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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科58巻12号

2004年11月発行

雑誌目次

連載

Dermoscopy Specialistへの道Q&A(第8回)

著者: 斎田俊明 ,   宮嵜敦

ページ範囲:P.1009 - P.1011

Qどんなダーモスコピー所見が認められますか?

診断は何でしょう

臨床情報

 31歳,女性.5~6年前に右足底前方部に「ほくろ」が生じているのに気付いた.その後,徐々に増大してきた.

 初診時,右足底の拇趾球部内側寄りの部位に,大きさ5.6×5.2mmの濃褐色の類円形状の色素斑が認められた(図2).形状の不整や色調の濃淡差は目立たない.

今月の症例

手背に生じた皮膚腺病の1例

著者: 大嶋英恵 ,   原田研 ,   花田勝美 ,   今田吏津子 ,   福士一彦

ページ範囲:P.1012 - P.1014

66歳,男性.7か月前から右手背に紅色結節,腫脹出現.徐々に潰瘍形成,疼痛を伴うようになったため受診した.皮膚組織片のPCR法ではMycobacterium tuberculosis陽性,抗酸菌培養で4週間後に同菌を分離同定した.右手X線検査では手根中手関節および手根間関節に骨融解像を認めた.皮膚生検では真皮中層から深層に類上皮細胞を伴う壊死巣を認めた.以上より皮膚腺病と診断した.イソニアジド,リファンピシン,ピラジナミド,エタンブトールの抗結核薬4剤併用にて治療し,1か月後には結節,潰瘍は縮小,腫脹および疼痛は消失した.

高校柔道部員にみられたTrichophyton tonsuransによるケルスス禿瘡の1例および体部白癬の1例

著者: 角谷廣幸 ,   角谷孝子 ,   望月隆

ページ範囲:P.1015 - P.1018

高校柔道部員にみられたTrichophyton tonsurans(T. tonsurans)によるケルスス禿瘡の1例および体部白癬の1例を経験した.従来本邦では,T. tonsuransによる白癬の報告例は少なかったが,近年,中高生の柔道部員やレスリング部員間の流行が相次いで報告されてきており,そのなかでケルスス禿瘡を発症する例が散見されている.また,T. tonsuransによる体部白癬は,顔,頸部,上胸,四肢に多いが,無症候の頭部の皮膚,毛孔,毛に菌が証明される例も多く,注意が必要である.今回,菌の同定に利用した核ribosomal DNAのITS領域の制限酵素分析法(PCR-RFLP法)は,短時間で結果が示されるため,治療方法の選択,感染の流行対策,治癒判定の方法などを考慮する際に菌種による配慮が効果的にでき,迅速診断の方法の一つとして有用であると考えられた.

症例報告

長年の掻破により悪化したアミロイド苔癬の1例

著者: 中井章淳 ,   沖守生 ,   岸本光夫

ページ範囲:P.1019 - P.1021

69歳,男性.20年ほど前より両下腿伸側にそう痒を伴う多数の丘疹が集簇して出現,拡大した.病理組織学的検査では,著明な過角化と表皮肥厚,表皮突起の延長がみられた.また表皮・真皮境界部から真皮乳頭部にかけて淡いピンク色に染色された無構造物質がみられた.同物質はダイロン染色にて橙赤色に染色され,偏光顕微鏡下で複屈折を示した.アミロイド苔癬と診断し,プロピオン酸クロベタゾール(デルモベート(R))外用,フルドロキシコルチド(ドレニゾンテープ(R))貼布にて3か月後,そう痒は消失し,個々の丘疹はやや扁平化した.

手指アミロイドーシス―melanomain situとの鑑別を要した1例

著者: 長阪晶子 ,   島田眞路

ページ範囲:P.1022 - P.1024

52歳,男性.初診約4年前より,左示指の摩擦部位に自覚症状のない淡い灰褐色斑が出現し色調が濃くなるとともに徐々に拡大した.臨床的にmelanoma in situなどを疑ったが,病理組織像にて真皮乳頭層に限局してアミロイド集塊が認められ,皮膚限局性アミロイドーシスと診断した.現在までに自験例のような皮疹を認めた症例の報告はなかったため,手指アミロイドーシスとして報告する.

タクロリムス外用が有効であった線状苔癬の2例

著者: 津福久恵 ,   藤本典宏 ,   三重野英樹 ,   大西善博 ,   多島新吾

ページ範囲:P.1025 - P.1027

症例1:22歳,女性.約1年前に生じ,変化を認めない左頬部の線状の皮疹を主訴に受診した.左内眼角から左上口唇にかけて線状の紅斑を認め,紅斑上には帽針頭大から粟粒大の丘疹が多発.病理組織学的に,表皮に著変なく,毛包および脂腺周囲にリンパ球・組織球主体の細胞浸潤と毛包周囲に巨細胞を認めた.症例2:60歳,女性.4年前に生じ,徐々に拡大してきた右大腿の帯状の皮疹を主訴に受診.右大腿前面から膝関節内側にかけて帯状に紅色から褐色調の扁平丘疹が多発.病理組織学的に線状苔癬と診断.2症例ともに,タクロリムス外用開始4~6週間後,皮疹は著明に改善した.タクロリムス外用が線状苔癬の治療に有効であることを判明しえた症例であった.

アセトアミノフェンによるアナフィラキシーの1例

著者: 里博文 ,   北村奈穂 ,   大橋明子 ,   市橋正光

ページ範囲:P.1029 - P.1031

アセトアミノフェンは比較的安全な解熱鎮痛薬として頻用されており,また市販の総合感冒薬の大部分に含まれている.使用頻度に比してその薬疹の報告は少ないが,その程度は非常に重篤な例を含んでいる.今回われわれは市販の総合感冒薬内服後にアナフィラキシーショックを起こし,その含有各成分およびアスピリンに対して,内服誘発テストを行ったところアスピリンでは陰性で,アセトアミノフェンの即時型アレルギーによるものであると確認できた.

コリン性蕁麻疹を伴った特発性後天性全身性無汗症の1例

著者: 早川郁子 ,   水野美幸 ,   山田瑞貴 ,   白崎文朗 ,   稲沖真 ,   竹原和彦 ,   中村聡

ページ範囲:P.1032 - P.1034

17歳,男性.8か月前より体が温まったときの無汗とチクチクとした痛みを自覚していた.温熱負荷による発汗試験で体幹・四肢の無汗とコリン性蕁麻疹の出現を認めた.無汗部皮膚生検組織像では汗腺の変性像はなく,汗腺分泌部および導管周囲のリンパ球浸潤を認めた.無汗の原因となる基礎疾患や無汗以外の自律神経機能異常がないことから,特発性後天性全身性無汗症と診断した.ステロイドパルス療法を2クール施行し,症状は一時軽快した.しかし,その後症状が再燃したため,ステロイドパルス療法のみでは効果は一時的であると考え,再度ステロイドパルス療法施行後にプレドニン30mg/日の投与を継続した.症状は軽快し,現在プレドニン7.5mg/日まで漸減しているが再燃はない.

水疱を伴った蕁麻疹様血管炎の1例

著者: 長谷川優佳 ,   樋口実穂 ,   江崎智香子 ,   市来善郎 ,   高木肇 ,   北島康雄 ,   和泉秀彦

ページ範囲:P.1035 - P.1038

36歳,男性.初診の2か月前よりそう痒を伴う蕁麻疹様紅斑が顔面を除く全身に出現し,2週間前から両側大腿部の紅斑上に水疱が出現した.血清補体価は正常.抗デスモグレイン1抗体,抗デスモグレイン3抗体,抗BP180抗体はすべて陰性.病理組織で表皮下水疱,leukocytoclastic vasculitisを認めた.蛍光抗体直接法では表皮真皮境界部にC3の顆粒状沈着,真皮網状層の血管周囲にC3の沈着が認められた.蕁麻疹様血管炎と考え,抗アレルギー剤内服,ステロイド剤外用を行ったところ,皮疹は3か月後には完全に消退した.自験例のごとく水疱形成を認めた蕁麻疹様血管炎例は稀であると考えた.

消化器症状を認めなかった小児腸管Behçet病

著者: 高田智也 ,   池田光徳 ,   横山雄一 ,   小玉肇

ページ範囲:P.1039 - P.1041

14歳,女児.8歳頃より口腔内アフタが出没していた.13歳時には肛門周囲の潰瘍が出現し,14歳時には大陰唇に潰瘍が生じた.消化器症状を認めなかったが,大腸内視鏡検査でBauhin弁部に抜き打ち型の潰瘍を認めた.小児Behçet病では消化器病変を高率に合併することから,消化器症状を欠いた症例においても腸病変の精査が必要と考えた.コルヒチンの投与により諸症状が軽快した.

Hydroxyurea投与中に潰瘍を形成したnecrobiosis lipoidicaの1例

著者: 吉田亜希 ,   菅原祐樹 ,   平山隆士 ,   小野寺英恵 ,   黒澤誠一郎 ,   赤坂俊英

ページ範囲:P.1043 - P.1045

54歳,女性.局面上に大小の難治性潰瘍を形成した両下腿のnecrobiosis lipoidicaの1例を報告した.組織像はnecrobiotic granulomaと血管壁の肉芽腫像がみられた.本態性血小板血症にてハイドロキシウレア(HU)1,000mg/日の内服開始,18か月後より両下腿に褐色斑が出現した.3年後には両下腿に潰瘍を形成し拡大,増数してきた.潰瘍はHU中止後,約2か月で上皮化した.HUが潰瘍形成の原因と考えた.

成人に単発した皮下型環状肉芽腫の1例

著者: 鈴木洋美 ,   玉木毅

ページ範囲:P.1047 - P.1049

49歳,女性.10年前に左大腿部内側に虫刺の既往あり.5年前より同部位に皮下結節を触れるようになり,徐々に増大してきた.病理組織学的には,皮下脂肪織内に膠原線維の類壊死とそれを取り囲むpalisading granulomaの像を認め,一部に血管炎を伴っていた.類壊死部にはムチンの沈着がみられた.生検後結節は縮小傾向を示した.皮下型環状肉芽腫の単発例と考えられるが,本邦での報告は比較的稀である.

結節性筋膜炎の2例

著者: 吉田佐保 ,   櫻根純子 ,   松本千穂 ,   政田佳子 ,   伊藤裕啓 ,   大和谷淑子

ページ範囲:P.1051 - P.1054

15歳,男性の後頭部,および69歳,男性の上腕に生じた結節性筋膜炎を経験した.これら2例を含めた1994~2003年までの本邦全科領域における結節性筋膜炎の報告77例に関し,患者の年齢,性別と発生部位の統計を取り考察した.結節性筋膜炎はその発育の速さや病理組織学的所見より軟部組織の悪性腫瘍との鑑別を要するが,その本態は線維芽細胞の良性反応性増殖である.頭頸部,乳房など整容的に問題となる部位の発生も多いことから,誤診による過大な治療がないよう注意を要すると思われた.

Basedow病に併発した後天性真皮メラノサイトーシスの1例

著者: 水谷三記子 ,   北村玲子 ,   山田伸夫 ,   島田眞路

ページ範囲:P.1055 - P.1057

34歳,女性.既往歴としてBasedow病あり.約3年前より背部の青色斑を自覚,鎖骨部にも拡大してきたため受診.初診時,背部から肩,鎖骨部にかけてベスト状の青色斑を認めた.組織学的に真皮中層から深層にかけてメラノサイトが散見され,後天性真皮メラノサイトーシスと診断した.青色斑出現より数年前から矯正下着を着用していたことから皮下出血,friction melanosisも考慮したが,病理組織より否定的であった.背部に生じた後天性メラノサイトーシスについて,合併症も含め若干の文献的考察を行った.

穿孔性皮膚症の2例

著者: 宇宿一成 ,   小丸幸一郎 ,   上村伸一郎

ページ範囲:P.1058 - P.1060

症例1:47歳,男性.腎機能不全で血液透析治療中.背部にそう痒感を伴う角化性丘疹が出現した.背部と両下肢に直径1~4mmで毛孔一致性の角化性丘疹と境界明瞭な扁平隆起局面が散在する.病理組織学的検査所見より穿孔性毛包炎と診断した.マキサカルシトール軟膏外用で改善した.

 症例2:47歳,男性.糖尿病でインスリン治療中.体幹,四肢にそう痒感を伴う暗紅色丘疹が出現した.体幹,四肢に,黒色調の角栓を付着する暗紅色丘疹が散在していた.腎不全はなく血液透析は受けていない.病理組織学的検査所見より反応性穿孔性膠原線維病と診断した.

尿閉をきたした帯状疱疹の1例

著者: 服部友保 ,   永井弥生

ページ範囲:P.1061 - P.1063

74歳,男性.初診4日前より排尿困難があり,徐々に増悪し無尿となったため当院を受診した.受診時右臀部から陰嚢後面にかけ,帯状に紅暈を伴う水疱が集簇していた.帯状疱疹に伴う尿閉と考え,バルーンカテーテル留置,プレドニゾロン30mg/日より内服開始した.その後の精査にて神経因性膀胱と診断され,塩酸タムスロシン,臭化ジスチグミン,塩化ベタネコール内服などの治療を行ったが,症状改善までに約6週間を要した.帯状疱疹に合併する膀胱障害の多くは2~3週間以内で改善するとされるが,時に遷延する症例もあり注意を要する.

イトラコナゾールの間歇投与が奏効したMicrosporum gypseumによるケルスス禿瘡の1例

著者: 佐藤友隆 ,   石井健 ,   森本亜玲 ,   薗部陽 ,   松尾聿朗

ページ範囲:P.1065 - P.1067

6歳,男児,千葉県富津市在住.初診の2週間前頃より頭部の皮疹に抗生剤含有副腎皮質ホルモン軟膏を外用していたが軽快しないため当科を受診.初診時,頭頂部に20×20mm大の比較的境界明瞭な,脱毛を伴う肉芽腫性腫瘤を認めた.表面は暗紅色で小膿疱より膿汁の排出があり,毛髪は容易に抜けた.病変部の毛髪のKOH直接鏡検と培養を施行,Microsporum gypseumによるケルスス禿瘡と診断した.患者が小児のため,薬剤の連日内服が困難と考え,イトラコナゾール100mg/日,週1回の間歇投与を試み,計4回で皮疹は著明に改善した.

多発性Bowen病の姉妹例

著者: 吉田益喜 ,   川田暁 ,   手塚正

ページ範囲:P.1068 - P.1070

姉:94歳.1995年10月に右前腕の有棘細胞癌(SCC),右下腿のBowen病を,2001年4月に左頬部のSCC,2002年8月に両側下腿のBowen病を当院にて手術した.妹:79歳.1996年3月に腹部の3か所Bowen病を,2002年10月に右大腿と右下腿のBowen病を当院で手術した.姉妹の既往歴として砒素に関する特記すべきことはなかった.多発性Bowen病の姉妹発症例は稀であったので報告した.

手背に発症し,急速にintransit metastasisをきたした有棘細胞癌

著者: 干谷奈穂 ,   尾藤利憲 ,   福永淳 ,   鶴顕太 ,   市橋正光 ,   辻本浩

ページ範囲:P.1071 - P.1074

61歳,女性.2000年7月に,数十年前から存在していた右中指の紅色局面が隆起していることに気付いた.局面は急速に隆起,増大し,8月下旬には,同様に以前から存在していた右母指の紅色局面からも腫瘤が生じた.9月には右腋窩に,10月には右肘窩・前腕および上腕に硬貨大までの皮下腫瘤がほぼ同時に出現した.同年10月30日近医にて右中指腫瘤の生検施行,有棘細胞癌と診断され,当科に転院となった.11月22日に右前腕を近位1/3で切断し,術後,CAV療法を行うも,終了直後より右腋窩の腫瘤が急速に増大した.2001年1月31日右腋窩腫瘍切除術施行,硫酸ペプロマイシン筋注と放射線療法を併用し,皮膚腫瘍はほぼ消退したため,同年4月に退院となった.しかし,6月には右上肺野に肺転移が出現した.2002年7月下旬に転移性肺腫瘍による呼吸不全のため永眠された.

TCA,フェノールによるケミカルピーリングにて加療した外陰部Paget病の3例

著者: 米井希 ,   山本有紀 ,   上中智香子 ,   古川福実

ページ範囲:P.1075 - P.1078

外陰部Paget病に対する根治的治療は外科的全切除であるが,高齢化社会を迎えた現在,さまざまな合併症を持つ患者も多く,根治術を望めない場合もある.われわれは,外陰部Paget病に対する非観血的治療の一つの選択肢として,トリクロロ酢酸(TCA),フェノールを用いたケミカルピーリングによる加療を3例試みた.症例1では組織学的に表皮内の腫瘍細胞が消失した.症例2ではびらん面が上皮化することにより疼痛が軽減され,QOLが改善した.症例3では手術承諾までの期間の腫瘍の浸潤を抑制することができた.

ステロイド少量内服で腫瘤の縮小をみた頭部血管肉腫の1例

著者: 新田悠紀子

ページ範囲:P.1079 - P.1081

80歳,男性.頭頂部から後頭部・額に暗赤色斑,隆起性紅斑局面が出現した.組織像にて血管肉腫と診断.1997年7月22日~1998年2月2日,IL-2の動注と局注,および電子線療法にて消退した.1998年11月2日右側頭部に腫瘤が出現したため,IL-2の局注を施行し平坦化した.1999年6月右耳介後部にも腫瘤が生じ,IL-2の局注をしたが,消退しなかった.プレドニゾロン(PSL)10mg/日をIL-2の局注と併用し,腫瘤は扁平化した.2000年5月31日に,IL-2の副作用による全身浮腫をきたし,PSL増量したところ,浮腫は消退した.その後,PSL15mg/日の内服維持にて腫瘤形成なく,発症より5年3か月間生存した.死因は誤飲性肺炎後の心不全であった.血管肉腫のステロイド療法は,自験例を含め6例で,全例に腫瘤の縮小化が認められた.

全身皮膚電子線照射が奏効した毛包性ムチン沈着症を伴った菌状息肉症の1例

著者: 清水純子 ,   河井一浩 ,   志村英樹 ,   伊藤雅章

ページ範囲:P.1083 - P.1086

58歳,男性.2年前から,毛包性丘疹および毛包性丘疹の集簇した局面が全身に多発.皮膚生検で,表皮向性を伴う異型リンパ球の浸潤と毛包性ムチン沈着症がみられ,毛包性ムチン沈着症を伴った菌状息肉症と診断.リンパ節,他臓器病変なし.副腎皮質ステロイド外用剤とRe-PUVA療法により治療していたが,皮膚腫瘤の形成がみられるようになり,左頬部の腫瘤が増大してきたため,同部に局所電子線照射を施行.その後,全身の皮膚腫瘤に対して全身皮膚電子線照射を施行した.皮膚病変はすべて消退し,1年間再発を認めない.

爪部に生じたamelanotic melanomaの1例

著者: 高橋基 ,   岡田悦子 ,   田村敦志 ,   石川治

ページ範囲:P.1087 - P.1089

72歳,女性.初診の8か月前,右拇指爪甲が脱落し,爪床に淡紅色の肉芽腫様結節が出現した.有棘細胞癌を疑い生検したところ,表皮真皮境界部から真皮内に大型の異型細胞が浸潤増殖していた.胞巣内にメラニン顆粒はみられなかったが,免疫組織学的に腫瘍細胞はHMB-45,S-100蛋白陽性を示し,amelanotic melanoma(AM)と診断した.右拇指切断術および腋窩リンパ節郭清術を行った.術後補助化学療法としてDAVフェロン療法を実施中であるが,現在まで再発や転移はみられない.爪部に生じるAMの文献的考察とともに報告した.

生後1か月にて診断できた伴性遺伝性魚鱗癬の1例

著者: 安藤典子 ,   島田眞路

ページ範囲:P.1090 - P.1092

生後1か月,男児.生後まもなくよりほぼ全身の皮膚が乾燥し,落屑がみられるようになった.家族内に同症状を呈する者はいない.初診時,顔面,掌蹠を除くほぼ全身の皮膚に鱗屑を認め,四肢伸側のみならず屈側にもみられた.特に頭部,側腹部は顕著であった.病理組織では,不全角化を伴わない角質肥厚と明瞭な顆粒層を認めた.患児のリンパ球ステロイドサルファターゼ(STS)は明らかに低値であったため,伴性遺伝性魚鱗癬と診断した.母のSTS活性値は,正常女性の基準値より低く,保因者と考えられた.伴性遺伝性魚鱗癬の確定診断,および保因者診断にSTS活性の測定が有用であった.

Punctate porokeratotic keratodermaの1例

著者: 森本亜玲 ,   佐藤友隆 ,   松尾聿朗

ページ範囲:P.1093 - P.1095

69歳,男性.20歳頃より両手掌に突起性角化性小丘疹を自覚.初診時,両手掌の母指球部,小指球部を中心に直径1mmほどの白色棘状角化性小丘疹が多発していた.手掌以外に発疹を認めず,家族に同症はない.丘疹の組織像は,cornoid lamella様の角柱を認めるが,porokeratosisにみられる表皮細胞の異常角化や配列の乱れはなかった.Palmoplantar keratodermaの1亜型のpunctate porokeratotic keratodermaと診断し,現在尿素含有軟膏とVit D3軟膏外用で経過観察中である.

臨床統計

獨協医科大学皮膚科における悪性腫瘍の統計学的検討

著者: 鶴見純也 ,   大塚勤 ,   山﨑雙次

ページ範囲:P.1096 - P.1098

1975年の開院当初から2001年までの当科で病理組織学的に診断しえた皮膚悪性腫瘍1,365例を統計学的に検討し,以下の結果を得た.1) 悪性腫瘍総数は,ここ10年で年間50~80人であり,以前よりは増加傾向がみられるが,最近10年間では著変がなかった.2) 腫瘍別では皮膚付属器腫瘍が最近10年間でも増加傾向がみられた.3) 日光露光部発症の皮膚付属器腫瘍が近年増加傾向にあり,一方非日光露光部では差がなかった.4) 日光露光部発症の比率は有棘細胞癌よりむしろ皮膚付属器腫瘍により多かった.以上の結果より,近年日光による発癌が増加傾向にあると考えられた.

治療

顆粒球除去療法(GCAP)が奏効した壊疽性膿皮症の1例

著者: 石川博康 ,   熊野高行 ,   鈴木康之 ,   間部克裕 ,   鈴木昌幸 ,   門馬節子 ,   門馬孝

ページ範囲:P.1099 - P.1101

30歳,女性.15歳時から潰瘍性大腸炎(UC)を加療中であったが,28歳時第一子出産後にUCの増悪とともに壊疽性膿皮症(PG)を併発した.ステロイド抵抗性であった両疾患の増悪に対し顆粒球除去療法(GCAP)が著効した.5か月後にPGのみ再燃をみたため,再度GCAPを施行したところ,速やかな上皮化をみた.2回目のGCAP施行後約2年が経過したが,UC,PGともに再燃は認めていない.GCAPをはじめとした白血球系細胞除去療法は活性化白血球を除くことで炎症を抑制すると考えられており,ステロイドの増量を必要としないため難治性のPGに試みるべき治療法と思われる.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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