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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科59巻2号

2005年02月発行

雑誌目次

連載

Dermoscopy Specialistへの道Q&A(第11回)

著者: 斎田俊明 ,   古賀弘志 ,   宮嵜敦

ページ範囲:P.109 - P.111

Qどんなダーモスコピー所見が認められますか?

診断は何でしょう

臨床情報

 67歳,男性.30歳頃,左足底に爪甲大の黒褐色斑が生じているのに気づいた.この5~6年で拡大がやや目立ってきた.

 初診時,右足底内側の後方部に,大きさ54×42mmの濃淡差のある黒褐色斑が認められ,一部に軽度の浸潤を触知した(図2).形状は不整で,辺縁の境界は明瞭な箇所と不明瞭なところがある.

原著

自己腫瘍による活性化自己リンパ球移入療法を施行した悪性黒色腫の経験

著者: 秋田洋一 ,   堀博子 ,   玉田康彦 ,   松本義也 ,   加藤栄史 ,   高本滋 ,   吉川和宏 ,   佐賀信介

ページ範囲:P.113 - P.118

要約

 標準的治療が無効であり,かつ遠隔転移を有する悪性黒色腫患者3例に対し,自己腫瘍で刺激した自己リンパ球を用いた免疫療法を試みた.末梢血リンパ球と腫瘍細胞,および低濃度interleukin-2(IL-2)の混合培養により,刺激・増殖させたリンパ球の静脈注射による投与を2週間間隔で行った.いずれの症例においても,重篤な副作用は観察されなかったが,治療中に転移巣の増大と新たな転移巣形成が認められたため,最終的な治療効果の判定は進行(PD)とされた.しかし,末梢血中腫瘍マーカーの5-S-cysteinyl dopa (5-S-CD)値の上昇鈍化と,1例では,一部の肺転移巣の消失が認められた.治療中に転移腫瘍の生検が可能であった組織の免疫組織学的検査では,腫瘍の周辺にCD8陽性T細胞の浸潤が観察された.これらの結果から,末梢血リンパ球より,腫瘍反応性リンパ球の誘導と増殖が示唆された.

今月の症例

Lymphoepithelioma-like carcinoma of the skinの1例

著者: 米井希 ,   石田勝英 ,   辻岡馨 ,   西端和哉 ,   小倉治雄

ページ範囲:P.120 - P.123

要約

 73歳,男性.3年前から生じた右頬部の25×20mmの表面平滑で毛細血管拡張を伴う紅色腫瘤を主訴として来院した.組織学的に腫瘍組織は表皮とは連続性を有さず,表皮直下から真皮全層,一部筋層内に浸潤しており,異型性を有する腫瘍細胞からなる胞巣がリンパ球の稠密な浸潤に囲まれ,一部ではリンパ濾胞様の構造を呈していた.腫瘍細胞はCK5/6,AE1/AE3陽性で上皮由来と考えられ,Ki67陽性,CK20陰性,S-100蛋白陰性であった.In situ hybridizationではEBウイルスDNAは検出されなかった.リンパ球の多くはCD3陽性のT細胞であった.また,鼻咽頭癌および他臓器原発腫瘍の皮膚転移の可能性は否定された.腫瘍辺縁より約1cm離し,下層は一部咬筋を含めて全摘出し,全層植皮にて再建した.

鼻腔内より発症したムーコル症の1例

著者: 池澤優子 ,   掛水夏恵 ,   河野真純 ,   三谷直子 ,   山川有子 ,   佐々木哲雄 ,   原野浩 ,   中嶋弘 ,   高鳥浩介 ,   池澤善郎

ページ範囲:P.124 - P.126

要約

 65歳,女性.1998年11月より,多発性骨髄腫の診断にて当院血液内科で化学療法を定期的に施行されていた.2001年4月に原疾患による腎不全が進行し,再度化学療法を行うも改善なく,その後骨髄抑制状態となった.同年6月に鼻根部右側に疼痛を伴う淡い紅斑が出現.数日で紅斑は中心部に壊死を伴い拡大した.初診時の鼻腔内からの培養によりムーコル症と診断.後日スライドカルチャーを施行し,形態学的特徴からMucor属の一種であるActinomucor elegansと同定された.ムーコル症は皮膚科領域においては稀な疾患であるが,免疫低下状態にある患者に日和見感染症として合併することが多い.また,同疾患は短期間で急速に周囲組織に播種するため,初発時における鏡検,培養などによる早期診断が重要と考えた.

症例報告

高齢発症SLEの1例

著者: 赤坂文子 ,   宇谷厚志 ,   鎌田憲明 ,   新海浤

ページ範囲:P.128 - P.131

要約

 75歳,女性.初診の2か月前より両手指尖部,前胸部・両前腕伸側,手背に浮腫性紅斑が出現.その1年前より関節痛,発熱,体重減少があった.紅斑の組織学的検査で表皮基底層に液状変性を認めた.ARA(1982年)の全身性エリテマトーデス(SLE)診断基準7項目を満たす高齢発症SLEと診断した.高齢発症SLEは稀であり,かつ個々の症状が時間をかけて出現していくことが多く,診断に苦慮することがある.文献的考察を加えて報告する.

ステロイドを含む多剤併用療法に反応した瘢痕性類天疱瘡の1例

著者: 舛明子 ,   笹井収 ,   菊地克子 ,   相場節也 ,   駒井礼子 ,   橋本隆

ページ範囲:P.132 - P.134

要約

 67歳,女性.多発性の口腔内,咽頭,喉頭,陰部のびらんを繰り返していた.陰部からの生検組織像で表皮下水疱の形成を認め,1M食塩水剥離皮膚を基質とした蛍光抗体間接法ではIgG,IgAが表皮側に陽性を示した.瘢痕性類天疱瘡と診断し,プレドニゾロン30mg/日,テトラサイクリン1,000mg/日,ニコチン酸アミド900mg/日,ジアフェニルスルホン50mg/日の併用内服療法を開始した.治療への反応は良好で,粘膜病変は上皮化し,新生を認めなかった.しかし,副作用としてステロイド糖尿病,溶血性貧血が出現した.瘢痕性類天疱瘡の治療においては,長期にわたる病勢のコントロールを要するため,副作用の出現にも注意をはらう必要がある.

広範囲に多彩な発疹を認めたChurg-Strauss症候群の1例

著者: 山田真枝子 ,   川口雅一 ,   三橋善比古 ,   近藤慈夫 ,   櫻井學

ページ範囲:P.135 - P.138

要約

 31歳,女性.初診の半年前より喘息症状あり.2週間前より両下肢に紅斑,紫斑,背部に浮腫性紅斑出現.末梢血の白血球が12,600/μlと増加,好酸球は21%と上昇を認め,皮膚生検組織で血管周囲性の著明な好酸球浸潤を認めた.また,両下肢,左前腕~左手に多発性単神経炎も出現した.厚生省難治性血管炎調査研究班の診断基準に従ってChurg-Strauss症候群(CSS)と診断した.この診断基準では,特異的な臨床所見に加えて,肉芽腫性病変を示す組織所見がみられたときにアレルギー性肉芽腫性血管炎(AGA)と診断し,好酸球浸潤をみるが特徴的な組織所見を欠くときはCSSと診断される.最近10年間に本邦で報告されたCSSまたはAGA28例の皮膚所見について,皮疹の種類,範囲を検討した.

Rheumatoid vasculitisとクリオグロブリン血症に伴った皮膚潰瘍の1例

著者: 雄山瑞栄 ,   小田真喜子 ,   清島真理子

ページ範囲:P.139 - P.141

要約

 60歳,男性.3年前より関節リウマチにて整形外科で加療中.1年前に左膝人工膝関節置換術を受けた.1か月前に左下腿に色素沈着が出現し当科を受診した.色素沈着はさらに右下腿にも出現し,その後両下腿に難治性の皮膚潰瘍を形成した.組織は真皮内血管の閉塞性変化と,一部では血管壁のフィブリノイド変性を,また真皮上層では毛細血管内に好酸性無構造物質の沈着を認めた.血液検査ではリウマトイド因子高値,低補体価,混合型クリオグロブリン血症を呈した.入院後,プレドニン投与と安静にて軽快したが,退院後,再び下腿潰瘍は悪化した.

環状紅斑を契機に発見された肝細胞癌

著者: 大山奈緒子 ,   天野博雄 ,   田村敦志 ,   石川治

ページ範囲:P.142 - P.144

要約

 85歳,男性.環状紅斑を契機に肝癌が発見された症例を報告する.5年前より毎年5~7月頃にかけて環状紅斑が出現し,11月頃に自然消退していた.内臓悪性腫瘍の検索を行ったところ,原発性肝細胞癌が見いだされた.肝細胞癌の治療を行ったところ皮疹は消退し,その後,現在に至るまで再発を認めていない.内臓悪性腫瘍に伴った環状紅斑の本邦報告18例の文献的検討とともに報告する.

若年に発症し,急性に経過したBehcet病の1例

著者: 内山麻理子 ,   伊藤治夫 ,   石崎純子 ,   繁益弘志 ,   原田敬之

ページ範囲:P.145 - P.147

要約

 14歳,女児.高熱,口腔内アフタ,外陰部痛を主訴に来院した.当初は外陰部ヘルペスと診断し,アシクロビルと抗生剤の投与を開始したが効果なく,数日後より四肢,顔面に結節性紅斑様皮疹が出現し,小児の不全型Behcet病と診断した.プレドニゾロン30mg/日の投与を開始し,翌日には解熱,皮疹の改善,CRPの低下をみた.以後1年ほど経過したが再発の徴候はみられない.小児のBehcet病は成人に比べ稀であり,しかも3主症状が同時期に出現し,急性に経過した症例はさらに稀と考えられた.

Napkin psoriasisの1例

著者: 坪田晶子 ,   佐藤英嗣 ,   横田浩一

ページ範囲:P.148 - P.150

要約

 10か月,男児.陰股部に皮疹を繰り返していたが,その後,口囲,両眼周囲に紅斑性局面が拡大したため当科を受診した.Mildクラスの副腎皮質ホルモン剤にて改善がみられず,軀幹,四肢に乾癬様の皮疹が多数出現した.Strongクラスの外用剤に変更し,徐々に改善した.初診から1年3か月後の現在も再燃,再発はみられていない.

コレステロール塞栓症の1例

著者: 三澤淳子 ,   増田邦男 ,   白濱茂穂

ページ範囲:P.151 - P.153

要約

 69歳,男性.心筋梗塞に対して経皮的経血管的冠動脈形成術施行後,浮腫,腎機能悪化,両足趾尖の赤紫色の皮疹が出現した.皮疹部の皮膚生検にて,真皮下層に壁が線維性に肥厚し,その内腔に紡錘形に明るく抜けたコレステロール結晶の塞栓像が確認できた.プレドニン30mg/日の内服開始,透析を併用し,腎機能は次第に回復した.

若年性脳梗塞を発症したFabry病の1例

著者: 栗原みどり ,   石川里子 ,   大塚勤 ,   山崎雙次

ページ範囲:P.154 - P.156

要約

 25歳,男性.幼少期より体幹・四肢を中心に暗赤色丘疹を認めていたが,四肢疼痛発作はなかった.2003年7月初めより右半身麻痺,構語障害が出現し,MRIで橋部に高信号域があり,脳梗塞と診断された.暗赤色丘疹の病理組織学的所見は被角血管腫で,皮膚電顕所見は血管内皮細胞のリソソーム内に電子度の密な格子縞状の蓄積物が認められた.血漿α-galactosidase活性も低値であり,Fabry病により発症した脳梗塞と考えられた.

家族内同症を認めないUnna-Thost型掌蹠角化症の1例

著者: 吉田寿男 ,   滝内石夫 ,   秋山真志 ,   清水宏

ページ範囲:P.157 - P.160

要約

 50歳,男性.幼少時より足蹠,主に踵部,拇指球部に著しい角質の増殖が認められた.初診時,足蹠全体に,びまん性に著しい角質増殖がみられ,足縁にも拡大していた.病理組織学的には,著明な角質増殖と顆粒層,有棘層の肥厚が認められ,顆粒層には濃紫色に染まる不規則な粗大ケラトヒアリン顆粒が認められた.しかし,顆粒変性の像は認められなかった.電子顕微鏡的所見では,顆粒層に粗大なケラトヒアリン顆粒が認められた.以上の臨床所見と組織所見より,Unna-Thost型掌蹠角化症と診断した.治療は,エトレチナート内服にて著効を示した.

特徴的MRI画像を呈した頭部 proliferating trichilemmal cystの1例

著者: 宮田奈穂 ,   田中京子 ,   藤本篤嗣 ,   杉浦丹

ページ範囲:P.161 - P.163

要約

 57歳,女性.5年前から頭部に結節が出現し,1年前より急速に増大したため当科を受診した.MRIでは骨膜に接して境界明瞭な多房性の病変を認め,造影すると被膜と隔壁のみがエンハンスされた.組織学的にも被膜を有し境界明瞭な腫瘤を認め,大小の嚢腫様構造からなっており,MRI所見との相同性がみられた.Proliferating trichilemmal cystはこのように特徴的なMRI所見を示し,MRI画像が鑑別の一助となると思われた.

肛門部に生じた平滑筋腫の1例

著者: 目々澤愛 ,   田畑伸子 ,   小澤麻紀 ,   相場節也

ページ範囲:P.164 - P.166

要約

 85歳,女性.数十年前より肛門部の皮下に腫瘤が生じ,徐々に拡大,初診時には長径約5cm大の腫瘍が肛門の右側に認められた.腫瘍は薄い線維性の被膜を有し,紡錘形の腫瘍細胞より構成されていた.免疫組織化学ではSMA陽性であり,平滑筋腫と診断した.肛門部の平滑筋腫はきわめて稀であり,内肛門括約筋由来であると考えられているが,自験例においても腫瘍の茎部は内肛門括約筋の方向より生じていた.

足底に生じたグロムス腫瘍の1例

著者: 鶴見純也 ,   籏持淳 ,   山崎雙次 ,   新海浤

ページ範囲:P.167 - P.169

要約

 57歳,女性の足底に生じた単発性のグロムス腫瘍を経験した.約1年前より右足底に圧痛,ときに自発症を伴う小結節出現.初診時,右足底拇趾球側に径約10mm大,常色で比較的硬い,境界明瞭な皮下結節を認めた.組織所見は,真皮中層から脂肪織にかけて結合組織性の被膜に囲まれた腫瘍細胞巣で,細胞は類円形の核を有し,異型性はみられなかった.ところどころに1層の内皮細胞に取り囲まれた大小の管腔を認めた.免疫染色ではビメンチン,α-smooth musclc actinに陽性で,デスミン陰性であった.発生部位など稀な症例と考えた.

水疱様外観を呈した巨大なclear cell hidradenomaの1例

著者: 石田雅美 ,   水嶋淳一 ,   檜垣祐子 ,   川島眞

ページ範囲:P.170 - P.172

要約

 65歳,男性.4年前に左肩に結節が出現し,緩徐に増大し,ときに漿液性物質の排出をみた.初診時,5.5×4.0×1.0cm大,圧痛のない,淡紅色,弾性やや硬,下床と可動性のある結節を認めた.中央は水疱様で,内容は穿刺にて黄色透明の漿液性物質であった.組織像は,真皮内に大型の嚢腫様構造と一部に管腔様構造を認める充実性腫瘍塊とがあり,後者は好酸性の胞体をもつ類円形細胞とPAS陽性で大型の淡明細胞より構成されていた.細胞異型は認めず,間質は硝子化が著明な部位も認めた.以上の所見よりclear cell hidradenomaと診断した.本腫瘍が本例のように大型を呈することは稀であり,その特徴について考察した.

腰部に生じた巨大なeccrine porocarcinomaの1例

著者: 河野吉成 ,   中野あおい ,   鳴海博美 ,   原田研 ,   松本一仁 ,   長谷川武久 ,   板谷博之

ページ範囲:P.173 - P.176

要約

 84歳,男性.8年前に腰部左側に腫瘍が出現,漸次増大して巨大化した.近医で指摘され,他院を経て精査・加療の目的で当科を紹介された.当科にて入院のうえ,切除と植皮術を施行した.病理組織学的に,一部にeccrine poromaの像を呈し,連続性に核の異型性を示す腫瘍細胞の増殖像を認めた.免疫組織学的にはCEA,S-100蛋白染色は陰性,EMA,抗ケラチン抗体染色は陽性を示した.これらより,自験例をeccrine poromaより悪性化したeccrine porocarcinomaと考えた.

胸部に生じた基底細胞癌の1例―当科における過去10年間の基底細胞癌のまとめ

著者: 小川愛 ,   岡田克之 ,   古瀬善朗

ページ範囲:P.177 - P.179

要約

 65歳,男性.5年前に胸部に生じた皮疹を主訴に当科受診.初診時,左胸部に26×20mm,淡紅褐色,粟粒大の黒褐色斑を数個伴う境界明瞭な局面を認めた.病理組織学的には表皮と連続して数個の塊状の腫瘍胞巣が蕾状に真皮内に突出し,腫瘍細胞は基底細胞様細胞で,最外層は柵状配列を示していた.以上よりsuperficial typeの基底細胞癌と診断した.当科で過去10年間に切除した基底細胞癌52例をSextonらの組織型分類に従って分類したところ,superficial typeは4例(8%)で,そのうち躯幹に発生した症例が3例であった.

Mucinous carcinoma of the skinの1例―ダーモスコピー所見をそえて

著者: 吉田理恵 ,   和田直子 ,   中捨克輝 ,   斎藤京 ,   永尾圭介 ,   田中勝

ページ範囲:P.180 - P.182

要約

 69歳,男性.右頬部に約2年前より皮疹が生じ,徐々に増大した.受診時,12×9mm大の扁平隆起性で光沢を有する淡紅色結節であった.ダーモスコピーではwhitish networkに囲まれた桑実状の淡褐色小球を認め,毛細血管の拡張を伴っていた.病理組織学的に線維性隔壁を伴う多房性構造を呈し,粘液様物質の豊富な間質内に島状の細胞塊を認めた.全身検索の結果,他臓器病変はなく,mucinous carcinoma of the skinと診断し拡大切除術を施行した.術後6か月の現在,再発,転移はない.自験例ではダーモスコピーが本疾患の特徴的な組織像を反映していた.本疾患のように臨床的に特徴といえる所見に乏しい場合に,ダーモスコピーは診断に際して有益な情報をもたらすと思われる.

皮膚原発有棘細胞癌と鑑別を要した口腔癌の臀部皮膚転移の1例

著者: 吉田寿斗志 ,   幸田公人 ,   石地尚興 ,   上出良一

ページ範囲:P.183 - P.185

要約

 49歳,男性.3年前,口腔癌(T4N2bM0;ⅣA)にて他医で腫瘍切除術,両側頸部リンパ節郭清術,化学療法を受け,局所再発はみられていない.半年前より左臀部に腫瘤が出現し,急激に増大したため当科を受診した.腫瘍の辺縁より2cm離し筋層を厚さ約1cm含んで切除した.腫瘤表面はびらん性のため,表皮との連続性は不明であった.口腔癌と病理組織像を比較すると両者は類似しており,有棘細胞の分化を主体とした太い索状の増殖を示していた.臀部には有棘細胞癌の発生母地となる基礎疾患はなかった.縦隔と仙骨に転移を認めたが,鼠径リンパ節,肺や肝に転移を認めなかった.以上より,左臀部腫瘤は口腔癌の血行性転移と考えた.口腔癌の転移先として皮膚は第5位(15.1%)であるが,顔面,頸部に出現することが一般的で,われわれが調べ得た限りでは,それら以外の皮膚へ転移が生じた報告は見当たらず,本症例は稀な部位への転移と考えた.

陰茎部分切断術および分層植皮術により陰茎を再建した陰茎悪性黒色腫の1例

著者: 浅井純 ,   西藤由美 ,   荒木文子 ,   益田浩司 ,   竹中秀也 ,   岸本三郎

ページ範囲:P.186 - P.188

要約

 79歳,男性.血尿を自覚したが3か月ほど放置していた.また,外尿道口部に5mm大の暗赤色小結節および亀頭部から陰茎部にかけての黒色色素斑に気づいた.近医泌尿器科を受診し,小結節を切除されたが,臨床所見および病理組織検査で悪性黒色腫が疑われ,当科に紹介され受診した.病理組織学的所見より悪性黒色腫(stageⅢA)と診断した.センチネルリンパ節生検およびリンパ節郭清は行わず,腰椎麻酔下に陰茎部分切断術と分層植皮術を合わせて施行した.術後,追加の化学療法としてDAV-Feron療法を施行しているが,術後3年で再発,転移は認めていない.さらに,陰茎を温存したことにより立位による排尿が可能であり,患者にとっても満足のいく結果が得られた.

Malignant fibrous histiocytoma (giant cell type)の1例

著者: 浅井純 ,   曽我富士子 ,   西村幸秀 ,   上田英一郎 ,   岸本三郎

ページ範囲:P.189 - P.192

要約

 40歳,女性.2002年1月に右上腕の米粒大の皮下結節に気づいた.急速に増大傾向を認め,2002年8月,近医で切除されたが,病理組織学的所見にてmalignant fibrous histiocytoma (MFH)が疑われ,拡大切除目的で当科を受診した.免疫染色ではCD68,アンチトリプシン,ビメンチンなどが陽性,CD34,S-100などが陰性であったため,MFH (giant cell type)と診断した.前医での手術痕から3cm離して筋膜を含め切除した.その後,化学療法を4クール施行した.術後1年6か月の経過観察で転移,再発を認めていない.

タクロリムス軟膏外用中に多発した伝染性軟属腫の1例

著者: 伊木まり子

ページ範囲:P.193 - P.195

要約

 28歳,女性.アトピー性皮膚炎のため顔面にタクロリムス軟膏を外用し,経過良好であった.2003年1月,顔面に稗粒腫と思われる黄白色調丘疹を認めたが,内容物を圧出するには小さすぎたため,経過をみることにした.約3か月後,200個以上に増加し来院.病理組織検査の結果,小丘疹は伝染性軟属腫であった.タクロリムス軟膏の外用を中止し,ヨクイニン(R)を処方した.約1か月後,伝染性軟属腫はすべて消失した.タクロリムス軟膏については,アトピー性皮膚炎以外の疾患における有効性が報告されている.小児用軟膏も発売された.使用機会の増加に伴い,伝染性軟属腫を併発する症例の増加が懸念されるため,警告を発しておきたいと考え報告した.

下肢壊死性筋膜炎に対する治療経験―患肢を温存しえた3例

著者: 青柳哲 ,   秋山真志 ,   横田浩一 ,   清水宏

ページ範囲:P.196 - P.199

要約

 下肢に生じた壊死性筋膜炎の3例を経験した.症例1:64歳,女性,左足背から下腿に発症.症例2:54歳,男性,右足背から下腿,大腿に発症.症例3:54歳,女性,右足背から下腿に発症.いずれも趾間びらん型の足白癬を伴っており,そこからの感染の波及がもっとも考えられた.症例2ではA群溶血性連鎖球菌が検出されたが,症例1と3では起因菌は同定できなかった.症例1は発症から8日目,症例2は3日目,症例3は2日目にデブリードマンを施行し,症例1と2はさらに1回のデブリードマンを追加した.術創の閉鎖はすべて分層植皮術を施行した.3例とも患肢機能を温存しえたが,歩行可能となるまで初診から約1か月半から3か月半の期間を要した.下肢における壊死性筋膜炎の早期診断方法,治療の実際と切断術の適応について文献的に考察した.

肺結核を伴い臀部に生じた尋常性狼瘡の1例

著者: 長谷川優佳 ,   和泉智子 ,   市橋直樹 ,   市來善郎 ,   高木肇 ,   北島康雄 ,   三輪佳行 ,   村上啓雄

ページ範囲:P.200 - P.202

要約

 82歳,男性.31歳時に肺結核,50歳時より糖尿病の既往あり.2002年7月より右臀部に浸潤を伴った環状紅斑が出現.生検組織では巨細胞を伴う肉芽腫形成を認めた.組織片培養では抗酸菌液体培地発育陽性,MTD法によって結核菌陽性であった.さらに,喀痰を用いたMTD法でも結核菌陽性であり,肺結核を伴った尋常性狼瘡と診断した.診断後,抗結核薬投与により良好な結果を得た.

臨床統計

乾癬の痒みとその治療について

著者: 梅澤慶紀 ,   馬渕智生 ,   飯塚万利子 ,   太田幸則 ,   松山孝 ,   小澤明

ページ範囲:P.203 - P.205

要約

 従来の内外の教本によれば,乾癬患者に痒みの訴えは少ないとされる.しかしながら,近年,乾癬患者においても半数以上に何らかの痒みの訴えがあることが報告されている.今回,乾癬患者65名にアンケート調査を行い,①治療前の痒みの有無,②治療後の痒みの有無,③各治療薬の止痒効果について検討した.その結果,①治療前の痒みは「あり」50名(77%),治療後の痒み「あり」28名(43%)と,治療により改善していた.③各治療薬の止痒効果は,シクロスポリン15例中13例(87%),抗アレルギー薬19例中14例(74%),ステロイド外用薬45例中37例(71%),活性型ビタミンD3外用薬37例中13例(35%)という順であった.乾癬では蚤破によるケブネル現象によって皮疹の増悪を認めるため,薬剤の特性を理解するとともに,痒みによる誘発・悪化をいかに予防するかという生活指導も重要と思われる.

治療

皮膚切除を行わない外歯瘻摘出術

著者: 由良晋也 ,   井上久美子 ,   福島佐知子 ,   奥田泰生

ページ範囲:P.206 - P.208

要約

 外歯瘻に対しては,皮膚側からの瘻管摘出が行われている.今回,皮膚切開を行わない口腔内からのアプローチによる原因病巣除去と瘻管摘出術を行った.局所麻酔を施した後,原因歯頬側の粘膜骨膜を切開・剥離し,原因病巣と瘻管を確認する.原因歯には抜歯ないし歯根端切除を行い,病巣を確実に除去する.次に,骨膜を粘膜から剥離し,瘻管の一端を骨膜の外側へ移動させ,皮膚へ向かって周囲組織から蚤爬して摘出する.最後に,皮膚直下の病巣を口腔内より蚤爬ないし吸引し,洗浄後に粘膜骨膜を縫合する.死腔に対しては,皮膚側より枕子を用いて圧迫する.本法は,口腔内から病巣と瘻管を同時に摘出することが可能で,かつ審美的にも有用な手術法と考えられた.

印象記

「第8回日本-中国合同皮膚科学術会議」に参加して

著者: 松吉徳久

ページ範囲:P.209 - P.211

2004(平成16)年11月12日から14日にかけて,中国昆明において第8回日本-中国合同皮膚科学術会議が開催されました.中国通の方は別として,「昆明ってどこ?」という声が聞こえてきそうな気がします.私はこの学会に事務局の一員として,参加させていただきました.実は,これが2回目の昆明訪問です.前回は会場や宿泊先のホテルの下見,中国側との打ち合わせと多忙を極め,街の風景は移動のバスから眺めるだけでした.初めて訪れる中国のパワーに圧倒されてしまい,多くの人,派手すぎる装飾や電飾,排気ガスを撒き散らす自動車やオートバイが強く印象に残りましたが,昆明がどんな所かを見る時間はありませんでした.今回は,ゆっくりと昆明の街を見ることができましたし,中国流の学会運営を観察することができました.

 昆明は雲南省の中部にある省都で,緯度は沖縄とほぼ同じであり,標高は海抜約1,900mと高地にあるため,気候が1年を通じて温暖であることから,別名「春城」とも呼ばれています.このような都市の性格からマラソンの高地トレーニングの場所として有名で,実際,往きの飛行機に有名なマラソン選手が乗っていたという話も耳にしました.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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