icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科58巻2号

2004年02月発行

雑誌目次

カラーアトラス

Crouzon病に合併したacanthosis nigricans

著者: 小林美和 ,   山元修 ,   戸倉新樹

ページ範囲:P.102 - P.103

症 例:5歳,男児

 既往歴:Crouzon病にて頭蓋骨形成術後(図1),内分泌異常なし.

 家族歴:姉に脳性麻痺

現病歴:1歳頃より足背が黒褐色調を呈し,その後項部・鼠径部・腹部などに色素沈着を生じ,皮表が粗造化した.

原著

マムシ咬傷自験31例の検討

著者: 伊藤史朗 ,   松田俊樹 ,   富田靖

ページ範囲:P.104 - P.106

岡崎市民病院にて1998年1月~2001年12月までの4年間に経験したマムシ咬傷31例について検討した.男性20例,女性11例と男性に多かった.年齢は6~75歳までで平均が54歳,老人に多かった.入院した症例は21例であった.セファランチンは全例に使用した.来院時に局所症状が強い症例にはマムシ抗毒素血清を使用した.抗毒素血清を使用した症例は,抗毒素血清を使用しなかった症例と比較して最大腫脹時の腫脹範囲が低い傾向を認めた.受傷後数時間で腫脹が崎尾らのGrade分類1)のGradeⅡを超える場合は抗毒素血清を使用すべきであるという堺の指針2)が妥当と考えた.

今月の症例

感染性心内膜炎患者に生じたOsler結節の1例

著者: 乃村俊史 ,   澤村大輔 ,   芝木晃彦 ,   清水宏

ページ範囲:P.108 - P.110

34歳,男性.感染性心内膜炎にて当院循環器内科に入院し,抗生剤により加療されていたが,約1か月後に左手環指の指腹に有痛性の紅斑結節が出現した.病理組織学的には,真皮上層から下層の血管周囲性に好中球,リンパ球,組織球を主体とした細胞浸潤を認め,一部血栓も認めた.臨床経過と病理組織像からOsler結節と診断した.Osler結節の特徴やその診断的価値の高さについて述べるとともに,その発症機序や誘因などについて若干の考察を加えた.

爪母様ケラチンパターンを有し爪甲様外観を呈した皮角の1例

著者: 江石久美子 ,   浜崎洋一郎 ,   片山一朗

ページ範囲:P.111 - P.113

62歳,男性.2000年6月頃より外傷などの誘因なく,左環指背部PI関節とMP関節間皮膚に爪様角化物が出現した.半年後に一度脱落するも再び同部に同様の角化物が生じてきたため,2001年6月初診となる.初診時皮膚面から垂直に隆起し,爪甲様にややU字型にカーブした高さ約7mmの角化突起物を認めた.下床との癒着はなく可動性は良好だった.臨床像から後天性異所爪と診断し,腱膜直上で切除した.手術時腱膜や骨との癒着は認めなかった.病理組織像はエオジンで淡い染色を示す著明な過角化を伴う角層と顆粒層がない表皮を認め,異所爪と過去報告された所見と類似していたが,基底細胞に異型性を認めたため日光角化症に生じた皮角と診断した.免疫組織染色では病変部表皮は周囲健常表皮と異なりケラチン10陰性,ケラチン17陽性を示し,爪母の染色態度と類似していた.

症例報告

Mycobacterium aviumによる皮膚非結核性抗酸菌症の1例

著者: 松本祥代 ,   河内繁雄 ,   斎田俊明

ページ範囲:P.114 - P.117

7歳男児の腹部に生じた多発性の皮内結節.穿刺液から抗酸菌が培養され,PCR法にてMycobacterium avium(M. avium)と同定された.自宅で24時間風呂を使用しており,その風呂水とフィルターからM. aviumが多数検出された.病理組織学的に経毛包性感染が疑われた.

上肢に孤発し,4週間のイトラコナゾール内服で治癒したスポロトリコーシス

著者: 宇宿一成

ページ範囲:P.118 - P.120

71歳,女性.2002年9月下旬頃,農作業中に転倒して右前腕部に外傷を受けた.約1か月後より同部に結節が出現した.11月27日当科初診時には右前腕部に孤発する,表面に潰瘍を伴う腫瘍を認めた.病歴からはスポロトリコーシスを,臨床所見からはSCC(squamous cell carcinoma)も疑った.病理組織学的には真皮内にmixed cell granulomaを認め,組織片の真菌培養にてSporothrix schenkiiを分離・同定したため,スポロトリコーシスと診断した.4週間のイトラコナゾール内服で略治した.

隆鼻術部に生じた膿瘍の1例

著者: 横山恵美 ,   熊谷敏子 ,   濱本嘉昭 ,   武藤正彦

ページ範囲:P.122 - P.125

65歳,女性.糖尿病にて内科通院加療中.初診の2か月前にシリコンプロテーゼ挿入による隆鼻術を受け,術後2週間後より鼻根部に発赤が出現し,徐々に結節状に隆起した.鼻根部に10mm大の暗赤色結節を認め,中央は潰瘍を伴い,易出血性であった.病理組織学的に膿瘍を伴う肉芽組織の像がみられた.同部の細菌培養でブドウ球菌を少数検出した.生検後,他院にてシリコン除去術を受け,5週間後に再来した折には,結節部は淡紅色の瘢痕を残して平坦化していた.比較的高齢で隆鼻術を受けることも稀ではなくなると思われ,隆鼻術後の合併症について本邦報告例4例と自験例について,文献的考察を加えて報告した.

眼鏡先セルの着色剤による接触皮膚炎の1例

著者: 伊藤明子 ,   鹿庭正昭 ,   山本洋子 ,   高塚純子 ,   下村尚子 ,   伊藤雅章

ページ範囲:P.126 - P.128

67歳,男性.初診の7年前より両耳介後部に出現した滲出液を伴う紅斑を主訴に来院した.眼鏡先セルによる接触皮膚炎を疑い,患者が使用していた眼鏡先セルの削り屑の皮膚貼布試験を施行したところ,陽性であったため,製造メーカーから入手した樹脂,着色剤2種(茶色,青色),およびペリノン系染料2種(Solvent Orange60,Solvent Red179)について皮膚貼布試験を行った.その結果,着色剤2種とSolvent Orange60に陽性所見を認めた.薄層クロマトグラフィによる着色剤の成分分析の結果,Solvent Orange60と,化学構造は不明の青色色素が原因化学物質と推測した.

入院を契機に改善した減汗性コリン性蕁麻疹

著者: 土屋朋子 ,   青山久美 ,   長谷川道子 ,   田村敦志 ,   石川治

ページ範囲:P.129 - P.131

33歳,男性.運動や入浴時に全身に痛みを伴う半米粒大までの膨疹が出現した.運動誘発試験で,チクチクとした痛みとともに,前胸部,上腕に膨疹が出現した.発汗テストでは,皮疹出現部には発汗がなかった.病理組織学的に汗腺に異常はなかった.入院精査中に,蕁麻疹の出現頻度は減少し,運動や温熱負荷によっても,皮疹が出現しなくなった.環境変化により寛解が得られたと推測した.

甘草および白彊蚕による湿疹型薬疹の1例

著者: 石原亜希子 ,   井川健 ,   小森一哉 ,   佐藤貴浩 ,   横関博雄 ,   西岡清

ページ範囲:P.132 - P.134

73歳,男性.背部,四肢伸側に粟粒大漿液性丘疹の撒布とそれらの集簇による類円形局面が散在し,臨床的に貨幣状湿疹が考えられた.内服していた漢方薬「白竜仙」の中止後,症状は著明に改善し,白竜仙によるDLST陽性.甘草および白彊蚕による成分パッチテストで陽性所見が得られたことから,湿疹型薬疹と診断した.

ミノサイクリンが奏効した苔癬様型皮膚サルコイドの1例

著者: 東奈津子 ,   中西健史 ,   石井正光

ページ範囲:P.135 - P.138

ミノサイクリン内服治療を試みた苔癬様型皮膚サルコイドの1例を報告した.症例は,75歳,女性.2000年春より体幹,大腿部に無症候性赤褐色扁平丘疹が出現し,次第に増加した.皮膚生検で,真皮上層から中層に小型の類上皮肉芽腫が存在.血清ACE値,Ca値は正常範囲,胸部X線上BHLなく,眼科的に異常所見を認めず.苔癬様型皮膚サルコイドと診断した.外用ステロイドとトラニラスト300mg/日内服では皮疹の新生が続いた.初診より1年後の皮膚生検においても同所見を認めた.ミノサイクリン200mg/日に内服を変更後,皮疹が消退した.

サルコイドーシスにみられた結節性紅斑様皮疹

著者: 津福久恵 ,   吉永英司 ,   大西善博 ,   藤本典宏 ,   多島新吾 ,   入江広弥

ページ範囲:P.139 - P.141

31歳,女性.眼球結膜の充血が出現し,その1か月後に両下腿に圧痛を伴う境界不明瞭な結節性紅斑が出現した.眼科でブドウ膜炎と診断された後,当科を受診した.サルコイドーシス,Behçet病に伴う結節性紅斑を疑ったが,組織学的に真皮から皮下脂肪織にかけて類上皮細胞肉芽腫を認めた.検査では,血清ACE,リゾチーム高値,ツベルクリン反応陰性.胸部X線で両側肺門リンパ節腫脹があり,心電図は正常であった.サルコイドーシスに伴う結節性紅斑様皮疹と診断し,ステロイド剤外用,リザベン(R)内服で3か月加療したが皮疹が消退しなかったため,ミノマイシン(R)内服に変更したところ3か月で,皮疹は軽快した.

治癒が遷延し皮膚萎縮を残した新生児ループスエリテマトーデス

著者: 川瀬正昭 ,   村島温子 ,   黒﨑仁寛 ,   神谷太郎 ,   柴田淳 ,   田原卓浩 ,   新村眞人

ページ範囲:P.142 - P.144

2か月,男児.出生直後から顔面に陥凹を伴う紅斑が出現し,全身に浸潤性紅斑が拡大した.抗SS-A抗体陽性.心合併症なし.母親は他院内科にてSjögren症候群と診断されていたが無治療であった.症状より新生児ループスエリテマトーデスと診断し,ステロイド剤の外用のみで経過観察した.生後8か月後に軽い色素沈着と皮膚萎縮を残して治癒した.

強直性脊椎炎様の臨床像を呈した関節症性乾癬の1例

著者: 山本純照 ,   宮川幸子

ページ範囲:P.145 - P.148

42歳,男性.1998年から躯幹,四肢を中心に銀白色の鱗屑を伴う貨幣大の紅斑が生じ,全指趾の爪の変形も伴った.皮膚生検にて病理組織学的に尋常性乾癬の所見を得た.2001年から右示~環指,左全指に関節の変形が生じた.入院時頚部,両側肩関節,腰背部,股関節,両側膝関節,両側手関節,両側足関節に疼痛を認め,可動制限も伴っていた.エトレチナート,ジクロフェナクナトリウムの内服にて皮疹は改善したが,関節痛は持続した.両側手X線写真にてPIP関節に狭小化を認めた.脊柱でもX線上傍脊椎骨化を認め,bamboo spine様の不完全強直像を呈した.プレドニゾロンの内服により関節痛の減弱を認めた.HLA:A2,A31,B35,B46,Cw1.

3歳児の眼瞼に生じた顔面播種状粟粒性狼瘡

著者: 大藤聡 ,   石原政彦 ,   三原基之

ページ範囲:P.150 - P.152

3歳,男児の左下眼瞼縁に生じた顔面播種状粟粒性狼瘡に対し,オフロキサシン眼軟膏が有効であった症例を報告した.丘疹はオフロキサシン眼軟膏外用後約8か月で平坦化した.本邦において本症の治療はテトラサイクリン内服が第一選択となっているが,眼瞼に生じた乳幼児例やテトラサイクリンに無効なものに対してオフロキサシン眼軟膏の外用は試みるべき治療法の一つであることが示唆された.

慢性膵炎に伴った皮下結節性脂肪壊死症の1例

著者: 行徳英一 ,   真田聖子 ,   数田泰治 ,   高路修

ページ範囲:P.153 - P.156

74歳,女性の両下腿内側に生じた皮下脂肪壊死症の1例を報告した.臨床的には,同部に紅色から褐色の皮下硬結を認め,軽度の圧痛,熱感を伴っていた.両下肢には静脈瘤がみられた.組織学的には脂肪組織の変性および壊死像を示し,周囲には肉芽組織の形成,真皮では内腔の拡張を示す脈管を認めた.血清アミラーゼ,リパーゼ,トリプシン,エラスターゼΙが高値であり,慢性膵炎の合併が認められ,その治療により皮疹は徐々に軽快した.われわれは自験例の病態は主として慢性膵炎により生じた皮下脂肪壊死であると考えたが,皮疹の部位や静脈瘤,不全交通枝の存在,真皮における血管やリンパ管の拡張などの所見から,慢性的な静脈うっ滞も関与していたものとみなすのが適当と考えた.

Superficial mucoceleの1例

著者: 原藤玲 ,   鈴木洋介 ,   谷川瑛子 ,   天谷雅行 ,   田中勝

ページ範囲:P.157 - P.159

69歳,女性に生じたsuperficial mucoceleの1例を報告する.頬粘膜に出没を繰り返す緊満性小水疱と周囲に扁平苔癬様の白色線条を認め,瘢痕性類天疱瘡を疑われ加療されていた.組織学的に粘膜上皮内および上皮直下の裂隙と,それに連なる唾液腺導管の拡張を認めたが,扁平苔癬の所見はなかった.蛍光抗体直接法・間接法はともに陰性であった.本症はmucous cystとは好発年齢や部位に差があり,自然消退・再発を繰り返すが,外科的治療は必要としない.現在,扁平苔癬など何らかの機序により粘膜上皮の変性や炎症が起こり,導管内圧が上昇して浅在性の水疱を生じる可能性が考えられているが,病因はいまだ不明である.本症の皮膚科領域での報告はなく,単純ヘルペスや扁平苔癬,瘢痕性類天疱瘡などと診断されている可能性もある.口腔内に再発,自然消退を繰り返す小水疱をみた場合,本症も念頭に置く必要がある.

Multiple eccrine spiradenomaの1例

著者: 片山祥子 ,   新山史朗 ,   齊藤典充 ,   坪井廣美 ,   勝岡憲生

ページ範囲:P.162 - P.164

66歳,女性.頭部,体幹,下肢に合計44個の結節を認めるeccrine spiradenoma (ES)を経験した.組織学的に腫瘍塊は結合織被膜に覆われ,ヘマトキシリンに淡染する大型の核を有する細胞と濃染する小型の核を有する細胞が,充実性ないし腺腫様構造を示し増殖していた.免疫組織化学的に検討した結果から,腫瘍細胞はエクリン腺の曲導管に由来すると考えた.ES多発例はESの15%にみられ,本邦では現在までに自験例を含め20例の多発例が報告されている.その多くは比較的限局した部位に多発する例で,自験例のように広範囲に発生する症例は現在まで報告がなく,また結節数が数十個に及ぶ症例はほかに3例しか見当たらず,自験例はきわめて稀な臨床像と考える.

Eccrine angiomatous hamartomaの1例

著者: 辻香 ,   本多芳英 ,   栗原貴子 ,   財満浩之 ,   玉城毅 ,   大井綱郎 ,   坪井良治

ページ範囲:P.165 - P.167

20歳,女性.生下時より右下腿から足底にかけて不規則な角化性紅斑局面が多発していた.組織学的に真皮内にエクリン汗腺と血管の増生が認められ,eccrine angiomatous hamartomaと診断した.現在まで自験例を含む本邦報告例は55例あり,単発例はあらゆる年齢層で発症するのに対し,多発例は半数が生下時から,全例が10歳以下の発症であった.以上のことから多発例は母斑的性質を有することが示唆された.

右示指に生じたarteriovenous malformationの1例

著者: 鈴木弘美 ,   沖田博 ,   大塚勤 ,   山崎雙次

ページ範囲:P.168 - P.170

右示指に生じたarteriovenous malformation(AVM)の1例を報告した.症例は45歳,女性.約30年前より右示指に腫脹を伴う丘疹状皮疹が数個見られた.2年前より右示指に疼痛が出現.初診時,右手背から示指に血管の拡張,蛇行を認めた.血管造影検査で,右示指に著明な血管増生と屈曲蛇行,拡張した血管がみられた.MRI検査では右示指基部にdrainage veinを伴う高信号の所見を認めた.血液ガス検査では,右手背部の静脈血でPO2の著明な高値を示した.以上の所見よりarteriovenous malformation(AVM)と診断した.耐えがたいほどの痛みではないため,経過観察しており,その後著変はみられない.AVMについて若干の文献的考察を行った.

手掌に生じたグロムス腫瘍の1例

著者: 服部尚生 ,   安藤浩一

ページ範囲:P.171 - P.173

40歳,女性.10年前より,手掌に圧痛を伴う皮下結節に気付いていた.皮膚生検にて病理組織学的に,拡張した大小さまざまな血管腔とその周囲に腫瘍細胞の増殖を認めた.さらに免疫組織化学的所見で,これらの腫瘍細胞はα-smooth muscle actin,ビメンチンに陽性,デスミン陰性であったため,グロムス腫瘍と診断した.過去の報告によると,手掌に生じたグロムス腫瘍は,全体の数%とされており,比較的稀な発症部位と考えられた.

眉毛部に生じた皮膚混合腫瘍の1例

著者: 猿谷佳奈子 ,   福田英嗣 ,   長谷川毅 ,   斉藤隆三

ページ範囲:P.174 - P.176

51歳,男性.約2年前より右眉毛部に結節が出現した.自覚症状がなく放置していたところ,徐々に増大してきたため当科を受診した.初診時,右眉毛部に直径12×12mmの半球状に隆起した表面平滑,弾性硬の皮内結節が存在した.圧痛や自発痛などの自覚症状はなかった.臨床診断として粉瘤や付属器腫瘍などを考え,全摘出術を施行した.組織学的所見は,真皮中層から下層に線維性被膜で囲まれた境界明瞭な腫瘍塊を認め,大小さまざまな管腔構造,索状,島嶼状を示す上皮性成分(一部に角質嚢腫や断頭分泌を認めた)と,粘液腫様構造,脂肪組織から成る間質が混在していた.以上より皮膚混合腫瘍と診断した.自験例では,間質の脂肪細胞が非常に多い点が特異と思われたため,文献的考察を加え報告した.

硝酸による化学熱傷の1例

著者: 西尾栄一 ,   山本敬三

ページ範囲:P.177 - P.179

38歳,男性.2002年2月27日夕,仕事中に容器から吹き出した濃硝酸を顔・頚・左手に浴び受傷.その後ただちに当院救急外来を受診した.受傷後ほとんど洗浄せずに来院したため,流水で約40分間洗浄し,当初ステロイド軟膏単独の密封療法およびステロイド軟膏と亜鉛華単軟膏を併用する重層外用療法を行った.2日後に受傷部の広い範囲でびらん・潰瘍となったため,ステロイド軟膏単純塗布とびらん・潰瘍部への亜鉛華単軟膏の外用へと治療を変更した.約3か月で受傷部はほぼ上皮化したが色素沈着と両眼瞼の瘢痕拘縮が残った.本症例を通して化学熱傷の予防と受傷後の応急処置,そしてその啓発について文献的に考察した.

治療

頭部に多発性の潰瘍を生じたMCTDに対する免疫グロブリン大量静注療法

著者: 鈴木やよい ,   森田明理 ,   加藤磨美 ,   菅野重 ,   辻卓夫 ,   坂野章吾

ページ範囲:P.181 - P.184

29歳,女性.19歳の時にMCTD(混合性結合組織病)と診断され,ステロイド,免疫抑制剤の内服で治療を受けてきていた.1999年4月頃より左膝部の疼痛,腫脹,熱感から症状が出現し手指の潰瘍,Raynaud現象の増悪,頭部の脱毛と潰瘍の拡大,さらに右膝部と臀部の脂肪織炎を発症した.そしてMCTDの病勢の増悪と思われる全身状態の悪化(頭痛,熱発,嘔気)を認めた.ステロイドパルス,エンドキサンパルスに抵抗性であったため免疫グロブリンの大量静注療法(high-dose intravenous immunoglobulins therapy:IVIg)を施行した.1日20gの免疫グロブリン静注を5日間行ったところ皮膚症状,全身状態が著しく改善した.

連載

米国皮膚科医への道(11)

著者: 藤田真由美

ページ範囲:P.186 - P.187

皮膚科外来(Dermatology Clinic)

 レジデント教育は医師養成学校のようなものなので,週2回の講義以外は実践教育が行われる.これは,外来とコンサルトを中心とし,時に当直が加わる.そのいずれにおいても,レジデントは実践教育を受けるために存在するという大前提がある.

 皮膚科レジデントの主要な仕事と教育は外来診療であるが,アメリカの外来診療自体,日本のそれと異なるところが大きい.まずは,診察室.日本では医者の診察室に患者さんが入っていくが,アメリカでは反対である.外来には8~10畳の診察室が複数あり(大学病院では皮膚内科だけで10数部屋),患者さんは自分の診察時間が近づくと大きな待合室から個室に案内され,そこで医師を待つ.医師は各部屋から各部屋へと患者を診て回ることになるために,足の怪我などをしたりすると悲惨である.アメリカでは,看護婦や看護士さんは注射,傷の手当て,薬局との応対,電話相談などをしており,医師の診察の補助にはついてこないため,医師は個室で患者さんと1対1の診察をすることになる.アメリカで医者にかかった経験の乏しい外国人の私には,重症の入院患者ではなく比較的健康な皮膚病患者さんたちを相手に,異国のシステムで,しかも英語で,一体どうしたらスムーズに診察を進めたらよいのか,初めのうちは皆目検討がつかず,指導医やほかのレジデントの会話をメモして覚えていった.肝心の病気の説明の時はメモしないのに,世間話になるとメモしているので,皆から変なレジデントと思われたに違いない.また,入局当初にもらったレジデントの心得のなかに面白いことが書いてあった.「患者さんに礼儀正しく,誠意を持って診察すること」と併記して,「診察室では,患者さんよりも常にドア側に位置すること」と明記してあった.確かに,これは,医師と患者とはいえ,他人が密室にいる時のアメリカでの常識であるが,比較的安全な日本から来た私には,目新しい心得であった.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?