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症例報告
乳癌の悪化に先行したmulticentric reticulohistiocytosisの1例
著者: 太田智秋1
所属機関: 1新宮市立医療センター皮膚科
ページ範囲:P.732 - P.734
文献購入ページに移動64歳,女性.10年前より右乳癌があり,術後7年で肺・胸膜転移を生じ,癌性胸水の貯留も認めていたが,その後化学療法により小康状態を保っていた.約1か月前より,顔面に脂漏性皮膚炎様紅斑,手指に紅色丘疹ないし結節が出現.病理組織学的に,真皮内に好酸性でスリガラス様の細胞質を持つ多核巨細胞を主体とする組織球様細胞の稠密な浸潤増殖を認め,免疫組織化学的にCD68強陽性を示し,multicentric reticulohistiocytosisと診断した.初診の1週間後には術後瘢痕近傍に乳癌の皮膚転移巣を発生,さらに癌性胸水による呼吸困難,咳嗽も出現するなど病状の悪化が示唆された.その後病状の改善に並行して皮疹も消退傾向を示した.本症がparaneoplastic syndromeの一つであることが示された.
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