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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科58巻13号

2004年12月発行

雑誌目次

連載

Dermoscopy Specialistへの道Q&A(第9回)

著者: 斎田俊明 ,   宮嵜敦

ページ範囲:P.1113 - P.1115

Qどんなダーモスコピー所見が認められますか?

診断は何でしょう

臨床情報

 47歳,男性.20歳代に右足底に径1mm程度の大きさの色素斑が生じているのに気付いた.その後,徐々に増大してきた.

 初診時,右足底内側の土踏まず後方部に,大きさ4.5×3mmの,類円形の褐色斑が認められた(図2).境界はやや不鮮明だが,形状の不整は目立たない.

Clinical Exercises・130―出題と解答

著者: 相場節也

ページ範囲:P.1178 - P.1178

出題と解答:相場節也(東北大学) 

259 以下の腫瘍のなかで,CD34が陽性となる腫瘍はどれか?

A:隆起性皮膚線維肉腫

B:solitary fibrous tumor

C:神経線維腫

D:皮膚線維腫

E:pleomorphic fibroma

F:Koenen tumor

今月の症例

心疾患を伴ったサルコイドーシスの1例

著者: 佐藤由実 ,   石崎純子 ,   繁益弘志 ,   原田敬之 ,   布田伸一

ページ範囲:P.1116 - P.1118

56歳,女性.約5年前,意識消失発作を契機にⅡ度房室ブロックと診断され,ペースメーカーを挿入.約4年前より顔面,下肢に皮疹が出現した.皮膚生検の結果,皮疹は局面型の皮膚サルコイド,また心病変は心内膜心筋生検により心サルコイドと診断した.心病変を有するサルコイドーシスはサルコイドーシス全体の死因の多くを占める.しかし通常,心所見のみから確診することが比較的困難であり,皮膚症状からの診断の重要性を改めて認識させられた.

Bromoderma tuberosumの1例

著者: 大坪紗和 ,   岸部麻里 ,   掘仁子 ,   伊部昌樹 ,   木ノ内基史 ,   橋本喜夫 ,   飯塚一 ,   小池且弥

ページ範囲:P.1119 - P.1121

67歳,男性.頭痛のため約10年前からブロムワレリル尿素を含む市販の鎮痛薬を大量に内服していた.両下腿に表面疣贅状に隆起し,暗赤色から褐色の厚い痂皮をつけた境界明瞭な結節を認めた.細菌,真菌,抗酸菌培養はすべて陰性.病理組織学的所見では表皮の肥厚,偽癌性増殖,真皮内に好中球主体の膿瘍の形成を認めた.血液検査で血中臭化物濃度が82mg/dlと中毒域を示し,本症例をBromoderma tuberosumと診断した.内服薬の中止により血中臭化物濃度は急速に減少し,それに伴い約4週で皮疹は改善した.

症例報告

乾燥シイタケ菓子によるシイタケ皮膚炎の2例

著者: 藤田繁

ページ範囲:P.1122 - P.1124

症例1:64歳,男性.乾燥シイタケ菓子を3日間食べた後に体幹,四肢にそう痒を伴う紅斑,紅色丘疹が出現し,掻破痕に一致した皮疹の線状配列がみられた.症例2:71歳,女性.乾燥シイタケ菓子を2日間食べた翌日から,体幹,四肢に強いそう痒を伴う線状に配列する典型的皮疹が出現した.大腿外側では線状の皮疹が融合して太い線状の局面を形成していた.2症例ともに抗アレルギー剤内服,ステロイド剤外用にて治癒した.シイタケ皮膚炎の原因物質は従来から加熱により容易に分解すると推論されている.原因のシイタケ菓子は製造時に加熱されており,シイタケ皮膚炎の原因物質の熱に対する易分解性を考察するうえで貴重な症例である.また,今後シイタケ皮膚炎の増加に注意する必要があると考えられる.

ワルファリンカリウムによる薬疹の1例

著者: 金沢博龍 ,   有川順子 ,   石黒直子 ,   川島眞

ページ範囲:P.1125 - P.1128

67歳,男性.心房細動,慢性心不全に対しワルファリンカリウム(ワーファリン(R))を内服開始約10週後に全身に紅斑と丘疹が出現し,眼球結膜の充血,口腔粘膜疹,咽頭痛,発熱,リンパ節腫脹を伴った.病理組織像はGVHD型反応.検査所見では肝障害,CRPの上昇,単球,好酸球の増加,異型リンパ球の出現を認めた.プレドニゾロン50mg/日の内服を行うが症状は持続し,トロンボテスト値の低下に伴いワーファリン(R)をいったん休薬したところ,症状は軽快傾向を示し,再開後に前腕,鼠径部に紅斑が再燃した.ワーファリン(R)中止1か月後には色素沈着化し,プレドニゾロンを2か月内服して中止した.自験例は臨床症状,臨床検査所見より薬剤性過敏症症候群も疑われたが,ヒトヘルペスウイルス6抗体価の上昇は認めなかった.Hypersensitivity syndromeに極めて類似した病像を示した薬疹と考えた.

マキサカルシトール外用で尋常性乾癬治療中に認めた高カルシウム血症

著者: 中田珠美 ,   小出まさよ ,   脇野修

ページ範囲:P.1129 - P.1132

病例1,83歳,男性.腎不全,C型肝炎,肺性心で通院中.74歳頃より,ステロイド外用剤で尋常性乾癬の治療をしている.2002年6月に紅皮症化し,マキサカルシトール軟膏を4g/日で外用を開始したところ,2か月後に血清Ca値が14.8mg/dlと上昇し,腎機能も悪化したため,中止した.症例2,55歳,男性.慢性腎不全で通院中.2001年8月より,四肢の尋常性乾癬に,ステロイド外用治療をしていた.2002年6月,体幹,頭皮に皮疹が拡大し,マキサカルシトール軟膏の外用を開始(2g/日)したが,使用量が徐々に増加し,9月に8g/日になった.10月,血清Ca値が10.4mg/dlと上昇し,2~4g/日に減量したが,12.3mg/dlと高カルシウム血症が悪化し,腎機能も増悪したため,中止した.両症例とも中止後,血清Ca値は下降し,腎機能は改善した.尋常性乾癬患者が腎不全を伴う場合,マキサカルシトール等ビタミンD3製剤で治療する際は高カルシウム血症に注意すべきと考えた.

ミコフェノール酸モフェチル内服にて軽快した難治性尋常性天疱瘡の1例

著者: 蘇原雅明 ,   大塚勤 ,   山﨑雙次

ページ範囲:P.1133 - P.1135

要約

 60歳,男性.2000年3月頃口腔内にびらん,体幹に水疱が多発した.臨床および組織学的所見,免疫染色所見より尋常性天疱瘡と診断した,以後トリアムシノロン,ベタメサゾン,デキサメサゾン,ミゾリビン,シクロスポリン,エンドキサン,DDSの投与,さらにステロイドパルス療法,ガンマグロブリン大量投与療法,エンドキサンのパルス療法など種々の治療を行うが寛解に至らなかった.デキサメサゾン12錠とミコフェノール酸モフェチル2gの内服を開始し,投与約4週後に皮疹の軽快とともに抗Dsg3抗体価が低下した.その後皮疹が増悪したため,完全寛解には至らなかったが,ミコフェノール酸モフェチルが有効と考えた.

血漿交換療法の効果をBP180ELISAで確認しえた水疱性類天疱瘡の1例

著者: 笠井麻希 ,   松村和子 ,   安藤佐土美 ,   有田賢 ,   秋山真志 ,   飯豊深雪 ,   清水宏

ページ範囲:P.1136 - P.1139

57歳,女性.当科初診時末梢血BP180ELISA値は125(cut off15)と高く,プレドニゾロン0.8mg/kg/日の内服療法のみでは水疱新生を抑えきれなかった.二重膜血漿交換直後から水疱新生は止まり紅斑も消退した.BP180ELISAによる血中自己抗体値は臨床症状と相関し,治療の良い指標となった.ステロイド大量投与にもかかわらず皮疹が改善しない水疱性類天疱瘡に対して血漿交換を施行する際に,BP180ELISAを用いた血中抗体値測定が有用であると考えた.

MRIが潜行筋病変検出に有効であった小児皮膚筋炎の1例

著者: 加藤一郎 ,   本田まりこ ,   新村眞人 ,   望月惠子

ページ範囲:P.1140 - P.1142

5歳男児.初診時,顔面に淡紅色浮腫性紅斑があり,上背部に不完全脱色素斑,両手指背にGottron徴候を認めたが筋力の低下はなかった.血液検査では軽度のALT,AST,LDHの上昇とアルドラーゼの上昇を示した.生検にて,いずれも基底層の一部に液状変性がみられ,蛍光抗体直接法では表皮真皮境界部にIgMおよびC3の顆粒状沈着を認めた.MRIT2強調画像,脂肪抑制画像にて両側大腿筋の筋炎所見があり,小児皮膚筋炎と診断した.プレドニゾロン投与(10mg/日)で治療開始したところ,筋原性酵素は正常化したが,MRI所見上で筋炎所見が増悪したため,ベタメタゾン投与(1mg/日)に変更した.1か月半後,皮膚症状,筋原性酵素値,MRI所見のいずれもほぼ改善した.

Budd-Chiari症候群を合併した壊疽性膿皮症の1例

著者: 金沢博龍 ,   檜垣祐子 ,   川島眞 ,   長原光

ページ範囲:P.1143 - P.1146

36歳,男性.1994年から右大腿に小豆大の結節が出現し,自潰と瘢痕形成を繰り返し局面状に拡大した.2000年3月3日から下血があり,消化器内科に入院精査中に当科を紹介受診した.初診時,右大腿に小潰瘍を伴う灰褐色局面,左臀部に痂皮を付着する淡紅色の浸潤局面を認めた.皮膚生検病理組織像では表皮壊死と,真皮全層にわたる好中球を混じた単核球主体の炎症細胞浸潤を認め,壊疽性膿皮症と診断した.プレドニゾロン35mg/日の内服にて軽快し,現在5mg/日で再燃はない.内科での精査の結果,炎症性腸疾患の合併はなく,下大静脈の狭窄,肝腫大,食道静脈瘤の存在よりBudd-Chiari症候群と診断された.本症との合併はこれまでに報告がないが,両疾患に共通の病態として血栓形成傾向が関与した可能性を考えた.

皮膚病変を伴ったクローン病の2例

著者: 藤本栄大 ,   海老原睦仁 ,   原大 ,   藤本典宏 ,   小松威彦 ,   多島新吾 ,   吉村昇 ,   田島一美

ページ範囲:P.1147 - P.1149

症例1は55歳女性で,皮疹は右下腿の皮下硬結.転移性クローン病と診断.症例2は60歳女性.皮疹は両下腿伸側中心に多発する有痛性の皮下硬結で,結節性紅斑と診断した.クローン病患者に生じ,臨床的に結節性紅斑様の皮膚病変を呈した両者について,文献的に考按を加えた.結節性紅斑で肉芽腫を形成する傾向が強い皮疹や,病理学的に非乾酪性肉芽腫を呈する皮膚病変を診た場合,基礎疾患としてクローン病の存在を疑う必要があるかもしれない.

顕微鏡的多発血管炎の2例

著者: 浅野聖子 ,   石橋睦子 ,   檜垣祐子 ,   杉山裕子 ,   川島眞

ページ範囲:P.1150 - P.1153

症例1,76歳,女性.10か月前より微熱が続き,下腿の浮腫と紫斑が出没するようになった.1か月前より下腿の浮腫が増強し,高度の腎機能障害が判明したため内科に入院し,半月体形成性腎炎と診断された.両下肢には小豆大までの浸潤を触れる紫斑が多発し,皮膚生検にて壊死性血管炎を認めた.症例2,68歳,女性.6年前より間質性肺炎があり,10か月前より下腿に浮腫を生じ紫斑が出没するようになった.精査のため内科入院中,両下腿に大豆大までの紫斑が多発し,皮膚生検にて血管壁の変性と出血を認めた.2例ともMPO-ANCA陽性で顕微鏡的多発血管炎と診断した.皮膚生検組織の蛍光抗体法は陰性,免疫組織化学的には症例1のみ好中球,および血管周囲に好中球エラスターゼの発現を認め,ミエロペルオキシダーゼは症例1,2ともに陽性であった.

Mycobacterium avium感染を合併した胸部のリンパ管型スポロトリコーシス

著者: 山本洋美 ,   妹尾明美

ページ範囲:P.1154 - P.1156

55歳,男性.右胸部に直径1.5cmと2cmの皮下腫瘤が出現.切除し,真菌培養にてSporothrix schenckiiが同定された.一方,胸部中央に膿疱があり,抗酸菌培養にてMycobacterium aviumが検出された.イトラコナゾール内服するも2か月後同様の腫瘤が出現し,再度摘出した.合併する非定型抗酸菌症にスパルフロキサシンの内服を併用して,膿疱は治癒した.

確定診断にPCR法が有用であった帯状疱疹の1例―水痘-帯状疱疹ウイルスの同定法のまとめ

著者: 香川真理子 ,   伊東秀記 ,   井上奈津彦 ,   松尾光馬 ,   本田まりこ ,   上出良一 ,   中川秀己

ページ範囲:P.1157 - P.1159

帯状疱疹は通常,特徴的な症状や神経の走行に沿った皮疹部の分布から臨床診断が行われ,蛍光抗体によるウイルス抗原の検出,水疱からのウイルスの分離および遺伝子解析,ペア血清で確定診断をつける.今回,われわれは神経の走行からの診断が困難で遺伝子学的に診断を行った帯状疱疹の1例を経験したので報告する.近年,臨床診断のみならず科学的根拠をもって診断を行い,患者に説明を要求される場合が増加している.自験例のように他疾患の鑑別が必要で,水疱内容物の採取が困難な場合,PCR法は確定診断に有用である.

マキロン(R)による接触皮膚炎を契機に尋常性疣贅が治癒した1例

著者: 野見山朋子 ,   野田洋介 ,   岸本三郎 ,   安野洋一

ページ範囲:P.1160 - P.1162

20歳,女性.幼少期より右肘窩,右上腕の丘疹を自覚していた.2年前より痒みを認め掻破しているうちに数が増加してきたため当科を受診した.生検にて尋常性疣贅と診断した.生検後,患者が生検部位をマキロンにて自己消毒を行ったところ消毒部位に一致して熱感を伴う紅斑が出現し,その後接触皮膚炎部および接触皮膚炎を生じていない部位の尋常性疣贅は自然消退した.マキロンの成分である塩酸ジブカインにパッチテスト陽性反応がみられた.自験例では尋常性疣贅の自然消退した機序につき若干の考察を行った.

ステロイドパルス療法に抵抗性を示した自己免疫性肝炎合併全身性エリテマトーデスの1例

著者: 村田真希 ,   平野貴士 ,   越後岳士 ,   白崎文朗 ,   長谷川稔 ,   稲沖真 ,   佐藤伸一 ,   竹原和彦

ページ範囲:P.1163 - P.1166

30歳,女性.日光曝露後,蝶形紅斑,脱毛,耳介・上腕の浸潤性紅斑,手指の腫脹,発熱,倦怠感,関節痛が出現した.上腕皮膚の病理組織学的検査では,液状変性と真皮上層のリンパ球浸潤を認め,蛍光抗体法直接法は陽性であった.臨床検査では,白血球数減少,抗核抗体・抗一本鎖DNA抗体陽性,C3cの減少を認めたが,胸膜炎,心膜炎,腎障害,中枢神経障害等の臓器障害は認めなかった.また,ループスアンチコアグラント陽性,深部静脈血栓症を認め,全身性エリテマトーデスと抗リン脂質抗体症候群の合併と診断した.ステロイドパルス療法にて白血球数や抗一本鎖DNA抗体価,C3c値は次第に改善したが,発熱,入院時は正常であった肝逸脱酵素の上昇,抗平滑筋抗体が認められたため自己免疫性肝炎の合併と診断した.ステロイド治療に抵抗性を示すため,シクロスポリン内服を併用し寛解した.

Disseminated superficial porokeratosisの2例

著者: 桜井直樹 ,   ,   鳥居秀嗣

ページ範囲:P.1167 - P.1169

症例1:72歳,男性.約50年前よりの全身の褐色皮疹.症例2:75歳,男性.十年以上前よりの多発褐色皮疹.2例とも既往歴に特記すべきことなく,家系内に同症はなく,皮疹は露光部・非露光部に関係なく分布していた.過去に表在播種型(disseminated superficial porokeratosis:DSP)の悪性化率は少ないとする記載が多かったが,過去20年間に報告されたDSP54例に関して検討した結果,22%に悪性化率を認め,むしろ高率であり長期にわたる注意深い経過観察が必要と考えられた.

Elephantiasis nostrasの1例

著者: 清水智子 ,   長坂武 ,   中捨克輝 ,   谷川瑛子 ,   天谷雅行 ,   田中勝

ページ範囲:P.1170 - P.1172

61歳,女性.卵巣癌術後より生じ20年間持続した両下肢のリンパ浮腫と,初診2年前より左下肢の骨髄炎手術痕部が潰瘍化し局所感染を繰り返したことに加え,不衛生,運動不足などが原因でelephantiasis nostorasを発症したと考えた.弾性包帯による圧迫と安静によるリンパ浮腫・静脈系うっ滞の改善と局所の洗浄にて皮疹は改善傾向を示した.本症は病態形成にさまざまな要因が関与しており,圧迫療法やリンパ流増強マッサージ,エトレチナート外用・内服,外科的治療など個々の症例に応じた治療法を選択することが重要で,適切な治療が遅れるほど難治となるため,早期治療も重要である.

女性の外陰部の硬化性萎縮性苔癬の3例

著者: 倉田ふみ ,   檜垣祐子 ,   川島眞

ページ範囲:P.1173 - P.1175

症例1:74歳,女性.右大陰唇内側のそう痒を伴う脱色素斑.症例2:53歳,女性.左大小陰唇から膣前庭のそう痒を伴う不完全な脱色素斑.症例3:56歳,女性.小陰唇内側のそう痒を伴う小豆大の白色局面.組織学的には3例とも表皮の平坦化,表皮突起の消失と液状変性,真皮上層の浮腫と,その下層のリンパ球浸潤を認めた.外陰部硬化性萎縮性苔癬(LSA)と慢性湿疹,ロイコプラキアとの鑑別について述べるとともに,外陰部LSAがロイコプラキア,有棘細胞癌の発症母地となりうることを念頭に置いた取り扱いの重要性を強調した.

足底に生じた若年性黄色肉芽腫の1例

著者: 長谷川聡 ,   奥山隆平 ,   相場節也 ,   田上八朗 ,   末武茂樹

ページ範囲:P.1176 - P.1178

生後7か月,男児.2週間前頃から左足底に小結節が出現し,初診時左足底に1.5mm大のほぼ皮膚色の光沢のある小結節を認めた.2か月後,小結節は径4mmに増大したため全摘した.病理組織学的に,真皮全層にわたり,主として組織球と巨細胞からなる細胞集団を認めた.組織球や巨細胞はCD68,ライソザイムが陽性,S100蛋白,CD1aは陰性で若年性黄色肉芽腫と診断した.本症例のように足底に生じた単発性若年性黄色肉芽腫は稀であり報告する.

腫瘤型石灰化上皮腫の1例

著者: 江内田智子 ,   石渕裕久 ,   清水晶 ,   永井弥生 ,   石川治

ページ範囲:P.1179 - P.1181

59歳,男性.初診4か月前より前額部に紅色皮疹が出現し,徐々に隆起した.前額部中央の髪際部に30×20×17mm,ドーム状に隆起する暗紫紅色の腫瘤があり,生検組織の病理組織学的所見より石灰化上皮腫と診断した.腫瘤型石灰化上皮腫は比較的頻度の低い臨床病型である.腫瘤型をきたす理由として,皮下組織の少ない部位で皮表に向かって突出する可能性,真皮の弾力性が少なく周囲皮膚を伸展させるといった可能性を考えた.

Apocrine ductal carcinomaの1例―本邦報告例のまとめ

著者: 安齋眞一 ,   菊地憲明 ,   眞鍋求

ページ範囲:P.1182 - P.1186

Apocrine ductal carcinomaは乳腺に生じるductal carcinomaと同様の組織像を示す皮膚原発の悪性腫瘍である.われわれは73歳,女性の頭部に生じた本腫瘍の1例を経験した.そこで,本腫瘍の疾患概念を検討するとともに,本邦でアポクリン腺癌として報告されている原著論文のなかで,本腫瘍と診断される症例41例を渉猟し,臨床的特徴を解析した.その結果,興味深いことに,本腫瘍は男性に多く(83%),好発部位は腋窩(61%)であることが判明した.今後はアポクリン分化を示す皮膚原発性悪性腫瘍について,組織所見を元に明確に診断し,その臨床的特徴を検討していく必要があろう.

甲状腺癌を合併した低悪性度脂腺癌の1例

著者: 林昌浩 ,   石澤俊幸 ,   鈴木真彦 ,   安齋眞一 ,   三原一郎

ページ範囲:P.1187 - P.1190

80歳,女性.約20年前より存在し,3か月前から急に増大してきた腫瘍のため当科を受診.初診時左下顎部に径18mm,黄色痂皮を付着し紅色で易出血性の有茎性腫瘤を認めた.組織学的に,真皮内に小葉状に増生する比較的境界明瞭な腫瘍巣があり,構成する細胞は好塩基性細胞が主体でところどころに泡沫状細胞を混じ,核異型・核分裂像を示していた.泡沫状細胞はズダンⅢ染色陽性であった.以上より低悪性度脂腺癌と診断した.全身検索にて甲状腺腫瘍を指摘され,切除したところ濾胞癌であった.低悪性度脂腺癌は近年提唱された概念である.また,Muir-Torre症候群に生じる脂腺腫瘍は自験例のような低悪性度脂腺癌の組織像を呈することが少なくないため,内臓悪性腫瘍についても今後も留意して検索・経過観察する必要があると考えた.

有茎性結節を伴った乳房外Paget癌の1例

著者: 柳輝希 ,   青柳哲 ,   秦洋郎 ,   松村和子 ,   秋山真志 ,   清水宏

ページ範囲:P.1191 - P.1193

59歳,男性.右陰囊部に急速に増大する有茎性結節が出現,近医にて切除したところ,腺癌の皮膚転移との病理報告であったため,当科を紹介受診した.初診時,陰囊から陰茎基部に紅斑,脱色素斑を認めた.組織学的には表皮から真皮深層まで淡明な細胞質で核に異型性のある腫瘍細胞の増殖を認め,特殊染色でcytokeratin 7,GCDFP-15が陽性,cytokeratin20が陰性であった.乳房外Paget病と診断し,広範囲腫瘍切除,分層植皮術,両側鼠径部センチネルリンパ節生検を行った.右浅鼠径センチネルリンパ節に転移を認めたため,右鼠径リンパ節郭清術,補助療法として低用量シスプラチン,5-FU併用療法を施行した.現在まで再発,転移は認めない.

Acquired fibrokeratomaの2例

著者: 黒田正義 ,   三川信之 ,   利根川守 ,   保阪善昭

ページ範囲:P.1194 - P.1196

Acquired fibrokeratomaは指趾を好発部位とする後天性の良性腫瘍である.病理組織学的には表皮の著明な肥厚と真皮膠原線維の増生を特徴とする.指趾のほかにも足底,膝蓋,爪囲,手掌などの発生報告があり,外的刺激が関与すると推測される.今回われわれは,成人の手関節屈側に発症した非典型例と,成人の手指に生じ慢性的な外的刺激により増大した典型例の2例を経験したので,若干の文献的考察を交えて報告する.

レーザー治療を試みた色素血管母斑症(Ⅱb)の1例

著者: 畑佐知里 ,   江崎智香子 ,   神谷秀喜 ,   市來善郎 ,   高木肇 ,   北島康雄 ,   奥田美穂 ,   近藤直実 ,   青山勝 ,   山本哲也

ページ範囲:P.1197 - P.1199

2か月,女児.出生時よりほぼ全身に非対称の不規則な形状の赤色斑と青色斑が認められた.臨床像と先天性緑内障,Sturge-Weber症候群,Klippel-Weber症候群,大脳全体の萎縮,脳軟膜血管腫,精神発達遅延が認められたことより色素血管母斑症(Ⅱb)と診断した.顔面,手背の単純性血管腫に対し,ダイレーザー治療を計4回行った.2回目,3回目の治療翌日に硬直性痙攣が起きたが,脳波では光刺激による反応はなかった.その後明らかな誘因なく痙攣,脱力発作が6回出現した.1年半後,4回目のレーザー治療は全身麻酔下で施行したところ痙攣は出現しなかった.4回のレーザー治療により少しずつ色調が減少している.

臨床統計

秋田大学における悪性黒色腫の統計(1973~2002年)

著者: 津田昌明 ,   長門一 ,   井上多恵 ,   窪田卓 ,   石田晋之助 ,   輪湖雅彦 ,   西巻啓子 ,   米田耕造 ,   真鍋求 ,   安齋眞一

ページ範囲:P.1200 - P.1203

秋田大学において経験した悪性黒色腫97症例(1973~2002年)を集計し,種々の因子との関連を解析した.この結果をすでに報告されている全国調査の結果と比較検討すると,多くの事項で両者は同様の結果を示した.しかし,自験例においては,feronを用いずDAV療法のみを実施した場合の生存率は,DAV-feron療法を実施した場合より,有意差をもって良好であった.

治療

慢性蕁麻疹に対するH2受容体拮抗薬併用効果の検証

著者: 神戸直智 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.1204 - P.1206

ヒスタミンH1受容体拮抗薬単独による加療で十分な効果を上げることができなかった慢性蕁麻疹患者に対して,H2受容体拮抗薬ラニチジンとの併用を試みた.対象患者30例中,併用により症状が改善と回答した者が14例,併用中止により症状の増悪を認めたため再度併用を開始した者が2名と,約半数の患者でラニチジン併用による効果を確認することができた.H2受容体拮抗薬との併用では,眠気などのH1受容体拮抗薬に依存する副作用の悪化もみられないことから,難治性蕁麻疹のセカンド・ステップの加療として積極的に試みられるべき方法であると思われた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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