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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科58巻8号

2004年07月発行

雑誌目次

連載

Dermoscopy Specialistへの道Q&A(第4回)

著者: 斎田俊明 ,   宮嵜敦

ページ範囲:P.601 - P.603

Qどんなダーモスコピー所見が認められますか?

診断は何でしょう

臨床情報

 29歳,男性.マウンテンバイクが趣味で,10歳代から日光曝露の機会が多かった.初診の1年半ほど前に右前腕に黒褐色斑が生じているのに気付いた.徐々に拡大してきたので,当科を受診した.

 初診時,右前腕屈側に7.1×6.2mmの黒褐色斑が存在していた(図2).全体としてやや不整なヒョウタン型の形状を呈し,色調に多少の濃淡差が認められた.


A 診断 悪性黒色腫(表在拡大型)の早期病変

原著

再発性環状紅斑様乾癬の臨床的特徴

著者: 玉川理沙 ,   益田浩司 ,   加藤則人 ,   岸本三郎

ページ範囲:P.604 - P.609

要約 患者は20~60歳,男性1名,女性4名.既往は膿ほう性乾癬が1例,ほう疹状膿痂疹が1例,尋常性乾癬が3例.そのうち2例は薬剤内服を契機に発症した.体幹四肢に環状紅斑があり,紅斑の辺縁には小膿ほうが環状に配列し,襟状鱗屑がみられた.個疹は2~3週で消退し,次々と新しい皮疹が出現した.またその期間は発熱などの全身症状はなかった.組織学的所見では角層下に好中球性膿ほう,軽度表皮肥厚があり,その辺縁にKogoj海綿状膿ほうを伴う症例と伴わない症例があった.治療はエトレチナート内服4例,シクロスポリン内服3例,メソトレキセート内服1例が行われた.治療開始後5例とも皮疹の新生は減少し,徐々に軽快したが,上気道炎症状時,妊娠時,月経前に皮疹が増悪する傾向がみられる.

今月の症例

皮膚骨腫の1例―長期経過観察により偽性偽性副甲状腺機能低下症(Albright骨異栄養症)と診断した1例

著者: 藤本篤嗣 ,   安西秀美 ,   石河晃 ,   谷川瑛子 ,   西川武二 ,   川島淳子 ,   木花光

ページ範囲:P.611 - P.614

生後1か月,男児.右大腿後面に500円硬貨大までの弾性硬の皮下結節を複数認め,X線上大腿骨とは非連続性の石灰化像を呈した.当時,Ca,IP,PTHなどの血清学的異常を認めず,皮膚生検のうえ原発性皮膚骨腫と診断した.経過観察していたところ1歳時より,円形顔貌,精神発達遅延などのAlbright徴候を生じたが,ホルモン負荷検査や血中電解質などに異常を認めず偽性偽性副甲状腺機能低下症すなわちAlbright骨異栄養症と診断した.

症例報告

Kaposi肉腫を契機に診断した後天性免疫不全症候群

著者: 江内田智子 ,   大西一徳 ,   石川治

ページ範囲:P.615 - P.618

55歳,日本人男性.Kaposi肉腫が後天性免疫不全症候群(AIDS)診断の契機となった1例を報告した.初診時,躯幹,四肢に小豆大から小指頭大の暗紫紅色の結節が多発し,両側口腔粘膜にも暗紫紅色斑を認めた.結節の病理組織像よりKaposi肉腫と診断し,AIDSを疑って血清免疫学的検査を施行したところ,HIV感染が明らかになりAIDSと診断した.自験例ではHIVの感染経路は異性間性的接触によるものと考えた.AIDS発症の指標疾患の一つであるKaposi肉腫について,若干の文献的考察を加え報告した.

膝蓋の有茎性表皮囊腫の1例

著者: 榊原章浩 ,   藤山忠昭

ページ範囲:P.619 - P.621

77歳,女性.有茎性腫瘍の中央部に単一の角質囊腫を認めた.囊壁は顆粒層を伴う表皮様構造を呈し,上層の表皮様細胞には核周囲の空胞変性を認め,囊内容の角質には錯角化と空胞構造を認めた.この病理組織像より,有茎性という特異な形態の形成に,足底表皮囊にみられるような乳頭腫ウイルスの汗器官への感染が関与している可能性を考え免疫染色を行ったが,乳頭腫ウイルス抗原,CEAともに陽性反応を証明することができなかった.

Nocardia otitidiscaviarumあるいはNocardia brasiliensisによる皮膚ノカルジア症の2例

著者: 中田珠美 ,   小出まさよ ,   齋藤希人 ,   丸山みな子

ページ範囲:P.622 - P.625

症例1:68歳,男性.基礎疾患はなかったが,突然の意識障害で搬送され,両肺野の浸潤影と体幹,四肢に散在する膿ほうを認めた.喀痰,皮疹の培養で,Nocardia otitidiscaviarumを検出し,内臓ノカルジア症,続発性皮膚ノカルジア症と診断,ミノサイクリン,ST合剤などで治療したがDICを併発して死亡した.細菌培養検査で,喀痰,皮疹の両者よりNocardia otitidiscaviarumを検出しえた本邦で1例目の症例であった.

 症例2:70歳,女性.基礎疾患はなく,外傷もはっきりしなかったが,左第2趾背にびらん,左大腿部に紅斑を認め,左鼠径リンパ節が腫脹した.びらんよりNocardia brasiliensisを検出,原発性皮膚リンパ型ノカルジア症と診断した.ミノサイクリン,ST合剤で治療し,軽快した.

熱傷はん痕部に生じた皮膚サルコイドーシス

著者: 太田馨 ,   水野可魚 ,   岡本祐之 ,   堀尾武

ページ範囲:P.628 - P.630

70歳,女性.1992年天ぷら油により両前腕伸側に熱傷を受け,その後次第に同部位に不整形で中央部がやや萎縮し浸潤を触れる紅褐色の皮疹が現われた.縦隔リンパ節腫脹と肺野に小結節が認められ,血清ACE,血清リゾチームは上昇し,ツベルクリン反応は陰性であった.皮膚病変には非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が認められたが,偏光顕微鏡にて異物が存在しなかったことおよび皮疹の性状から局面型の皮膚サルコイドと診断した.先行する皮膚病変に皮膚サルコイドが出現するのは,熱傷はん痕部の症例以外に,掻破後の報告や,帯状ほう疹後のはん痕部位,水痘後のはん痕などが報告されている.発症機序は不明であるが,Köbner現象により生じたものと考えられる.

板状硬結を呈しムチン沈着を伴った皮下型サルコイドーシスの1例

著者: 山本純照 ,   宮川幸子

ページ範囲:P.632 - P.634

70歳,女性.四肢に広範囲に生じた皮下型サルコイドーシスの1例.左下腿では板状硬結を呈した.血清ACE値の上昇,ツ反陰性を認め,胸部X線ではBHLを認めなかったものの,Gaシンチにて肺門部にabnormal hot areaを認めた.病理組織学的には左下腿の板状硬結から皮膚生検を行い,真皮深層から皮下脂肪組織にかけて広範囲にLanghans型巨細胞を伴う大小の類上皮細胞肉芽腫の集塊を多数認めた.中心部に膠原線維の変性を認める部位もあり,アルシアンブルー染色にて陽性を示した.プレドニゾロン15mg/日の内服を行い,皮疹は速やかに消退した.

人中の両側に限局した色素沈着―アローゼン(R)による固定薬疹が強く疑われた1例

著者: 藤田靖幸 ,   澤村大輔 ,   清水宏

ページ範囲:P.635 - P.637

55歳,女性.初診の6年前から人中両側に違和感を伴う暗赤色の皮疹が出現し,増悪と軽快とを繰り返すようになった.摩擦黒皮症や炎症後色素沈着として治療を受けるも改善を認めなかった.病理組織学的には,異角化・液状変性および真皮上層の帯状単核球浸潤を認めた.固定薬疹を疑い詳細な問診を聴取したところ,アローゼン(R)を内服していたことが判明した.内服中止を指示したところ皮疹の軽快を認めた.治療抵抗性の黒褐色病変を診た際には固定薬疹の可能性も考え,詳細な薬剤歴の把握が重要と改めて認識した.

メシル酸ガべキサート(FOY(R))による皮膚障害の2例

著者: 亀井和可奈 ,   知野剛直 ,   米田和史

ページ範囲:P.639 - P.641

要約 症例1:33歳,女性.汎発性血管内血液凝固症候群(DIC)の治療のため,末梢静脈よりメシル酸ガベキサート(FOY(R))を持続点滴された.点滴終了より1週間後,同部位のそう痒,腫脹と索状の硬結が出現した.

 症例2:74歳,女性.急性膵炎の治療のため,末梢静脈より(FOY(R))の点滴を受けた.点滴漏出を起こし,翌日点滴部位の腫脹,疼痛が出現した.刺入部は壊死を伴っていた.医原性の皮膚障害を起こす薬剤として,抗癌剤はよく知られており注意深く投与されるが,ほかの薬剤については十分な注意が払われていないのが現状である.(FOY(R))は血管外漏出や濃度依存性の皮膚障害の報告が散見されており,投与の際注意すべき薬剤の一つである.

抗Mi-2抗体陽性皮膚筋炎の1例

著者: 小村一浩 ,   佐藤伸一 ,   濱口儒人 ,   森俊典 ,   藤井秀孝 ,   竹原和彦

ページ範囲:P.643 - P.645

36歳,男性.3か月前より倦怠感と顔面,体幹,四肢に紅斑が出現した.鼻翼に沿って分布する顔面紅斑,掻破性皮膚炎様の体幹の紅斑,爪上皮点状出血を伴う爪囲紅斑と筋原性酵素の上昇に加え抗Mi-2抗体が陽性であったことより,自験例を皮膚筋炎と診断した.抗Mi-2抗体は日本人の皮膚筋炎患者において頻度は少ないが特異的な自己抗体として知られる.その臨床像は,特徴的な皮膚症状を呈し,ステロイド内服が奏効し, 間質性肺炎の合併頻度は少ないとされる.一方,急速進行性の間質性肺炎を合併する皮膚筋炎症例は特徴的な皮膚症状および軽度の筋症状で初発することが多いため,病初期には軽症である抗Mi-2抗体陽性例と区別することが難しい.そのため,自験例のように特徴的な皮膚症状を呈し,筋症状が軽微な症例では,抗Mi-2抗体の検索が予後を推定するうえで重要と考えられた.

プレドニゾロンとニコチン酸アミドが奏効した角層下膿ほう症の1例

著者: 原藤玲 ,   山本奈緒 ,   畑康樹

ページ範囲:P.646 - P.648

76歳,男性.初診の約1週間前より臍周囲に膿ほうと鱗屑を辺縁に付着する紅斑,びらんが出現した.DDS,エトレチナートなど,各種治療を試みたが,無効あるいは副作用の出現のため継続できず難治であった.プレドニゾロン30mg/日内服にて皮疹は軽快し,ニコチン酸アミドを併用することでプレドニゾロン漸減時の皮疹の再燃を抑制できた.ニコチン酸アミドも今後本症に試みるべき治療の一つと考えられた.

色素性乾皮症D群の1例

著者: 星野優子 ,   関塚敏之 ,   森脇真一

ページ範囲:P.650 - P.652

68歳,女性.幼児期より日光に当たると顔面が赤くなりやすかった.20歳の時に近医を受診した際,色素性乾皮症(xeroderma pigmentosum:XP)を疑われたため厳重な遮光を開始した.50歳より露光部に皮膚腫瘍が多発してきた.当院初診時(51歳),顔面,項部,上胸部,手背などの日光露光部には数mm大までの小色素斑がみられ,皮膚は全体に粗造であった.現在まで11回にわたり顔面の皮膚腫瘍を切除している.患者細胞の不定期DNA合成能は正常の47%であった.宿主細胞回復能を指標としたXP相補性テストにてXPD群と診断した.

後天性全身性無汗症の1例

著者: 服部友保 ,   永井弥生

ページ範囲:P.653 - P.655

33歳,男性.16歳頃より発汗の低下があったが,初診の約1か月前より運動後の息苦しさと両腋窩の腫脹,疼痛が出現したため当科を受診した.顔面,腋窩,足底以外の部位で発汗を認めず,組織学的に無汗部の汗腺組織に細胞配列の乱れ,分泌細胞の膨化がみられた.ステロイドパルス療法を2回施行し自覚的には改善傾向を認めている.汗腺に器質的な変化がある症例に対するステロイド療法の有効性は症例により異なり,その治療法を検討する必要があると考えられた.

Carney's complexとの異同が問題となったsuperficial angiomyxomaの1例

著者: 藤本栄大 ,   藤本典宏 ,   原大 ,   二宮嘉治 ,   大西善博 ,   多島新吾 ,   苗代弘

ページ範囲:P.657 - P.660

24歳,男性.初診の約1年前より左腰部に腫瘤が出現.漸次増大したため当科を受診.初診時,4.5×3.0cm大,自覚症のない表面平滑で,下床との可動性を有する褐色調の腫瘤を認めた.病理組織学的には真皮内の線維性被膜を有する多結節性病変で,粘液基質内に血管の増生と,紡錘形細胞がみられた.腫瘍細胞は免疫組織化学的にfactorⅩⅢa染色で陽性を示した.5年前に下垂体腫瘍摘出の既往があり,Carney's complexとの異同が問題となった.

頸部に発生した筋肉内脂肪腫の1例

著者: 末原郁子 ,   岩原邦夫

ページ範囲:P.661 - P.663

症例は45歳,女性.右頸部に腫瘤を触知し当科を受診した.既往として,15年前にも同部位の脂肪腫にて切除術が行われており,今回,再発性の脂肪腫・脂肪肉腫を鑑別診断に挙げ,一部筋肉を含めた広範切除を行った.今回切除検体,15年前切除検体ともに,組織像は筋肉内脂肪腫に相当する像であった.筋肉内脂肪腫の発生頻度は,脂肪腫全体の1.7~1.8%と報告されており,筋肉内脂肪腫の中でも,頸部に発生することは稀である.文献的考察によると,高分化脂肪肉腫,異型脂肪腫,筋肉内脂肪腫の分類にはさまざまな見解があり,再発率についても報告により大きな差があるが,可能である場合は広範切除を行うことが再発率の低下につながると考えられた.

血管芽細胞腫(中川)の2例

著者: 朴順華 ,   新藤季佐 ,   鈴木伸典

ページ範囲:P.664 - P.666

症例1:4か月,男児.生後1か月頃より左胸部に皮疹が出現した.初診時,2.5×1.5cmの暗赤色の皮疹を認めた.組織学的所見は,真皮の中層から下層に腫瘍細胞塊が島状に存在していた.症例2:6歳,女児.4歳頃より右後頸部に皮疹が出現し,拡大してきた.初診時,3×2cmの浸潤を触れる暗赤紫色の皮疹があり,軽度の圧痛を認めた.病理組織学的所見では真皮の上層から下層にかけて種々の大きさの腫瘍細胞塊が島状に散在し,腫瘍細胞塊には充実性胞巣と裂隙状の管腔を認めた.以上より2例とも血管芽細胞腫と診断した.症例1では約1年後,浸潤,色調ともに軽快してきている.症例2では,4歳で発症後,6歳時の初診まで腫瘍の消退傾向は示していない.

外傷はん痕上に生じた隆起性皮膚線維肉腫の1例

著者: 林昌浩 ,   横山靖 ,   杉木浩 ,   三橋善比古 ,   近藤慈夫 ,   柏英雄 ,   石川朗

ページ範囲:P.668 - P.670

59歳,男性.31歳頃から精神分裂病で加療中.51歳の時に腹部をハサミで切り自殺未遂を起こした.初診の4年前より同部に腫瘤が出現.近医を受診し生検したところ隆起性皮膚線維肉腫(dermatofibrosarcoma protuberans:DFSP)と診断され,手術目的に当科を紹介された.病理組織学的に,腫瘍細胞は真皮全層にわたって増殖し,一部はいわゆるstoriform patternを呈していた.腫瘍は比較的均一な紡錘形細胞からなり,細胞・核の異型性は軽度であった.CD34が腫瘍細胞に陽性を示した.以上からDFSPと診断し,全身麻酔下に腫瘍広範切除,遊離大腿筋膜張筋皮弁による再建,分層網状植皮術を施行した.外傷に続発したDFSP本邦報告例をまとめる.

腋窩のアポクリン腺癌

著者: 守屋美佳子 ,   古田淳一 ,   梅林芳弘

ページ範囲:P.671 - P.673

61歳,男性.左腋窩の径3cm大の皮下結節.表面は紅色調で,中央に1cm大の紅色結節と1.5mm大の小結節がみられた.組織学的に,腺管構造を形成する腫瘍細胞が増殖し,断頭分泌様の所見,内腔への乳頭状突出を認め,核分裂像も散見された.周囲に乳腺組織はない.EMA,lysozyme,CD15陽性,CK20陰性.全身検索を行ったが,内臓悪性腫瘍を示唆する所見はなかった.皮膚原発のアポクリン腺癌と考え全摘植皮した.術後2年7か月経過した現在,再発転移の徴候をみない.

肛囲にPaget現象を呈した肛門管癌の1例

著者: 西村英恵 ,   金子高英 ,   水木大介 ,   原田研 ,   今淳 ,   花田勝美 ,   伊藤卓 ,   四ツ柳高敏 ,   鎌田義正

ページ範囲:P.674 - P.677

76歳,女性.初診の1年前より肛囲にそう痒を伴う皮疹が出現し,近医にて外用剤で治療されていたが徐々に拡大した.当科初診時,肛門部に同心円状,直径6cmの境界不明瞭な浸潤性紅斑を認めた.一部にびらん,結節性腫瘤を伴っていた.初診時の生検にて乳房外Paget病と診断した.肛門管上皮内へのPaget様細胞の増生を認めたため,腹会陰式直腸切断術,皮膚悪性腫瘍切除術を施行した.肛門管部で移行上皮から腺上皮境界部に達する腫瘍を認めた.切除組織の免疫組織化学的染色にてgross cystic disease fluid protein 15 (GCDFP15)陰性,cytokeratin 20(CK20)陽性で内臓癌由来を示唆した.明らかな下床癌は確認できなかったが肛門管癌の表皮内浸潤に伴ったPaget現象と考えた.術後,低用量のfluorouracil (5-FU),cisplatin (CDDP)療法(low dose FP療法)を3クール施行した.5か月後の現在,再発,転移所見はない.

微小肛門管癌の発見につながった肛囲Paget病の1例

著者: 川島拓也 ,   宇谷厚志 ,   山本克志 ,   中村康博 ,   鎌田憲明 ,   新海浤

ページ範囲:P.678 - P.680

62歳,女性.約3年前より肛門周囲にそう痒を伴う紅斑が生じ,拡大傾向にあった.近医にて生検の結果,乳房外Paget病と診断され,当科紹介受診となった.大腸内視鏡にて,肛門管に小結節が発見され,組織は高分化型腺癌であった.免疫組織化学検査で,Paget細胞はcytokeratin20(CK20)陽性,gross cystic disease fluid protein15(GCDFP15)陰性であり,続発性Paget病のパターンを示した.

治療

血管拡張性肉芽腫に対する硬化療法の工夫

著者: 松本和也 ,   中西秀樹 ,   山中健生 ,   橋本一郎 ,   久保宜明

ページ範囲:P.681 - P.683

9歳,男児.左小指指尖部に生じた血管拡張性肉芽腫に対してモノエタノールアミンオレイン酸溶液の局所注入が奏功した.この硬化療法は,従来の凍結療法が有用でない場合にも効果的であり,病変部への注入量を0.1ml以下にすることで副作用も起こりにくいと考えられる.血管拡張性肉芽腫に対して有用な保存的治療であると思われた.

印象記

第103回日本皮膚科学会総会・学術大会

著者: 八木宏明

ページ範囲:P.685 - P.687

2004年4月14日水曜日の朝,前夜から降り続く雨の中,自宅を出て京都に向かった.例年より早く開花を迎えた桜はすでに盛りを過ぎ,浜松駅までの道路には桜の花びらが敷きつめられていた.京都に到着,地下鉄の長い通路から階段を駆け上ると水たまりの残る国立京都国際会館への通路に出た.すでに雨は上がり,京都という神々しい雰囲気が醸し出す身震いするような冷気を感じた.周囲に目をやると会場の庭園には,淡い桃色を中心に色とりどりの花々が咲き誇っていた.本年から,日本皮膚科学会総会は日本研究皮膚科学会とリンクし,Dermatology Weekと呼ばれることになった.午後1時半,日本皮膚科学会史上に残る5日間は日本研究皮膚科学会会頭の東京大学玉置教授の開会の辞で幕を開けた.お言葉は淡々とした語り口であったが,散り始めた桜をrejuvenationさせるのに十分な気迫があった.これから訪れる新たな歴史の一頁への期待から背中がゾクゾクした.研究皮膚科学会の詳細については割愛させていただくが,本年は皮膚科学会総会との棲み分けが明確になったため,例年より研究に特化した演題の比率が高くなったように思われる.出席者の年齢構成では,2年前に同じ会場で浜松医大が主催したときに比べると若い出席者が目立った.これもDermatology Week効果であろう.

 4月16日は清々しい青空と心地よいそよ風で,時間に余裕があれば会場に行く前に宝ヶ池を一周散策したいくらいであった.Dermatology Weekの3日目は,第103回日本皮膚科学会総会の初日である.日本研究皮膚科学会最後のプログラムは日本皮膚科学会総会最初のプログラムでもありJSID-JDA Joint Lectureであった.玉置教授と京都大学宮地教授の両会頭が座長をされるという斬新な試みで,理化学研究所発生・再生科学総合研究センター,西川伸一先生の,「幹細胞が冬眠するために必要な条件」というご演題であった.毛包細胞の実験から解き明かされてきた幹細胞に関する最先端の講演を,初心者にもわかりやすくお話して下さった.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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