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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科58巻3号

2004年03月発行

雑誌目次

原著

多発性筋炎を伴う強皮症に対するアザチオプリン治療中に発症したStevens-Johnson症候群

著者: 欠田成人 ,   玉田享子 ,   袴田新 ,   磯田憲一 ,   水谷仁

ページ範囲:P.198 - P.203

63歳,女性.多発性筋炎を伴う全身性強皮症患者にStevens-Johnson症候群を発症した症例を経験した.アザチオプリン内服10日後に発熱,26日後に皮疹出現.全身のびらんを伴う滲出性紅斑,口唇の出血性びらんあり.抗サイトメガロウイルスIgM抗体,抗原血症陽性,アザチオプリンの薬剤添加リンパ球刺激試験にて強陽性を示した.使用薬剤を中止し,プレドニゾロン60mg内服で皮疹は軽快を示すもサイトメガロウイルス感染症と筋炎がみられ,ガンシクロビル投与とステロイドパルス療法を行った.筋炎は抵抗性でシクロスポリン追加により軽快.同時に著明な皮膚硬化の改善がみられた.自験例は薬剤とウイルス感染症の関係を考えるうえで興味深い症例と考えられた.

今月の症例

皮膚放線菌症の1例

著者: 馬場千晶 ,   寺﨑健治朗 ,   米良ゆかり ,   吉井典子 ,   片平充彦 ,   金蔵拓郎 ,   神崎保

ページ範囲:P.204 - P.206

72歳,女性.3年前より下口唇に結節が出現し,排膿を繰り返していたが放置.2000年の初めより上口唇にも同様の皮疹が出現したため,2000年9月22日当科初診.下口唇に径5mm,上口唇に径3mmの膿瘍を伴う淡紅色の丘疹を認めた.下口唇の丘疹の病理検査にて真皮に表皮成分よりなる嚢腫様構造が存在し,周囲には慢性の炎症細胞浸潤を認めた.囊腫内には菌塊を認めた.PAS染色,グラム染色,Groccot染色を施行し,特殊染色および臨床症状より皮膚放線菌症と診断した.ミノサイクリン系抗生剤8週間投与(200mg/日)にて症状は軽快した.

良性皮膚Degos病

著者: 細谷なぎさ ,   梅林芳弘 ,   大塚藤男 ,   河村智教

ページ範囲:P.207 - P.209

16歳,男性.3か月前より両前腕に中央部が白色調で軽度陥凹する淡紅色丘疹が散在しているのに気付いた.徐々に体幹,四肢に拡大.組織学的に,病変中央部の表皮は菲薄化し錯角化を伴う角質増生と基底層の液状変性を認めた.血管閉塞像,壊死像なし.Degos病と診断し各種検査を行ったが,内臓病変を示唆する所見を得なかった.無治療で経過観察としたが,初診より8年6か月経過した現在も内臓病変の出現をみない.

症例報告

白色瘢痕様皮疹を呈した皮膚筋炎の1例

著者: 菅原伸幸 ,   安部正敏 ,   田村敦志 ,   大西一徳 ,   石川治

ページ範囲:P.210 - P.212

57歳,女性.筋脱力症状を主訴に当科を受診し,皮膚筋炎と診断.プレドニゾロン50mg/日投与中,前胸部に小潰瘍と白色瘢痕様皮疹が出現し,同時期に動脈血酸素分圧が低下した.白色瘢痕様皮疹部の生検組織像では真皮に明らかな血管炎はなく,血管内皮細胞の腫大と内腔の狭小化が認められた.同様の臨床像を呈した本邦報告例を検討した結果,皮膚筋炎における白色瘢痕様皮疹の出現は予後不良例の予測因子の一つである可能性が考えられた.

心タンポナーデを伴った多発性筋炎の1例

著者: 松下貴史 ,   蕪城裕子 ,   森俊典 ,   佐藤伸一 ,   竹原和彦

ページ範囲:P.213 - P.216

51歳,女性.初診の半年前より全身倦怠感,咳嗽,労作時呼吸困難が出現し,近医で間質性肺炎と診断.その後全身の筋力低下が出現し,当科受診.初診時発熱,咳嗽,呼吸困難,筋把握痛,筋力低下,手指腫脹,爪上皮点状出血を認め,CK上昇(2,805IU/l),抗Jo-1抗体陽性,筋電図・筋生検所見,各種画像所見から間質性肺炎を合併した多発性筋炎と診断.PSL60mg/日内服を開始し筋酵素は正常化し肺間質影も改善したが,治療開始1か月後から心嚢液が貯留.徐々に増加し3か月後には心タンポナーデ徴候が出現.心嚢穿刺が困難だったため厳重に経過観察しながら,慎重にPSL減量を行ったところ心嚢液は徐々に減少,消失した.心タンポナーデを伴った多発性筋炎は過去に報告がなく,自験例は稀な症例と考えられた.

多発性大腸潰瘍を生じた全身性強皮症

著者: 片田桐子 ,   天野博雄 ,   田村敦志 ,   石川治

ページ範囲:P.218 - P.220

63歳,女性.全身性強皮症の経過中に偽性イレウスにより大腸に多発性宿便潰瘍を発症した.全身性強皮症患者の消化器病変として多発性大腸潰瘍は稀ではあるが,消化管穿孔をきたして死に至る可能性もあるため,注意が必要である.

皮疹出現を契機にSLEと診断されたEvans症候群の1例

著者: 武藤潤 ,   鈴木布衣子 ,   木花いづみ ,   一色郁子

ページ範囲:P.221 - P.223

48歳,女性.1970年より他院にてEvans症候群と診断され,ステロイドや免疫抑制剤の内服,脾臓摘出術などで加療されていた.1991年転居に伴い当院に転院しプレドニゾロン(PSL)10mg/日内服から加療されていたが貧血も改善してきたためPSLを漸減・中止としたところ,下腿の浮腫とともに左小指球部を中心に米粒大の浸潤を触れる紅斑が癒合しながら多発性に出現した.また,左肘部には小豆大の皮内結節を3つ認め組織学的に真皮内の膠原線維間にムチンの沈着を認めた.採血にて抗核抗体,抗ds-DNA抗体が陽性.また,心臓超音波検査より心外膜炎の合併を診断した.以上より,SLEと診断しPSL30mgより内服開始としたところ,皮疹は軽快.Evans症候群の報告は皮膚科領域では稀であり貴重な症例と考えられた.

血清フェリチン値正常の成人Still病の1例

著者: 杉浦光洋 ,   新田悠紀子 ,   尾之内博規

ページ範囲:P.226 - P.229

31歳,女性の血清フェリチン値正常の成人Still病の1例を報告した.39℃の発熱と,発熱に伴うリウマトイド疹,および,関節痛を呈し,白血球増加,赤沈値亢進,CRP上昇を認めた.しかし,血清フェリチン値および肝機能は正常であった. 成人Still病における血清フェリチン値上昇の原因は不明であり,診断基準には入っていない.過去10年間の成人Still病95例中, 肝機能正常と血清フェリチン値正常の症例は自験例を入れて4例の報告があった.

肝障害を伴ったSweet病の1例

著者: 田村正和 ,   風間隆 ,   伊藤雅章

ページ範囲:P.230 - P.232

52歳,女性に生じた肝機能障害を伴ったSweet病の1例を報告した.発熱とともに圧痛を伴い膿疱を混じた浸潤性紅斑が全身に出現し,下腿では結節性紅斑様硬結も認められた.組織は定型的.ヨウ化カリウム900mgの内服開始2日目には解熱し,7日目には肝機能は正常値に回復し,9日目には浸潤性紅斑は色素沈着を残して消失した.本症例を含め,当科で経験した肝機能異常を伴ったSweet病の4例をまとめて報告し,若干の考案を加えた.

Turner症候群に合併した乾癬の1例

著者: 順毛直弥 ,   水川良子 ,   塩原哲夫

ページ範囲:P.233 - P.236

30歳,女性.3歳時より頭部に皮疹が出現し,成長とともに徐々に全身に拡大した.14歳時,近医皮膚科を受診し,乾癬と診断され外用治療を受けるも改善せず.2001年4月,全身の皮疹を主訴に当院皮膚科を初診した.初診時,鱗屑を伴う紅斑が全身に多発融合し,局面を形成していた.組織学的には軽度の角質増生,表皮肥厚と若干の表皮突起の延長を認めるのみで,Munro微小膿瘍はみられなかった.また乳房発育不全,恥毛・腋毛発育不全,原発性無月経を認め,内分泌障害を疑い精査したところ,染色体検査で45X/46XXrのモザイクが認められ,Turner症候群と診断された.また,糖尿病を合併していたためインスリン療法を開始したところ,2週間後には全身の皮疹が消退傾向を示した.自験例はTurner症候群に乾癬を伴った稀な1例と考えられた.

四肢に多発した木村病の1

著者: 野本真由美 ,   野本重敏 ,   伊藤薫 ,   坂本ふみ子 ,   後藤一美 ,   和泉純子 ,   山本洋子 ,   伊藤雅章

ページ範囲:P.237 - P.239

19歳,男性.1997年,右上腕に皮下腫瘤が出現し,近医で生検により木村病と診断され,全摘術を施行された.約2年後,右大腿に再び皮下腫瘤が出現し,2001年当科を初診した.右鼠径部には腫大したリンパ節を数個触知し,末梢血好酸球増多,IgE高値を認めた.皮下腫瘤の生検で,著明な好酸球浸潤を伴うリンパ濾胞の形成を認めた.木村病と診断し,計14Gyの放射線療法を施行した.

トラニラスト内服が奏効した汎発性環状肉芽腫

著者: 筒井清広 ,   折戸秀光 ,   山崎真孝

ページ範囲:P.240 - P.242

84歳,女性.2年前から四肢,体幹に強い痒みのある米粒大までの紅色丘疹が多数あり.初診時,両上肢,両下肢,後頚部,体幹全面に,無数の粟粒大から米粒大の紅色丘疹が,孤立性あるいは集簇性に認められた.個疹は硬い丘疹で,いくつかの丘疹が環状に配列し,陥凹性局面を形成していた.生検標本は環状肉芽腫の定型像.耐糖能異常および肝機能異常はみられなかった.トラニラストを常用量(300mg/1日,分3)で内服開始した.2週後に痒みがほとんど軽快し,7週後に皮疹はわずかな潮紅を残してほぼ消退した.膀胱炎症状出現のためトラニラスト内服を中止したが,中止1年後に再発はみられなかった.

脳性麻痺の患者に発生し再発を繰り返した耳介仮性囊腫

著者: 南野義和 ,   梅林芳弘

ページ範囲:P.243 - P.245

28歳,男性.出生直後から脳性麻痺があり,左側を下にして起き上がる習慣がある.左耳舟状窩が囊腫状に腫大.トリアムシノロンを囊腫内に注入しいったんは軽快するも,再発を繰り返すため,変性した軟骨を摘除した.再発を繰り返した背景には,脳性麻痺に基づく機械的刺激が避けがたく続いたことがあると考えられる.また,耳介仮性囊腫15例の穿刺液33回分を対象とし,内容液のLDH値とアイソザイム4,5型(%)の相関係数を計算したところ,穿刺液中LDH値と4型,5型の%値には有意の相関があることがわかった.

融合性細網状乳頭腫症の1例

著者: 宮田奈穂 ,   高江雄二郎 ,   天谷雅行 ,   西川武二

ページ範囲:P.246 - P.248

抗真菌薬が有効であった融合性細網状乳頭腫症(papillomatose confluente et réticulée:PCR)の1例を報告する.症例は23歳男性で,5年前から腹部に,3か月前より両前腕に自覚症状を欠く茶褐色調の網状色素斑が出現した.近医にて色素性痒疹を疑われ,5年間ステロイド外用薬などで治療されていたが改善がみられなかった.鏡検上,真菌要素は認めなかった.融合性細網状乳頭腫症,色素性痒疹を疑い生検を行ったところ,組織学的には表皮の軽度肥厚,乳頭腫症,基底層に色素の増加を認め,融合性細網状乳頭腫症と診断した.抗真菌薬外用にて2週間後には皮疹はほぼ消退した.

川崎病の4例

著者: 高村志保 ,   片山治子

ページ範囲:P.249 - P.252

川崎病(MCLS)の経過中それぞれ異なる皮疹を呈した4例を経験した.全身に多型紅斑様皮疹を認めた3か月男児,紅斑上に小膿疱を伴った1歳男児,乾癬様皮疹が出現した8か月男児,著明な眼囲発赤,体幹四肢に丘疹の集簇する紅色局面を呈した6歳女児を報告する.MCLSの皮疹は多彩であり,高熱の続く患児を診た場合にはMCLSを念頭に置いて診察する必要がある.

成人に生じたMRSAによるブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群

著者: 竹中祐子 ,   林伸和 ,   川島眞

ページ範囲:P.253 - P.256

60歳,女性.左項部から左前胸部の帯状疱疹に対しアシクロビルを投与するも,入院翌日に,全身倦怠感,37℃台の発熱を伴って,帯状疱疹の皮疹部にびらんを生じ急速に拡大した.軀幹にはびまん性の紅斑を認め,Nikolsky現象が陽性であった.両眼瞼周囲や口唇周囲には鱗屑,眼球結膜に充血,眼脂を伴っていた.びらん面からの培養でMRSAが検出された.ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群と診断し,塩酸バンコマイシンを投与し,ほぼ全身に汗疹様の常色で粟粒大までの小水疱,鱗屑を生じ治癒した.MRSAはexfoliative toxin-B陽性株であった.ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群は,一般に小児に好発し,成人例はきわめて稀である.成人例では,基礎疾患を有し,免疫力の低下などが背景としてある場合が多い.

ヒロヘリアオイラガによる皮膚炎の1例

著者: 岡毅 ,   米田豊 ,   小野友道

ページ範囲:P.257 - P.259

62歳,男性.初診前日(7月16日)の夕方,自宅の梅の木の手入れ中に右側背部,右上腕に電気に触れたような激痛を感じた.激痛を感じた部位には当初皮疹は認めなかったが,しばらくして発赤が出現した.その時点で患者は梅の木の枝に2cm大の毛虫を確認している.初診時,右肘窩部,右側背部にそう痒を伴う手拳大で境界が明瞭な浮腫状紅斑を認める.肉眼,ルーペにて刺し口は認めず,毒棘も発見できなかった.患者が持参した虫体は久留米大学医学部寄生虫学講座にて同種と鑑定された.受傷時の状況,臨床所見,虫体の鑑定結果よりヒロヘリアオイラガによる刺傷と診断した.生理食塩水にて患部を洗浄後,酢酸ジフロラゾン軟膏を外用(2回/日).7月20日に色素沈着を残さず皮疹は消失した.

Superficial angiomyxomaの1例

著者: 樹神元博 ,   横山小名美 ,   濱松寧 ,   伊崎誠一

ページ範囲:P.260 - P.262

18歳,男性.初診の約2年前より右大腿部に皮疹が出現し,徐々に増大してきたため当科を受診した.初診時,右大腿内側に8×7×7cm大の,表面に潰瘍を伴う懸垂性腫瘍を認めた.病理学的には真皮内に,粘液様物質を貯留する多数の結節が,線維性の中隔で境されて大きな充実性の腫瘍を構成する像が認められた.結節内には紡錘形の腫瘍細胞が疎に分布していた.壁の薄い大小の血管の増生を認めた.血管周囲性および結節内に好中球や好酸球を含む炎症性の細胞浸潤を認めた.粘液様物質はアルシアンブルー陽性で,ヒアルロニダーゼで消化された.腫瘍細胞はvimentin,CD34,αsmooth muscle actin陽性であった.切除後1年が経過した現在まで再発を認めない.

手背に生じた hyperkeratotic capillary-venous malformationの1例

著者: 宇宿一成

ページ範囲:P.263 - P.264

9歳,男児.生下時より左手背に紅色丘疹があり徐々に増大してきた.左手背拇指基部に,境界明瞭な暗紫色調で扁平に隆起し表面が角化する小結節を認めた.皮疹の下床には,直径2.5cmほどの弾性軟の皮下硬結を触れた.病理組織学的には過角化と表皮肥厚,真皮上層の血管拡張を認め,皮下には拡張した血管の増生を認めた.臨床像と病理組織学的所見より,hyperkeratotic capillary-venous malformationと診断した.

Syringocystadenocarcinoma papilliferum in situの1例

著者: 山本純照 ,   桑原理充 ,   宮川幸子

ページ範囲:P.265 - P.267

65歳,男性.出生時に左側頭部に米粒大の小結節を認めた.20歳頃にはくるみ大となったが以後増大傾向を認めなかった.2002年11月28日に局所麻酔下で切除した.組織学的に腫瘍細胞は上層では重層する有棘細胞様細胞からなり,中下層は小型の立方形細胞とアポクリン分泌腺細胞様の断頭分泌を示す円柱状細胞の二層構造を呈した.間質には形質細胞の浸潤を認めた.また,腫瘍細胞の一部は核の大小不同,mitosisを示し,malignant transformationの像を呈したが,真皮内への浸潤は認めなかった.腫瘍の下部組織にはアポクリン腺を認めた.以上の所見から自験例をsyringocystadenocarcinoma papilliferum in situと診断した.自験例は現在腫瘍の辺縁に肉眼的に脂腺母斑を思わせる病変は認めないが,発症部位が頭部であることや出生時から腫瘍が存在したことなどより,発生母地として脂腺母斑が存在したことがうかがわれる.

放射線照射とエトレチナート内服が有効であった高齢者の顔面に多発した有棘細胞癌の1例

著者: 仲村雅世 ,   乾重樹 ,   小澤健太郎 ,   伊藤晴康 ,   渡辺愛子 ,   板見智 ,   吉川邦彦 ,   幸野健

ページ範囲:P.268 - P.270

90歳,女性.1994年頃より鼻背部に腫瘤が出現した.その後,徐々に拡大してきたため他院にて切除され有棘細胞癌と診断された.6年後,腫瘤再発し,その後数回の摘出術を施行されるも再発を繰り返したため,当院に紹介受診となった.鼻背部に一部潰瘍化した45×35mmの腫瘍を認め,副鼻腔・一部前頭洞へ浸潤があった.頭蓋内浸潤は認められなかった.放射線照射計40Gy照射するも著明な変化がみられないため中止し,エトレチナート20mg/日内服開始したところ,腫瘤の縮小と陥凹が得られ,これは放射線照射の遅発的効果とエトレチナートの効果の重複によるものと思われた.また,放射線照射の未施行部位である前額部・両頬部の皮疹も消退し,エトレチナートの効果と考えられた.

5歳児に生じた隆起性皮膚線維肉腫

著者: 大山奈緒子 ,   岡田悦子 ,   高橋亜由美 ,   田村敦志 ,   石川治

ページ範囲:P.271 - P.273

15歳,女児.半年前,前胸部に打ち身様皮疹があるのに気付いた.初診時,直径2cm,淡青色に透見される表面平滑な円盤状の結節を触知した.組織学的には紡錘形細胞がstoriform patternを呈しながら密に増殖し,免疫組織学的にCD34陽性.隆起性皮膚線維肉腫と診断し拡大切除した.本邦報告例の文献的検討では10歳未満の小児発生例は稀であった.

連載

Clinical Exercises・125―出題と解答

著者: 花田勝美

ページ範囲:P.220 - P.220

出題と解答:花田勝美(弘前大学)

249 紫外線につき正しいのはどれか.

A:サンタンの主な作用波長は長波長紫外線(UVA)である.

B:ブラックライトはUVAを意味する.

C:皮膚のビタミンD3合成にあずかるのは中波長紫外線UVBである.

D:サンクリーンのPA判定にはUVAによる即時型黒化反応が利用されている.

E:UVA-IはUVB領域から遠いUVA領域を指す.

米国皮膚科医への道(12)

著者: 藤田真由美

ページ範囲:P.283 - P.284

皮膚科コンサルト(Dermatology Consult)

 前回は皮膚科外来の様子を話したが,今回は皮膚科のもう一つの大きな仕事,皮膚科コンサルト(入院患者や救急患者さんの診察依頼)について述べようと思う.このコンサルトは皮膚科レジデントのポケベルに診察依頼が来ることから始まる.レジデントは電話で必要な情報を得た後で病棟や救急外来に診察に行き,カルテを作って診断治療計画を立て,皮膚科指導医とともに回診をする.1日平均1~2件の新患依頼が来るため,経過観察患者を併せると3~5名の患者を診て回ることになる.依頼は,血液内科,ICU(集中治療室),外科,小児科からが多い.移植患者さんの発疹などでは,炎症,感染,薬疹,再発癌,移植反応などあらゆる可能性を検討しないといけない.また,天疱瘡など皮膚病の入院患者さんは内科に入院してから皮膚科診察依頼が来る.それゆえ,私たち皮膚科医は入院チームの医師団の皮膚科相談係兼教育係として働く.入院チームの医師たちに皮疹の診かたや病気の説明などをした後,文献などを渡すととても喜ばれる.

 大学病院やこども病院ではこのような重症患者の発疹の依頼が多いが,公立のハーバービュー病院ではさまざまな患者の依頼がある.中国から貨物船に乗って密入国した集団が捕まった時もカナダのバンクーバーから重症患者がここに運び込まれた.全員脱水と栄養失調が激しく,急性腎炎になっていたり,ストレスからヘルペスが出て全身に多型紅斑が出たりして皮膚科に依頼が来た.HIV(エイズ)やホームレスの人も多い.ホームレスの人の入院部屋へ行くと,いつもの慣習からかシーツを頭からかぶって蓑虫のように丸まって寝ていることが多いのですぐにわかる.彼らが痒みを訴える場合には,手袋をしてそっとシーツをめくり,皮疹の形と分布を確認した後,ベッドの下のゴミ袋に入った衣類を取り出す.ミシンの縫い目の辺りをひっくり返すとお目当てのものが見つかることが多い.むろんシラミである.この後は,いつも大変である.看護婦さんなど周りの人は皆自分の服をチェックして,急に体中を掻き始める.ホームレスの人の服と病院のシーツは捨てられ,彼らは退院する時には新しい服と新しいシーツを与えられる.しかし,ホームレスとは言ってもやはり自分のお気に入りの寝床があるらしく,そこに戻ってしまうためにすべてが元の木阿弥になることも多い.

治療

グルコン酸カルシウムの動脈注射が有効であったフッ化水素酸による手指の化学熱傷の1例

著者: 橋本彰 ,   江川貞恵 ,   高橋和宏

ページ範囲:P.274 - P.276

38歳,男性.疼痛腫脹の著しい手指のフッ化水素溶液による化学熱傷に対して,受傷翌日から,橈骨動脈よりグルコン酸カルシウム(カルチコール(R))の動注療法を施行した.施行直後より劇的な疼痛の軽減,膨脹緩和がみられ約2週間で潰瘍はほぼ上皮化した.本治療は手指のフッ化水素溶液による化学熱傷に有用な方法と考え報告した.

臨床研究

天疱瘡における抗デスモグレイン抗体価の再上昇と臨床症状の再燃の関連性についての検討

著者: 岸本和裕 ,   金子史男

ページ範囲:P.277 - P.282

福島医大皮膚科において最近14年間に経験した天疱瘡患者44例(粘膜優位型尋常性天疱瘡 PV-M:7例,粘膜皮膚型尋常性天疱瘡 PV-MC:17例,落葉状天疱瘡 PF:20例)のうち臨床的に活動期→軽快→再燃という一連の変化をとった6例(PV-M:5例,PF:1例)について抗Dsg抗体価を測定し,再燃時の抗体価を活動期および軽快期の抗体価と比較検討した.150以上の高抗体価を示す症例では,至適血清希釈倍率および真の抗体価を求めたうえで解析した.その結果,1) 臨床症状の変化と抗体価の変動には強い相関が認められた(皮膚症状とDsg1スコア,口腔粘膜症状とDsg3スコア).2) 再燃時の抗体価を活動期と比較したところ,活動期の抗体価を100%とすると,7~82%まで再上昇した後に症状が再燃することがわかった.10%前後の再上昇でも再燃する例が散見されるため,注意が必要である.しかし,最高でも82%の再上昇前には症状が再燃するため,その前に対応可能と思われる.3) 再燃時の抗体価を軽快期と比較したところ,1.55~9.59倍の再上昇で再燃しており,少なくとも1.55倍以上抗体価が上昇しないと症状が再燃しないことが判明した.以上より,定期的に抗Dsg抗体価を測定することに加え,活動期および軽快期の抗体価と比較検討することにより,再燃の早期予測の精度が向上するものと考えた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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