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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科59巻12号

2005年11月発行

雑誌目次

連載

Dermoscopy Specialistへの道Q&A(第20回)

著者: 斎田俊明 ,   古賀弘志

ページ範囲:P.1147 - P.1149

Qどんなダーモスコピー所見が認められますか?

診断は何でしょう

臨床情報

 42歳,男性.子どもの頃から右前腕伸側に黒褐色の小色素斑が存在していた.20歳頃には隆起性病変となり,徐々に色調が淡くなってきた.30歳頃には現在のような病変になった.

 初診時,右前腕伸側に淡紅褐色で半球状からやや有茎性に隆起する径4mmの小結節が認められた(図2).表面平滑で,弾性軟に触知した.

アメリカで皮膚科医になって(5)―From Japan to America:American Life as a Physician-Scientist

著者: 藤田真由美

ページ範囲:P.1242 - P.1243

大きいことはいいことだ?(Everything is big)

 アメリカでは,何でも大きい.家が日本の家に比べると格段に大きいのは,広大なアメリカの土地を考えるとわかるが,そこで育ったものも,大きいのである.スーパーに行くと,大きな野菜がごろごろしている.キュウリなんて,日本の大根のような太さだし,なすびも丸々と太って,瓜のようにふくらんでいる.ここで育った家畜も大きいのかどうかは知らないが,肉類も日本のような100g単位で売るのではなく,1パウンド(454g)を単位に売られる.牛乳も,1l容器なんて上品な細いものでなく,1ガロン(3.78l)のずんぐりした容器で売られる.レストランの水もファストフードの飲み物も,高さ20cmぐらいのどでかいコップに氷をふんだんに入れて出てくるし,映画館のポップコーンもバケツのような容器に入っている(図).これらを食べて,この広大な土地で育ったアメリカ人が大きくなるのも,何となくうなずける気がする.そしてまた実際に,アメリカ人は小さなものよりも大きなものが大好きなのである.

 私たちは皮膚科医であるから,治療に外用薬を処方するのは日常茶飯事だが,この外用薬も大きい.日本では,部分的な湿疹には5gチューブ,10gチューブを処方していた私であるが,こちらでそんなことをすると,サンプルを処方したのかと怒られるし,実際に5g,10gチューブなんて存在しない.最低でも15gチューブ,時には30gチューブが最小だったりする.実際に処方するのは30gや60gチューブが多いが,全身に皮疹があると60gチューブを何本も処方したり,また1パウンドの容器に入った外用ステロイドを処方することになる.

今月の症例

Crouzon症候群に合併した黒色表皮腫の1例

著者: 幸田紀子 ,   佐々木一 ,   萩原正則 ,   松尾光馬 ,   本田まりこ ,   中川秀己

ページ範囲:P.1150 - P.1153

要約

 23歳,女性.頸部,腋窩,肘窩,股部などの間擦部の黒褐色角化局面と全身のびまん性色素沈着を主訴に受診した.1歳時,水頭症手術の既往がある.眼間開離,外眼角斜下,鉤鼻,平坦な上顎,下顎の突出などの特異顔貌をもち,肥満を認めた.四肢の形成異常,精神発達遅延はない.生検で基底層の著明なメラニン増加と脂漏性角化症様組織像を認めた.9歳時に同様の皮膚症状で受診していたが,色素沈着は比較的軽度で,組織像も軽度の表皮乳頭腫状肥厚と基底層メラニン増加を認めただけであった.Crouzon症候群は,頭蓋骨早期癒合と頭蓋顔面骨の異形成により特徴的な顔貌を呈する症候群で,黒色表皮腫を合併することが知られている.

症例報告

MRSAによる敗血疹の1例

著者: 竹中祐子 ,   池田美智子 ,   南光弘子

ページ範囲:P.1155 - P.1157

要約

 76歳,男性.急性リンパ性白血病の寛解導入療法を施行中,40℃の発熱が出現し,その3日後より,軀幹,四肢に紅斑を認めた.紅斑の組織像は,真皮上層の菌塊による血管の閉塞・破壊,直上表皮の変性を認め,菌塊はグラム染色陽性であった.血液,喀痰よりMRSAが検出された.MRSA敗血疹と診断し,塩酸バンコマイシンを開始するも,敗血症性ショックで永眠した.剖検で,肺,腎臓,脾臓に多数のグラム陽性球菌の菌塊を認めた.

Arthroderma vanbreuseghemii型の分子型を示したTrichophyton mentagrophytesによる体部白癬の姉妹例

著者: 藤田繁 ,   望月隆

ページ範囲:P.1158 - P.1160

要約

 症例1:10歳,女児.3か月前より,頸から胸に,鱗屑を伴う紅斑が出現した.一部は境界明瞭で,毛孔一致性の紅色丘疹も認められた.症例2:4歳,女児,症例1の妹.姉と同時期から左大腿後面に,境界明瞭な鱗屑を伴う紅斑が出現した.飼い猫に脱毛斑があった.2症例ともに鱗屑の直接鏡検陽性で,症例1では標本内に混入していた生毛に小型胞子の毛外性寄生がみられた.2症例ともに発育の早い,中央が結節状に隆起する,白色粉末状の菌が分離され,スライド培養でブドウ状に配列する球状小分生子とラセン器官が認められたためTrichophyton mentagrophytesと同定した.ITS領域のrDNAのPCR-RFLPはArthroderma vanbreuseghemiiに一致し,抗真菌薬の外用で治癒した.今後,動物に由来するA. vanbreuseghemiiによる白癬の増加に注意する必要があり,その同定にはITS領域のrDNAのPCR-RFLPなどのDNA診断が有用であると考えられた.

環状紅斑と全身症状を呈したヒル咬傷の1例

著者: 山本向三 ,   飯塚万利子 ,   赤坂江美子 ,   馬渕智生 ,   梅澤慶紀 ,   太田幸則 ,   松山孝 ,   小澤明 ,   藤井光子 ,   川端寛樹 ,   渡邉治雄 ,   古屋由美子 ,   黒木俊郎 ,   谷重和

ページ範囲:P.1161 - P.1164

要約

 62歳,女性.神奈川県宮ヶ瀬の山林にハイキング後,右膝に吸血したヒルに気付いた.その14日後より吸血部に紅斑と,同部の疼痛が出現し,38℃台の発熱も認め,さらに2日後には,吸血部を中心に環状に紅斑が拡大した.また,全身に発疹が出現し,頭痛,関節痛,全身倦怠感などの全身症状も伴っていた.セフェム系抗生剤点滴を行い,これらの症状は改善した.なお,Lyme病抗体価は陰性であった.皮膚症状としての環状紅斑,また全身症状を呈したヒル咬傷は稀と思われた.

色素沈着期に炎症期の再発が疑われた色素失調症の1例

著者: 北村三和 ,   岡本祐之 ,   上津直子 ,   堀尾武

ページ範囲:P.1165 - P.1167

要約

 2歳11か月,女児.生後8か月頃より四肢,体幹,顔面に渦巻き状の色素沈着斑が出現してきた.2歳10か月のとき感冒による発熱とともに一過性に皮疹部の潮紅がみられた.初診時,皮疹以外には異常を認めなかった.皮膚生検による病理組織像では表皮基底層の空胞化と真皮上層のメラノファージを認め,色素失調症の色素沈着期と診断した.皮疹部に一致した一過性の潮紅は炎症期の再発として,われわれの知る限りこれまで10例報告されている.

長島型掌蹠角化症の1例

著者: 皆川結 ,   齋藤京 ,   石河晃

ページ範囲:P.1168 - P.1171

要約

 30歳,男性.幼少時より掌蹠の皮疹を自覚し徐々に拡大した.初診時,掌蹠から指背および足背・アキレス腱部まで及ぶ角化性紅斑を認めた.膝蓋・肘頭部にも皮疹を認め,掌蹠の多汗を伴った.兄に同症あり.電顕にて顆粒層表皮細胞内にリボゾームが多数付着する大型のケラトヒアリン顆粒を認めた.本邦における長島型掌蹠角化症の報告は,1989年に三橋らがこの名称を提唱して以来,自験例を含め16例である.皮疹の分布について記載のあった15例中,掌蹠の角化性紅斑に加えて膝蓋に皮疹を認めるものは13例あり,そのうち8例は肘頭にも皮疹を認めた.また,記載のあった11例中9例に多汗を認めた.16例全例が幼少時までの発症であり,これらの所見が本症の特徴と思われた.

Muir-Torre症候群の女性例

著者: 堀内祐紀 ,   黒瀬信行

ページ範囲:P.1172 - P.1174

要約

 65歳,女性.左下顎,左頬部,左耳前部の結節を切除したところ,それぞれケラトアカントーマ,脂腺腺腫,脂腺上皮腫であった.卵巣癌,多発大腸癌の既往がありMuir-Torre症候群と診断した.本症候群は比較的稀であり,特に本邦での女性報告例は少ない.

ブシラミンによる固定薬疹の1例

著者: 泉敦子 ,   内藤享世 ,   勝見祥子 ,   新関寛徳 ,   浅田秀夫 ,   宮川幸子

ページ範囲:P.1175 - P.1178

要約

 64歳,女性.47歳より関節リウマチに罹患し,2年3か月前よりブシラミン内服治療を続けていた.2003年1月に右大腿,下腿,口唇,頬粘膜に小水疱や紅斑が多発し,右足底に弛緩性水疱が出現した.右大腿紅斑部の病理組織像では,表皮基底細胞の液状変性と壊死,真皮上層のリンパ球を主体とする炎症細胞浸潤が認められた.固定薬疹を疑いブシラミンの内服を中止したところ,約2週間で皮疹は色素沈着を残して消退した.内服誘発試験にて口唇,舌,頬粘膜の初発部位に一致して小水疱を伴う紅斑が出現したことから,ブシラミンによる固定薬疹と確診した.

夏期に再発を繰り返す線状IgA水疱症の1例

著者: 森布衣子 ,   田島麻衣子 ,   木花いづみ ,   栗原誠一

ページ範囲:P.1180 - P.1182

要約

 66歳,女性.項部・体幹・四肢の激しいそう痒を伴う膿痂疹様皮疹が生じた.組織学的に好中球とリンパ球の浸潤を伴う表皮下水疱を認めた.蛍光抗体直接法で基底膜部に線状IgAの沈着を認め,線状IgA水疱症と診断した.DDS75mg/日内服開始し,皮疹は速やかに軽快した.その後,毎年夏期に同様の症状が出現しDDSで軽快,冬期は投薬しなくても皮疹の再燃をみない状態を繰り返している.過去の文献の検討では線状IgA水疱症は夏期発症が多いが,夏期に繰り返す例は報告がない.

汎発性強皮症に併発した深在性モルフェアの1例

著者: イイタニマロト マリア ,   石黒直子 ,   川島眞

ページ範囲:P.1183 - P.1185

要約

 43歳,女性.1991年よりRaynaud症状があった.1996年当院内科で前腕,腹部の皮膚生検を受け,硬化期の像がみられた.また,食道拡張,間質性肺炎があり,抗Topo-1抗体が16倍であったことより,汎発性強皮症としてニコチン酸トコフェロール1,200mg/日を内服中であった.2000年2月より左臀部外側に褐色斑が出現し,2002年にはその近傍に同様の皮疹が新生し陥凹してきた.初診時,左臀部に45×30mmの紅褐色局面と,75×25mmの皮下硬結を触れる紅褐色局面を認め,陥凹していた.同部の生検では真皮全層と脂肪組織に膠原線維の増生と血管周囲にリンパ球主体の細胞浸潤を認めた.MRIで同部位の皮下組織が萎縮し,筋組織が線維化していた.抗DNA抗体は12IU/mlと上昇していた.深在性モルフェアと診断し,プレドニゾロン20mg/日の内服を開始したところ,2週間後には色調は軽減し,4週間後には硬結を触れなくなった.抗DNA抗体は治療開始11週後に陰性化した.

下眼瞼に生じた硬化性萎縮性苔癬の1例

著者: 桜井直樹 ,   鳥居秀嗣

ページ範囲:P.1186 - P.1188

要約

 症例は36歳,女性.1年前より右下眼瞼から右頬部に及ぶ白色調硬化性局面が出現した.組織学的に硬化性萎縮性苔癬(LSA)と診断した.LSAは外陰部に好発し,本邦の眼瞼発症例は過去に1例のみであり,自験例は非常に稀な部位に発症したと考えられた.外陰部発症例については悪性化が稀ならず認められるが,陰部外発症例では過去の悪性化の報告は1例のみである.LSAについて若干の文献的考察を含めて報告する.

皮疹に対して柴苓湯が有用であったサルコイドーシスの1例

著者: 芦川大介 ,   白井滋子 ,   町田秀樹 ,   松井隆 ,   森脇真一

ページ範囲:P.1189 - P.1191

要約

 36歳,女性.初診の約6年前,左頬部に紅色皮疹が出現し,近医で切除された.3年前より同様の皮疹が両頬,上下肢,背部,臀部にもみられるようになり受診した.臨床所見,皮疹の病理組織像,検査結果より,皮膚病変を伴うサルコイドーシスと診断した.当初ステロイド外用に抵抗性であった皮疹は,柴苓湯(9g/日)投与により,速やかに改善した.サルコイドーシスの病態形成には,Th1リンパ球の活性化によるサイトカインのアンバランスが関与しているとみられ,柴苓湯にはTh1リンパ球の抑制作用があるとされ,本症例において,サルコイドーシスの肉芽腫に対して治療効果をもたらした可能性が考えられた.

悪性リンパ腫加療後に瘢痕浸潤の形で皮膚サルコイド反応を生じた1例

著者: 北村英夫 ,   中島康爾 ,   野村和夫

ページ範囲:P.1192 - P.1194

要約

 45歳,男性.初診1年半前より非Hodgkinリンパ腫にて化学療法を施行したが,症状の改善はみられなかった.10か月前,同種末梢血幹細胞移植を施行し,生着は良好であった.当科初診の1か月前より,幼少時の転倒時の右膝瘢痕部に紅斑が出現した.徐々に拡大し,隆起してきたため,2002年12月に初診した.生検にて乾酪壊死を伴わない,巨細胞を混じる類上皮細胞肉芽腫がみられ,その中に貪食された異物を認めた.両側肺門リンパ節腫脹は認めず,眼科所見に異常はなく,血清ACE,リゾチームも正常範囲内であった.以上より,自験例は真のサルコイドーシスではなく,悪性リンパ腫に伴うサルコイド反応と診断した.自験例は,化学療法や同種末梢血幹細胞移植施行によりT細胞が機能低下し,それによる免疫抑制によりサルコイド反応を引き起こしたものと思われた.

北村英夫,他:臨皮59:1192-1194,2005

外傷性浅側頭動脈瘤の2例―切除例と経過観察例

著者: 大川毅 ,   平嘉世 ,   中房淳司 ,   三砂範幸 ,   成澤寛

ページ範囲:P.1195 - P.1198

要約

 症例1:19歳,女性.左側頭部を打撲し,数時間後より皮下結節が出現したが放置していた.2か月後の初診時,同部に15mmの結節を認めた.拍動は弱く血管雑音に乏しかったが,臨床的に外傷性浅側頭動脈瘤と診断し切除した.術中明らかな流入および流出血管はなく,高度に器質化したため拍動が減弱していたと考えた.病理組織標本では動脈瘤内に血栓を形成していた.また内膜の肥厚を認めたが,解離や偽腔形成はなかった.症例2:87歳,男性.屋内で落下物により右前額部を打撲し,翌日同部に皮下結節を自覚した.初診時同部に強い拍動を触知したため,超音波検査を施行し,外傷性浅側頭動脈瘤と診断した.高齢であるため経過観察中であるが,縮小化し閉塞傾向が認められる.

女性外陰部に生じた被角血管腫

著者: 山田亜希子 ,   嵯峨賢次 ,   神保孝一

ページ範囲:P.1199 - P.1201

要約

 30歳,女性.約2年前より,外陰部に自覚症状のない暗赤色丘疹が多発した.初診時,両側大陰唇に米粒大までの暗赤色丘疹が計5個散在しており,表面はわずかに角化していた.病理組織学的に過角化,表皮突起の延長,真皮乳頭層に赤血球を充満する拡張した管腔を多数認め,第Ⅷ因子関連抗原が陽性であり,被角血管腫と診断した.自験例は陰囊部被角血管腫に相当すると考えた.女性外陰部に生じる例は本邦でも自験例を含め12例と非常に稀であり,静脈拡張をきたす成因や,陰部に好発し脈管拡張から過角化を呈する他の疾患との関連を含め,病因について文献的考察を加え報告する.

Tufted angiomaの1例

著者: 久原友江 ,   服部尚生 ,   安藤浩一

ページ範囲:P.1202 - P.1204

要約

 48歳,女性.妊娠中であった約20年前,左上腕に暗赤色斑が出現した.その後,形態の変化は特に認めなかった.初診の約半年前から圧痛が生じてきたため,受診した.左上腕屈側に直径35×25mm大の浸潤を触れる暗赤色斑を認めた.生検標本の組織像では,真皮内に房状の境界明瞭な腫瘍塊が多発し,cannonball appearance(大砲の砲弾様)を呈していた.腫瘍塊には赤血球を入れた管腔を多数認めた.腫瘍細胞は類円形の核を有する血管内皮細胞様細胞であり,tufted angiomaと診断した.

抗リン脂質抗体症候群を合併した多発性皮膚線維腫の1例

著者: 芳賀貴裕 ,   舛貴志 ,   松永純 ,   相場節也

ページ範囲:P.1205 - P.1208

要約

 33歳,女性.過去に2回,帯状疱疹に罹患している.初診の2か月前から,左乳房に弾性硬の小結節が生じてきた.全身皮膚の診察により,左大腿内側と左下腿後面にも同様の小結節を認めた.病理組織学的に皮膚線維腫と診断した.多発性皮膚線維腫は自己免疫性疾患や何らかの免疫異常,種々の疾患および病態と合併することが多い.自験例は3個と数は少ないが,初診時から膠原病の合併の有無を精査し,その存在が明らかになった.われわれが調べえた,自験例を含む過去の本邦報告50例では,皮膚線維腫の数が少ないほど合併症が認められず,3個以下で合併症を認めたものは自験例を含めて3例のみである.

再発時に巨細胞性線維芽細胞腫の部分像を示した隆起性皮膚線維肉腫の1例

著者: 新宅雅幸 ,   心石隆史

ページ範囲:P.1209 - P.1211

要約

 24歳,女性.4か月前から右鼠径部に無痛性皮下腫瘤を触知したため受診し,径2.5cmの皮下腫瘍を切除された.組織所見は定型的な隆起性皮膚線維肉腫であった.約2年4か月後に同部位に局所再発をきたし,再切除した.再発腫瘍の組織像も隆起性皮膚線維肉腫であったが,腫瘍組織の一部に定型的な巨細胞性線維芽細胞腫の所見の共存を認めた.この2種の腫瘍は共通する染色体異常を有し,また本症例のように,両者の組織像が共存する症例が数例報告されている.これらの事実は,両腫瘍が組織発生学的に互いに密な関係を有することを示すものである.

ステロイド外用が奏効した単発性肥満細胞腫の1例

著者: 永尾香子 ,   陳科榮

ページ範囲:P.1212 - P.1214

要約

 2か月,男児.出生時より左大腿の拇指頭大褐色斑上に水疱形成を繰り返した.病理組織学的所見では真皮乳頭層から乳頭下層に稠密な肥満細胞浸潤を認め,Giemsa染色にて異染性を示した.単発性肥満細胞腫と診断し,吉草酸ベタメタゾンの外用を開始したところ,Darier徴候を認めなくなった.肥満細胞腫につき,最近の文献を含め検討を行った.

高齢者の前腕に発症したeruptive vellus hair cysts

著者: 中島瞳子 ,   岡本祐之 ,   堀尾武

ページ範囲:P.1215 - P.1217

要約

 70歳,男性.初診の2か月前,両側前腕屈側に,表面平滑で粟粒大の灰青色丘疹が多発しているのに気づき受診した.体幹,顔面など他の部位には同様の皮疹は認められなかった.病理組織学的には,多数の軟毛と好酸性の角化物を含む小型の囊腫があり,囊腫壁は数層の扁平な有棘細胞からなり,顆粒層が認められた.以上の所見より,eruptive vellus hair cystsと診断した.本症は,主に小児~青年期の前胸部や四肢屈側に好発する.高齢者に発症した例も報告されているが,すべて顔面に生じており,典型的発症部位に生じた高齢者発症例は自験例が初めてである.

鼻翼に生じたsebaceous folliculomaの1例

著者: 花島麻紀 ,   内山麻理子 ,   原田敬之 ,   木下茂美

ページ範囲:P.1218 - P.1220

要約

 69歳,男性.初診の2年前より,左鼻翼に結節が出現し次第に隆起してきた.大きさ径12×11mmの常色半球状結節で,表面は小窩を伴うが毛髪を認めず,弾性やや硬に触れた.病理組織学的に表皮と連続して中央部に開大したsebaceous follicleが存在し,それに連なって脂腺の増生が認められた.腫瘍内には角質囊腫様構造が散在してみられ,これらの角質囊腫様構造を中心に細胞索が種々の方向に伸び,その末端では成熟した脂腺が認められた.明らかな毛構造は存在していなかった.以上より,sebacseous folliculomaと診断した.

下肢に生じた顆粒細胞腫の1例

著者: 水野可魚 ,   為政大幾 ,   岡本祐之 ,   堀尾武

ページ範囲:P.1221 - P.1223

要約

 42歳,女性.左膝蓋外側の自覚症状を伴わない,直径15mm大の弾性硬で表面は暗褐色の軽度隆起する結節を主訴に来院した.病理組織では,真皮内に比較的境界明瞭な腫瘍塊がみられ,腫瘍細胞は類円形で細胞質に好酸性顆粒を有する大型の細胞であった.これらの細胞はS-100蛋白染色陽性,neuron-specific enolase 染色陽性であった.以上の所見から顆粒細胞腫と診断した.

 顆粒細胞腫は臨床像のみでは皮膚線維腫などとの鑑別が困難であり,またその悪性型も存在するため,良性と思われる皮下結節,皮下腫瘤でも積極的に切除することが望ましい.

成人発症で手首に生じたSpitz母斑の1例

著者: 川口順啓 ,   松岡晃弘 ,   今門純久

ページ範囲:P.1224 - P.1226

要約

 55歳,女性.初診の3か月前より,左手首に径7mm大の境界明瞭,表面顆粒状の紅色結節を認めた.臨床像よりエクリン汗孔腫,化膿性肉芽腫を考え切除した.病理組織学的には,周囲より広基性に隆起するほぼ左右対称な細胞集塊を認め,表皮・真皮内に大型の核を有する胞体の明るい細胞からなる胞巣が散見された.表皮直下にKamino小体を多数認めたが,maturationは明確ではなかった.免疫染色では,腫瘍細胞はS-100蛋白染色で陽性,HMB-45抗体染色陰性であった.本邦での過去における報告例のなかで55歳は最高齢であった.また,腫瘍細胞がepithelioid cell typeで細胞の接着性が一部で完全に消失していた.

原発性胆汁性肝硬変に合併したサルコイド型皮膚類上皮細胞肉芽腫―自験1例を含む7例のまとめ

著者: 秦洋郎 ,   加藤直子 ,   浜坂明日香 ,   安川香菜 ,   井須和男 ,   大村卓味

ページ範囲:P.1227 - P.1229

要約

 67歳,女性.原発性胆汁性肝硬変(PBC)を基礎疾患として,サルコイド型皮膚類上皮肉芽腫を合併した.肝生検では慢性非化膿性破壊性胆管炎の所見を呈し,障害された胆管に接して類上皮細胞肉芽腫を形成していた.肝生検の2年後に,右上腕の皮下に5~6個の皮下結節を生じ,病理組織学的にサルコイド型皮膚類上皮細胞肉芽腫の集簇であった.PBCに皮膚肉芽腫を合併した例はこれまでに6例が報告されているのみであるが,中年女性の皮膚にサルコイド型類上皮細胞肉芽腫を認めた場合,背景疾患の一つとしてPBCも考慮する必要があるものと考えた.

皮下型Merkel cell carcinomaの2例

著者: 田中真紀 ,   星野さち子 ,   古林郁乃 ,   山本純照 ,   浅田秀夫 ,   宮川幸子 ,   桝井貴史 ,   岡本英之

ページ範囲:P.1230 - P.1232

要約

 症例1:73歳,女性.1992年頃より右耳前部に小指頭大の皮下結節が出現し,10年後より急速に増大した.HE染色で,大型の核を有する胞体に乏しい好塩基性の腫瘍細胞が密に増殖し,核分裂像を多数認めた.CK20(+),neuron-specific enolase (+),chromogranin A(+).術後2か月後に再発した.症例2:82歳,男性.2002年7月頃より左耳前部に拇指頭大の皮下結節が出現した.HE染色所見は症例1に類似し,CK20(+),NSE(+),chromogranin A(+).術後5か月後に再発した.

汗器官癌との鑑別を要した悪性黒色腫の1例

著者: 齋藤まるみ ,   高橋政史 ,   大塚幹夫 ,   中村晃一郎 ,   金子史男 ,   薗田紀江子

ページ範囲:P.1233 - P.1235

要約

 40歳,男性.当科初診の約3年前よりあった右下腿の黒子様皮疹が2年前から拡大し,初診時には手拳大の肉芽腫様の腫瘤を形成していた.病理組織では,S-100蛋白染色陽性,CEA陽性,HMB45陰性の腫瘍細胞が一部に腺腔様構造を呈して増殖しており,その臨床像と併せて汗器官癌が疑われた.しかし再生検の免疫染色でHMB45とメランAの陽性が確認され悪性黒色腫と診断した.

治療

OK-432皮下注射によるウイルス性疣贅の治療

著者: 太田智秋

ページ範囲:P.1237 - P.1240

要約

 ウイルス性疣贅に対する治療法として一般的に広く行われている液体窒素凍結療法は,患者側にかなりの疼痛を伴い,また多発疣贅などでは施術する側にも相当な面倒がある.そこで10名のウイルス性疣贅患者に対し,OK-432の皮下注射を施行し,その結果をまとめた.原則としてOK-432を0.2KE,週1回皮下注射した.場合によっては0.4KEまで増量した.10例中7例が治癒した.副作用は発熱,倦怠感が半数の症例にみられたが,いずれも軽症であった.作用機序として,OK-432によって賦活された自然免疫が疣贅細胞に対して作用し,臨床的に紅斑・痒みが発生したのち,疣贅細胞が破壊されて治癒すると考えられた.難治性疣贅に対する治療法の選択肢の1つとして,OK-432の皮下注射療法は有効かつ安全である.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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