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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科59巻13号

2005年12月発行

雑誌目次

連載

Dermoscopy Specialistへの道Q&A(第21回)

著者: 斎田俊明 ,   古賀弘志

ページ範囲:P.1251 - P.1253

Qどんなダーモスコピー所見が認められますか?

診断は何でしょう

臨床情報

 53歳,女性.2~3年前から左側腹部に黒色調のやや隆起した皮疹があるのに気づいていた.近医で「老人性のイボ」といわれ,凍結療法を受けた.いったん縮小したが,その後再び増大してきた.

 初診時,左側腹部に大きさ21×14×5mmの,半球状からやや有茎性に隆起する黒褐色結節が存在し(図2),表面に鱗屑,痂皮を付していた.周囲に色素斑は認められない.

アメリカで皮膚科医になって(6)―From Japan to America:American Life as a Physician-Scientist

著者: 藤田真由美

ページ範囲:P.1348 - P.1349

喫煙歴(Smoking history)

 外来を始めてまもなくのころ,私はアメリカ人の同僚に,「いやー,今日の外来はホームレスの人が多かったね.それにしても,彼らはどこの草むらで寝起きをしているのだろう?」と言った.すると同僚は,「草むら?ホームレスの人はダウンタウンやビルの周りを拠点に生活しているよ.」ときょとんとしている.じゃあ,あの草のにおいは何??? そこで初めて,それがマリファナ(乾燥大麻)であることがわかった.

 アメリカでは,ご想像に違わず,薬物使用が多い.日本のようにニュースでしか知らない,などということは,アメリカ人にとっては逆に珍しいのである.強いものから弱いものまで,抑制性のものから興奮性のものまで,また投与方法もさまざまでいろいろな種類があるが,一般の人でも使っているので,アメリカの医師はこれらを知っていないといけない.国家試験でもよく出題され,頭を悩ませたものである.その中でもマリファナは,手軽な値段で買え(といってもタバコよりは高いが),見た目にもタバコとあまり変わらず,一時は多くの人がかっこいいといって吸っていたこともあり,一度も吸ったことがない人は逆に珍しいくらいだ.かの大統領も若いときに吸っていたということが話題になったが,話題になったといっても,大半のアメリカ人が一度は経験済みなので,それほど大きな問題にもならなかった.何しろ,現在も,大学生はもちろん中高生にまで出回っているのだから.ちなみに現在大学生の息子に聞いてみると,「薬物はアメリカの文化だよ.アメリカ映画を見ていると必ず出てくるから.これがないアメリカ映画はかえって現実味がない.それにマリファナは,アメリカ人にとってはタバコと同じようなものと認識されているよ.」と言う.えっ,映画のあのシーンは,このシーンはタバコを吸ってるのでしょ?と聞くと,息子は無知な私にタバコとマリファナの違いを説明したあと,アメリカの若者の薬物事情を丁寧に教えてくれた.

原著

報告例からみた深在性エリテマトーデス―病型分類と治療法の検討

著者: 松田聡子 ,   橋本夏 ,   松本聡子 ,   佐々木祥人 ,   堀啓一郎

ページ範囲:P.1255 - P.1260

要約

 53歳,女性.約20年前より,上腕に皮下結節が出現した.徐々に増加し陥凹をきたすようになった.顔面,大腿,下腹部にも出現したため,当科を受診した.陥凹部に一致し,皮下硬結を認めた.病理組織像上,広汎な石灰化と,それに連続して脂肪織の膜囊胞性病変,血管周囲性に著明なリンパ球を主体とした炎症細胞の浸潤がみられた.また,蛍光顕微鏡下で,膜囊胞性病変部に自家蛍光を示すリポフスチンが沈着していた.初診4か月後に大腿に浸潤および陥凹が増加したため,プレドニン(R)30mg/日の内服を開始した.以後,漸減し15mg/日で加療中である.過去13年間(1991~2003年)の文献報告全57症例を,病勢の評価の仕方として土田らの提案するLEの病型分類に基づきまとめたところ,予後および必要とされた治療に差異を認め,分類は治療戦略を立てるにあたり有用であると考えられた.また,リポフスチンの組織学的意義を検討した.

症例報告

妊娠に伴った膿疱性乾癬(疱疹状膿痂疹)の2例

著者: 大澤倫子 ,   清水聡子 ,   安居千賀子 ,   飯豊深雪 ,   奥山和彦 ,   田畑雅章 ,   土屋喜久夫

ページ範囲:P.1263 - P.1266

要約

 症例1:37歳,女性.18歳時(第1子妊娠9か月),膿疱性乾癬を発症し,産後寛解した.19年後の第2子妊娠22週時,膿疱を伴う紅斑が再燃した.全身状態が悪化したため妊娠23週からステロイドの全身投与を開始したが,皮疹の悪化は続き,胎児発育遅延も認めたため,妊娠31週に帝王切開で982gの男児を出生した.出生後,エトレチナートを併用し皮疹は軽快した.症例2:25歳,女性.第1子妊娠27週時,全身の膿疱を伴う紅斑を主訴に受診した.妊娠29週からステロイド全身投与し,妊娠35週,誘発分娩で2,030gの女児を出産した.出産後,エトレチナートを併用し,皮疹は改善した.2症例ともに産後も環状紅斑の新生を認めている.

Gastrointestinal stromal tumorに合併したparaneoplastic pemphigusの1例

著者: 舛貴志 ,   角田孝彦 ,   橋本隆

ページ範囲:P.1267 - P.1270

要約

 57歳,女性.難治性の口内炎から始まり,重篤な粘膜症状と多彩な皮疹が出現した.治療に抵抗性であったため内臓悪性腫瘍の検索を行い,腹腔内にgastrointestinal stromal tumor (GIST)が見つかった.患者血清を用いた蛍光抗体間接法で,正常ヒト皮膚およびラット膀胱上皮を基質とした抗表皮細胞間抗体が陽性であった.免疫ブロット法で210kDa,190kDa抗体に反応した.これらの免疫学的検査の結果と臨床所見,病理組織学的所見から,腫瘍随伴性天疱瘡(paraneoplastic pemphigus:PNP)と診断した.これまでに,GISTに合併したPNPの報告はない.腫瘍摘出とステロイド投与により皮膚症状は改善傾向にあったが,全身状態は悪化し,最終的には呼吸不全で死亡した.

子宮内蚤爬術後に発症し,初回月経時に再燃をみた妊娠性疱疹の1例

著者: 竹中祐子 ,   林伸和 ,   川島眞

ページ範囲:P.1271 - P.1273

要約

 29歳,女性.既往に妊娠32週での流産歴がある.2003年2月,2回目の妊娠23週頃より軀幹に紅斑が生じてきた.妊娠27週に子宮内胎児死亡のため子宮内掻爬術を施行したところ,同日より軀幹,四肢に紅斑が増数・拡大し,水疱が出現した.病理組織学的に表皮下水疱を認め,蛍光抗体直接法で表皮基底膜部に線状にC3,IgGが沈着していた.免疫ブロット法で抗BP180抗体と抗BP230抗体を検出した.妊娠性疱疹と診断し,プレドニゾロン40mg/日の内服を開始した.水疱の新生はいったんなくなったが,妊娠後初回の月経時に再燃を認めた.月経終了後には新生は消失し,その後プレドニゾロンを漸減し半年後に中止した.プレドニゾロン中止1年後の現在,再発はない.

悪性リンパ腫の寛解に伴い軽快した皮膚筋炎の1例

著者: 中崎恵美 ,   柿沼美和 ,   大井綱郎 ,   坪井良治

ページ範囲:P.1274 - P.1276

要約

 63歳,女性.初診の約3か月前から全身にそう痒感を伴う紅斑が出現した.臨床症状,血清学的所見,皮膚・筋生検より皮膚筋炎と診断.プレドニゾロン内服により加療したが反応に乏しかった.初診9か月後に左乳房に腫瘤が出現し,病理組織学的に悪性リンパ腫(large B cell type,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)と診断された.悪性リンパ腫に対しCHOP療法を施行し,寛解とともに皮膚筋炎も略治した.皮膚筋炎と悪性腫瘍の合併はよく知られているが,悪性リンパ腫との合併は少ない.造血器悪性腫瘍を合併した場合,皮膚筋炎の予後は重篤になることが多く,全身検索の際,念頭に置く必要がある.

C4欠損症を伴ったSLEの1例

著者: 桜井直樹 ,   鳥居秀嗣

ページ範囲:P.1277 - P.1279

要約

 33歳,女性.顔面紅斑,円板状皮疹,光線過敏,関節炎,抗dsDNA抗体高値・抗Sm抗体陽性,抗核抗体陽性よりSLEと診断した.ステロイド内服にて症状は速やかに改善したが,全経過を通してC4は著明な低値のままであった.両親の血清補体価は正常範囲内であった.以上より,自験例をC4完全欠損症と考え,両親がC4欠損についてヘテロであると推測した.C4欠損症について若干の文献的考察を含めて報告する.

乳癌,本態性血小板血症を伴い高齢者に発症した抗リン脂質抗体症候群の1例

著者: 安芸実扶子 ,   石黒直子 ,   川島眞

ページ範囲:P.1280 - P.1283

要約

 80歳,女性.2003年3月頃より,左Ⅳ,Ⅴ趾の暗紫紅色斑が出現しては軽快するというエピソードを繰り返した.徐々に色調が変わる頻度が増し,2004年2月上旬に左Ⅰ趾尖に切創を負った後に潰瘍を生じ,難治であったため当科に入院した.入院時,左Ⅰ趾尖に径10mmの黒褐色痂皮を付着した潰瘍を認め,周囲はやや暗紫紅色調を呈していた.右Ⅳ,Ⅴ趾には暗紫紅色斑を認めた.右Ⅴ趾の暗紫紅色斑の病理組織像では,真皮上・中層の毛細血管に血栓像を認め,脳MRIにて多発性脳梗塞像,APTT,PTの延長,βトロンボグロブリン,血小板第4因子,D-ダイマーの上昇,抗カルジオリピンIgG抗体高値であり,抗リン脂質抗体症候群と診断した.アルプロスタジル10μg/日の点滴とワルファリンカリウム0.5mg/日の内服で症状は軽快した.2004年6月に左乳房の乳癌,同時期に骨髄生検で本態性血小板血症と診断され,これらが抗リン脂質抗体の産生に関与した可能性も考えた.

Churg-Strauss症候群(アレルギー性肉芽腫性血管炎)の1例

著者: 三浦龍司 ,   平井昭男 ,   舘野博喜

ページ範囲:P.1284 - P.1287

要約

 41歳,女性.気管支喘息の治療中にコントロール不良のためプランルカスト450mgのほかプレドニゾロン(PSL)20mg内服を併用していたが,PSL内服を10mgへ減量後,呼吸困難を発症した.その約1か月後,発熱に続き,顔面に紅色調の丘疹が多発し,口腔内には卵円形の壊死性潰瘍が,四肢伸側に小豆大までの紫紅色丘疹,爪甲大以下の痂皮化した血疱,紫斑が出現した.末梢血好酸球増加があり,病理組織学的に肉芽腫形成を認めないが,周囲組織に好酸球浸潤を伴う小血管の壊死性血管炎を認め,Churg-Strauss症候群(アレルギー性肉芽腫性血管炎)と診断した.入院のうえPSL60mgより内服開始し,呼吸状態の改善に伴い皮疹も軽快した.胸部X線上,両下肺野中心にびまん性浸潤影を認め,経気管支鏡的肺生検では,好酸球性肺炎の像を呈した.過去の報告を渉猟し,若干の考察を加えた.

蕁麻疹様紅斑を呈した組織球性壊死性リンパ節炎の1例

著者: 木村陽一 ,   青木見佳子 ,   菊地伊豆実 ,   又吉武光 ,   川名誠司

ページ範囲:P.1288 - P.1291

要約

 26歳,女性.初診の1か月前より,39℃台の発熱,圧痛を伴う頸部リンパ節腫脹が出現した.3週間前より,顔面にびまん性の紅斑,軀幹および下肢には地図状の境界明瞭,辺縁蒼白な紅斑が出現した.頸部と鼠径部には圧痛を伴うリンパ節を触知した.皮膚生検では,真皮上層の浮腫および血管周囲性にわずかに好中球を混ずるリンパ球浸潤を認めた.前医で施行した頸部リンパ節生検で,傍皮質領域に細胞質に乏しく,大型円形の核を有する大型細胞の増殖と核崩壊産物を貪食した組織球の浸潤を認め,組織球性壊死性リンパ節炎と診断した.各種ウイルス抗体価の有意な上昇は認められなかったが,白血球減少,異型リンパ球の出現,2-5AS活性の上昇を認め,ウイルス感染の関与の可能性があると考えた.

多形紅斑様皮疹で始まり,蕁麻疹を経てリウマトイド疹を呈したStill病の1例

著者: 森安麻美 ,   村西浩二 ,   上田英一郎 ,   竹中秀也 ,   岸本三郎 ,   塩見梢 ,   羽場哲法 ,   森本哲

ページ範囲:P.1292 - P.1295

要約

 14歳,女児.初診の4か月前より四肢の関節痛を認めており,1週間前からは37℃台の発熱および四肢に多形紅斑様皮疹がみられるようになった.その後,弛張熱,白血球増多,CRPの上昇,フェリチンの著明高値が認められたが,抗核抗体・リウマチ因子は陰性であった.経過中,多形紅斑様皮疹に加え蕁麻疹が出現し,その後いわゆるリウマトイド疹がみられた.Still病と診断し,プレドニゾロン60mg/日,イブプロフェン1,200mg/日による治療を開始したが,関節痛に対してD-ペニシラミン50mg/日,メトトレキサート12mg/週の追加投与が必要であった.

複数の原因食物が同定された食餌依存性運動誘発アナフィラキシーの1例

著者: 倉橋理絵子 ,   石川正 ,   波多野豊 ,   藤原作平 ,   野柳俊明

ページ範囲:P.1296 - P.1298

要約

 29歳,女性.とんかつなどの食事摂取後に呼吸困難,そう痒を伴う皮疹を生じた.食餌依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)を疑い,IgE RAST,皮膚テスト,運動誘発試験を行ったところ,小麦粉とカニの2種の食物が原因と考えられた.少なくとも,FDEIAの原因として頻度の高いものについては1種類の食物のみでなく,スクリーニング的に検索を行うことも考慮すべきと考えられた.また,本症例においては,運動前のみならず運動前日にもクロモグリク酸ナトリウム内服を行うことにより,症状の誘発は抑制されている.クロモグリク酸ナトリウムは,運動直前のみでなく,運動前日から内服することにより,予防効果が高まることが再確認された.

テオフィリン徐放錠(ユニフィル(R))による薬疹の1例

著者: 鶴見純也 ,   籏持淳 ,   山﨑雙次

ページ範囲:P.1299 - P.1301

要約

 75歳,女性.約10年前より喘息・高血圧・狭心症があり,ユニフィル (R)(テオフィリン),オトゼニン (R)(塩酸ジラゼプ),ノルバスク (R)(ベシル酸アムロジピン)を内服していた.10日前より体幹を中心にそう痒があり,鱗屑を伴う丘疹・紅斑が出現した.初診時,四肢および軀幹に鱗屑を伴う大小の紅斑が多数みられ,背部では融合傾向が認められた.病理組織所見は表皮肥厚,海綿状態,真皮上層の血管周囲性に好酸球を混ずる小円形細胞浸潤がみられた.内服誘発試験はユニフィル (R)陽性,オトゼニン (R)陰性,ノルバスク (R)陰性であった.以上より,ユニフィル (R)による湿疹型薬疹と診断した.ユニフィル (R)は1日1回投与のテオフィリン徐放剤であるが,これまでにテオフィリンの薬疹の報告は散見されるが,ユニフィル (R)による薬疹の報告例はみられていない.

ADH分泌異常症候群と脳炎を合併したdrug-induced hypersensitivity syndromeの1例

著者: 佐久間恵一 ,   福田知雄 ,   狩野葉子 ,   塩原哲夫 ,   伊東貴雄 ,   作田学

ページ範囲:P.1302 - P.1305

要約

 67歳,男性.2003年7月26日より,てんかん予防のためフェノバルビタール内服を開始し,3週間後より皮疹が出現した.その後,38℃以上の発熱と,顔面を含むほぼ全身の紅斑,異型リンパ球の出現を伴う白血球増多,肝障害,HHV-6 IgG抗体価の著明な上昇を認め,drug-induced hypersensitivity syndrome (DIHS)と診断した,ステロイドの全身投与に加えγグロブリンを投与した.発症より約3週間後に血清Na値の極度の低下を認め,さらに意識障害が出現した.検査所見の推移を詳細に検討した結果,低Na血症はsyndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone (SIADH)に起因し,意識障害は辺縁系脳炎に起因すると診断した.DIHSの臓器障害として脳炎は以前より報告されているが,SIADH,辺縁系脳炎もその1つとして認識しておく必要があると思われた.

塩酸ミノサイクリンが著効したacquired reactive perforating collagenosisの1例

著者: 田辺健一 ,   坪井廣美

ページ範囲:P.1306 - P.1308

要約

 64歳,男性.1988年に糖尿病を指摘された.2004年4月より背部,左側胸部にそう痒を伴う暗紅色の皮疹が出現した.病理組織学的に表皮の境界明瞭な欠損と膠原線維の経表皮排出像が認められ,acquired reactive perforating collagenosis(ARPC)と診断した.塩酸ミノサイクリンの内服で皮疹は2週間ほどで消退した.今回,ARPCの成因と塩酸ミノサイクリンの作用機序などにつき,若干の文献的考察を加えた.

胸部から左上肢にかけて生じたgenuine diffuse phlebectasiaの1例

著者: 草刈良之 ,   奥山隆平 ,   相場節也

ページ範囲:P.1309 - P.1311

要約

 10歳,男児.生後数か月より左上腕に血管拡張が認められた.初診時,左前胸部から左上腕,左肘窩にかけて蛇行性の血管拡張が広範囲に認められた.皮疹の形状からgenuine diffuse phlebectasiaと診断した.MRI angiographyで,皮静脈の拡張が認められたが,深部静脈には異常はみられなかった.患肢の肥大や出血,潰瘍形成,壊疽などはみられない.

多様な分化を示す二次性腫瘍を生じた脂腺母斑

著者: 大西正純 ,   高橋和宏 ,   赤坂俊英 ,   浅野雅之 ,   橋本彰 ,   相場節也 ,   佐藤恵

ページ範囲:P.1312 - P.1315

要約

 59歳,男性.生来,頭部に脱毛局面があり,15歳時に電気焼灼を行った.数年前より同部が腫瘤状に隆起してきた.病理組織学的に脂腺母斑,sebaceoma,basal cell carcinoma,trichoblastoma,eccrine syringofibroadenomaの所見がみられ,瘢痕化した脂腺母斑にさまざまな分化をみる上皮系二次性腫瘍が発生したものと診断した.また,これらの二次性腫瘍は病理組織学的に連続性を有さず,別個に発生した例と考えられた.

臀部に生じた増殖性外毛根鞘性囊腫の1例

著者: 加納令子 ,   山内洋平 ,   足立秀禎 ,   安藤浩一

ページ範囲:P.1316 - P.1318

要約

 43歳,女性.10年前より左臀部に自覚のない皮下結節が出現した.徐々に増大し,4cm大の表面不整な硬い皮下腫瘤となった.皮膚生検で増殖性外毛根鞘性囊腫と診断し,辺縁より1cm離して全摘出術を施行した.病理組織学的に線維性被膜に覆われる腫瘍塊を認めた.腫瘍塊は外毛根鞘性角化を示す,大小多数の角質囊腫で構成されていた.臀部という稀な部位に発生したと考えた.

放射線単独療法が奏効したMerkel細胞癌

著者: 中村妙子 ,   橋本真一 ,   加藤保信 ,   古川裕利 ,   金子史男

ページ範囲:P.1319 - P.1321

要約

 83歳,女性.3年前から右大腿部に腫瘤が出現した.徐々に増大し,出血するようになった.当院受診時,右大腿部に大腿筋層に接する,65×60×30mm大の紅色腫瘤および鼠径リンパ節腫脹を認めた.腫瘤の生検にて,真皮内にCK20,NSE陽性の腫瘍細胞が認められ,Merkel細胞癌と診断した.高血圧,糖尿病,3枝末梢狭窄を伴う心筋梗塞の既往があり,手術は困難であったため,放射線単独療法を施行した.総線量X線40Gy,電子線20Gyにて,腫瘍は臨床的にほぼ消失し,病理組織学的に腫瘍細胞は認めなかった.リンパ節も縮小し,その後再発はみられない.合併症が多く,手術困難な高齢者のMerkel細胞癌に対して,放射線単独療法は治療の侵襲が少なく,有効であると考えた.

肝臓に播種状転移をきたし,DICを併発した血管肉腫の1例

著者: 橋本隆 ,   清水宏和 ,   渡辺大輔 ,   玉田康彦 ,   松本義也 ,   池田洋

ページ範囲:P.1322 - P.1324

要約

 86歳,男性.2003年9月頃より左耳周囲の紅斑および暗紅色腫瘤を認めた.生検にて真皮から皮下にかけて核小体の目立つ異型性をもった紡錘形細胞が増生し,不規則な脈管腔をつくる像がみられ,血管肉腫と診断した.年齢および腫瘍の広範囲な浸潤を考慮して,paclitaxelおよび放射線療法(計50Gy照射)を併用したところ皮疹は著明に縮小化し退院したが,その1か月後DICを発症して死亡した.病理解剖にて播種状の肝転移を認めたことから,転移腫瘍による凝固系因子の消費がDIC発症の原因と考えた.

粘液型脂肪肉腫の1例

著者: 松永亜紀子 ,   高井利浩 ,   森正夫

ページ範囲:P.1325 - P.1327

要約

 67歳,男性.15年前,他院で下背部の腫瘍を切除された.7年前に同部位に腫瘍が再発し,再切除を受けたが,1年前より同部に再び同様の腫瘍が出現したため,当科を受診した.病理組織学的に,紡錘形の腫瘍細胞が粘液様の間質を伴って増殖し,一部に特徴的な脂肪芽細胞様細胞がみられた.また,腫瘍辺縁で細胞密度が高く,粘液型脂肪肉腫と診断し,広範囲切除を行った.皮膚科領域での本症報告は少ないが,不十分な切除により再発する例もあり,また,脂肪腫との鑑別には慎重を要し,正しい診断が重要と考える.

HIV感染を伴った2期梅毒の1例

著者: 芳賀貴裕 ,   千葉修子 ,   奥山隆平 ,   相場節也

ページ範囲:P.1328 - P.1330

要約

 39歳,男性.当科初診の3か月前と3週間前に,風俗店で日本人女性と性交渉をもった.初診の数日前より,39℃台の高熱とともに汎発性の皮疹が全身に出現し拡大するため,当科を受診した.全身に水疱,紅斑,丘疹が散在し潰瘍や痂皮も伴っていた.梅毒血清反応陽性であったが,通常の梅毒と比較して皮疹と全身症状が重篤であり,悪性梅毒の状態であった.精査したところHIV抗体が陽性であり,HIV感染が合併した2期梅毒と診断した.アモキシシリンの内服を行ったところ,全身症状,皮疹は速やかに軽快した.HIV感染を伴った梅毒では再燃することが多いという報告もあり,注意して経過を観察している.自験例のように,梅毒とHIV感染が重複した症例は今後増加してくるものと思われる.非定型的な梅毒を診察した際には注意を要すると考えた.

組織学的に棘融解細胞を認め,天疱瘡を疑わせたMRSAによる頭部伝染性膿痂疹の難治例

著者: 横倉英人 ,   梅本尚可 ,   加倉井真樹 ,   平塚裕一郎 ,   東隆一 ,   林和 ,   出光俊郎

ページ範囲:P.1331 - P.1333

要約

 68歳,男性.2週間前より頭部に難治性のびらんがあり,来院した.初診時,前頭部を中心に紅斑,びらんを認めた.伝染性膿痂疹を疑って,セフェム系抗生物質やホスホマイシンで内服治療を行ったが,皮疹は拡大した.組織学的には角層下水疱内に棘融解細胞,真皮には少数の好中球を混じる小円形細胞浸潤を認めた.臨床像,組織所見,および経過より天疱瘡を疑ったが,蛍光抗体法は陰性であった.細菌培養ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が分離され,レボフロキサシン投与により,皮疹は治癒した.以上より,頭部に限局したMRSAによる伝染性膿痂疹と診断した.伝染性膿痂疹でも組織学的に好中球浸潤に乏しく,棘融解が主体のこともあり,難治例では天疱瘡と誤診する可能性もあるので注意が必要である.また,MRSAによる膿痂疹の増加している今日,各施設における薬剤感受性結果を踏まえた抗生物質の選択が必要である.

ウサギから感染したArthroderma benhamiaeによる体部白癬の母子例

著者: 角谷廣幸 ,   角谷孝子 ,   望月隆

ページ範囲:P.1334 - P.1337

要約

 41歳,女性と11歳,男児.ペットのウサギから感染したArthroderma benhamiaeによる体部白癬の母子例である.ウサギを飼い始めてから女性の左前腕,男児の下顎部と背部に落屑性紅斑が生じた.左前腕と下顎部の皮疹は痒みがなく,同部の落屑のKOH法では菌要素が密集してみられた.それに対して背部の皮疹は貨幣状湿疹様を呈し,軽度の痒みを伴い,菌要素は少なかった.ウサギでは鼻囲に脱毛斑がみられ,皮疹のないウサギの胴体部からヘアブラシ法で白癬菌が分離された.母子,ウサギから分離された菌は3例ともスライドカルチャーでTrichophyton mentagrophytesと同定した.DNA分析ではPCR-RFLP法でArthroderma benhamiaeに一致する泳動パターンを呈し,交配試験では母親分離株がAmericano-European race(-)株と同定された.母子ともにウサギから感染したと考えた.Arthroderma benhamiae感染による白癬は,多彩な臨床症状を呈するので注意が必要である.

治療

手掌の多発性難治性疣贅に対し活性化ビタミンD3軟膏とサリチル酸絆創膏併用療法が奏効した1例

著者: 稲葉浩子 ,   鈴木民夫 ,   富田靖

ページ範囲:P.1339 - P.1341

要約

 62歳,女性.約1か月前より右手掌に尋常性疣贅が多発していた.ほぼ1年にわたって冷凍凝固療法,ヨクイニン内服,接触免疫療法,腐食療法など種々の治療を行ったが,治療抵抗性で全く治癒傾向が認められなかった.本人に十分にインフォームド・コンセントを得たのち,活性化ビタミンD3軟膏(オキサロール軟膏 (R))とサリチル酸絆創膏(スピール膏 (R))を用いた治療を行ったところ,治療開始1週間後から縮小・消失し始め,3か月後にはすべての疣贅の消失をみた.治療の中止を要するような副作用は特に認められなかった.本治療法は,疼痛もなく,手技も簡単で自宅で施行可能であるなど尋常性疣贅の治療に有用であると考えた.

顔面に広範囲に多発し光線力学療法が奏効したactinic keratosesの1例

著者: 柳下武士 ,   梶田裕子 ,   近藤千晴 ,   鈴木有彦 ,   秋田洋一 ,   渡辺大輔 ,   玉田康彦 ,   松本義也

ページ範囲:P.1343 - P.1346

要約

 84歳,女性.顔面の両頬部,眉毛部にかけて広範囲に多発する日光角化症(AK)を認めた.治療に5-aminolevulinic acidを用いた外用光線力学療法(PDT)を施行した.1回50J/cm2,計150J/cm2照射したところ,皮疹はほぼすべてcomplete responseとなった.PDTは治療効果が高く,安全性,整容性に優れており,高齢または広範囲に多発する病変がみられ,侵襲の大きな治療が行えないAK症例に有効と考える.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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