真皮全層にわたってリンパ球と多数の好酸球を混じた炎症細胞浸潤と,小血管のフィブリノイド変性を認めた.上記よりChurg-Strauss症候群と診断,プレドニゾロン60mg/日にていずれの症状も軽快した.経過中に一過性の消化管出血を認めたが,組織学的には非特異的所見であった.プレドニゾロンは漸減し,10mg/日にて諸症状に再燃を認めなかった.本症は診断基準の主要臨床検査の3項目すべてを満たし,典型的な症例と考えられた.

胃悪性リンパ腫を合併した再発性多軟骨炎の1例

著者: 原彰吾 ,   斉藤美菜子 ,   広瀬憲志 ,   敷地孝法 ,   滝脇弘嗣 ,   荒瀬誠治

ページ範囲:P.807 - P.809

66歳,男性.初診時,耳介軟骨炎,眼症状を認め,経過中に気道軟骨炎も出現した.プレドニゾロンとコルヒチンの併用で再発性多軟骨炎(RP)症状は消退したが,治療前に顕著であった体重減少があり,経過中に発熱と右季肋部痛も出現した.6年前に既往のあった胃の悪性リンパ腫の再発と診断され,CHOP療法で寛解に至った.悪性リンパ腫の再発とRPの発症時期が重なること,同様の症例が複数例報告されていることから,両疾患の関連が示唆された.

症例報告

Werner症候群の1例

著者: 神﨑美玲 ,   塚本克彦 ,   長阪晶子 ,   清水顕 ,   川村龍吉 ,   後藤眞 ,   島田眞路

ページ範囲:P.810 - P.812

48歳,女性.両親に近親婚なく,同胞に同症なし.10年来の両足底の難治性胼胝腫を主訴に来院.鳥様顔貌と四肢が細く,躯幹が太い独特の体型,嗄声,若年性白内障,皮膚硬化,糖尿病などの臨床症状よりWerner症候群と診断し,遺伝子検索を行った.WRN遺伝子の一方のalleleにイントロン25部位のスプライシング変異(G→C)が確認された.これまで,Werner症候群はその特徴ある臨床症状より診断が行われてきたが,1996年原因遺伝子の解明以降,その変異結果をもとに診断する報告が増えている.本邦皮膚科領域で遺伝子検索が行われた症例について,その結果をまとめ報告する.

Conradi症候群の1例

著者: 服部尚生 ,   安藤浩一

ページ範囲:P.813 - P.815

生後2日,女児.生下時より,四肢・体幹にBlaschko線に沿った,線状の厚い鱗屑を認めた.母親も,出生時に同様の皮疹があった.病理組織学的に,毛包は拡大し深く大きな角栓を形成していた.角層内には,異所性石灰化を認めた.X線像では,大腿骨骨端部や脊椎周囲などに点状石灰化を認めた.皮膚科学的には,Conradi症候群とは,点状軟骨異形成症のうち皮膚病変をしばしば合併する疾患で,遺伝性角化症に分類されている.本症例は,その1型であるConradi-Hunermann型と考えられた.

HIV感染患者に生じた第2期梅毒の1例

著者: 櫻庭一子 ,   福屋泰子 ,   石黒直子 ,   川島眞 ,   井戸田一朗 ,   戸塚恭一

ページ範囲:P.816 - P.818

63歳,男性.同性愛経験者で風俗店での感染機会があった.2000年9月に口腔カンジダ症の既往がある.初診の20日前より筋肉痛,倦怠感,食欲低下,10日前より下痢を認め,5日前より眉間に紅斑が出現し拡大したため,同年10月13日受診した.初診時,前額部,眉間,両頬部,鼻尖部に径5mm前後の浸潤を強く触れる紅斑と右後頸部に紅色丘疹,左手掌に鉄棒豆様の硬く触れる紅斑を認めた.後頸部の丘疹の病理組織像では真皮上層から下層にかけて,主としてリンパ球と少数の形質細胞からなる稠密な細胞浸潤を認めた.ガラス板法64倍,TPLA法18,095.HIVウイルス量は46,000コピー/ml,CD4リンパ球数256/μlであった.無症候期のHIV感染患者に生じた第2期梅毒と診断し,benzylpenicillin benzathine120万単位/日の内服を開始したところ,皮疹は4週間後に消退したが,ガラス板法256倍,TPLA法366,470と上昇したため計12週間の投与を行った.2年5か月後の現在,ガラス板法4倍で再燃は認めない.

アンピシリン/スルバクタム配合剤投与後に皮疹を生じたサイトメガロウイルス単核球症

著者: 安藤菜緒 ,   岡本玲子 ,   小林里実 ,   林伸和 ,   川島眞

ページ範囲:P.819 - P.822

37歳,カナダ人男性.39℃台の発熱と咽頭痛を認め,アンピシリン/スルバクタム配合剤を3日間投与したところ,躯幹,四肢にびまん性淡紅斑および米粒大までの浸潤性紅斑が出現した.組織学的に,血管周囲性にリンパ球を主体とした軽度の細胞浸潤を認めた.発熱は3週間持続し,異型リンパ球の出現,軽度の肝酵素上昇,脾腫を認めた.サイトメガロウイルスIgM・IgG抗体が2週後に陽性化し,サイトメガロウイルス単核球症と診断した.

著明な膵酵素の上昇をみたtoxic epidermal necrolysis

著者: 南野義和 ,   梅林芳弘

ページ範囲:P.823 - P.825

55歳,男性.市販の総合感冒薬(新グリッペルゴールド (R))内服後,発熱,紅斑が出現,体表面積の約45%を占めるびらんを呈した.経過中,血中アミラーゼのみならずリパーゼ,ホスホリパーゼA2,エラスターゼなどの膵酵素の著明な上昇をみた.当初,アミラーゼの分画は唾液腺型が優位でほかの膵酵素は軽度の上昇のみであったが,1週間後には膵型が優位となりほかの膵酵素も著明に上昇してきた.初診時はまずTENによる唾液腺障害があり,遅れて膵障害を合併したものと考えた.水溶性プレドニゾロン120mg/日,FOY(R)600mg/日で治療したところ,20日後にびらんは上皮化,2か月後には膵酵素も正常値に回復した.

多臓器障害を伴ったrheumatoid vasculitisの1例

著者: 吉田佐保 ,   乾重樹 ,   箕田朋子 ,   樽谷勝仁 ,   浅田秀夫 ,   板見智

ページ範囲:P.826 - P.829

65歳,女性.約15年前より関節リウマチでプレドニゾロンを内服していた.右下腿屈側に疼痛を伴う紅斑と水疱が出現し,数日のうちに両下腿に拡大し,一部潰瘍化した.病理組織では真皮全層に血管周囲性の密な細胞浸潤がみられ,真皮の浅層と深層の両方にleukocytoclastic vasculitisの像が認められた.皮疹は局所の消毒処置のみでいったん軽快したが,その後も再発があり,血管炎の活動性が上昇していると考え,プレドニゾロンを増量したところ再発をみなくなった.皮疹の出現と同時期に心筋梗塞,大腸潰瘍,肝・腎機能障害が生じ,さらにその1年6か月後には下血,急性肺炎を併発し死亡した.皮膚以外に多臓器障害を伴うsystemic rheumatoid vasculitisであった可能性が示唆された.

新生児エリテマトーデス児を出産した高γグロブリン血症性紫斑の1例

著者: 吉成力 ,   村井眞也 ,   佐藤陽子 ,   小林有一 ,   赤坂俊英

ページ範囲:P.830 - P.832

23歳,女性.妊娠20週時に下肢に紫斑が出現した.抗SS-A,SS-B抗体は高値であった.紫斑は安静およびステロイド外用剤で軽快した.誘因としてγグロブリンの増加や妊娠に伴う腹腔内圧上昇などが考えられた.また,厚生省の診断基準を完全には満たしていないが,基礎疾患にSjögren症候群を有する可能性も示唆された.なお,出生した児も抗SS-A,SS-B抗体陽性で環状紅斑を呈していたが心症状は認めなかった.以上より,高γグロブリン血症性紫斑を有する妊婦では基礎疾患の合併について検索する必要が重要であると思われた.

微小変化型ネフローゼ症候群を合併し,皮疹より診断しえたSLEの1例

著者: 武藤潤 ,   森布衣子 ,   木花いづみ ,   松浦友一

ページ範囲:P.833 - P.835

49歳,女性.2002年6月に顔面の紅斑が出現し,その2か月後から顔面,下肢の浮腫が悪化した.高度の蛋白尿を認め,ネフローゼ症候群と診断され内科に入院した.当科依頼され,左・右頬部に爪甲大で軽度浸潤を触れる紅斑を認めた.病理組織学的に表皮基底層に液状変性,真皮浅層の血管,付属器周囲にリンパ球浸潤を認め,ループスバンドテスト陽性であった.さらに抗核抗体陽性,白血球低下からSLEと診断した.ステロイドパルス療法,血液透析などでネフローゼ症候群は寛解した.腎生検からネフローゼ症候群は微小変化型と診断.SLEに合併した微小変化型ネフローゼ症候群の報告は検索しえた限り9例であった.

著明な多形皮膚萎縮を認めた皮膚筋炎の1例

著者: 森亮子 ,   江川形平 ,   西村陽一 ,   十一英子 ,   高橋健造 ,   立花隆夫 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.836 - P.838

47歳,女性.皮膚および筋生検の結果は皮膚筋炎の所見を示し,筋電図からは筋原性の変化を得た.10年以上前より自己判断による2度にわたる長期の治療中断を繰り返すうちに,皮膚症状が顕著に悪化し全身に広がる多形皮膚萎縮を呈してきた.今回,ステロイドの大量投与により強度の多形皮膚萎縮を改善することができた.自験例では,自己判断による治療の中断の繰り返しが皮膚症状の悪化および長期化を引き起こし,結果的に著明な多形皮膚萎縮に進展したものと推察された.

仙骨部に生じた高齢者の単発性被角血管腫の1例

著者: 狩野律子 ,   小坂祥子 ,   新見やよい ,   齋藤裕 ,   川名誠司

ページ範囲:P.840 - P.842

85歳,女性.3年前より仙骨部に自覚症状のない結節が出現した.初診時,仙骨中央部に23×20mm,高さ4mmの淡紅色から茶褐色を呈する結節を認めた.胼胝腫,尋常性疣贅および上皮系腫瘍を疑って切除したが,病理組織学的に単発性被角血管腫であった.血管の同定のために施行した免疫染色では,第ⅤⅢ因子関連抗原,UEA-1は増生した管腔の内皮細胞に陽性となり,拡張した部位で一部減弱がみられた.一方,CD34抗原は,すべての管腔の内皮細胞に陽性だった.自験例は過去の報告例と比較し淡い色調を呈し,臨床診断に苦慮した.また,発症が85歳と高齢で,発症部位は仙骨部で稀な例であった.

手背に生じた脂肪芽腫の1例本邦報告99例の発生部位の検討

著者: 近藤章生 ,   品川はる美 ,   塗木裕子 ,   梅澤慶紀 ,   太田幸則 ,   飯塚万利子 ,   松山孝 ,   小澤明 ,   赤松正 ,   宮坂宗男

ページ範囲:P.843 - P.845

6か月,女児.生後3か月頃に左手背の腫瘤に気付いた.以後腫瘤は徐々に増大した.初診時, 5cm大の腫瘤を左手背に認めた.腫瘍の硬さは弾性軟だが,脂肪腫と比べやや硬く触知された.超音波・CT上は,脂肪濃度で内部不均一,隔壁構造を伴っており,脂肪由来の腫瘍が疑われた.生後8か月時に生検を施行し,病理組織学的所見では,脂肪芽細胞が散見され,異型細胞は認めず,脂肪芽腫と診断した.その後,急速に増大したため,10か月時に摘出術を施行したが,手指機能温存のため腫瘍の完全摘出は困難で,再発の可能性が残った.本症の本邦報告99例について文献的に検討した.その結果,手背発生例の報告は自験例だけであり,また従来,好発部位は体幹,四肢とされていたが,体表面積から考えると頸部での発生頻度が高かった.

骨化を伴った皮膚混合腫瘍の1例

著者: 吉田和恵 ,   永尾圭介 ,   齋藤京 ,   谷川瑛子 ,   西川武二

ページ範囲:P.847 - P.849

48歳,男性.約6年前より左頭頂部の腫瘤を自覚し,徐々に増大した.左頭頂部に4.0×3.7×2.4cm大の比較的硬い常色から紅色調の腫瘤を認めた.組織像では真皮浅層から皮下組織にかけて,線維性成分で覆われた上皮性の部分と粘液腫様の部分からなる腫瘍塊を認め,内部に骨組織と思われる組織を認めた.上皮性の部分は2層の細胞から構成される管腔構造を形成し,内部に好酸性無構造物質,一部に断頭分泌像や角質嚢腫を認めた.管腔構造周囲間質は粘液腫様を呈し,軟骨組織,骨組織を認めた.以上より骨化像を伴った皮膚混合腫瘍と診断した.

頭蓋骨破壊をみた熱傷瘢痕癌の1例

著者: 金子高英 ,   中野創 ,   神戸有希 ,   水木大介 ,   原田研 ,   花田勝美 ,   大熊洋輝 ,   四ツ柳高敏 ,   野村和夫

ページ範囲:P.851 - P.854

54歳,女性.生後8か月に囲炉裏に落ち,頭部を熱傷,その後瘢痕化にて治癒した.以降は特に医治を受けず放置していた.4~5年前より,同部位に難治性潰瘍出現した.次第に隆起し,出血,膿汁,悪臭を伴うようになってきた.当院初診時,右頭頂部に手拳大の厚い痂皮を付着する赤色腫瘤を認めた.頭部MRI像ではこの腫瘍は頭蓋骨を破壊し,硬膜に至っていた.リンパ節,内臓転移はみられなかった.手術標本の病理組織像は有棘細胞癌であった.脳実質には浸潤はみられなかった.T4N0M0,病期ⅢとしてC’A’療法を3クール施行.術後,約1年経過しているが,再発はみられていない.

皮膚転移のみられた乳癌の5例

著者: 高理佳 ,   陳科栄 ,   中村明彦

ページ範囲:P.855 - P.858

1998~2002年の5年間に当院外科を受診した155例の乳癌患者のうち,皮膚転移のみられた5例を経験した.そのうち2例は皮疹の出現により生検にて原発を乳癌と診断しえた.特徴的な皮疹を呈した3例を臨床病理学的に検討し,若干の文献的考察を加えて報告する.

前立腺癌の皮膚転移の1例

著者: 秦洋郎 ,   秋山真志 ,   清水宏

ページ範囲:P.859 - P.861

69歳,男性.3か月前より下腹部に自覚症状を欠く紅斑を生じ,次第に拡大した.初診時,下腹部に板状硬の紅斑・多数の紅色小丘疹がみられた.6年前に前立腺癌と診断されたが,骨転移およびリンパ節転移を認め,手術適応なく,内分泌療法にて加療されていた.皮膚生検および画像検査所見より前立腺癌の皮膚転移と診断した.本症例においては,皮膚転移を生じる1年前に前立腺を生検されており,その組織と皮膚転移組織検体との各種染色における比較を行った.今回採取した皮膚転移組織は,以前採取した前立腺組織に比べ,未分化な傾向を示す所見であった.

Disseminated pagetoid reticulosis (Ketron-Goodman disease)の1例

著者: 樹神元博 ,   濱松寧 ,   川久保洋 ,   伊崎誠一

ページ範囲:P.862 - P.864

67歳,女性.躯幹および四肢に大豆大から手拳大までの紅褐色斑が多発し,一部では浸潤を伴い扁平隆起し,表面にびらんを有するものも認められた.病理学的には表皮内に中型から大型の異型リンパ球様細胞の著明な浸潤を認めた.腫瘍細胞はCD3,CD7,CD45,CD45ROが陽性で,CD4,CD8,CD20,CD30,CD68は陰性であった.サザンブロット法による遺伝子の解析では,T細胞受容体β鎖およびγ鎖の遺伝子再構成を認め,δ鎖の遺伝子再構成は認めなかった.病変は皮膚に限局していた.disseminated pagetoid reticulosisと診断し,ステロイド剤の外用とPUVA-bath療法を開始した.一部の病変を除いて皮疹は平坦化し浸潤もなくなり色素沈着となったが,一方で皮疹の新生および再燃を認めた.

足底に角化性紅斑を生じた菌状息肉症の1例

著者: 石渕裕久 ,   岡田悦子 ,   田村敦志 ,   石川治

ページ範囲:P.865 - P.867

70歳,男性.約20年前よりそう痒を伴う紅褐色皮疹が出現し,全身に拡大した.7年前,皮膚組織学的所見より菌状息肉症と診断した.インターフェロンγとPUVA療法を併用し,皮疹はコントロールされていた.その後の経過中に,足底の角化性紅斑と四肢,躯幹の落屑性紅斑が新生した.足底皮疹組織像でPautrier微小膿瘍を認め,電子線治療を行った.菌状息肉症の掌蹠の皮疹は,角化性紅斑局面を呈しやすく,治療を行うにあたり他疾患との鑑別に注意が必要である.

自然消退傾向を示したprimary cutaneous anaplastic large cell lymphomaの1例

著者: 池滝知 ,   河井一浩 ,   下村裕 ,   渡辺力夫 ,   藤原浩 ,   伊藤雅章

ページ範囲:P.868 - P.871

65歳,男性.頭頂部の径20mm大の紅色腫瘤.組織学的に,豊富な胞体と核小体の明瞭な大型の異型な核をもつ細胞の皮下に及ぶシート状増殖を認めた.腫瘍細胞は,CD30陽性で,EMAおよびALK陰性,cutaneous lymphocyte antigen陽性であり,サザンブロット法でT細胞レセプターβ鎖遺伝子のモノクローナルな再構成が検出された.19年前から全身各所に同様な皮膚腫瘤の再発を繰り返しており,今回の病変も自然消退傾向を示した.primary cutaneous anaplastic large cell lymphomaの診断と治療方針について考按した.

臨床統計

伝染性膿痂疹の分離菌と抗菌薬に対する感受性結果について―1997~2002年までの過去6年間の検討

著者: 國行秀一 ,   中野一仁 ,   前川直輝 ,   松本千洋 ,   鈴木伸典

ページ範囲:P.873 - P.876

1997~2002年までの6年間に大阪市立総合医療センターおよび大阪市立十三市民病院皮膚科を受診した伝染性膿痂疹患者について皮疹部から細菌培養を行い,細菌が分離された123例を対象として検討した.男性64例,女性59例とほぼ同数であった.年齢別に見ると0~5歳が多く約3/4を占めた.月別にみると約2/3が6~9月の夏季に集中していた.菌種別に見ると,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌66株,メチシリン感受性黄色ブドウ球菌54株,溶連菌9株,メチシリン耐性表皮ブドウ球菌2株が分離された.黄色ブドウ球菌のうち,MRSAが55%であった.ゲンタマイシン,セフォチアムは黄色ブドウ球菌全体に対して感受性は悪く,それぞれ13%,45%であった.一方,ミノマイシン,レボフロキサシンは両者とも97%と高い感受性率を示した.以上の結果より,ゲンタマイシンの外用は有効性は少なく,テトラサイクリンなどの外用の有効性が高いことが推測された.

軽微な皮疹のみで組織学的に初めて診断しえたpseudoxanthoma elasticum の1例―本邦報告例75例についての臨床統計を含めて

著者: 伊木まり子 ,   安原稔

ページ範囲:P.878 - P.883

43歳,男性.眼科手術の際にangioid streaks (AS)が発見され,皮膚科を受診した.典型的皮疹は不明瞭であったが,皮膚生検によりpseudoxanthoma elasticum (PXE)と診断した.患者は,1年前にPXEによる血管障害由来と思われる急性硬膜下血腫を発症し,高血圧症,糖尿病,硝子体出血を合併していた.本邦におけるPXEの報告75例を集計し,検討した結果,PXEの診断における皮疹とASの重要性を確認した.また,非典型皮膚症状を呈する症例についても,十分な観察により早期に診断し,心血管障害に基づく合併症の危険性を十分説明し,発症を未然に防止することが重要であると考えた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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