文献詳細
文献概要
Derm. 2004
医師の責任
著者: 白方裕司1
所属機関: 1愛媛大学医学部皮膚科
ページ範囲:P.106 - P.106
文献購入ページに移動近頃責任感に欠ける医師が多いと思われる.ときどき“何ということでしょう!”とまで形容したくなるようなことをよく耳にするようになった.ある内科の開業医の話であるが,入院患者を抱えているにもかかわらず自宅が10kmも離れているとか,患者の容体が悪化していることを承知しておりながら携帯を鳴らしても出ないとか,急変した患者を総合病院に紹介するのを看護士に押しつけるとか,昔ではとうてい考えられなかったことが実際に行われている.これはモラルの問題か,はたまた人間性の問題か,医師としての責任感に欠けていると思う.この8年間,培養皮膚の臨床応用に携わってきた.他人の皮膚を使用する同種移植は手術時の余剰皮膚を使用するので,“失敗しても次があるさ!”と気楽に培養することができる.しかし,自己培養皮膚移植となると話は違ってくる.患者様から採取した皮膚から細胞を培養するわけであるから,“培養は失敗しました.”ではすまされない.従って,万が一にでも失敗は許されないわけであるから非常に神経を使う.出生前診断を行っているある高名な先生に事情を聞いたことがある.やはり,この先生も胎児の皮膚を採取するには非常に神経を使い,2時間かけて患者とじっくり話をしたうえで行うということだ.責任の問題もあるので,自分自身で行っているとのことである.私の場合もしかり,初代培養はすべて自分でしている.実験助手のひとに培養を行ってもらうことも一時考えたが,培養できなかったときにそのひとに責任を転嫁することはできない.後輩を引きずり込むことも試みたが,実際には長続きせず,今でも自分で行っている.そろそろ真剣に跡継ぎを確保しておかないと大変なことになるなと思いながら今日も細胞とにらめっこしている.(〒791-0295 愛媛県温泉郡重信町大字志津川)
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