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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科58巻6号

2004年05月発行

雑誌目次

連載

Dermoscopy Specialistへの道Q&A(第2回)

著者: 斎田俊明 ,   宮嵜敦

ページ範囲:P.401 - P.403

Qどんなダーモスコピー所見が認められますか?

診断は何でしょう

臨床情報

 78歳,男性.数年前,鼻部に黒色の小皮疹が生じ,徐々に増大してきた.

 初診時,左鼻翼部に灰黒色から黒褐色調の小結節が多発,集簇する11×10mmの大きさの局面状結節が認められた(図2).皮疹の表面は平滑で,過角化は認められない.

米国皮膚科医への道(14)

著者: 藤田真由美

ページ範囲:P.491 - P.492

皮膚科専門医試験(Dermatology Board Examination)

 3年間にわたる皮膚科研修は一人前の皮膚科医を育成するためであるため,その証として卒業後に専門医資格を取得しなくてはならない.この取得は,病院で勤務するのに必要なホスピタルプリビリッジという診察許可をもらうためにも必要となる.私の年は,レジデント終了(6月30日付けで卒業)後の10月中旬に皮膚科専門医試験があったが,卒業後に皮膚科医として仕事をしながら試験勉強,模試,本番を受けるのは日程的に支障が多いため,私の受験した翌年から8月に試験が行われることになった.この皮膚科専門医は今までのUSMLE(米国医師国家試験)とまったく傾向が異なる.USMLEではありふれた病気を熟知してそのバリエーションに対応できることを要求されたが,皮膚科専門医ではありふれた病気は当然知っているものとして試験には出てこない.それよりも,稀な疾患や最新の細かい知識を問われることが多い.やや重箱の隅をつつきすぎのきらいがあるが,出題するほうにしてみれば,優秀な皮膚科レジデントをふるいにかけるには普通の知識ではなく難問奇問にしないといけないらしい.合格率は85~90%位である.

原著

MRマイクロスコピーによる皮膚腫瘍の術前評価特にtumor thicknessに関して

著者: 中村智之 ,   島影達也 ,   久徳茂雄 ,   黒岡定浩 ,   南方竜也 ,   神田栄光

ページ範囲:P.404 - P.409

MRマイクロスコピーは小口径表面コイルを用いたMRIで,表在性部位の高分解能MRI画像を得ることが可能である.今回われわれはMRマイクロスコピーによる皮膚腫瘍の術前評価,特にtumor thicknessに関して悪性黒色腫1例,基底細胞癌2例に対し病理組織像と比較検討したところ,MRマイクロスコピー画像と病理組織像のtumor thicknessはほぼ一致していた.また,踵部正常皮膚において表皮透明層に相当すると考えられる低信号帯が識別された.皮膚腫瘍,特にtumor thicknessの術前評価におけるMRマイクロスコピーの有用性は期待できると思われた.

今月の症例

クワシオルコール様症候群の1例

著者: 上中智香子 ,   廣井彰久 ,   上出康二 ,   古川福実 ,   川口雅功

ページ範囲:P.411 - P.413

51歳,男性.肝硬変および初期胃癌で胃部分切除術の既往あり.初診の40日前から食思不振および下腹部,大腿,腰部の皮膚症状や粘膜症状の出現のため受診した.初診時の皮膚臨床所見は,側腹部,腰臀部,大腿内側に赤褐色丘疹が集簇,一部融合し落屑を伴っていた.背部は皮脂欠乏性皮膚炎様,口角,肛囲,眼角,亀頭粘膜にびらんを伴う紅斑,下腿は著明な浮腫を示し,頭髪は粗であった.生検では表皮壊死像を認めた.血液検査では著明な低蛋白血症と貧血,各種ビタミン,亜鉛の低値,必須アミノ酸の著しい低下が認められたが,糖尿病はなくグルカゴン値は正常であった.また,腹部CTでは膵臓に異常は認めなかった.以上より本症をクワシオルコール様症候群と診断した.その後経口高カロリー栄養食で皮疹は悪化するも中心静脈栄養で皮疹は急速に改善し,小腸透視では内ヘルニアを認め,小腸の内容停滞不良による蛋白吸収不全が原因と考えられた.

症例報告

カンフル(樟脳)による接触皮膚炎の1例

著者: 永岡譲 ,   中山りわ ,   岩田充

ページ範囲:P.414 - P.416

33歳,女性.虫刺症に対する外用療法中に塗布部位にそう痒を伴う浮腫性紅斑が出現した.外用薬による接触皮膚炎を疑い,使用薬剤を中止し,ステロイド外用薬に変更したところ,皮疹は色素沈着を残して消失した.貼布試験ではカンフルにより48時間後に陽性反応がみられたため,カンフルによる接触皮膚炎と診断した.

経過中に臨床像の変化をみた小児の慢性色素性紫斑

著者: 植村功 ,   斉藤隆三 ,   伊藤祐成

ページ範囲:P.417 - P.420

10歳,女児.2年前より誘因と思われるものがなく両下腿に点状紫斑が出現した.徐々に増加し,紫褐色色素斑を伴うようになる.経過とともに丘疹状の皮疹が集簇し,細長い台形を呈するという特異な臨床像を呈した.病理組織学的に,真皮浅層に血管周囲の炎症細胞の浸潤と赤血球の漏出を認めたが,一部の炎症細胞は,通常の慢性色素性紫斑より深く真皮中層から深層にもみられた.慢性色素性紫斑と診断し,ビタミンC内服とステロイド外用にて若干の改善をみた.

片側優位に認められた慢性色素性紫斑の1例

著者: 斉藤絵里子 ,   早川順 ,   塩原哲夫

ページ範囲:P.421 - P.423

61歳,女性.約1年前より左下腿内側に自覚症状のない皮疹が出現し以後拡大.近医受診しステロイド剤を外用したが,症状増悪し当科受診した.両下腿伸側,特に左下腿内側優位に拇指頭大までの褐色斑が多発,点状出血を伴っていた.さらに,静脈瘤も左側優位に下腿上部から膝窩にかけて認められた.病理組織学的所見は典型的であり,慢性色素性紫斑と診断した.画像検査ではサーモグラフィで左下腿内側の皮疹出現部位に一致した高温域を認めた.皮疹に左右差を生じた原因について,血管系の解剖学的特徴より考察を加えた.

Leukocytoclastic vasculitisを伴い,発症10年後にMDSを合併した難治性Sweet病の1例

著者: 荒木文子 ,   岸本三郎

ページ範囲:P.424 - P.427

48歳,男性.1991年頃四肢を中心に紅斑と丘疹が生じた.1997年に当科を初診し,皮膚生検にて真皮と脂肪織に著明な好中球浸潤とleukocytoclastic vasculitisを認め,Sweet病の疑いでステロイド内服を開始したが再発を繰り返し,2001年3月には骨髄異形成症候群(MDS)を発症した.2002年4月,熱発とともに四肢に有痛性膿疱が多発した.末梢血の好中球増多と,組織学的に真皮の核塵を伴った稠密な好中球浸潤をみたが血管炎の所見はなく,初診時標本に弾性線維染色を施行したが対象血管は静脈であり動脈炎は否定した.以上より本症例をleukocytoclastic vasculitisを伴いMDSを合併した難治性のSweet病と診断した.

子宮内容除去術後に生じた急性汎発性発疹性膿疱症

著者: 小沢桂 ,   高橋政史 ,   古川裕利 ,   大塚幹夫 ,   中村晃一郎 ,   金子史男

ページ範囲:P.428 - P.431

30歳,女性.子宮内容除去術施行の翌日より間擦部を中心とし,ほぼ全身に小膿疱を伴う紅斑が出現し,病理組織像でKogoj海綿状膿疱を認めた.臨床検査上,末梢血好中球優位の白血球数増加,血清CRP高値を認めた.本症例は臨床像,病理組織学的所見,検査結果より急性汎発性発疹性膿疱症と診断した.プレドニゾロン40mg/日の全身投与にて皮疹は軽快し,約2週間で略治した.術中,術後に投与された薬剤に関して施行したパッチテスト,皮内テストはすべて陰性であったが,薬剤リンパ球幼若化試験ではロキソニン(R)が陽性であった.本症の発症にはウイルスや薬剤の関与が推定されるが,過去に出産後に薬剤を内服し,急性汎発性発疹性膿疱症を生じた報告例も散見され,手術あるいは妊娠に伴う何らかの免疫異常がその発症に関与している可能性があると考えられた.

HIV感染者にみられた好酸球性膿疱性毛囊炎―皮膚および口腔粘膜に褐色色素沈着を伴った1例

著者: 戸田淳 ,   梅本尚可 ,   加倉井真樹 ,   西田淳二 ,   出光俊郎 ,   中川秀己

ページ範囲:P.434 - P.437

54歳,男性.1997年9月,抗HIV抗体陽性を指摘された.2001年7月13日より当院血液科にて抗ウイルス剤(サニルブジン,ラミブジン,エファビレンツ)の内服を開始した.同年8月顔面,頸部,および体幹に軽度の痒みを伴う皮疹が出現したため来院した.初診時,前額部,鼻背,頬部を中心に紅褐色調の紅斑があり,その上に半米粒大までの紅色丘疹,膿疱がみられ,頸部,背部では,一部,膿疱を混在する米粒大から大豆大の紅色丘疹が多発散在していた.顔面,背部,手指,爪甲,口腔粘膜,舌にも褐色から黒褐色色素沈着を認めた.末梢リンパ球のCD4/CD8比は0.47,血中抗HIV抗体陽性.組織像は毛囊周囲性に表皮から皮下組織に及ぶリンパ球,好酸球を中心とする稠密な細胞浸潤と毛囊破壊像,毛囊内膿瘍を認めた.塩酸ミノサイクリン,塩酸アゼラスチン内服により改善したが色素沈着の増強が認められた.

全身性強皮症に合併した顕微鏡的多発血管炎

著者: 長谷川道子 ,   天野博雄 ,   江内田智子 ,   田村敦志 ,   石川治

ページ範囲:P.438 - P.440

57歳,女性.全身性強皮症に合併した顕微鏡的多発血管炎の1例を報告した.1993年頃よりRaynaud症状が出現.1996年より全身性強皮症として当科で加療を受けていた.2001年12月より,両下肢にしびれと筋力低下および網状の紅色皮疹が出現.腓腹筋生検にて細血管に壊死性血管炎を認めた.腹部血管造影に異常はなかったが,MPO-ANCA陽性であることから,顕微鏡的多発血管炎と診断した.プレドニゾロン30mg/日より治療を開始したところ,速やかに症状は改善したが,プレドニゾロン漸減中にCRP,KL-6の上昇と動脈血酸素分圧の低下が出現した.顕微鏡的多発血管炎の再燃と判断し,ステロイドパルス療法後,シクロホスファミドを追加投与し軽快した.

胸腺癌を合併した皮膚筋炎

著者: 加賀谷真起子 ,   嵯峨賢次 ,   鎌田麻子 ,   兼古理恵 ,   大森房之 ,   神保孝一 ,   篠田京香

ページ範囲:P.441 - P.444

55歳,男性.2002年3月より顔面に紅斑・浮腫が出現.その後,筋力低下・食欲不振・体重減少も出現.CPK166IU/l,ALD5.0U/lで正常.全身検索にて腫瘍が発見され切除したところ,胸腺癌であった.皮膚筋炎の胸腺癌合併は非常に稀で本邦海外併せて,自験例も含め5例のみであった.皮膚筋炎は胸腺癌の早期発見を可能にする点でも重要であり報告する.

胆囊摘出術により蛋白尿が減少したoverlap症候群の1例

著者: 川村由美 ,   大塚勤 ,   宮本由香里 ,   大塚俊 ,   山崎雙次

ページ範囲:P.445 - P.447

34歳,女性.1989年10月よりRaynaud現象,関節痛出現.1990年7月より皮膚硬化,四肢挙上困難,口腔内乾燥感のため当科受診.臨床所見および検査,病理組織学的に全身性強皮症,多発性筋炎,Sjögren症候群のoverlap症候群と診断し,加療されていた.経過中頻回の血小板減少および補体低下をきたし,2001年2月より尿蛋白陽性となったためSLEの重複と考えた.その後,蛋白尿3.5g/日以上と,ネフローゼ症候群となり,腎生検にてループス腎炎(WHOⅢ~Ⅳ)と診断された.ステロイド抵抗性であったが心窩部痛・背部痛を主訴に腹部精密検査施行,悪性所見があったため,胆嚢摘出術を施行された.術後より尿蛋白が減少した.

外的刺激を受ける右手に著明な索状石灰沈着がみられたCREST症候群の1例

著者: 森本亜玲 ,   佐藤友隆 ,   五味博子 ,   松尾聿朗

ページ範囲:P.448 - P.450

51歳,女性.42歳時,全身倦怠感,頭部の脱毛,爪の変形を主訴に受診した.1年半後,顔面と胸部に光沢ある色素沈着を伴った皮膚硬化局面,頭部のびまん性脱毛,手指の浮腫性紅斑,爪上皮の延長と点状出血,Raynaud現象,舌小帯の短縮などを認めたため,精査入院した.入院時,抗核抗体陽性,抗セントロメア抗体は陰性.前腕伸側の皮膚病理組織で膠原線維の増生を認め,臨床像と検査所見より全身性強皮症早期例と診断した.その後,プロスタグランジンE1製剤静注と血流改善剤で皮膚硬化症状は改善傾向を示したが,5年後皮下石灰沈着が出現した.7年後には食道造影で蠕動運動の低下,皮膚の毛細血管拡張が出現し,CREST症候群と診断した.自験例は,右手の,職業上頻繁に鋏が当たる部位に一致して著明な索状石灰沈着を認め,そのころより皮膚硬化が軽快した特徴ある経過を示したCREST症候群と考え,報告した.

脈絡膜悪性黒色腫を合併した水ほう性類天ほうそうの1例

著者: 名嘉眞武国 ,   御厨賢 ,   根井まり子 ,   橋本隆 ,   嶋田伸宏

ページ範囲:P.451 - P.454

64歳,女性.四肢,軀幹に緊満性水ほう・びらんを生じ,病理組織学的所見,1M食塩水剝離皮膚を用いた蛍光抗体間接法所見および免疫ブロット法所見より水ほう性類天ほうそうと診断した.プレドニゾロン,ミノサイクリン,ニコチン酸アミド内服療法を開始したが,治療に抵抗性であった.また,左眼球内腫瘤を指摘された既往があったため精査したところ,悪性黒色腫が疑われ眼球摘出術を行った.組織学的にも脈絡膜から生じた悪性黒色腫と診断された.術後皮疹は著明に改善し8か月後には治療を中止しえた.以上より自験例において水ほう性類天ほうそうと悪性黒色腫は関連性があることが示唆された.また,脈絡膜悪性黒色腫との合併例は国内外において報告はなく,非常に稀と思われた.

アジスロマイシンが有効であったMycobacterium aviumによる非結核性抗酸菌症の姉妹例

著者: 増田邦男 ,   白濱茂穂 ,   松本賢太郎 ,   橋爪秀夫 ,   青島有美 ,   藤田弘

ページ範囲:P.455 - P.458

12歳と7歳の姉妹の皮膚非結核性抗酸菌症家族発症例を報告した.硬結を伴う紅斑が姉では腹部,体幹に多発,妹では腹部に1か所出現した.両症例とも病理組織像は,類上皮細胞肉芽腫像を呈した.病変部,使用されていた24時間風呂の湯よりMycobacterium aviumが検出された.姉は一部病変の切除と,クラリスロマイシン,ノルフロキサシンを投与したが難治性であった.アジスロマイシンの内服に変更したところ皮疹は縮小,はんこん化した.妹も同じくアジスロマイシンの投与により軽快した.

帯状ほう疹後の多形滲出性紅斑の2例

著者: 角田孝彦 ,   小泉裕子 ,   原田晋 ,   佐多徹太郎

ページ範囲:P.460 - P.462

症例1:80歳,男性.右胸から背部の帯状ほう疹(汎発性)の発症9日目より両大腿から臀部と手背に多形滲出性紅斑(erythema exsudativum multiforme:EEM)が出現した.使用薬剤は変更せず経過をみたところEEMは約1週間で軽快した.症例2:74歳,女性.右腹から背部の帯状ほう疹の発症6日目より全身にEEMが出現した.内服薬剤変更とステロイド外用数日でEEMはほぼ消退した.EEM出現時の薬剤のパッチテストとDLSTは陰性であった.VZVモノクローナル抗体染色では,症例1の表皮顆粒細胞に陽性,症例2は陰性であった.

巨大尖圭コンジローマの1例

著者: 池滝知 ,   野本重敏 ,   下村裕 ,   山田聰 ,   橘敏明 ,   藤原浩 ,   伊藤雅章

ページ範囲:P.463 - P.465

55歳,男性.初診4か月前より急激に拡大し,9×7cmのカリフラワー状に隆起した,弾性軟の腫瘤を肛門周囲に認めた.周囲に疣状の結節と排膿を伴う瘻孔や結節を伴っていた.腫瘤表面には膿を伴い悪臭を認めた.両側鼠径リンパ節は腫脹していた.生検組織は尖圭コンジローマで,同部より human papillomavirus (HPV) type6 DNAを検出した.腫瘍切除術+mesh skin graftを施行し良好な結果を得た.

臍部子宮内膜症の1例

著者: 吉田雄一 ,   占部和敬 ,   板倉英潤 ,   師井洋一 ,   古賀哲也 ,   古江増隆

ページ範囲:P.466 - P.468

47歳,女性.2000年5月頃より臍部に発赤,圧痛が出現.初診時,臍部に径2cm大の表面乳頭状,弾性硬の淡褐色腫瘤を認めた.腫瘍マーカーCA19-9およびCA125が上昇していたため,悪性腫瘍の臍部転移(いわゆるSister Mary Joseph's nodule)を疑い全身精査を施行したが異常は認められなかった.病理組織学的には真皮下層に腺腔構造を認め,臍部子宮内膜症と診断した.腹腔鏡検査にて腹腔内にも子宮内膜症病変を認めたため,ゴナドトロピン放出ホルモン誘導体投与による治療を開始し,約1年間ホルモン療法を継続した.腫瘍はやや縮小したものの残存し,効果が不十分であったため,最終的には外科的全切除を施行した.

右示指に生じたextraskeletal osteochondromaの1例

著者: 稲見加恵 ,   内山麻理子 ,   伊藤治夫 ,   繁益弘志 ,   原田敬之

ページ範囲:P.469 - P.471

47歳,女性.2000年5月頃より臍部に発赤,圧痛が出現.初診時,臍部に径2cm大の表面乳頭状,弾性硬の淡褐色腫瘤を認めた.腫瘍マーカーCA19-9およびCA125が上昇していたため,悪性腫瘍の臍部転移(いわゆるSister Mary Joseph's nodule)を疑い全身精査を施行したが異常は認められなかった.病理組織学的には真皮下層に腺腔構造を認め,臍部子宮内膜症と診断した.腹腔鏡検査にて腹腔内にも子宮内膜症病変を認めたため,ゴナドトロピン放出ホルモン誘導体投与による治療を開始し,約1年間ホルモン療法を継続した.腫瘍はやや縮小したものの残存し,効果が不十分であったため,最終的には外科的全切除を施行した.

Verruciform xanthomaが併発していた後天性リンパ管拡張症の手術例

著者: 安里豊 ,   里見久恵 ,   宮里肇 ,   野中薫雄

ページ範囲:P.472 - P.475

76歳,女性,25年前に子宮癌のため子宮全摘術および放射線療法を受けた.15年前頃より大陰唇にそう痒を自覚し,次第に滲出液を認め,徐々に隆起して腫瘤状となった.1999年,他院外科にて後天性リンパ管拡張症と診断され両側大腿部のリンパ管-血管吻合術を受けたが改善せず,2001年,当院皮膚科を受診する.ADL(activity of daily life)を考慮し,病変部を切除して単純縫縮した.術後7か月を経た現在でも再発は認められない.後天性リンパ管拡張症はリンパ管の通過障害が生じ末梢のリンパ管が拡張した病態と考えられているが,いまだ治療法は確立されていない.経過観察のみで対処する場合も少なくなく,今回のように病変部の切除術が奏効したことを考えると,今後も治療の選択肢の一つとして考慮すべきである.また,病変部にverruciform xanthoma (VX)の併発を認め,VXの病因が外的刺激から誘因となる説を裏付ける疾患ではないかと考えた.

非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症に生じたmelanoma in situの1例

著者: 須山孝雪 ,   伊藤雅章 ,   竹之内辰也

ページ範囲:P.476 - P.478

35歳,女性.生後1週頃から全身に紅斑,鱗屑を生じ,非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症の診断で外用を主とした対症治療を継続していた.33歳頃より右頬部に不整形の黒色斑が出現し,15×12mmまで拡大.melanoma in situの診断で拡大切除した.自験例は病型分類上はlentigo malignaに該当するが,若年発症であること,および組織学的に真皮のsolar elastosisは認めなかったことから,紫外線皮膚障害による発癌は考えにくく,原病に伴って掻破と表皮剥離を繰り返していたことによる外的刺激がmelanomaの発症誘因とも考えられた.

Primary cutaneous anaplastic large cell lymphomaの1例

著者: 増田邦男 ,   白濱茂穂 ,   深水秀一 ,   安見和彦 ,   小沢享史

ページ範囲:P.480 - P.482

70歳,男性.色調は黒色調で一見悪性黒色腫を思わせた.病理組織像は真皮浅層より皮下脂肪織まで腫瘍細胞の集塊が存在し,腫瘍細胞は大型で,核は類円形で大小不同,大きな核小体を持ち,核分裂像や多核のものも散見された.免疫組織化学的には表面形質はCD3,CD30が陽性であった.全身検索では特に問題なく皮膚原発と考えた.腫瘍の辺縁より1cm離して,側頭骨骨膜上にて切除した.術後,切除部位に電子線40Grey照射した.現在に至るまで再発を認めない.

臨床統計

慶應義塾大学医学部皮膚科学教室で経験した色素性痒疹60例の臨床的検討

著者: 齋藤昌孝 ,   石河晃 ,   寺木祐一 ,   西川武二

ページ範囲:P.483 - P.487

色素性痒疹は長島らにより報告されてから約30年が経過し,これまでに300例を超える症例が報告されているが,原因はいまだ不明である.当教室で1972~2003年8月までに経験した色素性痒疹計60例を詳細に分析し,これまでに報告されている知見との比較検討を行った.その結果,当教室例は女性患者が圧倒的に多く(男女比 1:7),3月に発症した例が多かった.ダイエットや体重減少を伴っていたのは5例,Ⅰ型糖尿病の合併が1例みられた.罹患部位は背部,胸部,項部の順に多かった.尿検査が行われた27症例のなかで尿中ケトン体陽性率は30%と高率であった.病理組織学的に苔癬型組織反応を呈する症例が53%を占めており,好中球主体の初期反応を呈する症例は38%であった.治療ではミノサイクリン(Mino)よりもDDSのほうが即効性を有する印象を受け,投与後の再発率ではMinoは18%,DDSは67%とDDSのほうが高かった.

これすぽんでんす

「Hyperkeratosis of nipple and areolaの1例」を読んで

著者: 出光俊郎

ページ範囲:P.488 - P.488

福田英嗣先生,他の『Hyperkeratosis of nipple and areola』(57巻12号:1100-1103頁,2003)の論文を大変,興味深く読まさせていただきました.この症例は,以前に私たちが発表した『天疱瘡や類天疱瘡のびらん,潰瘍の治癒後に一過性に生じる,手背,足背の黒色表皮腫様皮疹』1,2)に,発症するまでの経過,臨床像,組織学的所見が非常によく似ておりますので,誠に僣越ですが,私見を述べさせていただきます.

 私たちの教室の近藤ら1)は類天疱瘡などの自己免疫性水疱症のびらんや潰瘍部の治癒後にみられる手背,足背の一過性の黒色表皮腫様皮疹についてすでに学会報告,論文発表をしております.若干病名が長く,私たちはこのような創傷治癒過程における異常な反応を「コンドウ現象」と言ってますので,以下,便宜的に本稿では「コンドウ現象」と称させていただきます.

ご意見に答えて

著者: 福田英嗣

ページ範囲:P.489 - P.489

貴重な御意見ありがとうございました.貴教室から御報告の,「類天疱瘡治癒部に生じた黒色表皮腫様皮疹」1)および「Pemphigus Vulgaris Associated with Transient Acanthosis Nigricans Like Lesion」2)を早速拝見させていただきました.

 自験例では,免疫学的異常やステロイド内服歴はなく,自然消退傾向は明確ではありませんでしたが,経過,臨床像,病理組織所見(特に文献1のFig1.h)ともに類似点が多く認められました.このことから自験例は「Hyperkeratosis of nipple and areolaの1例」3)に記述したごとくステロイド剤にて皮膚症状の軽快傾向を示したことより,本疾患の本態は炎症であり,発症の一因としてびらんを呈するほどの重症の湿疹性病変が存在したために,御指摘のようなepidermal injuryに基づく変化が出現したと考えます.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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